深海棲艦。20年以上前に突如として現れ現在の武器をもってしても倒すことができず、世界各地に甚大な被害をもたらした。しかし、日本で突然“艦娘”として覚醒した女性が現れてから状況が徐々に一変。艦娘も少しづつ増えていき、戦況は変わっていった。だが、基本的に同一艦は存在せず、全世界すべてで200人以上いるかいないかである。さらに、異能を持っているものも少なくなく現在確認されている異能を持っているものは肉体強化系、自然操作系、精霊操作系その他もろもろ。深海棲艦はどういう訳か数は一向に減る気配はない。幸いにも深海棲艦には異能を持っている個体は今現在確認されていないことだ。20年たった今では訓練生を育成できるほど余裕ができ始めてきた。
そして現在、西暦は2147年4月初め。ここは海軍総本山の大本営。とある駆逐艦寮の一室。夢を見てうなされている少女が一人。
「お母さん、嫌だ。行っちゃいやだ!」
「お願い!僕達と一緒にいてよ!」
「大丈夫、お母さん強いから!」
「お母さん…すごい血が…嫌だ、死んじゃ嫌だ!」
「……またこの夢…最近よく見るな…」
少女の艦娘としての名前は白露型駆逐艦1番艦白露。年齢は18歳。茶髪のボブヘアーが特徴の少女だ。白露は起き上がると、枕元に置いてあったカチューシャを付ける。訓練課程中であと三日たてば卒業し、新しく創設される鎮守府に着任することになっている。成績は優秀で、すぐに即戦力になれるほどの逸材だが、素行不良が目立ち度重なる命令違反に時には喧嘩。教官の言うこともほとんど聞かない。だが、評価は分かれており白露のことを怖がるものが半分、興味半分で話しかけてくるものや戦闘力を高く評価し勧誘してくるものが半分。そのせいか、この大本営に所属している艦隊のものから手合わせを申し込まれることも多い。そのたびに適当にあしらっているか強引にねじ伏せて黙らせている。
白露はゆっくりと体を起こすと、隣に寝ているものに目を向ける。隣で寝ているのは姉妹艦であり、双子の妹でもある白露型番2艦の時雨。犬耳のようなくせ毛に肩までかかる黒髪が特徴的な少女だ。どうも、訓練生としてここに来た時から改二と呼ばれる状態であったらしく上の者達からかなり注目されている。少しぐれてしまっている白露とは違い、物静かでとても落ち着いた性格をしている。謙虚な性格で周囲からの信頼も厚い。成績も優秀、白露同様即戦力として期待されている。寝ている時雨に近づき思い切り頬を引っ張る。そろそろ起床時間のため起こさないといけないからだ。時雨は朝がとても弱いためこうして強引にでも起こさなければいけない。
「時雨、そろそろ起きろ!」
「あだだだだだ!白露、起きるから手をはにゃして!」
頬を擦りながら、伸びをする時雨。あくびをしながら起き上がり部屋を出ていく。白露も部屋を出て、洗面所のある場所まで向かう。寮の中であるため、洗面所やトイレなどは基本的に共同だ。他の部屋にいる者達はまだ起きていないようで洗面所には来ていない様子だった。顔を洗い、歯を磨いてから部屋に戻り制服に着替えて食堂の方に向かう。食堂に向かう途中、ちょうど起床した者達が部屋から出てきており、適当に挨拶をしながら寮を後にした。
「あぁ、眠い。飯食って、その後座学かよ…」
「ふぁ~…本当だね。それにしても今日はずいぶんと眠そうだね。どうしたの?」
「…また昔の夢を見てさ…」
「…あぁ、そうか…。もう10年も前なんだね」
「…父方の家が反艦娘思想のせいで、私らは向こうの爺に殺されかけて、父さん達が何とか私達を逃がしてくれたけど…」
