住んでる場所が田舎すぎて、ダンジョン探索者が俺一人なんだが?   作:赤月ヤモリ

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ep12 人妻たちとの焼き肉。~再会を添えて~

 足を運んだのは以前と同じ店。

 老夫婦が経営する焼き肉店だ。

 

 炭火の窯を四人で囲み、俺以外はビールを注文。

 あれ、帰りはどうするんだろ?

 と気付いたのは乾杯の後だった。

 

 因みに席順は俺の隣に霜月さん。

 テーブルを挟んだ前方に友部さんで、斜め前に松本さんという形である。

 

 そして現在、俺がカブリ? という希少部位を焼いて、むしゃむしゃと食っている中、若干酒が入って気分の高まっている三人は何やら言い争いをしていた。

 

「ごくっごくっごくっ……ぷはぁ! ——主さまに奢るのはアタシだ!」

 

「いや、ここは私が奢ろう」

 

「焼き肉に行こうって言い出したのは私だし、私が奢るわよ」

 

 霜月さん、友部さん、松本さんの順で言い合う内容は、誰が俺の分を奢るかというもの。

 

 いや、間違いなく俺が一番金持ちだし、何なら全員分奢りたいぐらいなんだけども。しかし絶対に納得はしないだろう。

 

 理由は単純。

 

「「「まだ三船町を救ってもらったお礼をしてない!」」」

 

 ——からだそうだ。

 

 仕事だから気にしなくていいのにね。

 

 それに俺だって三人に恩返しが出来ていない。松本さんはいつもサポートしてくれるし、友部さんは命の恩人。霜月さんは日々の生活水準の向上に尽力してくれている。

 

 一生養ってあげたいぜ(叶わぬ夢)。

 

「別に、奢るとかそんなの気にしなくていいのに」

 

「そうはいかねぇ……助けてもらって、んでもって、何より主さまはまだ子供。大人的には奢りたい物なんだぁ!」

 

 そう言って身を寄せてくる霜月さん。

 呼気にアルコールのにおいが混じっているが、それでもドキドキする思春期男子の本能をどうにかしたい。

 

 加えてその距離感はとても近く、肩や太ももが普通に触れ合うし、何なら若干もたれかかってきて柔らかな胸が二の腕に触れてあばばば。

 

 やばい、酔っぱらった霜月さんヤバい。このまま時間が飛んで朝チュンしても何らおかしくない距離感なの、本当にヤバい!

 

 エロいよー!

 ドキドキするよー!

 

「こら霜月、近いぞ……相馬くんを揶揄うのは私の特権なんだからなぁ~」

 

「ちょ、二人とも何やってるのよ! 相馬くんで遊ばない!」

 

 にやにやと笑う友部さんと、頬を膨らませる松本さん。

 

 何だろうこの感覚。

 よく考えれば美女三人と焼き肉だ。

 しかもべたべたと身体接触の多い霜月さんに、揶揄い上手の友部さん、まるで嫉妬しているかのような松本さんときた。

 

 ……これが、ハーレム?

 

 なんて、一瞬思ってしまう。

 あり得ないというのに。

 

 何故ならここに居るのはみんな既婚者。

 人妻ばかり。

 ほんとバグってるよね。

 

 仮に求められても彼女たちの家庭を壊すようなことはしたくないので、断らなきゃいけないのが何よりのバグ。決してヘタレだとかチキンだとかって訳ではない。

 

 ほんとだよ?

