ジャック VS ボマーの行間を書きました。

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5D's一挙配信ありがとう投稿です。
よろしくお願いします。




王の武者修行

 照りつける太陽。頬を撫でるそよ風。見渡す限りの荒野──ネオドミノシティから遠く離れた、ナスカにて見慣れた光景。

 その一角。数々の地上絵とその傍らに建てられた祭壇の前で1台の巨大なバイク──D・ホイールに跨った大男が、祭壇とその周囲を見やる。

 

(──異常はないな)

 

 普段と変わりない風景に安堵を覚え、ハンドルを緩やかに回してエンジンを轟かせる。

 一瞬の轟音と共にD・ホイールは静かに動き始め、向かい風に対してゆったりと進んでいく。

 

 かつて、この地より出でし神が世界を危機に陥れ、彼もその凶行に一端を担ってしまった。すれ違いがあったと言えど知己として親しくなった者らや、世界を破滅せんと行動したことは事実。元より責任感の強い彼は、自身の贖罪としてこのナスカの地にて監視者、そして神の力を利用せんとする悪しき者らから、この地を守るための守護者になることを自らの使命とした。

 

 幸い、かつての友らを招致してからナスカの地自体に異常は起きていない。しかし、どこから聞きつけたかこのナスカの地の神──【地縛神】の力を我が物にせんと企む輩は少なくはなかった。

 自身と同じ過ちを辿らせてなるものか。神の静かな眠りを妨げる者を許すなるものか。

 数年前に世界を救った英雄、不動遊星を追い詰めたこともある彼の力は疑いようがない。来たる侵入者は(ことごと)く返り討ちにし、神の眠りと、このナスカの安寧を一身に守護していた──

 

(……むっ)

 

 ──そんな中、遠方からD・ホイールの駆動音。

 それも一般のそれとは明らかに違う、極めて高出力なエンジンから放たれる音に警戒を抱く。

 

(また侵入者か)

 

 彼はすぐにD・ホイールをターン。やれやれと肩を竦めながら来たる者と相対するためにその巨体を走らせる。

 数十秒も走れば音の発生源たる者が数kmほど離れている姿を視認。

 汚れを許さぬ純白に染められ、搭乗者であるD・ホイーラーを覆うごと巨大な一輪でのみ走行する特異な形状のD・ホイール。

 

(あれは……)

 

 見覚え(・・・)のあるD・ホイールにハンドルを握る手が自然と動く。自身が繰るD・ホイールは速度を上げ、侵入者と相対──否、訪問者と会いたいがために無意識の内に加速していた。

 お互いにD・ホイールの全容はおろか、D・ホイーラーの姿までハッキリとわかるや否や、その場で停止。

 純白のD・ホイール──ホイール・オブ・フォーチュンのハンドルを上げ、青年が顔を上げる。

 

「久しぶりだな。ボマー」

「ジャック、壮健そうで何よりだ」

 

 大男──ボマーは喜色に満ちた笑顔を青年──ジャックへ向けた。

 不動遊星と同じく、友して親交のあるジャック・アトラス。【地縛神】の時は敵対してしまったが【紅蓮の悪魔】の騒ぎでは共に戦った仲だ。

 発端こそ紅蓮の悪魔のしもべによって仕向けられたが、その程度で揺らぐ絆ではない。

 ボマーは笑みで以てジャックを迎え──

 

「まさか貴方がここに来ようとは……幸い、今のナスカは平穏そのものだ。紅蓮の悪魔のような事件も起きていない──何故ジャックはここへ? シグナーとして何かあったのか? それとも【地縛神】関係で何か──」

「──知れたこと。オレとデュエルしろ、ボマー」

 

 ──ジャックは猛る炎のような眼差しで答える。

 

「デュエル? 構わないが……まさかそのためだけにナスカ(ここ)に?」

「そうだ。今のオレは武者修行の身。さらなる力を得るために各地を回っている」

「なるほど……だがジャック。貴方ほどの相手ならデュエル相手に困ることはなさそうだが?」

「生憎とそのデュエル相手に困ったからナスカ(ここ)に来たのだ」

「……そういうことか」

 

 デュエル。

 ただそれだけのために来たのかという問いに()で答えるジャック。

 苦笑しかけたボマーではあったが、ジャックの目を見て笑うことはできない。

 その目はまさしく、猛る炎。熱く滾る眼差しには確かな情熱、そしてその熱で渇き、飢えている。

 武者修行という言葉に偽りはなく、さらなる力を得るため──さらなる成長のため、それだけのためにナスカへとやってきたという、強い意志を宿った眼差しを見てボマーは理解した。

