妹紅、世界へ行く。   作:コンせんと

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これは再開の話。
魂と目の世界。
「藤原妹紅だ。蓬莱人の。」
不老不死だからこそ、体験し帰還できた。
悲しいエピソード。
向かうはA国。



モコウマース・ホール

モコウマース・ホール

─A国─

私はサングラスを目に、腰と首を捻りながら降りる。

「飛行機の乗り心地は最悪、と。」

幻想郷時代、岩にすがって寝る事もしばしば。

あれでも一応寝る岩は選んでるんだ、この座席…言わば、絶壁。輝夜の胸。

「嫌な奴を思い出したな…」

今回の目標はある程度の写真、実物じゃあ無くて良いらしい。

支給品に耳に付ける…なんとか翻訳機、故に日本人を探す必要は無い。楽だな。

 

A国、面積が桁違いに大きい国だ。だからか、禁足地が多い。

一吸いすれば生命の終止符を与える毒沼。

まずはそこへ行く。

毒は大丈夫さ、蓬莱人だからな。

 

 

 

そして今、私は見つけた。

サバンナのど真ん中、人は決して居ない。そう分かる毒沼の池。

続く毒沼の3km先の黒い穴を。

色素ではない、闇の黒。

現在は真昼、真上に太陽がある。だが黒い。

直径は3m、深さ未知数。円の形は真球を埋め込んだかのように綺麗。

上部は土だが…闇に紛れるギリギリに石も見える。

「人間の産物とは考えにくいが…自然に出来るには綺麗…と。」

一枚撮っておく。

パシャ

仕事中にメールも来ない、今回は当たりっぽい?

仕事中ということを弁える人間はいい人だなぁ。

「…っと。」

まずは適度な重さ、片手で握れる程の小石を投げ入れる。

10m程のロープも巻き付け、これにより…

「ある程度の深さが分かる」

石は放物線をえがき、落下していく。

「…1m…2m」

こうして数えれば深さが分かってくる。

コツン

─深さ2m─

「…!」

降りれる!

一応、石を回収するべきかな。

2mとなればさほど力も入れず持ち上げれる。

 

持ち上げれるはずだった。

 

「グッ……クッ……」

重い…!いやッ…固定されているような感覚だ。

ボソッ

声…!?

「!…誰か居るのか!」

私は後ろを振り返った、その刹那。

ドンッ

押された。落とされる瞬間見えたその笑み。

それは亡霊だった。

 

 

「何だ…何なんだ!」

現在は2mの穴の中。

普通なら這い上がって登れる…はず。

ガリッ…ズルッ

真球だからか?掴めない。

仕方ない…爪を剥ぐ。

ギチッ…ギチギチ…ベリッ

「あ!………痛…っい…。」

ふぅ…

これを投げて、私自身を燃やし爪から再生する魂胆だ。

「いけっ!」

…よし、乗ったかな。

「私を燃やせ、炎よ。」

全身から炎を吐く、完全に炎で消えるまで。

死ぬ直前、足元が歪んだ様な気がした。

だがどうでもいい…後は魂を

ガシッ

!…

ガシッガシッ

「な…」

チリチリ

脚を掴まれ……。

 

 

 

「………!」

…視界が徐々に戻る、爪に転送、上手くいっただろうか

「……いいや、失敗だ。」

爪は再生してる、という事は…だ。

気のせいかな、死ぬ直前に…

そろそろ体が動けても良いと思うが……

「ん…」

動かない…?

四肢に力も入る。じゃあ…何で。

「体が重い…疲れ?」

違う…物理的にだな。

横ぐらいなら視れ…る………が

「ほ…骨!!」

顔を見合せてしまった…。

…小さ

「あ…くしゃみが…

でそ…う

「クシュン…!…ゴホッゴホッ」

何だ…唾液とかが…出ない…?

気管支に…入って……!

「ゴホッゴホッ」

まずい…唾液が気管支を脱出しない…溜まり続けている!

…もしかして…

「グググググッッ」

思いっきり力を入れれば体も動くのか?

ギ…ギギギ

動く!

重力…これは重力だ!

多大な重力を受けている!

だから気管支に唾液は入るし…石も!

……あ?でも爪は…と言うより…何故落ちた時…一度死ぬまでは…?