 

「いらっしゃいませー」

 

 なんて考えていると、他のお客さんが来たのか店主の老夫婦の声が聞こえた。

 

 俺は何とはなしにそちらへと視線を向けて——あっ。

 

「あっ」

 

「あっ!」

 

 現れたカップルと目が合った。

 

 それは以前、この焼き肉屋を訪れた際に夜を共に明かした大学生カップル。連絡先を交換して遊ぶ約束もしたが、結局それっきりとなっていた二人である。

 

 だからと言って気まずいとかないし、むしろ再会できて嬉しい。だって二人は失恋した俺を夜通し慰めてくれた心優しきリア充なのだから。

 

 あの時の温かさを、俺は一生忘れない。

 

「お久しぶりです!」

 

「あぁ! ほんと久しぶり! んでもってすごい偶然だな!」

 

「ほんとですね! あ、良ければ一緒にどうですか?」

 

「いいのか?」

 

「もちろん! あ、彼女さんと二人が良いなら無理強いは——」

 

 と、同伴者である彼女さんに目を向けると——その姿は既に俺の隣の席にあった。彼女さんも久しぶりの再会が嬉しかったのだろうか。

 

 その姿に彼氏さんは苦笑を浮かべ、

 

「ならお言葉に甘えて」

 

 そう言って、彼女さんの対面に腰掛けるのだった。

 

 

  §

 

 

 俺はジンジャーエールを、他のみんなは総じてビールを注文。

 

「それじゃ、かんぱ~い!」

 

 本日何度目かになる乾杯。

 彼氏さんと彼女さんが合流してからも同所は盛り上がっていた。

 

「そういえば彼氏さん。なんで連絡くれなかったんですか? 遊びに行くって約束したのにー!」

 

 俺の苦言に彼氏さんは苦笑。

 

「悪い悪い。ほんとは遊びに誘おうとしたんだぜ? けど——」

 

「私が止めたの。ごめんね? 相馬創ってどこかで聞いたことあるなぁって思って、家帰って調べたらあの三船の守護者だって知っちゃったからさ。それ知ったうえで遊びに誘ったら、何だか変な下心があるような気がして」

 

「気にしなくていいのにー!」

 

 でも分からないでもない。

 特に俺の場合はAランク探索者である以前にお金持ちだ。

 タカリと勘違いされたくないと思ったのだろう。

 その気遣いはありがたい。

 ありがたいけれど……!

 それ以上に遊びたいのだ!

 

「わかったわかった。んじゃ、今度どっか連れってやるよ」

 

「約束ですよ!?」

 

「おう、大人の遊び教えてやるから楽しみにしてな!」

 

 カラッと笑う彼氏さん。

 ほんといい人だなこの人。

 

 なんて思っていると、背後から首に腕が回された。

 絞めるようなものではなく、抱き着くような動きだ。

 

「おぉい、主さまに変なこと教えんじゃねぇぞぉ~?」

 

 酔っぱらいながら抱き着いてくる霜月さん。

 背中に彼女の胸が押し付けられて形を変えている。

 貴女が一番変なことを教えている状況です。

 不純異性交遊的な意味で。

 

 いやほんと。人妻とのボディータッチとか不純以外の何ものでもないよ。なんて背徳的。そして背徳感は興奮を刺激する何よりのスパイスだから罪深い。

 

「そんな心配するようなことは教えませんって」

 

「ほんとかぁ? ほんとならビールを注文しろぉ~」

 

「はいはい、すみませーん! ビール追加!」

 

 流れるようにパシリにする霜月さん。

 金髪のヤンママ的な見た目だから、とてもマッチしているぜ。

 

 なんて考えていると、隣に座っていた彼女さんが「あの」と話しかけてきた。

 

「はい、なんですか?」

 

「いえ、そう言えば相馬くん。最近は猫ちゃんの配信を見ていないんですか?」

 

「え、あ、はい。そうですね」

 

 突然ガチ恋相手の名前が出てびっくり。

 そう言えば以前会った時、この人たちのの猫の配信見ながら焼き肉食べてたっけ。

 

 最近はネット自体見ていないのもあるが、それ以前からもレイジとの一件があって以降怖くて見れていない。俺について言及していたシーンの切り抜きをちょろっと切り抜いて、目覚ましにセットしているぐらいである。

 

 首肯を返す俺に、彼女さんはスマホでDtubeを開きつつ告げた。

 

「猫ちゃん、たぶん相馬くんのこと探してますよ?」

 

「……えっ?」

 

 どゆこと?

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