 

「ならばこれ以上の言葉は不要か……ジャック・アトラスに望まれるなら光栄だ。相手になろう、ジャック」

「感謝する」

 

 2人──2台は音もなく横に並ぶ。

 エンジンを吹かし、いつでもスタート可能──その状況で、ボマーは懐が黒い筒のようなものを取り出す。

 ディスプレイには数字が刻まれており、それを数度操作するとランダムな数字でカウントダウンが始まることをジャックに見せ、それを見たジャックはコクリと頷く。

 いつぞやの目覚まし時計を再び数度操作し、ボマーは画面を見ずに目覚まし時計を2台の間に放り投げた。

 完全にランダムなカウントダウンでのスタート。5秒後か、はたまた10秒後か。

 2人はスタートに備えてハンドルに手を回し、真剣な面持ちでその時を待ち──ピピピピピ、という電子音が響く。

 

「ライディングデュエル、アクセラレーションッ!!」

「ライディングデュエル、アクセラレーションッ!!」

 

 直後、2台のD・ホイールが轟音と共に加速。

 フォーチュン・カップ時代のままの性能であるボマーのD・ホイールとは違い、ジャックのホイール・オブ・フォーチュンはWRGPを経て性能は向上されている。

 当然、ホイール・オブ・フォーチュンが先行し第一コーナーの入口へと差し掛かり──減速。

 

「なっ──」

「先攻はくれてやる!」

 

 そのまま入れ替わるようにボマーの巨大なD・ホイールが第一コーナーへ侵入、そのまま競い争うこともなく労せずして先攻の権利を得る。

 

「何のつもりだジャック!?」

「言ったハズだ、武者修行だと! 先攻だろうと後攻だろうとオレは強く在る! そのために後攻を選んだまで!」

「何と傲慢な……! いや、これがジャックがジャック・アトラスたる自信か……!」

 

 有利な先攻を蹴って後攻を取った。

 デュエル──それもライディング・デュエルである以上は是が非でもマシンであるD・ホイールの性能、D・ホイーラーたるデュエリスト自身のライディング技術によって左右される。

 場合によってはD・ホイールの不調、デュエリストの不調、ないしは相手からのラフプレー等の要因があれば必ず先攻を取れる訳ではない。

 だからこそ後攻でも動ける──後攻からのデュエルでの修行のため、ジャックは後攻を選んだのだ。

 

 それを見て侮蔑するでもなく、ボマーはただ唸るのみ。

 ジャックの言わん、やらんとすることは理解できる。だが──

 

「ならば遠慮なく行かせてもらう! 私のターン、ドロー!」

 

 ──先攻を自分に譲ったことを後悔させてやる、という意思で勢いよくカードを引く。

 

「私は手札から≪トラップ・リアクター・RR≫を攻撃表示で召喚! さらにカードを2枚セットしてターンエンド!」

「攻撃表示だと……!?」

 

 モンスターの召喚と2枚のセットカードでターンを終えるボマー。

 ボマーのD・ホイールに追随するように深緑色の爆撃機である≪トラップ・リアクター・RR≫が飛行し800という攻撃力がデカデカと表示される。

 

(守備力が1800あるにも関わらず、800という低攻撃力を晒すプレイング……明らかにあの2枚のセットカードで攻撃を誘っている)

 

 決してボマーのプレイングミスではないという確信がジャックにあった。

 フォーチュン・カップでも龍亞を相手に終始圧倒し、遊星を相手にデステニードローがなければ勝っていたであろう緻密な戦略を披露したボマーは間違いなく強者。

 それをあんなにわかりやすい罠を構えるか、という疑問と、残っているボマーの3枚の手札に目を移す。

 

(……遊星の≪エフェクト・ヴェーラー≫やクロウの≪BF-月影のカルート≫のようなカードがあるか)

 

 セットした罠はブラフ。おそらくは手札から起動するカード効果で奇襲するだろうと予想し、ジャックはデッキトップへ指を伸ばす。

 

「オレのターン、ドロー! 手札から≪バイス・ドラゴン≫を特殊召喚! こいつは相手にのみモンスターが居る時、攻撃力と守備力を半分にすることで手札から特殊召喚できる!」

「レベル5のモンスター……! 来るか……!」

 

 お馴染みとも言えるジャック愛用の≪バイス・ドラゴン≫が場に姿を現す。

 召喚権を残しつつ強力なモンスターを呼ぶため、素材となるモンスターを場に出したのであれば次の一手も自ずと考えられる──

 

