ダンジョンに伝説の忍がいるのは間違っているだろうか   作:sakky314

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絶対悪

 時は数日前―――マダラが迷宮都市(オラリオ)へとたどり着いた日にさかのぼる。

 

「この程度の輩しか来ないとは、つまらないを通り越して、もはやただの作業でしかないな」

 

 オラリオを目指して進むマダラの歩みを闇派閥(イヴィルス)の面々の誰もが止めることができなかった。後に残るのは無残にもこと切れた残骸のみ。

 都市壁外に配置された闇派閥の面子はそれほど強くはない。彼らはあくまでもオラリオへと侵入する勢力を妨害するためにいる。都市外の有力国家や学区、主要都市で次々と火種を撒き、都市外からの侵入者は何も知らない田舎者か商人くらいなものだと高をくくっていたからこそ、不測の事態(マダラ)に対しての組織的な行動が遅れに遅れていた。

 故に、マダラは妨害らしい妨害を受けずに都市の門までたどり着いていた。

 

 だが、それを見過ごすようでは闇派閥を名乗っていないし、都市の壊滅を起こそうなど考えてはいない。

 そして、そんな下界の未知(イレギュラー)を流すような邪神でもなかった。

 

 だからこその最高戦力投入

 

「不快な雑音が消えるのは歓迎すべきことだろうが、喧しいのも癇に障る」

 

「つまらない戦だと失望していたが...まさか、外から喰いごたえのある馳走が突っ込んでくるとはな」

 

「やっと強者が出てきたか。つまらん者ばかりで退屈してきたところだ。相手をしてやる!」

 

 ここにそれぞれの世界の最強が一堂に会した。

 

 

 

「アルフィア...手を出すなよ。こいつは俺の獲物だ」

「面倒ごとに首を突っ込むつもりもない。勝手にしていろ」

 

「負けた時の言い訳が欲しかったか?その慢心は己を殺すぞ?」

 

「ハッ!これは慢心じゃない...自信というのさ」

 

 そういって臙脂色の短髪と全身鎧の男は漆黒の大剣を抜き放つ。

 それを見てマダラは腰から一つの巻物を取り出す。白煙と共にその手に握られたのは一つの団扇だった。

 この世で目覚めた時になぜか持っていた持ち物の一つ【霊樹の団扇】は、マダラが最も慣れ親しんだ武器であった。それと共にその瞳を輪廻眼へと変えてマダラは敵を見つめた。

 

「せっかくだ。(これ)で戦ってやる」

「粋だねぇ...そうゆうのは嫌いじゃないぜ!!」

 

(速い!)

 

 八門の体術使いとは違う暴力的な速さ。輪廻眼でその動きを見切れても体が追い付かないマダラは、振るわれる黒塊と己との間に団扇を割り込ませることで精いっぱいだった。

 間に緩衝があるとはいえ振るわれたのはLv.7(この世界最強)の膂力。その一撃にマダラは吹き飛ばされて城壁へと叩きつけられる。

 

「なるほど...この世の強さは俺の常識では測れないらしい」

「俺をがっかりさせてくれるなよ。お前との食事(戦い)は楽しめるだろうからな」

 

「フハハハハハ!認めよう!純粋な力でオレはお前に勝てん――」

 

 口の端からこぼれる血をぬぐってマダラは敵の強さを認める。そしてマダラから高ぶる魔力。その高まる魔力に釣られるようにザルドの口の端も吊り上がっていた。

 

「――だから、このうちはマダラもお前に勝つために力を尽くそう」

 

 全力ではない。彼我の力の差は理解できた。完成体であってもあの黒剣の一振りによって砕かれるだろう。だからこそ、部分的な須佐能乎の展開だった。

 そしてそれをザルドの方も理解していた。アレが纏う青い鎧にはまだ上があると。だが、それを見せろと言うことはしない。勝てる策を弄することは、意地汚い冒険者である彼が好んでいる事柄でもあったから。

 それを踏まえて彼はもう一度突進する。やってみせろと言わんばかりに同じ歩み。

 

