今後の展開を考えるためにヒロアカ見返してたり、ドブカス応援しに行ったりして遅くなりました。
主人公が某ドブカスに引っ張られそうだ……
というわけで変わらずオリジン過去編です。
今回のウォーターホース事務所に寄せられた出動依頼は、警察の捜査が発端となっていた。
しかし今筋は必要以上に相手をぶちのめし、いたぶることで集団ともソリがあわなくなり、口論に発展、結果的に彼が暴れた。
彼に半グレ集団のリーダーを含む複数人への傷害致死または殺害の罪の疑いがかけられることとなったが、足取りこそ掴めているものの警察の大捕物を強行突破し、複数の警官を負傷させた。
逃亡する彼の凶暴性から『血狂いマスキュラー』のヴィランネームを与えられ、ヴィランと認定。彼を逮捕するために、マスキュラーが潜伏するこの街でヒーロー活動をしているウォーターホース及び、戦闘力に優れるとされる上位ヒーローのリューキュウに白羽の矢が立ったというわけだ。
「と、いうわけで、まずは警察署の捜査本部に行く。そこでリューキュウや警察の方々と段取りを確認し、マスキュラー逮捕を図る」
「ウチでも珍しいくらいの大型案件だけど、やることは変わらない。ヴィランとの戦闘も予想されるから、頼りにしてるね」
「わかりました。戦いくらいしか今のところ役に立てへんからなァ。頑張ります」
ヒーローコスチュームを装着し、必要な書類などを揃えて支度を整える。
凶悪ヴィランとの交戦及び逮捕はヒーローの花形といえる行いで、流汰さんたちも気合いが入っている。
「パパ……ママ……が、頑張ってね!」
「おー、洸汰の応援があるなら頑張らないとな! まかせとけ!」
がしがしと流汰さんが洸汰の頭を撫でるが表情は優れない。
いくらヴィランをヒーローとして倒しに行くのが花形であり、洸汰自身もそんな活躍を見たいと願っていたとはいえ、いざ両親がその場に向かうとなると心配もするだろう。
彼は聡い子だ。不安や心配をかけるのではなく、自分の寂しさを押し殺して応援することが出来るのだから、立派だ。
「洸汰クン。安心しぃ。ボクが必ずパパもママも守るからな。帰ってきたら今日はみんなでパカ寿司に連れて行ってもらおか。ガチャポン引けるとこ」
「うん……うん! 海原兄ちゃん、約束してね!」
「ああ、もちろん」
指切りげんまんをして、オレと流汰さん、水面さんの三人で車に乗りこんだ。
警察署の一室に通されると先にドラゴンヒーロー“リューキュウ”が警察官たちと書類とタブレットを手に忙しなく話し合っている。彼女は有名なヒーローだからヒーロー事情に疎いオレでも見覚えがあった。
その隣で、うんうんと真剣な顔で頷きながら話を聞いている娘がいた。
薄い青みがかった長い髪を伸ばしたヒーローコスチュームの少女――今のオレよりは歳上だろうが――振る舞いはぎこちなくも真面目で、オレと同じインターンの生徒だというのがなんとなくわかった。
「お待たせしました。ウォーターホースとそのサイドキック、そしてインターン生のネイビスです」
「初めまして。私はリューキュウ。頼りにさせてもらいます、ウォーターホース」
「よしてください……俺よりもビルボードチャートランキングが遥かに上のヒーローの役に立とうという気持ちでいっぱいですよ」
社交辞令半分本音半分の挨拶を流汰さんがリューキュウに行う。
オレは黙って警察による作戦の内容を拝聴しようとしていたが、リューキュウの傍らにいた少女がいつの間にかオレのすぐ傍にやってきていた。
じー、というコミックの擬態語が付きそうなほど、オレを至近距離で凝視している。
「……どないしたん?」
その少女は目をぱちくりさせた。
そしてなぜか表情が輝いた。
「ねぇねぇねぇ! 私、今日来るヒーローはリューキュウとウォーターホース、そのサイドキックやってる奥さんだけって聞いてたの! でも貴方も来た! 不思議不思議、貴方は誰?」
「なんや元気なコやなぁ。ボクは」
「関西弁なの? 出身は関西? 大阪、京都、兵庫、滋賀? ちょっとイントネーションが違う気もする、不思議!」
「あのな、ボクはな」
「すっごい背が高い! 通形よりも大きいね、異形型じゃないよね、頭ぶつけない?」
「ちょっと待ち、ボクの話を」
「コスチュームのこの部分はボトル? 中身は水? コーラ? 紅茶? ねぇ、知りたいの! ねぇ、ねぇ、ねぇねぇねぇ!」
目の前の青髪の子はいったい何者なのだろうか。
初対面の相手に対して質問を重ねるあたり、ちょっとアレな子な気もするが――しばらく見ていると、なんとなく見覚えがあるような気がしてきた。
そういえば結構主要人物で――ああ、思い出した。
「キミは波動チャン……やったっけ? 三年……いや二年か。先輩の」
「えっ、すごいすごい、なんでわかったの!? 不思議! あ、キミは今年の雄英体育祭の一年生ステージで優勝してた人だよね、名前は海原! わーすごいすごい、でも不思議! なんで私のこと知っているの!?」
