住んでる場所が田舎すぎて、ダンジョン探索者が俺一人なんだが?   作:赤月ヤモリ

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ep20 デジャヴ

「さて、それじゃあここからは相馬さんに色々話を聞きながらダンジョン探索を始めるにゃ~。因みに、この場所で配信始めようって言ったのは相馬さんでしたけど、何でここだったのにゃ?」

 

 事前の打ち合わせの段階で彼女には説明していたが、配信を盛り上げるうえでの会話なのだろう。

 

「にゃーにゃー。単純に有名な場所ですからにゃ~」

 

「配信でも真似するにゃ?」

 

「ダメにゃ?」

 

「キモいにゃ」

 

「酷いにゃ」

 

:こいつら仲良すぎか?

:にゃーにゃーうっせえ!!

:世界よ、これが日本のSランク探索者だ

 

 コメント欄でも不評な様なので辞めよう。

 ちょっと傷付いちゃった。

 

「こほんっ、まぁとにかく有名だったのと、せっかくダンジョンで配信するなら戦闘だけじゃなくて学びにもなる配信にしたいなと思ったからですね」

 

「学び?」

 

「はい。例えばこの場所――夜叉の森ダンジョン二十二階層は探索者でも探索者じゃなくても知っている人の多い人気スポットです。湖のほとりで休憩したい探索者の方も多いでしょう」

 

「確かに、のの猫さんも初めて来たとき休憩したにゃ」

 

 ……湖のほとりで休憩する猫ちゃんか。

 

「絶対可愛いな」

 

「にゃっ!?」

 

「おっと失礼。心の声が」

 

:相馬(影†猫)

:シャドウキャットの人格が主人格を侵食している…

:Sランク探索者すら抑えられない人格とかどんなモンスターだよ

:↑おじさん構文を巧みに操るモンスターやで

:↑ひぇぇ

 

 なにやらコメント欄で酷い言われようだが今は無視。

『そ、それで?』と先を促すのの猫に首肯を返し、俺は口を開いた。

 

「猫ちゃ——のの猫さんのようにこの場所で休憩する場合、一つ気を付けないといけないことがあります。それは、この湖に水棲モンスターが生息しているという事です」

 

「えっ」

 

「俺が以前踏破した三船ダンジョンや、猫ちゃ——のの猫さんがよく潜ってる渋谷ダンジョンは洞窟系のありふれたダンジョン。だからこそ馴染みがないかもしれませんが、夜叉の森ダンジョンにおいてモンスターは自然界の動物のような存在なんですよ」

 

「にゃるほど……言われてみれば確かに……」

 

:なんか、普通のこと言ってんな

:水に水棲モンスターが居るとか普通じゃね?

:渋谷ダンジョンしか潜ったことないから知らんかった

:はぇ~マジで学びになって草

:コメ欄の意見真っ二つやな

 

 最後のコメントが言う様に、俺の発言に対する反応は割れていた。為になったという者も居れば、なに言ってんだ? と疑問符を浮かべている者も居る。

 

 後者の割合の方が若干多いぐらい。

 

 だがそれも仕方ないことだ。

 

 今俺が教えたのは、探索者としての経験が長ければ長いほどその危険性が分かる情報だからだ。

 

 逆に夜叉の森ダンジョンしか潜ったことのない探索者や、探索者を目指そうとしている者たちなら、先入観がないので湖に対しても警戒心を示すだろう。

 

 他のダンジョンでは『水にモンスターが潜んでいる』なんて事はほとんど有り得ない。というより、洞窟系のダンジョンに水源自体少ない。あったとしても、目の前の湖に比べてもっと小さなもので、モンスターが住めるような環境ではない。

 

 故に、水中にモンスターが居るという発想自体出てこないのだ。

 

「まぁ、俺もつい最近知ったばかりですけ――」

 

 言いかけた瞬間――ばしゃぁぁあああああんっ!! と水しぶきが上がった。

 

(……なんか既視感のある展開だね)

 

 なんて思いつつ音の方へ視線を向けると……。

 

「うぉおおおおおおっ! 釣れた釣れた! って今度の魚は手足付いてんだけど!! きしょ~!!」

 