「オレは≪バイス・ドラゴン≫をリリースし、≪ストロング・ウィンド・ドラゴン≫をアドバンス召喚ッ!!」

「何ッ!! シンクロ召喚ではないだと!?」

 

 ──そう、アドバンス召喚のためのリリースである。

 

「ドラゴン族をリリースしてアドバンス召喚した≪ストロング・ウィンド・ドラゴン≫は、リリースしたドラゴン族の元々の攻撃力の半分を自身の攻撃力に加える! ≪バイス・ドラゴン≫の元々の攻撃力は2000! よってその半分の1000が加算され≪ストロング・ウィンド・ドラゴン≫の攻撃力は3400となる!」

「攻撃力3400だと!?」

「それだけではない! こいつは相手が守備表示の場合は相手に貫通ダメージを与えることもできる!」

「何というカードだ……!!」

 

 ジャックのエースモンスターを超える攻撃力の登場にボマーの目は見開く。

 ジャックを象徴するカードが出てくると思い込んでいたばかりに、完全に意を突かれてしまった──

 

「バトル! ≪ストロング・ウィンド・ドラゴン≫で≪トラップ・リアクター・RR≫に攻撃! ストロング・ハリケーン!!」

「甘いぞジャック! 私は2枚のセットカードを発動! ≪フェイク・エクスプロージョン・ペンタ≫! そして≪ガード・ブロック≫!!」

「何ッ!?」

 

 ──そしてそれはジャックも同様。

 

「≪ガード・ブロック≫の効果で私が受ける戦闘ダメージを0にし、1枚ドロー! そして≪フェイク・エクスプロージョン・ペンタ≫はモンスターをバトルから守り、手札・墓地から≪サモン・リアクター・AI≫を特殊召喚できる! 来い! ≪サモン・リアクター・AI≫!!」

「ちぃ……!!」

 

 ≪ストロング・ウィンド・ドラゴン≫が竜巻のようなブレスを放つも、不可視の壁によって≪トラップ・リアクター・RR≫は生存。さらに自らが放った竜巻の最奥からカーキ色の爆撃機≪サモン・リアクター・AI≫が発進。

 ボマーの場のモンスターを葬れなかったばかりか、逆にモンスターを増やし、さらに手札まで補充させてしまう結果となったことにジャックの顔が僅かに歪む。

 

「私の裏を読んでいたようだが──甘いぞジャック! さらにその裏を読むべきだったな!」

「裏の裏……表を読めという訳か。小賢しい真似を……! オレはカードを1枚セットしてターンエンドだ!」

「私のターン!」

 

 ドローカードを一瞥し、ボマーの口角が僅かに上がる。

 ジャックの場には攻撃力3400を誇る≪ストロング・ウィンド・ドラゴン≫が1体と、セットカード1枚。そして手札は3枚。

 対してボマー自身の場には≪サモン・リアクター・AI≫、≪トラップ・リアクター・RR≫の2体のみで、手札には2体(・・)の目当てのカード。

 このまま理想的な展開こそできるが、懸念事項としてはジャックのセットカード。あれらが何かしらの手段で妨害をしてくれば理想的な展開はできない──

 

(ジャックは力を──パワーを最大限に活かしたデッキ! ならばあのセットカードは相手モンスターを除去するカードではない!)

 

 ──が、そこはキング時代からジャックを何度も見てきたボマー。

 決して的外れではない根拠を胸に、手札の1枚をデュエルディスクへ叩きつける。

 

「私は≪マジック・リアクター・AID≫を通常召喚!」

「来るか……!!」

「≪サモン・リアクター・AI≫のモンスター効果発動! 場の≪サモン・リアクター・AI≫、≪トラップ・リアクター・RR≫、≪マジック・リアクター・AID≫を墓地に送り、デッキ・手札・墓地からこのモンスターを特殊召喚する! 現れよ──」

 

 3体目の爆撃機≪マジック・リアクター・AID≫の出現と同時に≪サモン・リアクター・AI≫の体が鈍く輝く。3体の爆撃機──AI・RR・AID(エアレイド)が墓地へと送られ、ボマーのデッキからシャコン、と1枚のカードが選ばれる。ボマーはそのカードを一瞥し、微笑を浮かべながらデュエルディスクへと差し込む。

 

「──≪ジャイアント・ボマー・エアレイド≫!!」

「来たなボマーのエースモンスター……!!」

 

