家庭教師ヒットマンREBORN!〜世界の命を巡る戦い来る!〜 作:弓子
朔夜side
暗い屋敷の廊下を朔夜は躊躇いなく進んでいた。屋敷と言えるのか廊下とさえ言えるのか分からないほど、暗いその空間に朔夜の呟きが落ちる。
「
その呟きに素っ頓狂な声が何処からか上がった。
「ハッ……ハハヒッ!」
朔夜は幽雅に口角を上げて清々しい程の良い笑顔を見せた。
「客人が来たというのにこの接待か?明かりを灯せ」
「客人は家主の許可無く家の中に入って来たりしませんよホホッ!どちらかというと不法侵入した暗殺者に近い気がするのですが……ハッ!」
尾道は焦ったように朔夜へと視線を移した。案の定、朔夜は素晴らしく黒い笑みを浮かべていた。先ほどの笑みも十分胡散臭いものだったが、今の笑みよりは幾分マシだった筈である。
「あのーえーっと……」
尾道は冷や汗を掻きながら朔夜から視線を逸らした。
「いい加減ウザいんだが?さっさと姿を現せよ」
尾道へ向けていた視線を、闇でロクに見えない
「ははは……分かっていたのか」
朔夜と尾道の前に暑苦しい鉄仮面を被った男が音もなく現れた。チェッカーフェイスである。
「
朔夜は食えない笑みを浮かべた。
「それで……あんたはこれからどう動くんだ?」
チェッカーフェイスは朔夜の問いかけに、唇の端を上げた。
「どう、とは?」
「あんただって気づいてるだろ?ボンゴレが乗っ取られたことくらい」
「私はボンゴレがどうなろうと知ったことではない」
チェッカーフェイスの言葉に朔夜はへえ、と眉を上げた。
「
チェッカーフェイスの動きが一瞬止まる。
「……君はどこでその事を?」
そして恐る恐るといった様子でチェッカーフェイスは朔夜に尋ねた。朔夜はその問いには答えずに、妖艶な笑みを浮かべる。チェッカーフェイスはそんな彼に内心舌を巻くと同時に恐れを抱いた。
「全く……君は、いや君を従えたボンゴレ十代目ファミリーは本当に恐ろしい」
「俺自体は別に恐ろしくも何ともないさ」
朔夜の言葉にチェッカーフェイスは眉根を寄せた。
「どういうことかな?」
「一番恐ろしいのは……ボスさん、ツナってこと」
朔夜はつっと顔を歪めた。
「ボスさんは超がつくほどお人好しで優しい、それにマフィアの世界で生きるには純粋過ぎる。だから怖い」
ボンゴレの先代もツナに似たような事を言ったらしい。「マフィアとして生きるのには不釣り合いなくらい優しい心を持った子だ」と。それでも先代はツナをボンゴレのボスに推した。それはツナにボンゴレを在るべき形に戻して欲しいという願いがあったから。そしてそれは、その選択は間違ってはいなかった。そう……“間違っては”、いなかった。
ボンゴレは少しずつ在るべき形に戻っていった。ツナの真摯な態度に賛同した四大ファミリーを筆頭にボンゴレは変わって行った。しかしそれに賛同しない中小ファミリーも大勢いて、結局権力を以てして黙らせた訳だが。それでもボンゴレの改革により多くの血が流れたことは真実朔夜からしたらこの程度の犠牲で済んで良かった、と思う。マフィアの世界は生温いものではない。必ず自分がしたことに反発する者がいる。そして血が流れるのだ。
しかしツナはそれでさえも傷つき、自らを責める。犠牲がない、血が一滴たりとも流れない“完璧”を求める。
そう思うのは傲慢だ、と何度彼に言ったことだろうか。それでもツナは“完璧”を求めることを止めない……いや止められないのだが。
「チェッカーフェイス。あんた……ツナが壊れたらどうなると思う?」
「……?」
朔夜は答えなど求めていなかった。求めずとも確信していたのだから。
「ツナが壊れたら世界が終わる」
朔夜はポツリと言った。そう、純粋で優し過ぎるから堕ちた時は予想が及ばない。しかしツナが壊れた時、ただ生気が消え失せて虚ろな目を朔夜に向けるとはどうしても思えなかった。
「そんなことは私がさせないさ」
「そりゃ、ボス継ぐ前のツナだったら、あんたも止められた筈だ。だけど、今のツナはあんたを殺すことだって出来る」
「……っ!?」
チェッカーフェイスが顔を強張らせた。
「そんなまさか」
「ツナの覚悟は“仲間を守る”こと。もしもツナのファミリーの誰かが殺されたらツナは多分壊れる」
チェッカーフェイスを遮るように朔夜は言った。チェッカーフェイスは黙り込む。
「その可能性はなきにしもあらず……ってとこだな。で?チェッカーフェイス。あんたはどうする?」
朔夜は再び尋ねた。チェッカーフェイスはふう、と息を吐く。
「分かった。私に出来ることがあれば言ってくれ」
交渉、とでも言おう二人の話し合いはこれで決着がついたのだった。
「それと、チェッカーフェイス」
帰り際、朔夜は言った。
「さっき言ったボスさんのことは嘘じゃないぜ。……俺の知り合いの友人が実際に視た夢だからな」
「!?」
「そいつによるとそれは
朔夜はその言葉を最後に、その場から姿を跡形もなく消した。
「沢田綱吉が壊れたら世界が終わる……か」
残されたチェッカーフェイスはそう呟いて、窓から小さく見える大空を眺めた。
☆★☆
ツナside
「へっーーくしゅっ!」
「ボス、大丈夫?風邪?」
「ああいや、大丈夫大丈夫。誰かが俺のこと噂してるのかなぁ……」
ツナはあはは、と笑ってクロームに言った。クロームはよく分からないというように首を傾げる。
「う、うん……?」
今、ツナ達はおよそマフィアとは思えない赤の普通車でアジトへと向かっていた。二人とも道中でスーツからラフな格好に着替えて、すっかり見かけは一般人である。まあ、クロームの眼帯が少し特殊なのは置いておくが。
「お、ーーっと。ここだね」
キッとブレーキを踏んでツナは車を止めた。助手席側のクロームはコクリと頷いた。
着いたのは並盛のはずれにある古い店。滅多に人が来ないようで埃まみれである。戸も今にも崩れ落ちそうだ。だがその戸は実を言うと、雷の炎で鋼化させており、霧の炎で古く見せているだけなので、力づくではビクともしない。そして開け方は至って簡単だが、ある特殊な紋章を付けていないと入ることは出来ないのである。
「後で車は回収して貰わないとな。……さて、と。クローム、お願い」
「了解、ボス」
瞬間、クロームのVGから純粋な霧の炎が溢れ出てくる。
「
クロームの美しいソプラノが辺りに響く。
「「
言葉の重みを確かめるようにツナも交えて言い切る。二人の覚悟が今、重なった。
そして二人は腕を捲り上げて、ボンゴレ十代目ファミリーである証拠。Xとボンゴレの紋章が入った腕を晒す。するとクロームの霧の炎がその模様を藍色に浮かび上がらせた。
《認証、完了シマシタ》
機械的な女性の声が聞こえて、古びた戸が開いていく。いかにもギギギ……と音がなりそうだがそんな音は微塵も鳴らない。
現れたのは地下へと続く階段。つまりはボンゴレアジト、並盛支部へと通じる通路である。
「行こう、クローム」
「うん……ボス」
そうして二人は階段を降りて行った。
イタリア語訳は正しくないかもしれないので、予めご了承下さい。