「そのあとは、お父さん達が家に反発してお爺さん達をぼこぼこにしようとしたけど…」
「多勢に無勢で半壊までしかいけなかったらしいからな…結局爺とその門下生達はテロリストになったみたいだし…。結局こっちに追手が来ちゃったし」
「僕達を逃がそうとして、お母さんは…」
「…そうだな。まぁ、その母さんは」
二人は目を細めながら食堂のドアを開ける。ドアを開けると、厨房に包丁をジャグリングのように回しながら料理をしている女性がいた。茶髪のショートヘアが特徴でどことなく白露に似ている。周りにいる者達はこの光景に慣れっこなのか普通に料理を作っている。
『瀕死の重傷になったものの元気に過ごしているんだけどね( ̄▽ ̄;)』
「あ、
「ちょ!母さん、ここでは人間としての名前じゃなくて艦娘としての名前を呼んでって言ってんじゃん!」
「いいじゃない!他の子が艦娘としての名前を呼んでも私は人間としての名前で呼ぶからね!」
「…もう勝手にしてくれ」
この女性は二人の母親である
「母さん、今日の朝飯何?」
「お魚と卵焼きとサラダとご飯に味噌汁」
トレイをもってカウンターまで持っていく二人。朝食をもらうと、適当な席に着く二人。座学を受けた後は、実戦訓練があるため今のうちに食べておかないと持たない。実戦訓練が昼前に行うからだ。食事を食べようとすると、向かいの席に三人の少女が付く。制服が白露達と一緒のため姉妹艦だ。そのうちの一人は時雨と同じように犬耳のようなくせ毛、赤眼に金髪、髪の尖端が桜色に染まっている。時雨と同様訓練生として入る前から改二と呼ばれる状態であったらしい。
「白露お姉ちゃん、時雨お姉ちゃん。おはようっぽい…」
「あいよ…。お前も朝弱いな…。夕立」
犬耳のくせ毛が少し動いたような気がしたが気にしないことにする。少し間の抜けた返事をしながらご飯を食べる夕立。白露型4番艦だ。その様子を糸目で見ながらご飯を食べる芦黄色の長い髪をツインテールにしている少女が話しかけてきた。
「ごめんね白露姉さん。何とか叩き起こしたんだけど」
「どうせ実戦訓練があるからさっさと起きろとか言ったんだろ村雨」
「ご明察よ…姉さん」
白露型3番艦村雨。村雨は夕立と実の姉妹でもある。村雨が17歳、夕立が16歳と一つ差らしい。史実では村雨と夕立の竣工日は一緒なのだが、どうやら艦としての序列が上だとしても年齢云々は関係ないらしい。現に、1番艦のものが6~7番艦のものより年齢が下だということもざるにある。
「春雨は、今日は表情いいね!昨日少し元気なかったけど」
「はい、色々考えちゃいましたけど吹っ切れました!はい!」
白露型5番艦春雨。ピンク色の髪を左側頭部で黒紐でサイドテールにしているのが特徴的な少女だ。歳は16と夕立と同い年。だが、上下関係を重んじるのか同い年の夕立に対しても敬語で話している。座学は得意だが、戦闘が苦手であるため実践訓練前は大体元気がないことが多い。
「吹っ切れた?どうして?」
「あ~、えっと……」
春雨は指をつんつんしながら白露の方を見る。白露は春雨に少し目を細め睨んでいるような顔をしていた。余計なことは言わないでいい。そう言っているような感じがしたので春雨は困った顔をしながら答える。
「えっと、ある人に相談したからです…はい…」
「(・・?…ならいいんだけど」
「何々?何の話をしているのかしら?」
「あぁ、母さん。別に何も…(;゚Д゚)」
白露達は星羅の方を見る。見ると、頭の上や腕にお盆を乗せ食事を運んでいる様子だった。かなりの数があるが汁物の一滴もこぼしていない。その様子に呆気に取られていた白露だったがはっとして大声を出す。