 3体の爆撃機が合体した巨大重爆撃機≪ジャイアント・ボマー・エアレイド≫がフィールドという名の作戦エリアへ到着した。

 

「手札を1枚墓地へ送り≪ジャイアント・ボマー・エアレイド≫の効果発動! ≪ストロング・ウィンド・ドラゴン≫を破壊する! デス・ドロップ!!」

「罠発動! ≪亜空間物質転送装置≫! ≪ストロング・ウィンド・ドラゴン≫をエンドフェイズまで除外する!」

「避けただと!?」

「フン、オレは常に相手の一歩先を読んで──ぬぉっ!?」

 

 ボマーの手札からある(・・)モンスターカードが墓地へ送られ≪ジャイアント・ボマー・エアレイド≫が動き出す。ジャックのフィールドの直上と移動し、下部に備えられた爆弾をロックを解除。3つの爆弾が≪ストロング・ウィンド・ドラゴン≫へと降り注ぐ──その寸前に≪亜空間物質転送装置≫により≪ストロング・ウィンド・ドラゴン≫は次元の彼方へ。何もない大地だけを爆撃し、巨大な爆発と爆風がジャックを襲う。

 そのあまりの衝撃とサーキットのような整備されていない荒野でD・ホイールの姿勢を維持することは困難。ジャックはしたり顔を崩しつつも、慌ててホイール・オブ・フォーチュンの姿勢を立て直す。

 

「だがこれで壁となるモンスターは消えた! ≪ジャイアント・ボマー・エアレイド≫! ジャックへダイレクトアタックだ!!」

「舐めるなァ! 直接攻撃宣言時、手札から≪バトルフェーダー≫の効果を発動! このカードを特殊召喚しバトルフェイズを終了させる!」

「これも避けた!?」

「フン、オレほどになれば相手の一歩先はおろか、二歩先を読むことも造作では──ぬぁっ!?」

 

 直接攻撃を防ぐジャック。しかし寸前まで超巨体の≪ジャイアント・ボマー・エアレイド≫が迫っていたこともあり、サーキットのような壁面がない荒野ではその暴風も直撃してしまう。再びホイール・オブ・フォーチュンの姿勢と、したり顔を崩しつつも立て直す。

 

「どうやら無駄に手札を消費しただけで終わったようだなボマー! いくら≪ジャイアント・ボマー・エアレイド≫の効果が強力であろうと、その効果を連続して使うには厳しかろう!」

「それはどうかな? 私はライフポイントを500払い、墓地の≪ヴォルカニック・バレット≫の効果を発動! デッキから≪ヴォルカニック・バレット≫を手札に加える!」

「なっ──!?」

「甘く見てもらっては困るぞジャック──貴方や遊星が成長しているように私も成長しているのだ!!」

 

 伊達や酔狂でナスカの地に居る訳ではない、とばかりに2枚だったボマーの手札が3枚に増える。1枚は≪ヴォルカニック・バレット≫だとしても、これで次のターン、さらにその次のターンは手札の消費と種類を気にせず≪ジャイアント・ボマー・エアレイド≫の効果を使用可能。

 手札消費が激しい≪ジャイアント・ボマー・エアレイド≫の欠点を補う戦術にジャックの目が見開く。

 

「私はカードを1枚セットしてターンエンド! さぁどうしたジャック! 武者修行がこの程度ではあるまい!」

「当然だ! エンドフェイズに≪ストロング・ウィンド・ドラゴン≫が帰還し──オレのターン!!」

 

 ドローカードを一見し、ジャックは1秒に満たない時間で思考を巡らせる。

 手札のカード、場の≪ジャイアント・ボマー・エアレイド≫、そしてそれを繰るボマーの思考──それらの要素全てを複雑に絡め合わせ、本能的に手札から1枚のカードに指をかけた。

 

「オレは手札からカードをセット!」

「──っ、私は≪ジャイアント・ボマー・エアレイド≫の効果発動! 相手ターンに1度、相手が召喚行動、またはセットした時、そのカードを破壊し800ポイントのダメージを与える! シャープ・シューティング!!」

「ぐぅっ!!」

 

 ジャックがセットした罠カードは即座に≪ジャイアント・ボマー・エアレイド≫の機銃によって撃ち抜かれ、蜂の巣のようになってから消えていく。

 同時に無傷であったライフポイントも4000から3200へと削られ、決して無視できないダメージがジャックを襲う。

 

