住んでる場所が田舎すぎて、ダンジョン探索者が俺一人なんだが?   作:赤月ヤモリ

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ep2 突撃、水瀬さんち!

 松本さんと合流後、俺たちは七規に連れられ敷地の中へと足を踏み入れた。

 するとそこには荘厳なお屋敷が。

 

「……すげぇ」

 

「こんなの本当にあるのね」

 

 広い庭に大きな日本家屋。

 庭には池があり、中では綺麗な錦鯉がゆらゆらと泳いでいる。

 そのすぐ傍では鹿威しがカコンと音を奏で、何とも風情溢れる光景か。

 

 こんなのドラマや映画でしか見たことない。

 

「二人ともこっちだよー」

 

「お、おう」

 

「す、すぐ行くわね」

 

 そうして圧倒される俺と松本さんが案内されたのは母屋——ではなく、庭の一角に建てられた大きな蔵だった。

 

 大きさは俺の家ほどだろうか。

 お金持ちってすごい。

 

「お金持ちってすごいのね」

 

 松本さんと意見が被っちゃったぜ。

 

「少し家が大きいだけですよー」

 

 金持ち特有の余裕を見せながら、蔵の鍵を開けて扉を手前に引っぱる七規。

 重そうにしていたので手伝う。

 そうして開かれた蔵の中には——本日同所を訪れた目的の物が収められていた。

 

 そこにあったのは山のように積み上げられた紫色の魔石。

 

「……え、こんなに?」

 

「うん、これ全部せんぱいの魔石だよ」

 

「うそーん」

 

 七規の言葉に俺は絶句。

 

 それはナイトメア戦の後、意識を失っていた俺に変わっておじい様が回収しといてくれたと言っていた魔石であった。

 

 かなり量があるとは聞いていたが、まさかこれほどとは。

 大きさは大小さまざま。

 しかしどれだけ小さい物でも拳より大きい。

 

 以前討伐した通常種のゴブリン・ロードの魔石よりも全然大きいよ。

 

「な、こ、ここ、な、なん、ここっ……はわわわ」

 

「松本さん壊れちゃった」

 

 そりゃそうだよね。

 前売ったゴブリン・ロードの魔石が一つで1600万円。

 

 それで目玉が飛び出す金額だったというのに、目の前にはそれより大きな魔石が山を形成しているのだ。

 

「あの、松本さん」

 

「……はっ! な、なに?」

 

「これ、いくらぐらいになると思います?」

 

 返って来たのは沈黙。

 数秒ほど思考を巡らせた彼女は、僅かに震える声で答えた。

 

「たぶん、百億は余裕で超えるんじゃない?」

 

「ひゃ、百億!?」

 

 思わず素っ頓狂な声が出る。

 

 マジかよ。

 百億って何? 一億の百倍?

 そんなの大ヒットした邦画の興行収入みたいな金額じゃん。

 

 流石に現実感が無いんだが……?

 

「因みに、ここにはないけどもっと大きな魔石が二十個ぐらい、別の場所に保管してるよー」

 

「二十個ってことは……マジか」

 

 十中八九、ナイトメア・ゴブリンロードの魔石だろう。確かにあの戦士たちの魔石なら、ここにある魔石より巨大でもおかしくはない。

 

 否、むしろ当然か。

 

「松本さん。これ全部売るってなったらどれくらい時間かかりそうですか?」

 

「流石に分かんないけど……全部最高のタイミングで売ろうと思えば、数年とかかかるんじゃないかしら」

 

「数年、ですか」

 

 そりゃまた先の長い話だ。

 

「あっ、松本さん! 売却に関してはおじいちゃんも手伝うって言ってましたよ!」

 

「ほんと? それすっごく助かるわよ~」

 

 泣きそうになりながらぎゅっと七規に抱き着く松本さん。流石にこの量を一人は過労死待ったなしだろうからね。

 

 魔石の売却は基本的にギルドが行う。

 が、他に方法がないわけでもない。

 おじい様の手伝いとは、その別ルートで売却を進めるという話なのだろう。

 

 まぁ、難しいことは分からないので大人にお任せしたいと思う。ごめんなさい。今度みんなに温泉旅行でもプレゼントするから許して。

 

「兎にも角にも、まずは別に倉庫を借りて魔石を移動するのが先だな。いつまでもここに置いとくのは迷惑だろうし」

 

「おじいちゃんは気にしないって言ってたよ?」

 

「いや、しかしだな……」

 

「それに、ここなら警備もちゃんとしてるよ? 見た目は古いけど、赤外線センサーとか、侵入者探知系の魔導具とか使ってて、結構しっかり守ってるんだー」

 

「そう、か? ……まぁ、七規達が良いなら俺としても助かるけど……そう言う事なら、お願いしてもいいか?」

 

「うんっ! やったー! これでせんぱいと会える口実が増えるー!」

 

 きゃっきゃっと喜ぶ七規。

 なにこの子、めっちゃ可愛い。

 無表情なのに嬉しそうなのが伝わるの、愛らしくて仕方がないよ。

 

「とりあえず、魔石関係はこんなところですかね」

 

「そうね。後は私の仕事……任せて頂戴!」

 

 どんっと胸を叩く松本さん。

 強くたたき過ぎてけほけほ咳込むの可愛い。

 

 俺の周りは可愛い人しか居ないな。

 

「あとは……そうだ七規。おじい様——正元さんって今家に居る?」

 

「え? うん、車あったしたぶん居るよ?」

 

「なら少し話があるんだけど、場所を準備してもらってもいいか?」

 

 お願いすると、彼女は特に気にすることなく首肯。

 

「わかった。それじゃ客間に案内するね~」

 

「助かるよ」

 

 なんて七規と話していると、松本さんが口を開いた。

 

「相馬くんが何か用事あるなら、私は先にお暇させてもらおうかしら」

 

「あー、すみません。出来れば松本さんにも同席して欲しいんですけど……時間ありますか?」

 

「? それはもちろんいいけど……」

 

 いったい何の話をするの? と困惑の表情を浮かべる松本さん。

 

 そんな彼女を連れて、俺は七規に案内された客間でおじい様を待つ。

 

 すると数分と経たぬうちに襖が開いて、着物に身を包んだおじい様が姿を現した。着物が似合うおじい様とてもダンディ。俺もこういう感じで年を重ねたいと思う。

 

「お久しぶりですな。相馬くん。松本さんも」

 

「はい、お久しぶりです」

 

「お久しぶりです。お邪魔しています」

 

 二人揃って頭を下げ、座布団に腰を下ろす。

 俺と松本さんが横並びに座り、テーブルを挟んだ向こう側におじい様の布陣だ。

 

 七規には申し訳ないが、席を外してもらっている。

 今からする話は出来るだけ最小限の人にしか聞かせたくないからだ。

 

「それで私に話とは?」

 

「実は、見て頂きたいものが——」

 

 俺はスマホを取り出し、ギャラリーから一本の動画を選択し——再生した。

 

『——これで映っているかな?』

 

 そこに映っていたのは、モノクルの男からのビデオレターだった。

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