不思議不思議! ねえなんで忙しいの!?
そういうわけでオリジンその2です。テーマソングは日常系のほんわかする感じの曲をいっぱい聞いて出水家や海原くんのささやかな交流や日常を脳内でゴリゴリに補完しておいて下さい
※追記
以前に1年生の雄英体育祭時点で彼女がいるという描写がありましたが誤りです!
最新話の方が正しいものとして認識してください!
申し訳ありません!
該当の部分は修正済ですが漏れがありましたらご報告、質問等はお気軽にどうぞ
パトロールも兼ねているためお迎えもヒーロー活動の一環ということで、潜水服をスタイリッシュにしつらえたようなヒーローコスチュームに着替えた流汰さんと並んで歩く。
オレのコスチュームは青を基調とした、軍人の戦闘服をところどころヒーロー風にアレンジしたもので、戦いに備えて至る所に水が入ったボトルが至る部位に装備されている。
街を行く人たちは流汰さんのことは見慣れているようで気さくに挨拶していた。写真を撮られたり握手やサインは求められていないが、街に溶け込んでいる様は地域に密着したヒーローという雰囲気だ。
「海原くん……ネイビスはどうしてウチなんかに? もっといいところから指名あったでしょ」
「水難事故で活躍する上位ヒーローから結構来たんですけどね、水を操る個性のヒーローってあまり多くなかったんですよ。最近個性が伸び悩んでいて、先達から何かヒントを得ようと思ってたんです」
「それでウチか。……俺の個性全然目立たないよ?」
ウォーターホースの個性は“水鉄砲”で文字通り水を勢いよく放つ個性だ。
決して戦闘向きではないが、騒ぐ犯罪者を放水で怪我させずに制圧したり、火事で消火活動ができたりと、ヒーロー向きの個性ではあった。
とはいえ流汰さんの言葉通り、世間受けするド派手なものではない。
「ボクも似たようなもんです。水を操ることができる個性やけど、水がないと使えないというのが難点やね」
「そのわりに体育祭すごかったけど……」
「まー、学生相手なら500mlの水で充分ですから」
「海原くんも学生でしょ」
「それもそうでしたわ」
とはいえ、原作のメンバーやプロヒーローと比べて、同期の面々はぶっちゃけ戦闘に限ればオレを倒せるレベルにあるやつはいない。
彼らが低レベルというわけではなく、原作の1年A組が優秀なだけだ。
大通りの傍に設けられたありきたりな公園で流汰さんは足を止める。
「ここの公園でいつも落ち合うんだけど……あ、いたいた。おーい洸汰!」
「パパ……! ただいま!」
「おかえり洸汰! 今日も異常なしか?」
「うん、異常なし!」
「よし、じゃあ一緒にパトロールして帰宅だ!」
「うん!」
流汰さんと水面さんの子供の名前は洸汰という。
ブランコから飛び降りて流汰さんに嬉しそうに飛びつくと、そのまま肩車してもらっていた。
「こんにちは洸汰くん。ボクはお父さんのところでお世話んなる、海原大海や。よろしゅう」
「あ……うぅ」
「おいおい洸汰恥ずかしがるなよー! ちゃんと挨拶しないとママがブチギレるぞー?」
「そんなに?」
「出水洸汰ですよろしくお願いします!」
「そんなに」
肩車されたまま頭を下げる洸汰。
人見知りの雰囲気を醸していたのに、母の名前を出されるとでかい声を出すあたり、家庭内における力関係が垣間見える。
「海原兄ちゃんはな、雄英体育祭優勝してんだぜ! 将来有望、オールマイトにも勝っちゃうヒーローになるかもよ?」
「へぇー……! すっげえ……」
「ハードルあまり上げんといてください。しばらく洸汰クンのパパとママにお世話になる予定や。よろしゅう」
「う……うん」
洸汰の表情がしょんぼりとしたように見えた。
何故、と思うより先に流汰さんの「今夜はハンバーグカレーだ! チーズもあるッ」の言葉に目を輝かせてその表情は消えてしまった。
余計なことばかりに気を回しても仕方がない。
オレはお世話になる立場の人間で余計なお世話を焼く人間ではないのだ。少なくとも一瞬の顔色の変化に突っ込めるほど彼のことを知らない人間ができることなどタカが知れている。
親子の談笑に時々混じりながら、平和な街並みの帰路に就いた。
