ダンジョンに伝説の忍がいるのは間違っているだろうか 作:sakky314
怪我を負った輝夜とライラが運び込まれたのは、彼女たちにとっては屈辱的にもアストレアに一番近い
彼女たちが運び込まれたことを知らされたアストレアは、いの一番に救護所へ駈け込み、彼女たちの姿に顔を悲痛に歪ませた。
「マダラ...申し訳ないのだけれど、頼めるかしら...」
「少し待ってろ」
そう返したマダラは手のひらを合わせる。その瞬間、その場にいたものが息をのむ。
マダラを取り巻くのは神の
「マダラ...それは?」
頼み込んだアストレアが緑色の魔法を手にするマダラへと問いかける。
「仙術というものだ。これで治癒魔法...と言うのだったか?それを強化している」
そう淡々と返すマダラによって輝夜とライラ、二人の傷はみるみる塞がり、荒かった呼吸も落ち着いた呼吸へと変わっていく。
マダラの魔法が落ち着くとともにその場を取り巻いていた圧力も消え去る。少女たちはうめき声をあげながら目を開ける。
「ここは...?」
「輝夜っ、大丈夫!?私のことがわかる?」
「アストレア様...私が貴方様のことを忘れようはずもありません...」
「まさか...お前に助けられるとはな...一応、礼は言っとくぜ...」
「怪我人は素直に寝ていろ」
数刻を経て、輝夜とライラが起き上がるとすぐに何があったのかの報告が始まった。エレボスとの邂逅、
「ここでずっと寝かせるわけにもいかないし、私達は
「フィン・ディムナから此方の防衛も任されている。離れるわけにはいかん」
「そう...ねぇ、マダラ?もし、貴方さえ良かったらなのだけれど―――
「さっきまで十人程だったが...今は二十を超えて...いや、まだ増えるか。さてと、こちらも始めるか」
瞳を黒い瞳へと戻し、マダラは野営地へと戻っていった。
◇◇◇
「伝令っ!!都市北西と北東にて
作戦室に広がるラウルの声にフィンは瞠目する。
(敵は動かないと踏んでいたが...読みが甘かったか?それに北東には彼がいるから襲わないと戦力は少なくしている...)
「ラウル!敵戦力の詳細は?」
「ええっと、北西では【
(これは陽動...いや、短絡的な暴走か。【
そんな卑劣な選択を迫られる状況であっても【
「まずは【万能者】の救援に向かう。リヴェリアとガレス...だけじゃ足りないか、アストレア・ファミリアにも要請して救援に向かわせろ。予備部隊は北東に向かわせて防衛部隊を結成。市民の避難を優先させろ」
「了解っす!」
作戦室を走り去っていくラウルを尻目にフィンはマダラのことを思い出す。
「君を窮地に置いたのは僕で、こんなことをいうのは僕らしくないし全くの筋違いだと思っているけれど...頼んだよ。マダラ」
誰もいなくなったその部屋で、自分が切り捨てたものを拾ってくれることを願うようにその男の名を呼んだ。
◇◇◇
「敵が集まっている...戦闘前の作戦準備といったところか」
チャクラによる感知を使用して敵の増援が止まったことを確認したマダラはそう結論付ける。
(不可侵は結んだが納得はしなかったようだな...)
結局、世界が変わろうとも人間という生物の本質は変わらないと思ったマダラはため息をついて、この野営地を取りまとめる冒険者へと歩み寄る。
「おお、マダラか!急にどうしたんだ?」
「突然だが、敵部隊が包囲している。敵は倒してやるから捕縛する準備をしておけ」
「おっ、おい!どういうことだ!?」と叫ぶ冒険者を置いてマダラは外へと歩み出る。外気にさらされるとともに突き刺さる殺気のこもった視線。それをそよ風のように浴びながら、足にチャクラをためて救護所の屋根に飛び乗る。
「敵の数は程々。街に被害を与えることはできない...か、角落ちといったところか。精々、滑稽に踊れよ」
マダラの瞳が紫色に光る。
「【輪墓】」
「ダイモン様!部隊の集結が完了しました!」
「よろしい。それでは我々の同志を亡き者にした男への復讐を始めるとしましょう!!」
ダイモンがそう宣言すると同じファミリアの同志たちが雄叫びを挙げる。その中に混じって苦悶の声が響いた。
どこからそんな声が漏れたのかとあたりを見渡すと、また吹き飛ばされる同志の姿が見えた。
「ダイモン様っ、敵のこうげ――ぐわぁ!」
部隊を襲ったのは極度の混乱。部隊が謎の存在に襲われている状態で冷静になれるものは、部隊の指揮を任されていたダイモンを含めていなかった。
しかし、腐っていても彼らは冒険者である。未知の体験というものはこれが初めてでもない。
