家庭教師ヒットマンREBORN!〜世界の命を巡る戦い来る!〜 作:弓子
はあっ、はあっ、はあっ……!
男の荒い呼吸がボンゴレ本部の廊下に僅かに響く。彼の名は沢田綱吉。世界最強と言われるイタリアンマフィア、ボンゴレの十代目ボスだ。そんな彼が走り抜けた道には赤い血痕が残る。そう、彼は怪我をしているのだ。それも同盟ファミリーが撃った銃創によって。
[地下の隠し通路を使い、外へお急ぎ下さい!]
戦闘時に使う愛用のヘッドホンから、ボンゴレ技術顧問(自称)のジャンニーニの焦りが混じった声が聞こえてくる。
「分かってるっ……」
微かに頷いてツナは地下の隠し通路へと急いだ。
「……ボス」
綺麗なソプラノの声にツナは目を丸くした。
「何で……?クローム」
ツナが驚くのも無理は無い。何故なら彼女はボスであるツナの命令により、もう一人の霧の守護者、六道骸と共に行動している筈だからだ。
「骸様にちゃんと許可は貰ってきた。……駄目?」
「いや、駄目ってゆーか……うーん」
駄目ツナは今だに健在であるようだ。クロームはじっとツナを見つめる。
「ボスは守られようとしない。だから
きっぱりと言われれば断れる筈も無く、ツナは一つ頷いた。
「ありがとう、クローム。……行こうか」
クロームはホッと肩の力を抜いて、嬉しそうに頷いた。そして二人は地下の隠し通路に入って行く……。
そしてこの日。
ボンゴレ十代目ファミリーは同盟ファミリーの裏切りにより、壊滅状態に陥ったのである。
☆★☆
遡ること三日前。
ボンゴレ本部には密かに十代目ファミリーが集められていた。広い会議室には黒いスーツを身につけた七人の男と一人の女性が居る。
「今日皆に集まってもらったのは……」
と、一番豪奢な椅子に恐々腰掛けたツナが口を開く。
「これからボンゴレが同盟ファミリーの大半に裏切られる、ということを伝えるためだ」
ツナがそう告げれば、息を飲む者、驚きの声を上げる者、不敵な笑みを浮かべる者……など反応は様々である。
「十代目、それではどうしますか?」
随分と突飛な話にも関わらず、ツナの隣に座る銀髪の男は尋ねた。
「それは……「噛み殺せばいい」雲雀さん?」
ツナの向かい側に座った黒髪の男、雲雀恭弥が生き生きとした表情で言った。
「てめっ……!俺は十代目に訊いてんだ。口出しすんじゃねぇ!」
「まーまー、落ち着けって獄寺に雲雀!」
ははは、と笑いながら二人の間に入る黒髪の好青年。険悪になりかけた雰囲気が収まり、ツナはふぅ、と息を吐いた。
「とにかく隼人も雲雀さんも落ち付いて……俺の話を聞いて下さい」
じっとツナに見つめられる二人。
隼人、と呼ばれた銀髪の男、獄寺隼人はすみません、と頭を下げて席に着き、雲雀はツナを獰猛類の目で眼差したあと、目を逸らさないツナに興味を無くしたように溜め息を吐いた。
「……今回の敵はかなり手強い、と思う」
ツナの一言で皆の顔が引き締まる。
「今までのようにはいかない……。そして鍵となるのは
「
こてんと首を傾げる藍色の髪の女性、クローム髑髏。
「今までのようにはいかない、とは天下のボンゴレでさえ手に余る敵ということですか」
やれやれ、と首を振る独特なヘアスタイルと雰囲気を持つ藍色の髪の男、六道骸。
ツナは二人の放った言葉に頷いた。
「だから……
皆を見つめるツナの瞳は、かつての虹の代理戦争で、様々なマフィアの前で自分の意見を述べたあの時のように、強く凛とした輝きを放っていた。
「隼人には敵へと寝返ってもらう」
なっ!?と獄寺は声を上げて席を立つ。
「どうしてですか、十代目!」
「隼人が一番適役で、敵には一番俺を裏切らない存在だと思われているだろうから」
さらりと述べたツナに獄寺は苦虫を噛み潰したような顔をして頷いた。
「……っ分かり、ました。俺の外聞を利用して敵を興に乗らせるわけですね」
獄寺はボンゴレ守護者の中でも特に
「骸、クロームは敵に隠密裏に潜入。雲雀さんは独自に敵の情報を調べて下さい」
三人は無言で頷く。
「ランボはイーピンと中国で合流し次第、並盛にいる京子ちゃん、ハルに会い護衛を。それとリボーンと父さんに俺の超直感が感じたことについて説明。携帯かけてもいいんだけど……まあ、ついでにお願い。正直いつ来るか分からないから、俺も携帯かけてる暇がない」
「分かりました、ボンゴレ」
ランボは恭しく一礼した。
「お兄さんは命を連れて今すぐボンゴレ並盛支部へ。……
「極限に任せておけ!」
元気かつ頼もしい返事とともに白髪の男、笹川了平は頷いた。
「山本は
「おう!で、一体何が起きるんだ?」
黒髪の好青年山本武が爽やかに返事を返して尋ねる。ツナはうん、と頷いた。
「ボンゴレ十代目ファミリーの壊滅だよ」
ツナの言葉に皆が息を飲んだ。だが誰もそれに拒絶の声を上げる者は居なかった。
何故なら、その場に居合わせた全員がボスとともに戦う覚悟を決めていたから。
☆★☆
獄寺side
どおーーんっ!