インターン中はウォーターホースヒーロー事務所の空き部屋で寝泊りさせてもらうことになり、夕食までご相伴に預かった。
父の流汰さんと、母の水面さんと、子供の洸汰。
そこに混じる学生のオレというのはなんだかソワソワしてしまう気持ちがあったが、夕食のハンバーグカレーを食べながら学生生活のことを話し、流行りのゲームを洸汰から聞き、流汰さんや水面さんの学生時代のエピソードで笑っているうちに、すっかり馴染んでいた。
翌日は流汰さんについてヒーロー活動を共にすることとなった。
「いつもだいたい朝8時くらいからトレーニングして、9時から始業って感じ。ヒーローは個性も大事だけど体力仕事だから、フィジカル大事だよ。海原くんも個性にかまけて……は釈迦に説法か。その肉体を見ればわかるよ」
事務所に用意されたウェイトマシンなどが置かれたトレーニングルームで二人向かい合う。
互いにトレーニングウェアなのもあって筋肉質な体格がよくわかる。
流汰さんが鍛えられているのは当然として、彼はオレの肉体や筋肉を見て頷いていた。
「さっそくだけど君の実力を見せてもらおう!」
「模擬戦ですか?」
「おう、どこからでも打ち――あっっっっぶな!!??」
「え、まだでした?」
身構えた流汰さんに先手必勝とばかりに様子見のハイキックをかましたが彼の顎先をかすめた。
顎をさすりながら流汰さんは両手を広げて顔を左右に振った。
「打ち込んで来いと言いたいけど、多分俺ボコボコにされるから別の訓練をしようと言いたかったんだけど!」
「ああ、すんません……」
「海原くん、真面目そうに見えて結構
こと戦闘についてはがっつり鍛えてきたのと、昨日のヴィランとの戦いで戦闘の空気というか、カンのようなものを掴んだからか、ますます体のキレが増している気もして、つい気が逸ってしまった。
個性が個性なので水が無い場合の戦う手段として徒手空拳での戦闘を相澤先生をはじめとした雄英のプロヒーローたち相手に鍛えたため、下手な増強系個性や異形型個性の持ち主よりは戦えるつもりだ。
「とりあえずあそこに的があるだろ? あれを個性で撃ち抜いてみてくれ」
「個性……どんな方法でも?」
「いいよ!」
「ほな……いくで」
飲み物として用意しておいたミネラルウォーターが入ったペットボトルの蓋を開ける。
水が宙に浮き、ぎゅっと圧縮、そして射出方向を的に定めた。
ヒーローに必殺技はなくてはならないもの、なので敢えて技名を呼ぼう。
「“
圧力に指向性を与えて放たれた水が的へ飛び、撃ち抜くというよりは切り裂いた。
この技の魅力は相手が生物なら大抵は貫ける高い攻撃力。ちなみに弱点は生物なら大抵は貫いてしまうこと。
つまりヴィラン相手に使えないのである。
ぼとりと落ちた的を見て、流汰さんは呻くように歓声をあげた。
「すごい威力だな……これは水を圧縮して放ったのか?」
「そうですね。水を限界まで圧縮して放つ――まぁウォーターカッターの要領ですわ」
「言うは易し、俺たぶんできないなぁ」
「流汰さんの個性は水鉄砲でしたっけ」
「そう。水流を敵にぶつける……出口を狭めて威力や飛距離をあげたことはあるけどここまでは……どうやるのか教えて?」
「えぇ、ボクですか? プロヒーロー相手に学生が?」
「いいものは学生だろうと教わる! その技術がいつか誰かを助けるかもしれないからね」
屈託ない笑顔を浮かべる流汰さん。
オレはその笑顔につられて笑い、彼に僭越ながら水の圧縮、溜めて放つ技術を教えることとなった。
午後は水面さんと一緒にパトロールをすることに。
昼過ぎから夕方にかけて街を歩く。
街並みをヒーローコスチュームで歩いても特別注目はされないが挨拶はされる。雄英体育祭でオレのことは知れ渡っているから、むしろヒーローコスチュームより制服姿のほうが人が集まってくるくらいだ。
「ヒーローになってパトロールする気分はどう?」
「ボクは職業体験で経験しとるんで、そこまで……」
「あぁ、雄英はそれもあるのね……私はインターンのときが初めてのヒーロー活動だったからすごい新鮮だったよ。高校によってカリキュラムが違うのね」
「どうでした、インターンは?」
「うーん……やっぱり見るものすべてが輝いて見えたかな。そしてめっちゃ肩に力が入って、道行く人が全員ヴィランに見えた。なんとしても事件解決してやろう、って」
