ダンジョンに伝説の忍がいるのは間違っているだろうか   作:sakky314

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正義の家族

 昨日の大規模な襲撃から一夜が明け、都市の冒険者はフィン・ディムナによって中央広場(セントラルパーク)へと集結を始めていた。

 戦えるものをすべて集めるというフィンの計画は、もちろん()()()()()冒険者も含まれる訳で、その治療を半ば『お前できるんだろ?やれよ』というように請け負わされていたマダラも当然巻き込まれていた。

 そしてその結果、人を助けることは正義であると考える少女達一派と再会することは必然であった。

 

「っなぜ!?貴方がここにいる!!」

 

 不意にそんな言葉が投げかけられて来たのは他の治癒者(ヒーラー)に「増援が来てくれたから一旦休憩にしましょう」と言われた時のことだった。

 

「お前は――」

 

 声をかけてきた長い耳を持つ小娘を眺めながら、目の前の少女が誰であったかを思い出そうとする。

 

「どうしたのリオン?急に大声を出して――あっ!あなたがマダラね!アストレア様が探していたわ!さあ、こっちよ。この清く可憐なアリーゼ・ローヴェルが連れて行ってあげるわ!!」

 

『パチコーン☆彡』と過剰なウインクを繰り出し、手を引いて連れて行こうとするアリーゼにあのマダラでさえ面を食らってしまう。

 そんな今にも駆け出していきそうなアリーゼの手首を握ってリオンは二人を立ち止まらせる。

 

「アリーゼ...この人間(ヒューマン)も引いてしまっています...というか、アリーゼはこの人間を知っていたのですか!?」

「知ってるも何も結構な有名人よ?知らなかったのはここ数日内から飛び出していた『お転婆エルフちゃん』だけね☆」

「そっ、その呼び方はやめてください!!迷惑をかけてしまったことは分かっています!」

「それでこの人はなんでも『闇派閥(イヴィルス)の包囲網を突破した』とか『北東区の番人』とかいろいろ噂されているわよ」

 

 自分のしたことでもないのに胸を張って高々と言い張る赤髪の小娘が「そうでしょ?」と問いただしてきたので、マダラは「まぁ...」とだけ返す。

 それを聞いてリオンは「包囲網を突破...?しかし...いや、そういえば」と自分の中の記憶の世界に入ってしまった。

 

「それじゃあ行きましょ?」と再びマダラの手を取り連れ去ろうとするアリーゼにリオンが待ったをかける。

 

「待ってください!まずは謝罪を...勝手な勘違いをして貴方に剣を向けたこと。申し訳ありません」

「謝意は受け取っておこう」

 

「それと一つ聞かせてもらいたい。貴方にとって......正義とはなんですか?」

 

「なんだ?お前もあのいけ好かない男に問われた口か?正義だなんだとくだらん問いは――」

 

「くだらなくなどないっ!正義は巡ると気づきました...しかし、その正義とは何なのか私にはまだわからない。だから、私なりの答えを見つけたいのです」

 

「そうだな、オレの正義は大切なものを守り抜くことだ」

 

 それはマダラにとって崖の上で戦友に誓ったことであり、守られることの出来なかった誓いでもある。

 しかし、それはマダラが愛した弟の兄であるが故に疑うことのない正しさでもある。

 

 正義のことをくだらないと一笑したにもかかわらず神妙な面持ちで真面目に語られた言葉は、少女たちの心に波紋を起こした。

 

 

 

 

「ねぇ、私も一つあなたに聞いてもいい?」

 

 自分の前を歩いていた小娘が立ち止まり振り返らずに聞いてくる。

 

「あなたの言っていた大切なものを守ることは正義として正しいと思うわ。でも、それでも大切なものを取りこぼしてしまったら...私はどうすればいいの?」

「...貴様は似ているな」

「え?」

「俺の友にお前は似ている。そいつは豪放磊落を体現したような奴だったが、ちょっとしたことで落ち込むようなバカだった」

「わっ、わたしってそんな風に見えてるの!?」

「そんなあいつは何時も夢を語っていた。あの時では誰もが鼻で笑うような夢をいつも大真面目にな」

「夢...」

「その過程で出てしまう犠牲も対立も曲げることはできない。ならばそれを耐え忍ぶ覚悟を持つことしかできない。目標を叶えるためにな。あいつを...見て俺はそれがわかった」

 

「犠牲を...耐え忍ぶ...目標を叶えるため...ッ!!見てマダラ!!」

 

 そういって自身の二の腕を差し出してくる娘に「なんだ...?」と訳もわからず戸惑ってしまう。

 

「あまりにも真面目(シリアス)な雰囲気で話してたものだから、鳥肌が立ってしまったわ!!」

 

「人がせっかく真面目に話してやったのにおちょくってんのかテメェは!!」

 