ガシッ

「ッまただ!」

掴まれている…何に…

動かすのは大変だが…頑張れば!

グググッ

骨…なのかな?

人の手の骨…。

大きさを…考えると……かなり小さい。

あっ…脚!も…まずい身体中が!

「やめろ!…やめ…やめろーーーーッ!」

冗談じゃない!死んででも!消し炭にして!

「燃えろぉぉぉぉ!」

ゴォォォォォォオオ

パチッパチパチ

「焼けろ!焼けろ!!焼けろぉ!!!」

私も…視界が限界…に

一度…魂に意識を向けて……みよう……

そうすれば………上に……いけ……

ガシッ

"掴まれた"だが何を?

たった肉体は消滅したはず…

 

 

「ぃか……ない…で」

 

 

「ハッ……はぁ……魂…?」

復活した。穴の中で。

魂…

「魂だ!魂に作用されている!」

この重力は!魂が影響を受けるって事なのか!?

私は魂と肉体が分離してる…だから復活できる

じゃあ物体は、爪、魂…いや、ならば石は?

魂というよりは…なんだろうな…

…これは…表現のズレなのかな…

かつて幻想郷があった時代、フランドールが語っていた能力の理屈を耳にした

確か…目、だったかな。

それを掴み破壊する。

そしてこの穴は、目を掴み引っ張る

現象じゃあなく、穴の意思によるもの。

つまり、

「罠だった!」

私は爪を投げた。だがそれに過大な重力は掛からなかった。

誘われていたんだ、魂を掴むために。

この頭蓋骨に…寝たままだが、一応確認できる。

全身か、その骨が手掛かりなのかな。

 

 いで」

 

「だがなぁ…」

 

 ないで」

 

「………?」

私は頬に汗を流した

 

 いか…ないで」

 

この声は…

 

 …いかないで」

 

この……声は…。

 

「フラン…ドール」

意思なのか、魂なのか、姿がハッキリと見える。

幻想郷存在時と同じ姿のフランドール。

こちらへ寄りかかり、会話を始めた。

 

「妹紅…いかないで」

 

「この骨は!…フランドールのモノだった…」

だが…何故消えない、日光に掛かれば…

 

「遊びましょう、藤原妹紅。貴方が壊れるまで、ずっと。」

「生憎、私は死なないんだ」

「死ぬわよ」

ギュゥゥゥゥゥ

「あ"あ"あ"ぁ"ぁ"ぁ"ッッッッツツツツ!」

なんだ!これは…

魂が!!掴まれて…!!!

「全部私の仕業よ、もう一度、死にたい?」

「死ねるならな、死にたいよ」

「………ふーん。じゃぁ離して挙げる」

ひねくれたお嬢だな。

「ひねくれたお嬢、何て思ったでしょ?」

「………あぁ。」

「あんまり関わりは無いわね、私達は。」

「だな。」

「だから話すことも無い。さよう

「まっ待て待って、私は話したいこと聞きたいことが沢山ある!」

「フフッ…分かってるわよ。」

まずは…何故こんな所に…

「何故こんな所に、が最初の質問よね?」

「……」

「ほら、図星って顔。」

「ここはね、幻想郷崩壊後にたどり着いた。私は吸血鬼、幻想郷に居た頃は、日光自体驚異では無かった。でも、外の世界は別、人間の概念、幻想が全て私達にぶつかった。そして私達は…狩られた」

「「吸血鬼狩り」」

「これは…私自身が体験した、壮絶であり、少しさみしいお話。」

 

幻想郷崩壊後─。

ちなみに、お姉様は崩壊直後から行方不明中。

私は、ある老夫婦の家に匿って貰っていたの。

妻が幸子、夫が幸郎。

幸せを願った名前なんだって。

優しい老人よ、至って普通の。

今思えば、吸血鬼であることに気が付いてたと思う。

それでも匿ってくれた。

でも…一つの事件で全て変わった。

私が夜散歩に行っている最中、いつも使う通り道があるの、その半分辺りかしら?