水面さんはくすくすと笑った。彼女のヒーローコスチュームは流汰さん、ウォーターホースと似たようなバイザーヘルメット付きのスーツだった。シュノーケルを模したアイテムが水にかかわるヒーローの象徴になっている。
「今はとにかく何も起きないことを毎日願っているかなー」
「平和が一番やからね」
「それもそうだけど、仕事が増えるからね!」
それは確かに納得だ。
ビルの隙間から差し込む夕陽に、眩しそうに水面さんは手をかざした。
「夫婦でヒーローやっていると、家庭のことが疎かになりがちというか……洸汰にあまり構ってあげられなくなっちゃうんじゃないかな、と思うことがよくあるんだよね。
ヒーロー活動を言い訳に使わないつもりだし、仕事も家庭も全力でやっているつもりだけど、洸汰は我慢してるところも絶対あると思うから……」
「やっぱり大変なんですね。家庭かー」
「海原くんもヒーローやるなら覚悟した方がいいよ。奥さんが一般人だとヒーロー活動が原因で離婚するパターンもよくあるし……海原くんは彼女いるの?」
「まだおらんです」
「えー、イケメンだし雄英体育祭優勝者だしモテモテなんじゃない?」
めっちゃモテる。が、別に今更この世界で誰かに好かれようとどうでもいいので、愛想笑いを浮かべた。
「ん、ちょっと待って、通信が……海原くん!」
「事件ですか」
「浦形町三丁目の国道の交差点で交通事故が発生、要救助者複数と車両が炎上しているという通報が入った! すぐに行くよ!」
「了解」
水面さんは表情を凛々しいものに切り替えて走り出す。
オレはそのあとを走った。
事故は幸い死者は出なかった。途中で流汰さんも合流し三人で救助活動にあたった。
炎上する車両に流汰さんと水面さんが放水して消火し、余った水をオレが操作して車両の中から閉じ込められた人を救助するなど、解決することができた。
警察と救急、消防に引継ぎを終わらせたところで水面さんがふいに何かに気づく。
「ねえパパ……洸汰のお迎えは?」
「えっ、水面が行ったんじゃないの?」
「ええぇー!? もう、ちょっと! さっき通信のときに確認したら大丈夫だって言ったでしょ!?」
「あれは洸汰が無事かどうかってことだろ!? あの聞き方じゃわからねえよ!」
そこから喧々諤々と、オレが想像する夫婦喧嘩の有様を見せられた。
どっちが迎えに行く、私が行くからいい、いや俺が行くから夕飯を、夕飯作れってこの状態から作れと、と事故より派手に燃え上がっている。
「……今すぐボク、迎えに行きましょうか?」
「えっ、マジで? 助かる!」
「いいわよ海原くんにそんなことさせられないわよ! あんたも学生さんをそんなことに働かせないの!」
やべえガソリンを注いじまった。
オレは周囲が水浸しなことを利用し、水を操り、ジェットの要領で飛びあがる。
「とりあえず迷子の保護という名目で! インターン中の実績作りというわけで!」
犬も食わない夫婦喧嘩を聞いているのも面白いが、少しいたたまれなくなってきたので、返事を聞かずに、洸汰が待っているであろう公園に飛んだ。
機動力でいえばオレには敵わないだろう。
さっさと公園に到着すると、洸汰と、その周囲に同じくらいの歳の子供たちが囲むように立っていた。
「お前の父ちゃんと母ちゃんヒーローなんだってな……でもちっともヴィランと戦ってねーじゃん!」
「パパとママ言ってたぞ、そういうヒーローは『ゼーキンドロボー』なんだって!」
「弱っちいヒーローだからヴィランから逃げてんだろ!」
「う、うるさい! パパとママはすごいヒーローなんだ! ゆ、雄英からパパとママに研鑽を重ねるために出向して教えを乞いに来る人がいるくらいなんだぞ!」
洸汰の語彙すげえ。
「しゅ、しゅっこう……?」
「なにわけわかんねーこと言ってやがる、生意気だぞ!」
「国語の点数やボキャブラリが他者より僅かばかり長じているからといって自惚れてるんじゃねえ!」
もう一人国語の点数がめちゃくちゃ高そうな子もいるぞ。
テスト? 点数? 確か洸汰は幼稚園か保育園の年長クラス、つまり5~6歳、他の子どもたちもそれくらいのはずじゃないか?
