落ちた葉が伝えている。
遠き遠き地で生まれた異邦の褪せ人は、王となった。
霧の彼方、我らの故郷、狭間の地で
その治世はいまだ実らず
王は自らを探す旅へ出た
王の不在たる今こそ死してなお諦めきれぬ敗残者どもよ今一度立ち上がるがよい
焼け焦げた黄金樹を代償として
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暗い暗い森の中、銀の一閃が走る。
「てめえーよくも」
また一閃続いて二つ後ろを振り返りながらの三つ、一時の間に物言わぬ肉袋たちが出来上がる。木々の間から差し込む月光が、その凶行その絶技を起こした青年を照らし出す。黒い瞳に青みがかった黒に一筋の淡い緑のメッシュが入った髪、鮮血を浴びた様相はあまりに濃い死の気配を湛えている。
「級長方は無事だろうか」
心配の言葉とは裏腹にゆっくりと歩いていこうとした瞬間に一瞬、視界が暗闇に包まれる。目覚めた女神の権能によって世界の時間は巻き戻る。
「てめえーよくも仲間を」
頭の上からそんな声とともに斧が振り下ろされる。
「何!?ぐっ…」
青年が頭から血を流し倒れ伏し、先ほど肉袋であった盗賊が勝利の声をあげている。
「けっ...士官学校の甘えたお坊ちゃんが手間取らせやがって」
斧を打ち付けた盗賊が血を流す青年の頭を踏みつけ、顔面を地面にねじ込むように踏みにじる。
「そいつのことは後回しだ。ほかのやつを追いかけて行ったお頭に追いつくぞ」
「こいつに仲間をぶっ殺されたんだぞ。このままいけるかよ」
盗賊の足に青年の手が絡みつく。
「あっ!!…てめえ、生きて」
これが盗賊の最後の言葉になった。
青年が素早く起き上がり、異常な力で盗賊を滅茶苦茶に振り回し地面に木々にぶち当てる。そのまま、言葉を失っていたほかの盗賊たちに投げつけた。
「竜爪」
青年の手が赤く光ったと思うと右手が灰の竜の腕へと変化し、盗賊たちのすべてを切り裂き、叩き潰す。
(何が起きた、確かにこいつらは先ほど切り殺したはずだが・・・見つけたぞ時を遡る力俺のルーツの手がかりを)
「な、なんだこりゃ!?」
声のほうに目を向ければ必死に走ってきたのだろう、息を切らした薄汚れたひげずらが驚愕の表情で立ち尽くしている。あの汚いひげずら確か。
「ああ、盗賊の長か」
一瞬のうちに盗賊の長の懐まで迫った青年が虚空より現れたロングソードで首を突き刺しねじ込んだ。
「ごへっ....じにたく」
「誰だってそうだ」
(こいつの死体でも手土産に級長方と合流するかな。)
ーーーーーー
白い髪の美しい少女に盗賊の長が繰り出した斧の一撃が迫り来る。だがそれはふせがれた。先の凄惨な現場を作り出した、青年によく似た女性がまるで盗賊の長がどうするのか分かっていたように斧を軽々と剣で弾き飛ばしたのだ。盗賊の長は動揺したように逃げていき。女性は緊張が取れたように剣を下ろした。そこに金髪の王子様然とした少年ディミトリと褐色に黒髪の策謀家の少年クロードが駆け寄ってくる。
「エーデルガルト無事か!」
「ええ、無事よディミトリ」
「あんたいい腕してるな、名の通った傭兵なんじゃないか?俺はクロードあんたの名前を教えてくれよ」
「ベレスよ」
遅れて馬に乗った壮年の男性ベレスの父ジェラルトが駆けてくる。
「ベレス?、お前いま何か」
さらに遅れて森の中から鉄の鎧を着た整列の取れた集団が現れた。
「セイロス騎士団が参った!生徒を脅かす盗賊ども、覚悟せい!………盗賊どもが逃げていくではないか貴殿らは後を追うのだ」
セイロス騎士団のなか指揮官らしき髭が特徴的な中年の男性が三人の生徒たちのもとに駆けてくる。
「級長たちは無事なようだな。……そちらは?!!」
「おっと面倒くさい奴が来た」
ジェラルドが迷惑そうに顔を歪める。