「召喚前にカードをセットして本命を残そうとしても無駄だ! 私にそのような小細工は通用しない!」

「いいや通用したようだな! オレは破壊された罠カード≪運命の発掘≫の効果発動! 場のこいつが相手によって破壊された場合、墓地の≪運命の発掘≫分ドローできる!」

「破壊されて効果を発動するカードだとっ!?」

 

 かつてフォーチュン・カップで遊星との読み合いを制したボマーにとってこの結果は驚愕。ブラフだったばかりか相手にドローまでさせてしまったことに口元が歪む。

 

「フン、このジャック・アトラスであれば相手を利用してその先を行くのも当然! オレは手札からチューナーモンスター≪アタック・ゲイナー≫を召喚!」

「そのカードは……!!」

「見るがいい!! ジャック・アトラスの、相手の三歩先を行くデュエルを!!」

 

 ブォン、とハンドルを回して加速するジャック。一瞬にしてボマーを抜き去り、そのまま慣性の法則に従ったままホイール・オブ・フォーチュンを反転。ボマーと相対するようにバック走行で走り続ける。

 

「オレはレベル1の≪バトルフェーダー≫とレベル6の≪ストロング・ウィンド・ドラゴン≫にレベル1の≪アタック・ゲイナー≫をチューニング! 王者の鼓動、今ここに列を成す! 天地鳴動の力を見るがいい!」

 

 場に現れた≪アタック・ゲイナー≫が緑色の輪となり≪バトルフェーダー≫と≪ストロング・ウィンド・ドラゴン≫が白色の星となってその中へ。白星が矢の如く一直線に並んだ瞬間、ジャックのフィールドに激しい閃光が包み込む。

 

「シンクロ召喚! 我が魂≪レッド・デーモンズ・ドラゴン≫!!」

 

 閃光と共に現るはジャック・アトラスの象徴──≪レッド・デーモンズ・ドラゴン≫。紅蓮の魔竜が翼を広げると、纏っていた渇望の炎が四散し明確にその姿を晒す。

 

「シンクロ素材となった≪アタック・ゲイナー≫の効果発動! このターン相手モンスターの攻撃力を1000ポイント下げる!」

「≪ジャイアント・ボマー・エアレイド≫の攻撃力が……!!」

 

 ≪ジャイアント・ボマー・エアレイド≫も≪レッド・デーモンズ・ドラゴン≫も元々の攻撃力は同じ3000。

 それを一方的に下げられ並の上級モンスター程度の攻撃力となった≪ジャイアント・ボマー・エアレイド≫が≪レッド・デーモンズ・ドラゴン≫に勝てる道理はない。

 

「バトル! ≪レッド・デーモンズ・ドラゴン≫で≪ジャイアント・ボマー・エアレイド≫に攻撃! アブソリュート・パワーフォースッ!!」

 

 ≪レッド・デーモンズ・ドラゴン≫は右手に炎を宿し、最速最短一直線に≪ジャイアント・ボマー・エアレイド≫へ強襲。燃え盛る炎に包まれた掌底を渾身の力で≪ジャイアント・ボマー・エアレイド≫へと叩き込む。

 

「ぐぁあああぁぁっ!!」

 

 3000対2000の攻撃力差1000ポイントがボマーのライフポイントから引かれ、前のターンで≪ヴォルカニック・バレット≫の効果で500ポイント支払っていたことも重なり残りライフポイントは2500。

 

「どうだボマー!! これでお前のエース≪ジャイアント・ボマー・エアレイド≫は粉砕したぞ!!」

「流石だと言いたいが──甘いぞジャック!! 私は永続罠≪ディメンション・ガーディアン≫を発動していた!!」

「何だと!?」

「このカードがある限り≪ジャイアント・ボマー・エアレイド≫は戦闘はおろか、効果でも破壊されない!!」

「味な真似を……!」

 

 ≪レッド・デーモンズ・ドラゴン≫のアブソリュート・パワーフォースを受けてなお立ち続ける≪ジャイアント・ボマー・エアレイド≫。ボマーが使用した≪ディメンション・ガーディアン≫の名の通り、ボマーの──この地の守護者としてジャックと≪レッド・デーモンズ・ドラゴン≫の前へ立ちはだかる。

 

「オレはカードを2枚セットしてターンエンドだ!!」

「≪アタック・ゲイナー≫の効果は終了し≪ジャイアント・ボマー・エアレイド≫の攻撃力は元に戻る!」

 

 ジャックは残っていた2枚の手札を全てセットしターンを終える。

 場には自身の象徴にして魂の≪レッド・デーモンズ・ドラゴン≫。セットカードは2枚。

 ジャックの手札は全て使い0枚となり、ライフポイントこそ未だ3200()残っている。

 