最近の子供は随分進んでんなぁ……オレはウンコとチンコでゲラゲラ笑っていたよ。今でも笑うね。
「どうせ雄英からくる奴なんて落ちこぼれの生徒だろ!」
「お前の父ちゃん母ちゃんのとこに来る奴なんて将来ヒーロー給付金を誤魔化して詐欺まがいの不正受給して税務署の査察で追加徴税食らったりするような奴だろ!」
「雑魚ヒーローの子ども! 雑魚洸汰! ザ洸汰!」
やっぱりなんか一人とんでもなく知識とか語彙がすげえやついるなぁ。二つの意味でそういう個性か? 二重の意味でそういう個性は嫌だ。
「で、誰が雄英の落ちこぼれなん?」
オレがしゃがんで後ろから声をかけると洸汰に群がる子供たちは驚愕に目を見開いた。
「こいつ見たことある! この前の体育祭で優勝してたやつだ!」
「なんで雑魚洸汰のところに来るんだよ!」
「贈賄でインターン募集して広告塔にすることで収益を上げようとする狡い経営努力だ!」
「違えよ! パパとママのヒーロー事務所の活動理念に共感してさらなる自己研鑽及び社会奉仕精神を養うために雄英からインターン活動に臨んだんだ! パパとママがすごいんだ!」
「もうツッコまんで!? まぁ、そういうわけで、ボクの悪口をさらに言うつもりなん? それに、ボクはウォーターホース……洸汰クンのパパとママに恩があるんや。その恩に報いるために洸汰クンを守る必要があるから……ヒーローとして職権濫用してまうで!」
「しょっけん……?」
「らん、よう?」
「お、大人は難しい言葉で子供を騙そうとする!」
「なんで職権濫用はわからへんねん!! もう夕方や、はよ帰り! ヴィランが出てくるで」
面倒くさくなりいじめっ子たちを追い払う。
オレの体格とコスチューム姿で高校生には見えなかったのだろう――いや、幼稚園生にとって高校生も大人みたいなものだろうが――とにかく怒られると思ったのか、蜘蛛の子を散らすように帰っていった。
「フー……最近のガキは……洸汰クンごめんなァ。パパとママが来られないから代わりに迎えに来たんや。帰ろか」
「知らない人について行っちゃダメって言われてるから」
「昨日ハンバーグ食べた仲やろ!?」
「俺はお前のことはまだ知らない! 好きなテレビも好きな食べ物もなんでヒーローやろうとしてんのかも!」
「……まぁそれもそうやな。まずボクの好きなテレビ番組は」
「興味ねえ」
「ズコー!!」
思わずずっこけた。
洸汰は随分とユニークなクソガキでいらっしゃるようで是非とも教育的コミュニケーションでシバき、じゃなくて交流を深めたい気持ちが高まってきた。
「だから……パパとママと帰る。海原兄ちゃんは帰っててよ」
膝を抱えてうずくまる洸汰。
顔を伏せているが、なんとなく彼の心を推し量ると、いいから帰ろうとは言えなかった。
「……それはできへんねん」
「いいから帰れよ……パパとママがいい」
「わかった。じゃあ、せめてパパとママが来るまで一緒にいさせてや。ボク、一人で来たから帰り道わからへんねん」
「大人なのに迷子なのかよ」
「……せやね。今、絶賛迷子中や。最近ちょっと道がわかった気もするけど、また迷子になってもうた」
先ほどの事故の救助中。
もちろん人の命がかかっているから真剣にやった。
だが周囲の野次馬たちのリアクションがどうも気になってしまう。
別に批判を飛ばすとか、妨害してくるわけではない。
ただ、事故の現場をまるでヒーローショーかのように、応援したり、動画を撮影するばかりで、救急車を呼んだり、逆に率先して避難する人たちが少なかった。
別に前世の民衆のほうがしっかりしていたなんてことはあり得ないが、かといって、名前をつけられない集団たちの行動が、やけに目についてしまう。
やっぱヒーロー向いてへんのかな、と本来の楽しむ目的すらも今は萎びているかのよう。
そんな気持ちを無意識に込めた一言を洸汰はわかるはずもなく、膝を抱えたまま「なんだそれ」という。
「あれ、いつもいじめられてるん?」
「は? いじめられてねーし……噛みついてくるから相手してやってるだけだし」
「噛みついてくるて」
語彙力の豊富さよ。
「でも今日はボク、パパとママのかっこええところ見たで。事故現場から何人も助け出して、死者ゼロ人やった。すごいパパとママやな。かっこええ」