妙な胸騒ぎがした。

急いで家に帰った時、玄関に若干、土の痕跡があったの、それに若い男の血の臭い。

その老夫婦は家へ押し入った強盗に殺されていた。

「!」

衝撃、それと同時に殺意が湧いた。

「なんだ!てめ

ギュッ

ドガァーン

 

「ねぇ妹紅」

「…」

「私はね、外に居るとき、血なんて吸えなかった、バレるから。でも、目の前には爆散した血肉。どうなるか分かるかしら?」

「食べ…た」

「そう、強盗を食い尽くしたの」

 

近所からの通報のせいか、警官が私の元へ来た。

当然、手には血肉、側には殺された老夫婦。

警官は私に銃口を向けた。

「そこを動くな、殺人鬼!!」

「違う、私じゃない強盗よ。」

私は一歩一歩警官に近付いた。

バァン

「警官からすれば至極当然、殺人犯が近付いたのだから。」

でも、拳銃程度の火力なら、効きはしない。

「クククッ………クフフフフハハハハハハハハ!」

でもね、何だか…色々可笑しくて可笑しくて。

もう老夫婦の事、強盗の事、全部がどうでも良くなって。

「破壊」

ギュッ

ドガァーン

私は逃亡した。

 

皆、私を追う。

お金の為かしら、善意じゃなく、私利私欲に走るそれが人間だから。

そして…私は国外へ逃亡を図ったの。

その頃には、幻想郷で着ていた服もボロボロになって…

私は破壊し続けた。

追ってくるモノ達、人間を軍を兵器を。

逃げて逃げて逃げ続けた。

立ち向かわない事に疑問を感じるでしょう?

私の能力があれば、と。

それは私も分からない、出来たのは自己防衛だけ。

長い年月を掛けて、永遠と逃げ続けた、そして……死に場所を見つけた。

 

「死に場所…?」

「私はね、寿命だったの」

「吸血鬼に?」

「あるわよ、寿命。魂と肉体が共同で生きているから。ねぇ妹紅もう一つ質問良いかしら。」

「…あぁ」

「姉妹というのは、血が繋がっていて、運命すら混合させる程、強い意思で繋がれているの。」

「レミリアの事を言っているんだよな?」

「上に居た亡霊、お姉様よ。」

「!」

「お姉様ーー出て来てーー」

ザッザッザッ

「フラン、妹紅はもう逃げない離して挙げて。」

「妹紅…本当?」

「あぁ…そうだな」

瞬間、重力が軽くなり、魂が解放された。

「上がっても良いだろ?」

「好きになさい。」

「フランドール、先に上がってくれ」

「はーい。」

亡霊が故、するすると上昇していく。

私も…爪を使おうか。

「ッッッッ…!!」

よし…

 

 

 

 

上がれたかな…?

「はぁ…疲れた」

「妹紅、フランから死に場所の話は聞いたかしら?」

「いいや、これからだ。」

「そう、なら続きを話すわね─

 

私達は、吸血鬼としての寿命が来ていた。

幻想郷が無事なら紅魔館で死ぬつもりだったの、でも…

 

「崩壊した…。と」

「えぇ。」

 

運命を見て知った部分もあったわ。

死に場所として相応しい所。

気付いたの、それはフランの側、姉らしく死ぬ事。

 

「私がここまで来た旅路も語るような事は無かったし、始めから語ることも無いのよね。」

「お姉様、私がここに行き着く事を知っていたの。」

「運命が導いたのか?」

「だと思う。お姉様、私の服も持ってたし。」

「可愛い妹が裸で死ぬ姿は見たくないでしょう?」

こうして…騒がしい姿を見ると何だか…昔に戻ったみたいだな。淡い気持ちになる。

「二人はこれからどうするんだ?」

「ここに残らないといけない、地縛霊に近い状態なの。」

「成る程。」

「お姉様、私眠い。」

フランの体に………何だ…彼岸花か?咲いてい

「そう…フラン。……ねぇ!妹紅、私達はね…ここにずっと居る。だから、また今度、来てくれるかしら?」

私とフランの間に割って入るようにして…

見せないようにしている?

「これは…姉妹としての精算なの、フランの罪は私の罪であって、私の罪はフランの罪、この世界に地獄、閻魔はいない。」

「レミリア…その体……フランも…彼岸

「さようなら、また会いましょう」

私は…一秒にも満たない瞬きをした。

目の前には……二本の彼岸花が…美しく、どこか悲しく…

姉妹のように咲いていた。




結局、穴の詳細は分からなかった。
姉妹という運命の共同体。
いつの日か、もう一度見れたら良いな。
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