 対してボマーの場には戦闘でも効果でも破壊されない≪ジャイアント・ボマー・エアレイド≫。

 そしてその≪ジャイアント・ボマー・エアレイド≫に付与している≪ディメンション・ガーディアン≫。

 ボマーの手札は2枚だけだがドローカードと墓地の≪ヴォルカニック・バレット≫の効果を使えば一気に倍の4枚にまで増える。

 

(流石はボマー)

 

 内2枚は≪ヴォルカニック・バレット≫のため実質手札コスト専用だが、逆に言えば重い手札コスト系のカードも気兼ねなく使えるようになったようなもの。

 僅か1種のカードを追加しただけで戦術の安定性はもちろん、強力な効果を持つ罠も採用圏内に入り、警戒せざるを得なくなった。

 今でこそこのナスカの地に居るが再びデュエルの表舞台に出ることがあれば、強力なライバルになっていたことは想像に難くない。

 

(感謝するぞ──それでこそ、このオレの武者修行の相手に相応しい……!)

 

 そんなボマーに対し、ジャックは内心で賛辞と感謝を述べた。

 

「私のターン! 私は≪ジャイアント・ボマー・エアレイド≫の効果を発動! 手札の≪ヴォルカニック・バレット≫を墓地へ送り≪レッド・デーモンズ・ドラゴン≫を破壊する!」

「永続罠≪デモンズ・チェーン≫を発動! このカードがある限り≪ジャイアント・ボマー・エアレイド≫の効果と攻撃は封じられる!!」

「くぅっ……!!」

 

 ターンを返されたボマーはすぐさま≪ジャイアント・ボマー・エアレイド≫の効果を使うも、相手はあのジャック・アトラス。

 そう簡単に破壊できるハズもなく、それどころか≪デモンズ・チェーン≫によって効果はおろか攻撃までも封じられている状況。

 

「私は墓地の≪ヴォルカニック・バレット≫の効果を発動! ライフポイントを500支払い、デッキから3枚目の≪ヴォルカニック・バレット≫を手札に加える!」

「フン、最早≪ジャイアント・ボマー・エアレイド≫のコストにもなり得ないカードを手札に加えて何になる?」

「こうするまで! 手札から≪Sp-(スピードスペル)エンジェル・バトン≫を発動! SC(スピードカウンター)が2つ以上ある時、デッキから2枚ドローして1枚墓地へ送る! 私は≪ヴォルカニック・バレット≫を墓地へ!」

「ちぃ……!」

 

 だがボマーとて≪ジャイアント・ボマー・エアレイド≫一辺倒のデュエリストではない。すぐさま次善の策へと移行し、手札で燻ぶった≪ヴォルカニック・バレット≫を利用して手札を入れ替え──口角が上がる。

 

「手札から≪Sp-(スピードスペル)ソニック・バスター≫を発動! SC(スピードカウンター)が4つ以上ある時、自分モンスター1体の攻撃力の半分のダメージを与える! ≪ジャイアント・ボマー・エアレイド≫の攻撃力の半分、1500のダメージを受けよ!」

「ぐぅ……!!」

 

 ≪ジャイアント・ボマー・エアレイド≫越しに高火力カード。ジャックのライフポイントが3200から一気に1700まで減少し──

 

「さらに≪Sp-(スピードスペル)スピード・ストーム≫を発動! SC(スピードカウンター)が3つ以上ある時、相手に1000ポイントのダメージを与える!」

「ぐおぉっ!?」

 

 ──火力の連打。ライフポイントは1700から700へと減り≪スピード・ワールド2≫のSC(スピードカウンター)を4つ取り除いた時の効果による射程圏内。さらにボマーの手札まだ1枚残っており、そのカードが【Sp-(スピードスペル)】だった場合、無情にもジャックの敗北は確定したも同然。

 ボマーは最後の手札を指にかけ──デュエルディスクへと差し込む。

 

「私は手札から──チューナーモンスター≪ブラック・ボンバー≫を召喚!」

「ここで、チューナーモンスターだと!?」

 

 ボマーの手札から繰り出されたカードはモンスターカード──しかし、そのカードはフォーチュン・カップにて鮮烈な印象を残したカード。

 

「≪ブラック・ボンバー≫の効果発動! 召喚成功時、墓地から機械族・闇属性・レベル4モンスターを効果を無効にして復活させる! 来い≪トラップ・リアクター・RR≫!!」