「うおお……ジェラルト団長ではないですか!お久しぶりですな!!覚えておられますか、自称貴方の右腕アロイスですぞ。貴方が突然消えて二十年生きていると信じておりました」
「相変わらず、うるさい奴だな、アロイス。それにもう団長じゃない。今は流れの傭兵だ……そう言うわけで次の仕事があるから、またな」
「ああどこかで、また………ってそうなるわけないでしょうが!団長には修道院まで来てもらいますからね。」
「ガルグマク大修道院か。はぁ……そうなるよな」
アロイスがベレスへと目を向ける。
「んっ…ベレトではない……?級長たちベレトと一緒ではないのか?」
「ベレトなら他の生徒たちと一緒に逃げたはずよ」
「いや…他の生徒たちは級長と共に行ったと?まずい、盗賊に拐かされたか!?探しに行かねば」
クロードが呆れたようなため息を吐いて声を上げる。
「ベレトのことだ、大丈夫だろ。俺の見立てでは士官学校でベレトが一番強い」
「ああ、クロードの言うとおり、俺の心配をする必要はない」
皆が声のする方に目を向ければ、頭から血を流し全身に血と肉片を貼り付けた青年が死体を引きずりながら森の暗闇から這い出るように歩いてくる様が見て取れた。
「前言は撤回する」
クロードが顔を手で覆いため息をつき、エーデルガルトは心配したように駆け寄り、頭から流れる血をハンカチで拭う。
「貴方、こんな傷をつけておいて心配する必要はない。じゃないでしょうもう少し自分を気遣いなさい」
「アロイス」
ベレトが引きずっていた死体をアロイスに向けて投げ飛ばす。
「うおっと!?何をするベレト!!」
「盗賊の長の首級を挙げたぞ」
「はぁ……貴殿は毎度……まぁだがよくやった。報酬は上申しておくから治療を受けてきなさい。級長たちすまないがベレトを連れて行ってくれまいか」
アロイスが振り返ると言葉を失い立ち尽くしたジェラルトとベレスが目に映る。
「団長どうかされましたか?」
はっとしたようにジェラルトは目を瞬かせ、未だ夢心地のようにフラフラとしながらも正気を取り戻した。
「ベレトなのか………?」
ジェラルトの態度を訝しむように見ていたベレトがその言葉に答えた。
「んっ……?どこかで会ったか、失礼だが覚えていない名前を教えてくれないだろうか。そうすれば少しは思い出すかもしれん」
ジェラルトはショックを受けたように数秒固まり、今度は泣き出しそうな顔でエーデルガルトを押しのけベレトの肩を掴んだ。
「そうだよな。だが生きていて良かった俺だ…ジェラルトだ。お前の父親だ」
「はぁ」
「おほん、団長殿込み入った事情があるのは察しますが、ベレトは困惑しておりますし怪我人です。続きは修道院に戻ってからにいたしましょう」
「嗚呼...そうだな。ベレトは生きているんだからな、アロイス!セイロス騎士団の野営地まで案内しろ。俺が馬でベレトを連れて行く」
「はっ…はい、この団長の右腕アロイスにお任せあれ」
困惑したままのベレトとジェラルト、案内役に任命されたアロイスが息もつかせぬまま去って行く。絶句したままのベレスと三人の級長たちを残して。
「えーっと今のは感動の再会ってやつかね。どうするベレス、親父さんは修道院にそのまま行くことになるだろう俺たちと一緒に行くか」
「……えっええ、そうするわ」
宙に浮く幽霊のような神秘的な淡い緑の髪の少女が突如として現れ、ベレスの耳元で囁きかける。
「おんし、あの小童には努々気をつけよ。よいな、警告はしたからの」
少女はその一言だけを述べて現れた時のように消えていく。ほかのものには少女の姿は見えなかったようだ心配そうにベレスを見ている。
「大丈夫か、似たような経験がある困惑する気持ちはわかるつもりだ、少し休んでから行こうか」
「いえ、もう大丈夫よ。父さんも弟も待っているもの行くわ。案内してくれるガルグマク大修道院に」
竜餐
竜の心臓を捧げ喰らい、竜の力を得る儀式である。
ベレトは