「なぜって……優秀なんやろ?」
体育祭は一年から三年まで同時開催だからゆっくり観戦する暇はなかったから、成績まではよく知らないがきっと活躍したのだろう。
そう思って答えたのだが――波動の表情が、虚を突かれてきょとんとしている。
「……ゆう、しゅう? 私が?」
「え、ちゃうの? 見たときからなんとなくそう思ってたけど……」
「なんで? 不思議不思議! 体育祭で全然活躍できなかったのに……」
「そうなん?」
もしかして余計なことを言ったか。
だがまぁ、別に困ることでもないし、ましてや原作キャラなのだからこの先で力が伸びるのだろうから、大した差異にならないか。
「見てたら、なんか、ええヒーローになりそうやなと感じたんや」
「ほわ……」
波動の目がきらきらと輝く。
リューキュウと友人以外に初めてそんなこと言われたかも、と呟く彼女。結構言われとるやないか。
再びマシンガントークが繰り出されるかというところで、リューキュウが波動にストップをかけた。
「ごめんなさいね、うちのねじれが。ウォーターホースのところに出向いているインターン生が貴方ね」
「いえ、構いまへん。ボクはネイビス。よろしゅうお願いします」
つままれたネコのように引っ張られた波動は「あー」とこちらに両手を伸ばしてばたばたしている。
嵐のような娘だった。
「そろそろいいかな。今回の連続傷害致死・殺人犯であるヴィラン『血狂いマスキュラー』の逮捕作戦について話させてもらう」
角刈りにサングラス、そして頬や額に刻まれた古傷が特徴的な警部らしき人物が皆の前に立つと、ヒーローもその他の刑事たちも背筋を伸ばした。
「今回の事件及び作戦指揮をとる警部の
散弾銃がやけに似合う警部だ。
下手なヒーローより遥かに強そうな屈強な男が全員を見回すと、自然と空気が引き締まるのがわかる。ある種のカリスマというやつだろうか。
散田さんが視線を這わせてから、オレと波動で動きが止まる。
「君たちはヒーローのインターン生だったな。基本的にヒーローの指示に従って動き、独断で動かないように。そして自分の安全を最優先に確保しろ。わかったな」
「はい」
「……はーい」
オレの簡潔な返事と波動の不服そうな返事にムッとしつつも場を乱すことなく作戦内容を説明していく。
マスキュラーはこの街の地下下水道に潜伏していることが警察の捜査でわかっている。
この街の地下水路は入り組みつつ、過去に水害があった教訓から貯水槽となるように広い空間も確保されており、隠れ棲むならば問題ない造りになっているという。
「警察の人員には索敵に優れた個性を持つ
奴は筋肉増強という増強型個性の持ち主であり激しい抵抗が予想される。無理をすることなく、警察とヒーローの連携を密に、必ずヴィランを逮捕するぞ!」
「「「おおー!!」」」
警察たちが拳を突き上げる。
鬼気迫る雰囲気に、警察のヴィラン逮捕のテンションはこれほど高まるものなのかと、初めての経験に少したじろいでしまう。
「ねぇねぇ、海原くんだよね。海原くん、あのねあのね、警察の人たちも前回の捕り物で怪我人が多く出ちゃったらしいの。だから気合入ってるんだよ知ってた?」
「なるほど……いやぁボクも初めてのインターンやから、なんだか緊張するわァ」
「初めては緊張するよね! でも大丈夫。私が先輩としてフォローするから、期待しててね」
ウォーターホースを守るオレを守る波動というわけか。
「頼りにさせてもらうで」
「うん、がんばろ!」
先行するのは佐賀という刑事で、彼を守るようにリューキュウと波動、流汰さんと水面さん、そしてオレ。あとから機動隊員たちがバリスティックシールドと警棒で武装して追従してくる。
地下水路は想像していたトンネル形式ではなく、説明の通り貯水槽のようにひらけている。ヴィランが隠れる迷路という感じではなさそうだ。
「生命反応は複数ありますね。大きさから……二人、離れたところに一人です」
「二人は何なの? 立ち入り禁止のはずよね」
「いわゆる
「冷え込む前に寝床を確保しているんでしょう」
リューキュウの疑問にこの地域をよく知るウォーターホースペアが答えた。
オレと波動は「ほー」「へー」と、ぼやっと聞いていた。
こればかりは戦闘能力とか個性の技術よりは経験則に基づく土地勘がないとどうしようもない。
「そうなると離れた一つがマスキュラーやろか」
「断定するのは危ないよネイビス。マスキュラーに協力者がいて、二人でいるのかも。こういうときは悪い予測も立てるのが鉄則!」
「佐賀サン、個性でどのくらいまでわかるもんなん?」
「私の個性では近いほど精度が上がりますが、特定の個人の断定はできません。とりあえず今の時点では二メートル弱の大型の生物がいて、ヒグマやワニでもなければ人間くらいしかいないだろう……という推測です」
――刑事・
生命が発する微弱な電流を察知することが可能! 電流の質でどれくらいの大きさかもわかるぞ! 近いほど精度もあがる!