「雑技団じゃないんだからそういうことはしなくていいってば(# ゚Д゚)」
「まぁまぁまぁよいではないかよいではないか(笑)」
「ぐぬぬ…」
星羅は慣れている様子で食事を運んでいく。白露もさすがに自分よりも強い母に対しては何もできないためいつもこの調子ではぐらかされるか、頭を撫でられて恥ずかしい思いをするかの二択だ。さすがにもう慣れてきたが、それでもあの白露でも恥ずかしいものは恥ずかしいのだ。さっさと朝ご飯を食べ終え席を立つ白露はそのまま入口の方へ向かっていく。
「白露、もう行くの?」
「あ~、座学まで適当にぶらつくわ。時間になったら呼んでくれ」
「わかった。僕達も食べよう」
「白露姉さんが問題を起こさないか心配だわ…」
「そうなったら夕立も助太刀するっぽい!」
「あんたはいいの(# ゚Д゚)」
村雨のあまりの気迫に夕立は少ししゅんとなってしまうが、春雨が頭を撫でてフォローしてくれた。
「にゅふふ~座学が終わったら休憩して海に出て~っぽい~!」
「夕立はずいぶん元気だね」
「もうすぐ訓練課程が終わるから浮かれてるのよ時雨姉さん」
訓練課程を終えるまであと三日。三日なんてあっという間だ。訓練生全員がそれぞれの配属先に行くことになるだろう。新しく創設される鎮守府、問題児達が集まる鎮守府、強者ばかりがいる場所などなど。ただ、白露は別にどこに行っても暴れられればそれでいいため深く考えていないが。
「確かに訓練課程がもうすぐ終わるからな~…思えばあっという間だったな…」
「そうだね。白露は命令無視に命令無視に教官への態度も酷かったし…」
「人間なんて信用できるかくそが…。こっちは昔殺されかけたんだっつの…」
「はいはい、暗い話はここまでにしましょうよ。さて、今日も座学がんばりま」
「こらああああ不知火もういっぺん言ってみろボケ!誰が役に立てないじゃ!誰に艦娘やめろって言ったんじゃ!」
「実際そうでしょう!艤装を付けてもろくに戦えない!戦場に出ることもできない!そんなことで艦娘をやっていけるはずないでしょう!」
「やめなさいよ不知火!仲間でしょう!」
「浦風もやめて!私は気にしてないから!」
教室に入ろうとすると、二人が取っ組み合いの喧嘩をしておりさらに二人がそれを何とか止めようそしている様子だった。一人は青髪にセーラー服、水兵帽に肩口はフレンチクルーラースタイルの少女。陽炎型11番艦浦風。白露の同期であり同型艦の浜風とともにいるのが多い。歳は同い年だ。その浦風を止めようとしているのが陽炎型13番艦の浜風。銀髪で右目を隠した変則的なボブヘアーをしているのが特徴の少女だ。この二人は同じ施設の出身だが、その施設の環境が非常に悪く日常的な暴力などは当たり前だった。ある日、浜風が半殺しにされそうになった日に浦風が激怒し艦娘としての力が覚醒したことで逆に施設の職員を半殺しにした。それもありこの二人は海軍に引き取られ、浜風も艦娘としての適性があることが判明するのだが、過去のトラウマによってろくに戦うことができなかった。そのため、卒業過程を終えたら大本営の秘書として働くことになっている。
