住んでる場所が田舎すぎて、ダンジョン探索者が俺一人なんだが?   作:赤月ヤモリ

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ep18 久しぶりの三馬鹿探索者

 フラウと日本語勉強会を終えた翌日。

 

 土曜日である本日は台風一過によって晴天。

 俺は一人夜叉の森ダンジョンを訪れていた。

 

 フラウは今日も今日とてお留守番。昨日の内にパソコンの基本的な操作と『ダンジョン配信』という概念を教え、出発前に配信ページも開いてきたので、気が向いたら見てくれることだろう。

 

 今日を迎えるにあたって、同じパーティーメンバーである七規と幸坂さんには配信する旨を事前に伝えている。彼女たちの名前を出すことは無いだろうけど、やはり報連相は大切だ。

 

(フラウのことは未だ伝えられないけど……まぁ、アレだ。今は置いておこう)

 

 露骨に思考を切り替えつつ、次に思い浮かぶのは先日知り合った西木先輩のこと。

 本当なら昨日のうちに会いたかったが、台風なら仕方がない。

 

 そう言えば、彼女はどうして夏休みに学校に来てたのだろうか。

 俺と同じ補習か、それとも部活か生徒会か。

 

 そうこうしていると夜叉の森探索者ギルドに到着した。

 エアコンを浴びながらのの猫に到着した旨を報告。返信を待っていると……。

 

「ちょっと、今日こそ声かけるんでしょ?」

 

「はやく……お腹空いた」

 

「や、やっぱりいいって……! その、め、迷惑かもだし……っ!」

 

「バカの癖にいっちょ前に気なんて遣わなくていいんだよ? 能天気で何も考えてないのが白木ちゃんの良いところなんだから!」

 

「江渡ちゃん……! ……あれ? それ褒めてる?」

 

「褒めてる褒めてる。だから……ほれっ!」

 

「わっ、わわっと」

 

 わちゃわちゃしながら目の前にやって来たのは、約一週間ぶりになる三人組。白木と江渡さん、それと今日も今日とてお腹を空かせた様子の友利さんだった。

 

「久しぶりだな、白木。怪我はもう大丈夫か?」

 

「ひょえっ!? え、あ、ああ、えっと、その……う、うん。大丈夫。後遺症なんかもない、よ?」

 

 江渡さんに背中を押されてやって来た白木は、俺と目が合うなりしどろもどろになりながらも小さく頷いた。

 

 若干恥ずかしそうに見えるのは、何だろう?

 まさか恋か? 気付かぬうちに白木フラグを立てていたのか?

 

 と思わないでもないが、まぁ単純に気恥ずかしいだけだろう。

 

 ロック・ビートルとの戦闘後。救援組と合流するまで俺は白木を背負ってダンジョンを昇っていた。

 

 その際、彼女は足を怪我した不安からか、ぎゅっと抱き着いていたのだ。

 

 同年代の男子にそんな行動をとれば、気恥ずかしいのもさもありなん。

 

 なので俺は彼女の反応には特に触れず、安堵の息を吐くにとどめる。

 

「そうか、よかったよ」

 

「う、うん……へへっ」

 

 照れたように笑った白木は、そのまま『すすすっ』と距離を取って江渡さんの背中に隠れてしまった。

 

「そこまで恥ずかしがる事か?」

 

「白木は案外乙女だから」

 

 俺の言葉に、隣に立っていた友利さんが淡々と答える。

 

 基本的に三人と話す時は白木と言葉を交わすことが一番多く、その次に江渡さん。

 

 一番話さないのが目の前のはらぺこ少女友利さんなのだが……近くで観察してふと気付く。

 

(……白木が一番強いのかと思ってたけど、友利さんも何か……普通とは違うよな)

 

 彼女の戦闘センスが優れているのは知っていたが、何というかそれだけではない。

 

 立ち姿と言うか、雰囲気と言うか。

 誰かと重なるのだ。

 誰だろうかと頭を捻ること数秒。

 

(そうだ。この雰囲気はアレだ。テスタロッサに似てるんだ)

 

 と言っても、異世界人特有の雰囲気というよりは、ある一定の技術(・・)――ここでは武術と言い換えてもいいかもしれない。それを収めた人特有の、隙の無さを感じたのだ。

 

 俺や、それこそレイジなんかはダンジョン内での実践で磨かれた戦闘技術。剣術や武術は素人だ。

 

 おそらくはその違い。

 以前まで気付かなかったのは、俺の見る目が無かったという事だろう。

 

 剣術の最高峰……『剣聖』だったか?