「でも...ありがとう。おかげで少し気が晴れたわ」

 

「おっ、おう...それなら、まぁ、よかったな」

 

「そうだ!決めたわ!これからあなたをおにい様と呼ぶわ!」

 

「は?」

 

 そうやって決めつけてくる娘に今度こそマダラは言葉を失ってしまう。

 

「私の憧れは紳士でいぶし銀なガレスのおじ様だけれど、あなたも見守ってくれているおにい様のようだもの!」

 

 そういって先を走っていく小娘に、マダラは頭が痛くなってきた。

 

「そういう自分勝手な所もあいつによく似ている!」

 

 

 

 

◇◇◇

 

「アストレア様!おにい様を連れてきました!」

 

 静まった部屋によく聞きなれた快活な少女の声で聴きなれない単語が響き渡る。

 

「おにい様?」

 

 アリーゼに向かって聞き返したアストレアだったが、そのあとに入ってきた青年を見て納得したように微笑みを浮かべる。

 

「あの子に気に入られちゃったわね」

「こちらとしてはあの大胆さにはうんざりしているところだ。まったく、親の顔が見たいとはこのことだな」

 

 此方のことを笑顔で見てくる少女にうんざりした様子のマダラを見て、彼女の親ともいえるアストレアもマダラにはわからないように目を背け、話題を変えて本題に入る。

 

「とっ、ところで本題なのだけれど。今、この都市の人々は全力をかけて守ろうとしている。...貴方はやっぱり戦うことはしない?」

「オレは得物を失ったと...言い訳は無駄なようだな。まぁ、あれだけ奴らを倒せば当たり前か...」

「えぇ...ほかの冒険者も貴方の強さについては気づき始めている。最後まで戦わないとなると...その...」

 

 北東区で闇派閥(イヴィルス)を退けたという実績は冒険者や民衆の間で既に広まってしまっている。フィン・ディムナもマダラをどうにかして扱うことができないかと考え、説得を少しでも親交のあるアストレアに頼んでいた。

 ここでマダラが戦わないということは、この戦いに『正義』と『悪』のどちらが勝ってもその世界にマダラの居場所はなくなってしまう。

 それを危惧したフィンもアストレアも彼のことを思っての説得ではあるが、マダラはその思いやりを拒絶した。

 

「オレがこの戦いでやることはない。そも、外様の俺が出しゃばるものでもない」

 

 きっぱりと断りを入れ、不参戦の意思を揺るがせないマダラを目にしてアストレアはマダラの意思を尊重するように「そう...」と呟いた。そして、この戦いは()()()()()()であるという道理も理解した。

 

「理由を聞かせてくれないかしら...?」

 

 ここまで黙って話を聞いていたアリーゼはその理由を聞きたがった。正義の眷属だからこそ、助けない選択をとるマダラに外様などではなく、自分を納得するだけの理由が欲しかった。

 

「はぁ...まあ、ここまで来てその理由を語らぬのも無粋というものか。このことを語るなとも言われていないしな。オレがこの都市に来た時、エレボスとその供二人と会った」

 

 突如として語られる新事実(事の始まり)にアストレアが慌てる。

 

「ちょっ、ちょっと待って!?輝夜、ライラもっ!ちょっと来てくれる!」

 

「アストレア様?お二人で話すと聞きましたが、どうかされましたか?」

 

 そういって輝夜とライラが部屋へと入ってくる。焦った様子のアストレアに眷属たちは怪訝な顔を見せる。

 

「貴方達も聞いたほうがいいと思って...彼がエレボスとあの二人に会った時のことを...」

「お前っ、あいつらに会っていたのか!?」

「いや、都市外から来たのだ。そんな者を闇派閥(あいつ等)が見逃すはずもない。嘘ではないのだろう」

「お兄様はそんな小さなことで嘘を吐くような人じゃないわ!」

 

「「お兄様??」」

 

 ため息を吐いたマダラを見て輝夜とライラは(あぁ、こいつも振り回されているのだな)と心の中で思った...。

 

「話を戻そう。オレがこの都市に足を踏み入れた時に彼奴等に会った」

 

 そうしてマダラは彼らと出会った時のことを掻い摘んで話す。

 

「貴様...よく生きてここまでこれたものだな」

「まったくだぜ、生きていること自体奇跡みたいなもんだぜ?」

「それほどか...いや、そうだな」

 

 マダラの話を聞いて輝夜とライラがその偉業を称える。話を聞いていたアストレアもアリーゼも内心では舌を巻いていた。

 

「そんなことよりもだ!お前、あいつらの弱点とか何か気づかなかったのか?あたし等が今求めているのは情報だ。ほら、なんでもいいから早く話せ!」

 

「彼奴等の弱点か...そうだな―――」

 

 彼らの対策会議は夜が更けるまで続いていった。

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