そして、浦風と取っ組み合いをしているのが陽炎型2番艦の不知火。ピンク色のセミロングをポニーテールにしているのが特徴の少女だ。非常にクールな性格で負けん気が強く生真面目な性格。戦闘になるととことん敵を追い詰める性格で、撤退指示があっても徹底的に敵を沈めようとするなど白露ほどではないが命令違反がたびたびあるのだ。根が生真面目すぎるせいか、よくこういう衝突を起こすことが多い。特に浦風とは仲が悪く、浜風関連のことになるとこのように殴り合いの喧嘩になる。不知火を止めようとしているのは、陽炎型1番艦の陽炎。狐色のセミロングを黄色いリボンでツインテールにしているのが特徴の少女。性格は明るく楽天的で少しお調子者。その性格もあるのか周囲からとても好かれている。さらに、不知火と浦風の喧嘩をこのように何度も止めている。さらにさらに不知火の暴走行動もたびたび止めようとしているほど苦労人だ。
「うわ、またかよあの二人…」
「もう放っておくっぽい。あの二人は」
「大体不知火が喧嘩吹っ掛けてるだけだろ。実力を過信しているような馬鹿が真っ先に死ぬんじゃねえの」
「白露、あんまりそういうことを言うのは…」
「白露さん!聞こえましたよ!誰が真っ先に死ぬですって!」
「あん、お前に行ったんだよ不知火。阿保かてめえ」
「ははは、今期最強候補に到達している白露に言われるとはの!」
「ぐぬぬ…」
「やめろ浦風、それに私以外にもがいるだろ。なんでも手伝いたがりの暁型の駆逐艦がよ」
「なんでも手伝いたがりって失礼ね!私が好きでやっているからいいじゃない」
白露達が席に着いたと同時に入口に癖のある茶髪のボブヘアーに左の髪にヘアピンを付けているのが特徴の少女がいた。ちょうど噂をしていた暁型3番艦の雷だ。白露と同じく今期最強候補の一人だ。ちなみに、艦娘には霊力の質によって強さが変動するらしい。ただ、霊力の質については公表はされない。公表されることによって艦娘達に悪影響を与えないか懸念してのことらしい。ちなみに、今期最強候補は3人。日本全体で最強格は15人。その中では白露達は弱い方らしい。
雷が入口に入った後に、雷と同じ制服を着た3人組が入り、さらに後ろには教材を持った女性が入ってきた。後方のドアからも二人が入ってきた。一人は黒髪を後ろに縛っており黒色のスカートに襟と袖部分が黒色のセーラー服を着たのが特徴、もう一人は薄い桃色の髪をポニーテールにし、服装はベージュのカーディガン黒いセーラー服を着ているのが特徴だ。教壇の上に立った女性が挨拶を始める。
「はいはい皆席について。今日の講師はこの足柄が務めるわ。後ろには特型駆逐艦の吹雪と長良型4番艦の由良がいるからね」
足柄と名乗った女性は、紫を基調としたジャケットに黒のタイトスカートを履いている。ちなみに、足柄、吹雪、由良の三人はすでに改二と呼ばれる状態の艦娘だ。艦娘の中でも上位の方に入るらしく、実は白露が1対1でやってもぎりぎり勝てるかよくて引き分けになるほどの実力者だ。
「さてと、三日後に訓練課程を終えるあなた達に今更何を教えるのって感じもあるけど今回は総復習よ。ちなみに…浦風、不知火。あなた達何回喧嘩を繰り返せば気が済むのかしら(#^ω^)」
「すまんの~、この馬鹿が浜風のことを言ってきたもんじゃからついな…」
「艦娘として戦闘に出れない人に事実を言って何か文句でも?」
「なんじゃまたやるのかこのボケ!」
「そっちこそ、今度こそぼこぼこにしてあげますよ!」
「そこまで!二人とも今講義中よ!」
気が付くと、二人の間にはいつの間にか狼がおり威嚇しているのか唸っている。その狼を見た後に二人は黙り席に座る。席に座るのを確認するとその狼はゆっくりと消えていった。もう見慣れた光景だが、白露は後ろにいる由良を見る。由良の手には札のようなものがあり、札には何やら文字のようなものが刻まれていた。由良は異能持ちの艦娘であり精霊系を操作する能力者だ。
「まったく。不知火、浦風…後で私のとこに来なさい。そんなにやりあいたいなら、私が徹底的に叩きのめしてあげる(#^ω^)」
