住んでる場所が田舎すぎて、ダンジョン探索者が俺一人なんだが?   作:赤月ヤモリ

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ep6 のの猫

「猫ちゃん、入るわよ?」

 

「あっ、はい」

 

 ノックと同時に聞こえてきた笹木さんの声に返事すると、扉を開けて足に包帯を巻いた彼女が現れた。

 

 それはゴブリンロードの初撃に気付けなかった私を庇って負った傷。

 

「怪我の具合、どうですか?」

 

「大した物じゃないよ。痕も残らないってお医者さんが」

 

「良かったぁ。でも、私のせいであんな怖い思い……すみませんでした」

 

「ううん、これも仕事だから。全部私が選んだこと。猫ちゃんが謝る必要なんて何も無いよ」

 

「笹木さん……」

 

 私より一つか二つしか歳が離れていないというのに何故こうも彼女は大人なのだろう。

 

「それに、レイジに助けてもらうなんて凄い経験もしたしね!」

 

「……っ!」

 

 助けてもらった。その言葉を聞いた瞬間あの時の光景が脳裏を過り、同時に全身が熱くなるのを感じる。

 

 胸は張り裂けそうな程に高鳴り、高揚を抑えられない。

 

「あ〜」

 

 ふと、笹木さんがニヤニヤとした顔で見つめてくるのに気がついた。

 

「なんですか?」

 

「もしかして……惚れちゃったぁ?」

 

「……へ?」

 

「まぁ、あれはカッコよすぎたしねぇ。私も探索者の端くれ……やっぱりあの強さを間近で見たらこう……ぐっ、てくるよね!」

 

 そんな突拍子もないことを口にする笹木さん。一体なんの事かと思考を巡らせ、彼女が重大な勘違いをしているのに気が付いた。

 

「ち、違いますよ!?」

 

「またまたぁ、配信にもバッチリ恋に落ちる瞬間が撮られてたんだから……ほら」

 

 見せられたのは顔を真っ赤にしながらレイジの方向を見つめる私の姿。

 

「今もレイジの話をした途端にその反応……うりうり〜恋する乙女がんば〜」

 

「本当に違うんですって! 確かにあの強さは尊敬に値しますが……私がこうなってるのは興奮してるからで……」

 

「レイジにムラムラしたの?」

 

「違いますよ! だからそうじゃなくて……あの時、レイジが狙ったのどこか気付きました?」

 

「えっと、どういう意味?」

 

 言葉足らずだった事に気づき私はこほんっと咳払いをしてから、改めて問う。

 

「だから、ゴブリンロードのどこをレイジが狙ったか、ですよ」

 

「確か……お腹? って、ちょっと待って!? それって――」

 

「そう、【影猫】さんが教えてくれた弱点です」

 

「そんな……偶然? ゴブリンロードなんて討伐記録もほとんどないSランクモンスターなのに……まさかっ」

 

 くわっ、と目を見開く笹木さんに私は首肯。

 

「はい、影猫さんは恐らくかなり上位の探索者。それでいて彼の言うことは正しかった」

 

「……」

 

「そして今まで彼は私に対して何度も何度も改善点をスパチャしてくれていました。ただの『指示厨』だと思って無視していましたが、そうではない」

 

「……」

 

「つまり、私にはまだ成長の余地が残されているってことです」

 

「猫ちゃん……」

 

 そう思えば自然と口角が上がり、顔が――否、全身が熱くなるのを感じる。

 

 やる気が溢れ、更なる高みへと続く道を前に、興奮が抑えられないッ!!

 

「万年Cランク探索者。これ以上は無いと思っていたのに……目の前に道が見えました」

 

「やっぱりキミも探索者なんだね」

 

「当たり前ですよ。……そうと決まれば早速ダンジョンに戻って配信です! 影猫さん、現れてくれるといいんですが……」

 

「配信って、昨日の今日で?」

 

「はい! 何か都合が悪かったですか?」

 

「……いやぁ、その、申し訳ないんだけど怪我が完治するまでは休めたらなぁって」

 

「そ、そうでした!」

 

 病院に行って回復魔法を使えばこの程度すぐに治癒するけど、あれは重傷患者優先だし、仕方ない。

 

「それじゃあ部屋で無事を報告する配信にしましょうか」

 

「ごめんね〜」

 

「いえいえ、些細な怪我がダンジョンでは命取りですから!」

 

 笹木さんにフォローを入れつつTwitterで配信内容の変更を呟こうとして――ふと、見覚えのある名前からDMが届いているのに気が付いた。

 

―――――

雲龍礼司@日本最強で〜すw

 

『猫ちゃんさんカメラさんは大丈夫だった?』

 

『良ければ今度食事でもどう?』

 

『何かあればAランク探索者として相談に乗るから何でも話してよ』

─────

 

 そんなメッセージに、私は申し訳ないと思いつつお断りの連絡を返すのだった。

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