「そんなの、パパとママならよゆーだもん」
「せやな。すごいヒーローやからな」
「でも……」
「でも?」
「……僕、パパとママにもっとかっこよくなってほしい」
顔を伏せる洸汰の声は震えていた。
オレは黙って続きを促した。
「ヴィランと戦うのとか、ヒーローらしいことしてほしい」
事故や災害の救助活動などは、言ってしまえば消防士や救急士、自衛隊にも可能だ。
だが暴れるヴィランの制圧はヒーローにしかできないことであり、花形の活動であることは間違いない。
ウォーターホースは地域に密着しているヒーローで、目立つ活動はあまりしていない。
ヴィラン退治の実績も、言ってしまえば調子に乗った小悪党を逮捕したくらいで、ヒーロー飽和社会において目立つ功績ではない。
「パパとママは充分カッコイイと思うけどなぁ」
「でもみんな、ヴィランを倒せないヒーロー何てヒーローじゃない、弱虫だって言うんだ」
こればっかりは正しさを伝えることはオレにはできない。
むしろこのくらいの歳の子供としては当然の反応のように感じる。
「んじゃあ、とりあえずまず洸汰クンが強くなろか」
「えっ……?」
洸汰が思わず顔を上げる。
目じりからこぼれた涙の後は気づかないフリをした。
オレは洸汰を立たせると目の前で腰を軽く落とし、パンチの構えをとった。
「もしも明日も洸汰クンをいじめてきたり、そうじゃなくても他の誰かを傷つける奴がいたら……相手のちんちん目掛けて、こう!」
腰を落としてビッ、とパンチを繰り出す。
空気を切り裂いて鋭い音が響き渡った。
洸汰に真似をするように促すと、彼も同じように拳を突き出した。
何度か繰り返したら、様になってきた。悪い奴のキンタマを適度にシバくことはこれでできるようになっただろう。
「こうやってまず洸汰クンが強くなるやろ? そしたらパパとママも『洸汰には負けられへん』言うて、さらにかっこよくなってくれるで」
「本当かな……」
「ホンマや。ボクもこうやってキンタマパンチで強くなったんや。体育祭もこれで優勝した」
「嘘だぁ……キンタマパンチって……ははは……」
「キンタマパンチ最強ォー!」
「あはは……キンタマパンチ最強ォー!!」
二人でゲラゲラ笑いながらキンタマ連呼していた。
お互いにまだガキなのだから、キンタマキンタマ言って笑っていればそれでいい。
しばらく笑っていると、流汰さんと水面さんが追い付いてきた。
「あ、パパとママには秘密やで」
「うん……くふふ……」
「ごめんな洸汰、あと海原くんも……随分仲良くなってるな」
「海原くんはすごいヒーローになるからね。洸汰もこういうかっこいいお兄さんになること」
「海原兄ちゃんが? ふふふ……かっこいいかなぁ」
「どうやろな」
「今日は遅くなっちゃったし……みんなで焼肉に行くか!」
わーい、という洸汰の声。
不意になんだか、家族っていいなという暖かさが胸に広がった。
思えば、この世界を生きてきて、人との繋がりというものを感じられたことはあまりなかった。もちろん、それを放棄してきたのはオレであり、自業自得なのだが、作り物として認識していたからだろうか、どこか線を引いてしまっていた。
ただ、今この時は、なんだかありのままの自分でいられるような気がした。
(……なんだか、ええなぁ)
並んで歩きながら、しみじみと感じ入っていた。
翌日、朝の訓練の前に流汰さんと水面さんと三人で仕事について話が合った。
二人とも真剣な眼差しで、いつも以上に鋭い雰囲気を放っている。
「凶悪ヴィラン捜査への応援要請があった。今回はチームアップで動くこととなる」
「あのビルボードランキング上位のヒーロー『リューキュウ』とのチームアップよ」
流汰さんがバン、と凶悪ヴィランとされる男の写真を壁に貼った。
「
――物語が、動き出す。
ふざけてるシーンと戦闘シーンは筆が進んで展開が進まねえなぁ!
こうして緑谷の陰嚢が被害を受ける未来が生まれました。
感想・評価等よろしくね! 二次創作なのにオリジナル過去編で大変申し訳ないが、やっぱりオリジン書きたいのと好き勝手設定すると楽しいんだよなぁ!