『うっ…』
足柄の怒気の含んだ声に、二人は困った表情になる。それもそのはず、足柄は大本営に所属している艦娘の中でも最強格の艦娘を除けばトップクラスの実力を誇る艦娘だ。異能持ちの艦娘であり異能は
「さてと、この件は置いといて、さっきも言ったように今回は総復習よ。じゃあ、初歩的な質問になるけど、現在確認されている深海棲艦の種類は…夕立」
「ぽ、ぽい!え~と、え~っと…」
「授業をちゃんと聞いておけば、すっと答えが出てくるはずなんだけど…このままいけば、三日後までに課題を与えようかしら(#^ω^)」
「ぽいいいいいいいいい!?」
「はぁ全く…じゃあ暁、代わりにこたえて頂戴」
「は、はい!」
特Ⅲ型暁型1番艦の暁。3年前、家族でクルーズ旅行をしていた際に、船員、客全員が失踪した事件の唯一の生き残りだ。吹雪率いる大本営第2艦隊によって救出され、その後大本営に身を寄せ吹雪の世話になったらしい。そのため、吹雪にかなりなついている。吹雪も面倒見がとてもいいため、特型全員の仲はとてもいいらしい。暁は少し不安なのか一度吹雪のほうを見るが、吹雪は大丈夫というように優しく微笑みグーサインをしている。暁はその仕草に頷き前を向き背筋を正して答える。
「現在確認されている深海棲艦の種類は、駆逐イ級から戦艦タ級まで。その中にはelite級からflagship級の強化個体もいます。さらには、中には人の言語を話せる個体もいて、知能も高い深海棲艦がいます。深海棲艦が表れ始めたのは約20年以上前。その後、日本で最初に艦娘として覚醒したものが表れてから戦況は徐々に一変していきました」
「…うん、合格。大好きなお姉さんの前だから張り切っちゃったかしら」
その言葉に、暁はうれしそうな顔をし、再び吹雪のほうを見る。吹雪は再びグーサインをし、吹雪に暁は軽く会釈をしてから席に着いた。
「さてと、じゃあ霊力の質について。霊力は私達艦娘にも持ってるけど、一般人にも霊力を持っているものがいるわ。私達みたいに異能を持っているものは少ないけどね。じゃあ霊力というものについては…白露」
「はいはい…」
「はいは一回でいいわよ」
「…ちっ」
「舌打ちしたのは不問にしとくから、答えて頂戴」
白露は頭を掻きながら席を立つ。面倒くさそうにしているものの、姿勢を正し一呼吸おいてから説明を始めた。
「霊力は、大昔から一定の人間が持っていた。所説にもよるけど、いわゆる巫女さんとか霊を見る能力を持っている人とかだ。けど、艦娘が現れてからその霊力っていうのが関係しているのか、もともと艦娘としての適性があったのかはわからないけど、艦娘は一般的な霊力を持っている人達とは違う霊力を持っていた。詳しく調べたら霊力の質が一般的な人からしたら違ってた。まぁ、霊力の質が分かるようになったのは艦娘が現れてから数年たった後だけど」
「えぇそうね。じゃあ、その中でも特に異質な霊力を持っている艦娘達を何という?」
「特異艦。全世界で確認されているのは5人。
「合格。成績はいいし、戦闘力も高くて、日本の最強格の一角に名を連ねているのに、どうしてこんなひねくれてしまっているのかしら(-_-;)トホホ……はぁ、まあいいわ。じゃあ、今現在ある鎮守府、新しく創設される鎮守府も含めるといくつかしら。陽炎」
「はい。大本営を含めて、横須賀、舞鶴、佐世保、呉、岩川基地、佐伯湾泊地、新たに創設される柱島泊地を含めて8つ。ほかにも補給基地や警備府も多数あります。ただ、3年前に大湊警備府がありましたが、反乱がおこり壊滅。今は廃墟となっています。」