「その組み合わせは……!」

「そうだジャック! シンクロ召喚は貴方と遊星の専売特許ではない! レベル4の≪トラップ・リアクター・RR≫にレベル3の≪ブラック・ボンバー≫をチューニング! 我が身に眠る、鉄血の翼! 黒き暴風となりて、全ての敵を打ち払わん!」

 

 ≪トラップ・リアクター・RR≫と≪ブラック・ボンバー≫がその身を星へと転じる。ガイドビーコンの如く一直線に星が並び──閃光。

 

「シンクロ召喚! 現れろ≪ダーク・ダイブ・ボンバー≫!!」

 

 閃光の中から顕現するは山吹色の爆撃機──≪ダーク・ダイブ・ボンバー≫。フォーチュン・カップではその高いステータスで遊星を苦しめ、その凶悪な効果で焦燥させたボマーの影のエース。

 

「通常は800ポイント以下が≪スピード・ワールド2≫のセーフティラインだが、私は違うぞジャック! ライフポイントが1400以下になり≪ダーク・ダイブ・ボンバー≫の召喚を許した時点で私の勝利は確定する!」

「それはどうだろうな! オレは罠カード≪デモンズ・ゴーレム≫を発動! フィールドの攻撃力2000以上のモンスター1体を次のターンのエンドフェイズまで除外する!!」

「なッ──!?」

 

 出撃した≪ダーク・ダイブ・ボンバー≫は一瞬にしてその姿を次元の彼方へ。例え≪ダーク・ダイブ・ボンバー≫の召喚を許しても、その効果さえ発動できなければ意味がない。

 

「流石はジャックだ……! だが次のターンのエンドフェイズに戻ってくるのならば私のターンには≪ダーク・ダイブ・ボンバー≫は存在する! そこで自身をコストに効果を使えれば私の勝ちとなる上、墓地の≪Sp-(スピードスペル)スピード・ストーム≫はSC(スピードカウンター)を3つ取り除いて墓地から回収できる! 今のSC(スピードカウンター)の数は4! ジャック、貴方が≪ダーク・ダイブ・ボンバー≫と≪Sp-(スピードスペル)スピード・ストーム≫を攻略できなければ負けだ!! 私はこれでターンエンド!!」

 

 ボマーの場には効果を無効にされ攻撃もできないが、戦闘と効果では破壊されない≪ジャイアント・ボマー・エアレイド≫1体。

 そしてその≪ジャイアント・ボマー・エアレイド≫に効果を付与している≪ディメンション・ガーディアン≫1枚。

 

 対してジャックの場には≪レッド・デーモンズ・ドラゴン≫1体と≪ジャイアント・ボマー・エアレイド≫を拘束している≪デモンズ・チェーン≫のみ。

 

 お互いに手札は0枚──このトップ勝負で起死回生の一手を打てなければジャックに勝機はない。

 まるでWRGPでの試合のように高まる緊張感の中、ジャックは己が右腕を見る──

 

(まだだ──)

 

 ──昂る熱。

 

(まだ、終わってはいない──)

 

 ──猛る炎。

 

(まだ、遊星(アイツ)に勝つまでは……!!)

 

 ──叫ぶ魂。

 

「オレの──タァーンッ!!」

 

 熱く猛る炎の如き魂が右腕に宿る。渾身の力でドローしたカードをめくり──ジャックの口角が上がる。

 

「オレは手札からチューナーモンスター≪チェーン・リゾネーター≫を召喚! フィールドにシンクロモンスターが存在している状態でこいつが召喚に成功した時、デッキから【リゾネーター】モンスター1体を喚び出す! 来い≪ダーク・リゾネーター≫!!」

「なッ──この状況で、チューナー2体を呼び出しただとぉ!?」

「行くぞボマー! オレはレベル8≪レッド・デーモンズ・ドラゴン≫にレベル3≪ダーク・リゾネーター≫とレベル1≪チェーン・リゾネーター≫をダブルチューニング! 王者と悪魔、今ここに交わる! 荒ぶる魂よ、天地創造の叫びをあげよ!」

 

 ≪レッド・デーモンズ・ドラゴン≫を緑色のリング──ではなく、赤く燃え滾る4つのリングが囲う。紅蓮の劫火に包まれた≪レッド・デーモンズ・ドラゴン≫はその炎を我が物として姿を変化させていく。

 元の黒と赤の体色が紅の一色へ──瞬間、閃光と同時に花火の如く炎が弾け飛ぶ。

 

「シンクロ召喚! 出でよ! ≪スカーレッド・ノヴァ・ドラゴン≫!!」

 