「流石に人間ほどの大きさの生き物は地下水路にいないわよね」
「こっちの方で調べた限りはこの町でペットのワニや大蛇が逃げ出したという通報は出てないっすね。ミュータントの力で変身させられた亀たちでもなければ人間だと思いますよ」
「懐かしいね……でも貴方、真面目にやりなさい」
「子供の頃アニメでやってたわねぇ」
「私も見たことあります。火曜日の朝七時半から……」
「ねぇねぇねぇ、リューキュウたち何の話してるの? 不思議!」
「多分ジェネレーションギャップが起こるやつやな……」
「こほん。まずは二人の方に接触するわよ。一般人なら退避させた方が安全ですし、もしも協力者とマスキュラーならすぐに逮捕しなくては」
リューキュウの指示に全員が頷く。
佐賀さんの案内に従い、二人がいるとされる場所へ向かう。広い空間から通路を狭い通路を通ると、先ほどの場所ほどではないがひらけた空間――部屋というべきか、そこに出た。
「ドラゴンヒーロー『リューキュウ』です。今は凶悪ヴィランの捜査をしています、貴方たちはどうして立ち入り禁止の場所にいるのかしら?」
リューキュウが代表して声を上げると、部屋の隅の影からひたひたと足音が聞こえた。
マスキュラーか、と全員が固唾を呑んで見守るが、予想は外れ、ぼろぼろのコートに身を包んだ長身痩躯の男と、でっぷりと太った小男が恐る恐る現れた。
「なんでヒーローがこんなところにいるでゲスか……? 私たちはただの善良な家なき子ならぬ家なきおじさんでゲスよ!」
「同情するなら金をくれゾイ!」
ぼろぼろな防寒着を重ね着したノッポとチビデブとでも言えばいいか、その中年のおっさんたちはやや警戒心をにじませつつ、かといって怪しい素振りは見られなかった。
他の警察やヒーローたちも、なんだただのホームレスか、という雰囲気で一度張り詰めた緊張感が緩んだ。
流汰さんが前に出つつ話しかけた。
「立ち入り禁止ではあるからなぁ……お、そうだ。ネジレちゃん、ネイビス。これもインターンの一環だ。この方々を外に出るように説得してくれないか?」
流汰さんがオレたちを指名する。
波動と思わず顔を見合わせてから、いいのかなと一瞬思うが、安全ながらも経験を積ませようとしてくれているのだろう。
ここは真面目に頷き、波動も同じようにこくんと首を縦に振った。
「ボクはヒーロー名ネイビスいいます。お二人さん、お名前は?」
「ヒーローに名乗る名前はないでゲス!」
「貴様ら、ワシらの寝床を奪う気ゾイ!?」
「もともと立ち入り禁止やで、ここは。役所に行けば寝床や食事も用意してもらえるし、こないなところおらんでもええようになるで。これから悪いヴィランと戦いになったら守れへんよ」
「かーっ、若いあんちゃんがヒーローだなんて世も末ゾイ! ワシたちの将来どうなるか心配ゾイ!」
「いやアンタ誰でも若いでしょうよ最初は。でも断固立ち退きは反対でゲス! 荷物もたくさんあるでゲス、運んでいる間に盗られたら私ら生きていけないでゲス!」
思ったよりも反抗的だ。とはいえ彼らには彼らの事情もある。
オレは波動に一瞬目配せをしてから、腕を組んだ。
「そか。ようわかったわ。ならしゃーない、ヒーローとしてあんたら逮捕するわ。安心し、豚箱でも臭い飯と臭い部屋と臭いベッドは用意されとる、そこなら日本で一番安全やで」
「ひっ、やっぱり国家権力の犬でゲス! 鬼! 悪魔! エンデヴァー!」
「ワシらの税金で食ってるだけなのになんて傲慢ゾイ、恥知らずゾイ! 税金払ってないけど」
「今のを公務執行妨害に当てはめてもええなぁ。ほんの数年やけどいい寝床紹介したるわ」
「「ひえええっ」」
わざとらしく拳を鳴らしながら歩み寄る。
するとそこへ、波動が二人を庇うようにオレの前に立ちはだかった。
オレは表情を変えないまま、波動を睨みつけた。