 ザルドが振るった一撃は伸ばされた骸骨の腕を簡単に粉砕した。

 

 

 

 そんなことは分かり切った結末だった。

 

 だが、その粉砕の瞬間。

 

 刹那ともいえる間でもあるが一瞬の拮抗が存在する。

 

 それを狙っているマダラがその一瞬を見逃すはずもない。

 足にためたチャクラを用いて、その懐へと迫る。振り下ろされる剣がマダラの着込む甲冑を掠め、激しい金属音が鳴り響くが、マダラの疾走を阻むものはなかった。

 振るわれる団扇。

 

 だが、ザルドの着込む全身鎧もまた一級品。その硬さとザルドの耐久によって、マダラの一撃は傷つけるどころか動かすこともできないという結果に終わる。

 

「なるほど。俺じゃなかったら勝っていたな」

 

 そういって振るわれるのは反撃のこぶし。だが、それよりもマダラが手のひらを開くの方が早かった。

 

「【神羅天征】」

「なっ!!」

 

 とてつもない衝撃波がザルドを襲う。しかし、それにひるむような軟な鍛え方をザルドはしていない。

 

(こいつ...神羅天征に耐えきるのか!)

 

 斥力を使った衝撃に耐えられ、その反動によってマダラの方が吹き飛ばされる。

 空を飛び体勢を立て直せないマダラにザルドが追撃を行う。

 

 それを牽制するかのように投げられるクナイ。

「小細工か」と打ち飛ばして追撃をやめなかったザルドだったが、不意から流れた音が彼を回避させた。

 

 体の脇を通り抜けたのは先程打ち払ったはずの投げ物(クナイ)。その躱した投げ物すらも目の前で回転し、再びザルドのことを襲う。

 その隙に体勢を立て直したマダラは次々と飛び交うクナイの数を増やしていく。

 

「面妖な技を使う...だがそんなもの気にしなければいいことだ!」

 

 そう言い切ったザルドは再びマダラに向かって走り始める。露出している頭への攻撃を防ぎ、飛び交うクナイをその鎧で受け弾く。

 それを待っていたかのようにマダラは次のクナイを投げた。

 「バチッ!」という音とともに先程とは比べ物ならない速さで迫りくるクナイ。飛び交うクナイに慣れてしまっていたザルドはそれに対して一歩反応が遅れる。

 頬を伝う血の雫。マダラの手に戻るたびに増えていく雷を纏う投げ物。完成されつつある雷の刃の牢獄に狩人は閉じ込められる。

 投げられるクナイは的確に己の手足をついてくる。鎧をまとっている以上怪我を負うことはないが、纏っている雷がザルドを痺れさせ、行動を阻害してくる。だが―――

 

「ぬるい!」

 

 そういって叩きつけられる黒剣。たったそれだけの衝撃で雷の檻は完膚なきまでに破壊された。

 

「うおおおおおおおお!!!!」

 

 そう叫びながら彼我の距離の差を瞬く間に消し、振るわれる剛剣に対してマダラは真っ向から迎え撃った。

 まさか真正面から迎え撃つとは思わなかったが、次に剣を持つ手に伝わる衝撃に今度こそ面食らってしまう。

 

「少々溜めるのに時間がかかったが、これで貴様と切り結べるな」

 

 

 

 瞳を閉じていても感じられるその光景にアルフィアは目を疑った。

 魔力をためて一瞬でも能力を上げることは理解できる。しかし、終始劣勢とはいえザルドと切り結ぶことができるほどの能力の激的な向上という、あの男が見せている芸当が信じられなかった。

 大気中のエネルギーを取り込むという極致...その自身の知らない未知の力にアルフィアも興味がわいた。

 

 

 

 歩み寄ってくるもう一人の参戦者に高ぶっていた二人の争いは一旦止まる。

 

「オイ...手を出すなと言ったはずだが?」

「私もその男に興味が湧いた。それにこれ以上私の周りで雑音を建てられるのも癪に障る」

「足を引っ張ったらお前から喰らってやる」

 