「わぁああああっ!! キモいキモい無理無理無理!! ばかぁ!! だからもう釣り何て辞めようって言ったのにぃ!! ばかっ、白木ちゃんのばかっ! ペペロンチーノ!!」

 

「今度こそ……食べる」

 

 以前同様巨大魚を釣り上げた白木たちの姿があった。

 

 居るなぁ、とは思っていたけど何やってんだあいつら。

 

 距離があるので叫ぶ白木と江渡の声しか聞こえないが、大方また食べるために釣りに来たのだろう。

 

 なんて思っていると――水中から別の気配(・・・・)

 

 猛スピードで接近してきた気配は、そのまま水面から飛び出すと――白木が釣り上げた四足歩行の巨大魚を丸呑みにしてしまった。

 

:!?

:何あれ!?

:怖ぇぇえええ!!

:てかダンジョンで釣りする馬鹿とか始めて見たわ……

 

「そ、相馬くん、あれ……」

 

「シーサーペント……いや、湖だからレイクサーペント?」

 

 そこに居たのは巨大な蛇。外国のダンジョンでは目撃例があったが、少なくともここ数年国内のダンジョンで出現したという例は聞いたことがない。

 

 先程の四足歩行の魚も見たことないし、この湖って実は新種のモンスターがかなり潜んでいたりするのではないだろうか?

 

(というか、白木たちの運が凄いな。俺も珍しいモンスターをもっと発見したいのに)

 

 危険と分かっていても、探索者的には一番楽しい瞬間だ。

 

「っていうかあの三人、(しら)――じゃなくて、えっと……た、助けなくてもいいのかにゃ?」

 

 つい名前を口にしそうになり、慌てて話を切り替えるのの猫。

 その細やかな気遣いに胸が温かくなるのを感じつつ、俺は白木たちに視線を向けて――まぁ、あれは大丈夫そうだな。

 

 三人の実力なら十分だろう。

 

「問題ないでしょう。シーサーペントはBランク指定のモンスターですが、あの三人ならまず余裕。それにモンスターの横取りは基本的にタブーですからね」

 

 ここは高ランクの探索者らしく、落ち着いた説明をするのが良し。

 そう判断し、どや顔で語ってみたのだが――。

 

「……でも、こっちに向かって走ってくるにゃ」

 

「えっ?」

 

 ちらっと視線を向けると、レイクサーペントから全速力で逃げる白木と友利。

 最後の一人であるフードを被った魔女っ娘の江渡は、力ない様子で友利の肩に担がれていた。

 

 彼我の距離が近付いたことで、走る白木たちと視線が交差し――。

 

「た、た、た、助けて相馬っちぃぃいいいいい!! ヘビ無理無理無理!! キモいキモいキモい!! わ、わぁあああああ! すんごい追いかけてくるぅうううううっ!?」

 

 ハイテンションに駆けてくる白木を見つめ、俺は思う。

 

 キミら人生楽しそうだね、と。

 

 やがて俺の下に辿り着いた三人は、一切の躊躇なく背後に隠れる。

 それでいいのか探索者。

 

「てかそれより江――じゃなくて、フードちゃんは大丈夫なのか?」

 

「だ、大丈夫。気絶してるだけだし。……この子、ヘビが世界で一番嫌いだから」

 

「なるほどね」

 

 俺も超巨大なゴキブリが出てきたら卒倒するかもしれないし、その気持ちは分かる。

 

「あー、じゃあアレ俺が倒すけどいいか?」

 

「オナシャス!」

 

 元気よく頼んでくる白木に俺は苦笑。

 それから思い出したかのように忠告。

 

「そうだ。今配信中だから名前言わないように気を付けてくれ。顔は笹木さんが映さないようにしてくれてると思うけど」

 

 白木と友利が首肯を返したのを確認してから、俺は一歩前へと出る。

 

「それじゃあ、まぁ……少し予定とは違いますが、お待ちかねの戦闘と行きましょうか」

 

 俺は手元のスマホでコメント欄を確認。

 

:来たか

:遂にSランク始動!

:これでくそ弱かったら笑うww

:てかイキり過ぎww

:くっそイタい奴で草

:wktk

:女の子に囲まれてるとか浦山死刑

:↑それな

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