 現れ出でるは熱き魂の炎──バーニング・ソウルを宿した紅蓮竜≪スカーレッド・ノヴァ・ドラゴン≫。

 

「この、カードは……!!」

「≪スカーレッド・ノヴァ・ドラゴン≫の効果! このカードは自分墓地のチューナーの数かける500ポイント攻撃力がアップする! オレの墓地にチューナーは3体! よって攻撃力は1500アップし──その攻撃力は5000となる!!」

「攻撃力5000だとぉ!?」

 

 対峙する≪スカーレッド・ノヴァ・ドラゴン≫を前にボマーは歯軋りを抑えられなかった。

 もしも最後の手札がSp(スピードスペル)だったなら。

 もしも≪ダーク・ダイブ・ボンバー≫の効果が通っていれば。

 もしもジャックが≪チェーン・リゾネーター≫をドローしなければ。

 もしも≪ジャイアント・ボマー・エアレイド≫を守備表示に変更していれば。

 

 様々なもしもばかり考えてしまうが、あくまでも結果論。

 互いのドロー力の結果が今の状況であり、序盤にジャックが≪ストロング・ウィンド・ドラゴン≫を出したがために貫通ダメージを恐れて守備表示にはできなかった。

 序盤の攻防。中盤での破壊力。終盤における詰め。これが今のキング──ジャック・アトラスのデュエル。

 

「バトルだ! ≪スカーレッド・ノヴァ・ドラゴン≫で≪ジャイアント・ボマー・エアレイド≫に攻撃!! バーニング・ソウル!!」

 

 攻撃命令を受けた≪スカーレッド・ノヴァ・ドラゴン≫は飛翔。高高度まで上昇したかと思えば、そのまま急降下。重力と自身の推力を加算させ≪ジャイアント・ボマー・エアレイド≫を直上から襲う。

 せめてもの抵抗か≪ジャイアント・ボマー・エアレイド≫は片腕で防御を取ろうとするが──

 

「今の貴様のライフポイントは2000! ≪スカーレッド・ノヴァ・ドラゴン≫の攻撃力5000と≪ジャイアント・ボマー・エアレイド≫の攻撃力3000、その差2000のダメージを食らうがいい!!」

「ぐぉおおおおおぉぉぉっ!!」

 

 魂の一撃が破壊されない≪ジャイアント・ボマー・エアレイド≫越しにボマーへと襲い掛かる。

 2000もあったライフポイントは一気に0を示し、同時に自身のD・ホイールも機能を停止した。

 

 互いのソリッドビジョンも全て消え、デュエルが完全に終了したことを告げる。

 敗北したボマーは悔しさこそあったが、同時に圧倒的な力を見せたジャックに畏敬の念さえ覚えるほど。

 

 停止したボマーのD・ホイールの脇をジャックのホイール・オブ・フォーチュンがクールダウンするかのようにゆったりと通る。

 

「まさか貴方のデュエルがここまで進化していようとは……」

 

 ボマーの言に対し、ジャックは何を言うでもなく前を見据える。

 そしてまるで用は済んだ、とばかりにホイール・オブ・フォーチュンが加速していく。

 

(……なるほど)

 

 その様子を見てボマーは納得したように目を閉じた。

 ジャックはおそらく次の相手を探しに行くのだろう。

 その相手はかつての友か、はたまたWRGPで鎬を削った相手か。

 どちらにせよ、ジャックは止まることなく、そのまま走り去っていった。

 

「全く……礼の一つぐらいはあっても──ん?」

 

 つい愚痴ってしまったが、ふとジャックの通り過ぎた後に1通の封筒が落ちていることに気付いたボマー。

 はて、と差出人を見るとそこには達筆な字でジャック・アトラスの名義。

 封を開けてみると中にはとあるプロリーグの年間観戦パスが3つ。

 ボマーと弟のマックス、妹のアニーの分だろうと察しはついた。

 

「全く……礼にしては随分と豪勢なものだ……」

 

 苦笑しつつもボマーはその年間パスが入った封筒を懐に入れると、帰路へ。

 ジャックとデュエルした──ことを言ってしまうとマックスが拗ねるので、急ぎのジャックがこの年間パスだけくれたことを伝えようと、言い訳を考えながらD・ホイールを走らせていった──





可能な限り当時のカードプールにしたかったのですが構成上、数枚だけ新しめのカードを使わざるを得なくなってしまった非力な私を許してくれ(サルガッソの灯台を墓地に送りながら)

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