 その技術を前に戦闘を繰り広げたからこそ、知覚できるようになったと考えるのが自然だ。

 

 Aランク探索者の富岡さんなんかも、直接会えば同じ雰囲気を感じ取ることが出来るかもしれない。

 

「……なに?」

 

「いえ……ふと気付いたんですが、友利さんは何かしら武術を習ってたりしますか?」

 

「うん。ちっちゃい頃からお爺ちゃんに。空手と合気道を」

 

「なるほど」

 

 これで先ほどの推論が寄り真実味を帯びた。

 あとはどの程度の技量か等も見抜けるようになれば、今後異世界人と戦闘を繰り広げるうえで重要になってくるかもしれない。

 

 なんて考えていると、友利さんに服の裾を引っ張られる。

 

「どうかしましたか?」

 

「……なんで白木はため口で、私と江渡は敬語?」

 

「嫌でした?」

 

「うん、嫌。だからタメ口で話して」

 

 まさか直球で嫌と言われるとは。

 

「分かった。これでいいか?」

 

「……ん、いい」

 

 相も変わらずぼーっとした様子の友利は変わらぬ表情のままサムズアップ。無表情という点では七規と同じであるが、彼女の場合は中身まで大人しい。

 

 いや、むしろ七規がギャップあり過ぎるのか?

 

「ところで今日は何の用で?」

 

「ダンジョン配信するって聞いたから、激励? 白木ちゃんが行きたいって言った」

 

「ほう」

 

「でも、実際にギルドに近付くと、ヘタレになった」

 

「そりゃまた辛辣な物言いで。……間違いはないけど」

 

「そっちこそ辛辣」

 

 淡々と言葉を交わす俺と友利の前で「ほら! 『頑張って』って言うんでしょ!?」「もう言った! 心の中で言った!」と楽しそうなやり取りをする江渡と白木。本当に彼女たちと居るのは退屈しないなぁ、なんて思うことしばらく。

 

「が、頑張れよ! 相馬っち! その……お、応援してるから!」

 

 と言って、踵を返し去っていく白木。

 その後を江渡と友利も追いかけていき――そんな二人に白木は若干頬を赤らめながら告げる。

 

「ひゃーっ、友達を素直に応援するのって、こんなに気恥ずかしいんだ! ぐぬぅ~心がムズムズする!」

 

「……えっ!? そ、それが原因なの!?」

 

「え、なに?」

 

「……白木は馬鹿だから」

 

「あぁ~、自分で気付いてない感じかぁ~」

 

「だからなに!? 二人だけで納得するな~!」

 

 そんなやり取りをして、ギルドの更衣室へと消えていった。俺への激励と言っていたけれど、それとは別にダンジョンにも潜るつもりだったのだろう。

 

(っていうか、白木の奴のの猫のモノマネ辞めたのか)

 

 自分の中の流行りみたいなものだったのだろう。

 にゃーにゃー言う白木は馬鹿さ加減に拍車をかけていたが、しかしいざ無くなって見ると寂しい物があるな。

 

(白木はバカだけど顔は良いからなぁ。あれはあれで可愛かったし)

 

 なんて思いつつ、俺は再度スマホを取り出してメッセージを確認。

 先ほどのの猫に送ったメッセージは既読になっており――。

 

「やっほ、相馬さん。モテモテで羨ましいにゃ~」

 

 声を掛けてきたのはサングラスにキャップ帽の素顔を隠した少女。

 しかしその声を聴き紛うことなどあり得ない。

 

 というか身長や身体つき、僅かな重心移動は俺が愛してやまない少女の物。

 

「はわわっ」

 

「むふ~、その反応で浮気は許してあげるにゃ~。私ガチ恋勢のお師匠様♡」

 

 サングラスをずらしてジト目を向けながら口元を歪めていたのは、本日のコラボ相手――のの猫であった。

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