「やっと参戦か...もともと二人を相手する予定だ。かかってこい」

 

「【福音(ゴスペル)】」

 

 開幕は超短文詠唱の音の塊による攻撃だった。

 だが、マダラの持つ瞳はチャクラを識別する。アルフィアがマダラのチャクラを感じられたように、マダラもアルフィアの魔力を見切っていた。

 

「【うちは返し】」

 

 音の塊がマダラの持つ団扇にあたるとともに吸収される。そして吸収された魔力は爆風となって後から迫っていたザルドを襲った。

 

「ぐおぁーーー」

 

「なるほど...魔力を吸収し、爆風として打ち返す。それがその武器の能力というわけか...」

「アルフィア!お前、足引っ張たら喰らってやるっつたよなぁ!!」

 

 アルフィアが放った魔力をそのまま返された形となったザルドの抗議は、「喧しい」とアルフィアに両断された。

 

「この世界に来て数刻でここまでワクワクできるとはな...だが、まだこれからだ!【仙法・火遁業火滅失】」

 

「ザルド!下がれ」

「オレに命令してんじゃねえ」

 

 悪態は吐きつつも素直にアルフィアを壁にする。

 

「【魂の平静(アタラクシア)】」

 

 アルフィアの魔法によって豪炎の津波が無効化される。その向こう側にマダラの姿はなかった。

 

「そこか!」

 

 石畳の割れる音とともに地面からマダラが飛び出してくる。飛び出したマダラを両断したザルドだった。

 

「後ろだ!」

 

 両断されたマダラが雷へとなり果てザルドの身を駆け抜ける、ザルドの背後からマダラは紫色の雷の突きをもって迫りくる。

 痺れていようが超人的な反応速度をもって繰り出される突きに拳を重ねる。その衝撃によって両者ともに吹き飛ばされる。

 反撃に回したザルドの腕は痺れて使えないが、マダラの腕も反撃によって折れる。

 

「だが、相打ちならばオレの勝利でもある」

 

 そう語るマダラの腕はもうすでに回復しつつあった。

 

「どうやら貴様の強さも俺達の常識では測れないようだな」

「まったく、人型の怪物(モンスター)だと言われた方が信じられそうだな」

 

「お前らと同じ畜生共と一緒にするな」とマダラは冗談の言葉に冗談で返す。

 

「アルフィアもうそろそろ時限だ...次で終わらせる。合わせろ」

「...いいだろう」

 

「来るか...」

 

「【父神よ、許せ、神々の晩餐をも平らげることを。貪れ、炎獄の舌。喰らえ、灼熱の牙!】」

 

 黒剣に纏わりつく極大の焔。それに合わせてアルフィアがマダラを挟むように位置取りを整える。

 

「【レーア・アムブロシア】!!」

「【福音】」

 

 マダラに迫りくるすべてを焼き切る炎撃と悉くを爆ぜさせる破壊の音階。団扇で吸収されないように挟撃する両者に対して、マダラは団扇を捨てて手を突き出す。

 

「【餓鬼道・封術吸印】」

 

 そう唱えるとともに手の平の先で破壊の魔法はマダラに吸収され無効化される。

 自分たちの一撃が突き出された腕一つで消え去ってしまっては、さすがの彼らでも呆けてしまう。

 

「これで終いか?ならば次はこちらの番だ。【天―(てんが――)――」

 

 

 

 

「そこまでにしないかい?」

 

 そういってマダラの前に姿を現したのは戦場には似つかわしくない小綺麗な衣装に身を包んだ男だった。

 

「やぁ、初めまして来訪者よ。俺の名前はエレボス。この悪意を率いる首魁で邪神の一人さ」

 

 そんな軽い掛け声をかけられてしまったからか、マダラ達の間に渦巻いていた戦意は急激に失せてしまった。

 

「...マダラだ。それで襲撃してきた烏合の集まりの(かしら)が一体何の用だ?」

 