凄まじい爆発音がボンゴレ本部にこだましている。
(十代目は無事だろうか……)
獄寺の浮かない顔をどうとったのか、敵ファミリーの幹部格の男が声をかけてきた。
「ボンゴレ十代目は無事ではいられない。お前もそれを見越してこちらに寝返ったのだろう?そしてそれは正しい判断だ」
獄寺は男の方へ顔を向けた。
「我々ラッジョファミリーが世界を取るのだからな」
ラッジョファミリー。
それがボンゴレ十代目ファミリーを壊滅状態にさせたファミリーの名前だった。
「ラッジョ……」
獄寺は呟いた。その様子を見て男は頷く。
「そう。ラッジョファミリーはラッジョ・ディ・フルスタ……赤エイを意味する。そして
「……。」
獄寺は静かに聞いているだけだった。本心ではボンゴレなめんじゃねえっ!と思っていたが。
「獄寺。俺の名はラムダだ。精々よろしく頼む……ラッジョファミリーの一員として、な」
男はそう名乗って二ッと唇の端を上げて笑った。
☆★☆
ランボside
「大変だもんねーっ!」
「ランボ、落チ着ク!」
無事イーピンと合流して、日本へと直行するランボ。
「ボンゴレが壊滅だもんねーっ!」
実はツナの思惑はまだまだ子供のランボ達を、今のところは安全なリボーン達のところへ行かせるところにあった。
というわけでまあ、ひとまずは思惑通りにことは進んでいると言えるだろう。
☆★☆
雲雀side
「哲」
雲雀の冷徹な声が辺りに響いた。誰もがその声に恐怖し従ってしまう、そんな声音。
「並盛に戻るよ」
リーゼントな並盛中学元風紀副委員長の草壁哲矢は頷いた。
「はい。至急、ヘリの用意をします」
雲雀はそう言って準備をしようとする草壁を見ながら呟いた。
「
滅多にボスとして命令をしないツナが今回はそう言った。
これはお願いではなく命令であると。
「中々噛み殺し甲斐がありそうな
そしてニコリと雲雀は妖艶な笑みを浮かべた。
☆★☆
骸side
骸は敵ファミリーもといラッジョファミリーの下っ端として潜入をしていた。
「全くクロームにも困ったものですね」
ふう、と息を吐くその姿はお転婆な妹を案じる兄のようである。
「まあ潜入してみたところボンゴレと変わりないマフィア風情のようですし、さして
マフィアを心から憎んでいる骸はこれならボンゴレの方がマシですかね……と呟く。
「クロームに呆れられるのも嫌ですし、ここはボンゴレの命令を聞いてあげましょうかねぇ」
そうしてクフッと笑った骸がボンゴレの者であるとは、ラッジョファミリーの者達は誰一人気づかなかった。
☆★☆
山本side
「邪魔するぜー!」
「邪魔するなら帰れ、しししっ!」
「うお″お″お″い!何しに来やがった、山本武ィ!」
山本はVARIAの屋敷に来ていた。そしてベルフェゴールことベルとスクアーロに手厚い(?)歓待を受けていた。
「何って……ツナからの伝言と、これをザンザスに渡してくれ」
「あ″あ″!?」
ほい、と山本から手紙を渡されて茫然とするスクアーロ。当たり前だ。決して仲が良いとは言えないボンゴレボスからVARIAの、それもザンザスへこともあろうか死炎印無しのお手紙である。
「伝言の内容は【ボンゴレ十代目ファミリーの壊滅だよ】だそうだ」
「「はああ!?」」
ニカッと爽やかに笑いながら言われても、冗談としか思えない。
「じゃ!俺まだやることあるからさ!」
そして山本は通り雨のように早々と去って行った。
ポカンとしたまま立っているスクアーロに、何処からか投げられたワインの入ったグラスが当たる。
「聞け、カス共」
スクアーロとベルフェゴールが振り向くとザンザスがいた。
「ボンゴレが同盟ファミリーの裏切りによって壊滅状態になったそうだ」
その言葉に我へとかえったスクアーロは一言。
「待ちやがれぇぇぇっ!山本武ィィィ!」
と叫んだのだった。
☆★☆
了平side
「極限にここなら安全だぞ、
了平達は無事、ボンゴレ並盛支部へと到着していた。
了平の言葉にコクリと頷く少女。
腰まである黒い瓊ば玉の髪に金の瞳。白磁の肌は薄っすらと桃色に色付き、その容姿はどこか神秘的でさえあった。実に将来が楽しみな美少女である。
「ツナさんは?」
「むっ……きょ、極限に、そう……すぐ来るぞ!」
「うん」
美貌の顔が花が咲いたように綻んだ。
「ツナさん、早く会いたいです……」
全ての鍵を握っているであろう少女、
読んでいただきありがとうございました。