「敵の不可視の魔法だ!一ヵ所に固まるな!」
ダイモンの行動は正しい。
それが広範囲を殲滅する魔法であるならば、という注釈が付くが。
おさまらない襲撃。不可視の攻撃によって同志の面々が伸されていく。
「バカなッ!!集まった同志にはLv.2も――ぐっ!」
自分の意識を刈り取るために放たれる首への一撃に何とか腕を滑り込ませ、かろうじて防御に成功する。
ダイモンがその攻撃を防げたのはもはや第六感というものに近かった。冒険者としての直感が違和を感じ取ったのは奇跡とも言えるほどに。
「砂利共にかまうのも時間の無駄と思ったものだが、その中にもお前のような愚図がいるものだ...。お前なら存外に踊れそうだな」
不意にそんな言葉が空から掛かる。「ザッ」という石畳を踏みしめる音とともに降ってきたのは、黒い長髪に赤い甲冑を纏った男。
今回、襲撃に対して最優先抹殺対象としていたマダラだった。
「貴様ァ!!私の同志にこんなことをしてタダで死ねると思うなァ!!!」
「怨み言ならいつかあの世で聞いてやる。吠えずに向かって来い。じゃれ合ってやる」
「よかろう!私自らお前の首を掲げ、同志達の手向けとしてくれる!」
唸り声を上げてダイモンが懐から取り出したのは二本一対の鞭。それを叩きつけるようにして振り下ろしてくる。
後ろに飛び退くと石畳を砕く威力に目を見張るが、問題はそのあとだった。
「噛み付け!!」
ダイモンがそう唱えると同時に鞭の先端が急激に軌道を変え、その咢を開いて襲ってくる。
二対の迫る咢を打ち払い更に距離をとってダイモンの手に持つ武器を見極める。
(猿飛一族の長が契約する閻魔のように武器に変化する生き物か...あの形状からしておそらくは蛇、毒か麻痺も持っていそうだな)
「武器自らにチャクラがあると思ったが生き物だったとはな。たしか、
「よくわかったな...こいつは19階層に出てくるデリテロ・スネークを贄に作った
ダイモンの振るう腕に従順に伸びてくるときもあれば、本能のようにマダラを食い殺さんとする出鱈目な動きもする。上下左右から入り乱れて迫りくる鞭たちをマダラの写輪眼は、見逃さずに打ち払い続ける。
致命的な一撃を打ち払うほどに腕の芯まで伝わる鈍痛はマダラの本能を楽しませた。
今の体でまともに喰らえば一撃が死に直結するとわかっていながらも、マダラはそのスリルがもはや快楽と言えるほどに高ぶっていた。
「ハハっ!いいぞ、もっと攻めて来い!」
「その余裕いつまで続くか見物だ!!もっと力強くなれ!」
そうダイモンが叫ぶと女の手首程しかなかった鞭が丸太のような太さまで成長する。
その破壊力は当たるもの全てをことごとく破壊してくるようにマダラへと向かってくる。
「これでもう打ち払うことはできないだろう!さぁ、同志よ!仇は今果たされん!」
断罪の鉄槌がマダラへと振るわれる
「まさか、須佐能乎に罅を入れられるとはな。この世界の強さというのも奥が深いものだ...」
「......何なのだそれは...お前の魔法は不可視の衝撃ではなかったのか...?」
マダラを取り囲むようにして作られたのは青色の鎧。そこから延びる二本の腕が巨大化した蛇の首を摑み上げ、マダラへと至らんとする一撃を防いでいた。
「お前ごときに輪墓を使うまでもない。言っただろう、じゃれ合ってやるとな。大人が愚図ごときに吠えることなどあるはずがないだろう」
そういったマダラのチャクラが高まり、肘のあたりから二本目の腕が生える。
生えてきた腕が一振りずつ波状の刀身を持つ両手剣を握る。
そして振るわれた剣は、摑まれた鞭達を根元から断ち切りその姿を灰へと還した。
「存外あっけないものだな。だが、勝てると思ってこのオレに挑むお前の姿は中々に笑えたぞ」
そう鼻で笑うマダラに武器と共に戦意を失っていたダイモンは、再び憤怒の表情を浮かべる。
「くたばりやがれぇぇぇえええ!!」
向かってきたダイモンは目の前で爆発。
最後のいたちの最後っ屁もマダラには埃一つ届かず、その肉体を道の赤染みへと変えた。
「所詮この程度か」と足元の染みを見下したマダラは踵を返し、
◇◇◇
「マダラか!中央から増援も来たが...敵の首魁はどうなった!?」
「ダイモンと呼ばれていた敵の首魁なら自決した。連中の捕縛は...滞りないようだな」
「ああ!お前のおかげで怪我を負ったものもいなかった!」
そういって囃し立ててくる周りの冒険者たちを見て『戦国時代に戻ってきたみたいだ』とマダラは感じていた。