 ここに来るまでに襲撃者の記憶を読み取ることで神の存在というものを知ったマダラであったが、共に忍界での人生を終えた柱間との逢瀬を邪魔されたことが半分、世界を創造しながら人間という争いを望む不完全な生き物を創造した罵倒が半分、それが神への怒りという態度となって如実に表れていた。

 

「フッ、非力な神一柱に向かって怖いものだなぁ...。それにザルドも戦いを邪魔したことは謝るから怖い顔はやめてくれ...。俺はただ、君と話がしてみたかっただけだ」

「話だと?」

「ああ、そうさ。君にとって『正義』とは何だ?」

 

 昔のマダラだったら『勝者、平和、愛だけの世界を創ること』。そう語ることに思考の余地はなかった。

 しかし、それすらも他人の戯言の一部で踊らされていただけだったことを知ってしまっては、どれだけその夢を渇望していようともそれを語ることもできなくなってしまっていた。

 

「オレの正義か...」

 

 そう過去の自分を見つめる様に上の空の表情を見せるマダラにエレボスは声をかける。

 

「神として意見を言わせてもらうが、君は...君の芯となる部分は曲がっていない。だが、君は君自身を見失っている様に見える。教えてくれないかい?君の芯となる部分のその原点を」

 

 そう語りかける邪神の囁きがマダラの耳朶(じだ)(くすぐ)る。浮き出された心に釣られるようにマダラの口も開く。

 

「昔、オレが...いや、オレ達が作り上げた夢は所詮まやかしの平和だった。作り上げた夢は結局のところ人の犠牲無しでは成り立たぬものだとな」

「それで見限ったんだな?君が作り上げた夢も絆もかなぐり捨てて」

「そうだ。たとえ恨まれようが憎しみの因果を断ち切り、夢想を理想の現実へとしようとした」

「そうか、平和のための剛毅果断。素晴らしい話じゃないか。どうだ?

 

オレの協力者となって、今度こそその夢を果たそうじゃないか!」

 

 手を大振りに広げ、『一緒に世界を支配しようじゃないか』と言わんばかりに下界の子供を悪の道へと(いざな)う邪神。

 そんな悪魔の甘言を聞いてはいられないとばかりにアルフィアとザルドは目を背ける。

 そんな悪意が満ちる言葉はマダラの言葉によって吹き飛ばされた。

 

 

 

「勘違いするな、オレは既に死んだ身。オレにとってこの世界は何の価値もない。それにその夢を果たす理由ももはやない」

 

 

 

「はっ?......クククッ!クハハ八八ノヽノヽノヽノ \ / \!!ッたく、道化はヘルメスかロキ、あるいはアポロン辺りの役目だってのになぁ!!神が子供の二番煎じとはッ!荒唐、滑稽、ひょうきんな様とはこのことだ!!アハハハハハ―――」

 

 自分のやっていることが特大のエゴであると自覚しているが故に、それすらも目の前の子供の二番煎じでしかなかったこと。それが全知全能の神(デウスデア)であるエレボスにとって、自分がとてつもなく馬鹿々々しく思えるのだから笑いが止まらない。

 

「貴様等がその朽ちる体で何をやろうと構わんが、オレにとって不愉快ならば斬る」

 

「お前...」

「私達のことに気づいていたのか...」

 

 自分たちの状態を知られていることに絶句するアルフィアとザルド。そんな二人を置いてエレボスはマダラへと願い出る。

 

「マダラ、もし聞き入れてくれるなら...この戦いをどうか見届けてくれないか?」

「なんだと?」

「今ここには『絶対悪(俺達)』に立ち向かう冒険者達(『  』)がいる。それは君にとって価値のある出会いになる」

「......よかろう」

「ありがとう。感謝するよ」

「勘違いするな。お前の神託に従うのではない。オレを楽しませた此奴等の行く末を見てやるだけだ」

 

 神は子供たちの嘘を見抜ける。マダラが見せたその本心に邪神は笑顔を見せた。

 

 最強達が邂逅した一本道(ストリート)。マダラは道を進み、悪の首魁達は元の道を引き返していった。

 

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