「よろしい。大湊の件はもう耳タコの状態になっていると思うから割愛するわ。皆ももうどこに所属するかは届け出を出していると思うけど、どこでも大丈夫と届け出を出しているものは大本営の判断でどこに所属するかはこちらで決めるわ。それから、私も含めて転属されるものも多数いるから、もし同じ所属になったらその時はよろしくね」
(…大湊…ね)
大湊事件。3年前陸軍の反乱によって起きた事件。首謀者達は捕まっておらず現在も捜索を続けている。重傷者多数。うち艦娘で意識不明の重体に陥ったものが1名。左足を切断したものが1名、下半身不随1名、PTSD発症1名、失明1名。左半身重度の火傷1名。それによって、一時大湊に所属していた艦娘および提督は大本営に身を寄せていたが1年後に再集結し今は呉に所属しているとのことだ。反乱を企てた首謀者達はまだ捕まっていない。この事件のせいで一時海軍と陸軍の関係は最悪になり、陸軍大将がここ大本営にきて土下座をして謝罪。自身の左足を切ろうとして元帥に止められたって話を何度も聞いたことがある。その元帥と陸軍大将が昔の格闘家仲間みたいだったから何とか関係は修復できたけど、一部の艦娘…。特に大湊に所属していた艦娘達は陸軍のことを快く思っていない。その後も授業は続いたが話半分聞き流しながら適当に窓の外を眺めていた。
「はい、授業は終わり。実戦訓練に向けて休憩してなさい。あぁ、白露と雷。このあと工廠のほうに行ってちょうだい。変態けいじゅ……げふんげふん。夕張が呼んでいたわ」
「げっ。夕張さんかよ…」
「何かしら?あ、もしかしてこの間言っていた件じゃない!?」
軽巡夕張。北海道出身の艦娘だ。そのためか、たまに”なまら”や”しゃっこい”などの方言を使うことがしばしばある。出撃はもちろんするが、主な仕事は工廠で武器を作ること。工廠長やほかの整備員ももちろん武器や砲塔、魚雷の整備等をやっている。だが、夕張は武器の作成に至っては足柄が言いかけたように変態の域に達してしまっているので、整備中や武器の作成中はよだれを垂らしながらすることが多いらしい。ちなみに雷が言っていたこの間の事とは、この二人の武器、俗にいうと”特殊艤装”と言われるものだ。特殊艤装とは、一部の艦娘達が携帯されることを許されているものだ。それぞれの戦闘スタイルに合わせて作られているため武器も様々。刀やヌンチャク、レイピア、薙刀、鎌などがある。白露と雷がどのような武器を支給されるのかは行ってみないとわからない。雷は目をキラキラさせながら、白露は少し面倒くさそうにしながら工廠に向かう。工廠に付き、少し奥のほうに行くと部屋の前に【夕張】と書かれた扉があった。雷が3回ノックした後に部屋に入る。白露もそれに続いた。
「こんにちわ夕張さん!この間言っていた件なんだけ…ど…」
「ふひひひひひひ!あぁ、なんか興奮してきた!この材料を加工して、駆逐艦の砲塔に利用することができれば、あぁ妖精さん!図面ありがとう!手伝ってくれて感謝してるわ!さぁ、とことん作ってやるわよ!ふへ、ふへへへへへ(笑)」
案の定、よだれを垂らしながら何やら解体したり、トンカチを使い何かを加工している様子だった。ちなみに、妖精とは艦娘が最初に出現した際に現れた手のひらサイズの者達だ。滅多に現れることはないがこのように工廠で働いている者達の前にはよく現れる。二人は呆れながらも夕張に声をかける。
「あの~、夕張さん…」
「お~い夕張。聞こえてるか~?私らは足柄に言われてここに来てんだけど…おいこら!聞こえてるんなら返事しろ(# ゚Д゚)」