「なにするんネジレちゃん。邪魔するん? ボクのお仕事やのに」
「ダメだよネイビス! この人たちにも事情があるんだから! 無理矢理連れ出すなんてダメ! 色々と大変なことがあったはずだよ、ね、ね、そうでしょ?」
「「うんうんうんうん!!」」
「ほら……でもね、これから悪いヴィランを逮捕するから、危ないのは本当なの。ごめんね、だから今だけでもいいから、少し避難してほしいの。お願い!」
波動が手をあわせて頭を下げる。
居丈高に振る舞う大男に詰められるのを美少女に庇われ、そして懇願されて折れない中年男性はいない。
実際、ノッポとチビは頬をだらしなくゆるませて「そこまで言われちゃあ仕方ない」という雰囲気で頷いている。
「天使ゾイ……美しいゾイ」
「いや最早聖母でゲス……ああ、神が見えるでゲス」
「それに比べてなんゾイあのいけ好かない男は。自分がヒーローになってえらくなったと思っている典型ゾイ!」
「カスでゲス。ドブカスでゲス」
「めっちゃ好き勝手言うやん」
「ちょっと冷たいよね! ああいうのダメだよネイビス!」
「怒られてやんのでゲス!」
「ダサいゾイ!」
「じゃあ二人はここから出てくれる?」
「「もちろん!!」」
ノッポとチビがずんずんとオレたちが通ってきた通路に向かう。
「邪魔でゲス、国家権力ども!」
「通れないからもっと下がるゾイ!」
偉そうな二人に苦笑いを浮かべつつウォーターホースやリューキュウほか、警察たちが下がった。
オレは波動にウインクをすると、彼女も嬉しそうにウインクした。
いわゆる良い警察官と悪い警察官という奴だが、効果は覿面だ。
「あれ、不思議不思議! 二人とも荷物持って行かないの?」
「問題ないでゲス」
「別にワシたちは本当に出るわけではないゾイ」
「え、どういう……」
長身の男がいつの間にか持っていたリモコンのスイッチを押した瞬間、部屋の出入り口で爆発が起きた。
「伏せて!」
リューキュウがドラゴンの姿になり、ガレキから警察とウォーターホースを庇う。
轟音と共に出入口はガレキで埋もれて、部屋にはホームレス二人とオレと波動だけが取り残された。
「なに、なにが起きたの!?」
「……この期に及んでただのホームレスです、いう主張は通らんで」
俯いていた二人がくつくつと笑う。
ぎらりとこちらを睨む目つきは世間から落ちぶれた小市民めいた光はなく、もっとどす黒い色に染まっていた。
長身の男が手を広げる。
「まさかヒーローが来るなんて、しかも偶然――アンラッキーでゲス! でもお前たちを始末してここを守り抜けば……私たちの未来も薔薇色でゲス」
「ヒーローはあのドラゴンと二人のヘルメット、それと学生二人……口封じだけでなく始末したらさらにあのお方の信任も厚くなるゾイ!」
チビの男がぼろぼろのコートを脱ぎ捨てる。
「ネジレチャン……どうやらヴィラン退治の予定がだいぶ狂ったみたいやで」
「リューキュウたちは無事かな……でも心配する余裕も、ないかも……!」
ただよう雰囲気から明らかにそこらのチンピラの類ではない二人。
マスキュラーの仲間とは思えないが、かといってこのまま大人しく見逃してくれそうな雰囲気ではない。
「このインターン……面倒ごとになりそうやね」
オレはただ、構えをとった。
黒幕ごっこだとか、ヒーローとしての振る舞いだとか、そんなことは関係なしに、ただ生き延びるために――。
オリキャラ紹介
・散田厳三郎
警部。個性『ショットガン』腕を散弾銃に変化させて発砲可能、銃弾はその日に食べたナッツが利用される。文字通り豆鉄砲だ!
・佐賀電介
刑事。個性が重宝されて案内役に抜擢される。最近娘が反抗期に入った。
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