「はっ!いけない私ったら、ごめんごめん(;'∀')つい武器づくりに夢中になっちゃって…」
「いつもの事だろがよ…」
「あはは…ごめんって。今渡すから待ってて」
そう言って奥のほうに進む夕張。武器ボックスの蓋を開け中を物色する。そして、二つのものを持ってきて机の上に置いた。
「まず二人用の特殊艤装を作ったわ。まずは白露、あなたの武器はメルケンサック。名付けて”ジャックポットナックル。砲雷撃すべてにおいてトップクラスのあなただけど、やっぱり持ち前の接近戦の武器のほうがいいと思ってね。お母さんに合気道や武術を習っているからそれを参考にして作ったわ」
「ふ~ん」
「威力も試してみて。そこに戦艦の砲撃じゃないと打ち抜けないほどの鉄板を用意したわ」
そう言って夕張の指さす方向を見る白露。見るとかなりの厚さの鉄板があった。白露はジャックポットナックルを手に装着し鉄板の前に立つ。そして、一呼吸をして構えると思い切り殴る。すると、鉄板に大きな穴が開いた。
「わ~お!さすが最強格の一角。それぐらいしてもらわないと困っちゃうわ!じゃあ次雷」
「はい!」
そう言って雷に鉄の糸がついた長さ20cmほどの針を渡した。
「名付けて避雷針。雷、あなたは異能艦で雷を操る能力を持つ。それに、一戸艦隊の制圧をするにはこの武器が好都合よ。この糸をあなたの体のどこでもいい。括り付けて針を飛ばして、そこから電流を流せばいいわ」
「すごい!これを使えば、私はもっと活躍できるわ!」
夕張の言った通り、雷は雷を操る異能を持っている。自身の体にまとうことはもちろん、砲撃や魚雷に雷をまとわせ、音速の速さで飛ばすことも可能だ。もちろん白露も異能持ちの艦娘であり、体全身の筋力を底上げすることができる肉体強化系の能力だ。
「さてと、武器も渡したしあなた達は実践訓練に向けて準備してきなさい。今日は各チームに分かれてのバトルロワイヤルだってさ」
「バトルロワイヤルか、私達はどのチームになるかしらね白露」
「知らねえよ、私達が入ったら大抵相手をボコるだろうが…」
「それなんだけどね白露。今期最強格の3人は1人で行動。あとはチームに分かれるみたいよ」
『……は?』
白露と雷は夕張の言ったことに対して素っ頓狂な声を上げた。こんな実践訓練なんて初めてだったからだ。
「さ~て、皆準備は整ったかの?総監督はこの吾輩、大本営第3艦隊旗艦利根が務めさせてもらうぞ!今回は変則ルール、バトルロワイヤルルールじゃ!編成はこっちで決めさせてもらったからな!」
通信機を使い指示を出しているのは、利根型重巡1番艦利根。大本営第3艦隊旗艦。砲撃と索敵は苦手だが、雷撃と足技が得意。異能持ちの艦娘であり脚力だけを底上げする肉体強化系能力者。
そして、各班は以下の通り。
まず最強格の一角に名を連ねている雷・白露・初霜の3人。初霜は初春型4番艦の艦娘で、白露や雷とは違い異能こそ持っていないが、霊力の質が他の艦娘達と少し違う。さらに、基礎戦闘能力も高く成績もとても優秀だ。ただ、無口で無表情のため多少誤解されることが多い。
そして、第1班は夕立・陽炎・黒潮・千歳・朝潮・早霜。第2班は時雨・不知火・村雨・春雨・千代田・藤波。第3班は鈴谷・熊野・早波・速吸・清霜。第4班は暁・響・電・霰・弥生・神威。第5班は五月雨・海風・山風・江風・涼風・浜波。
「それと、最強格の3人は3分間攻撃反撃一切禁止じゃ!」
「はぁ!なんでだよ!」
「白露!おぬしの近接戦闘が強すぎる!開幕早々すぐに終わってしまうじゃろうが!」
「あの、なんで反撃禁止なんですか?」
初霜が手を挙げて利根に質問をする。それに対して利根はこう答えた。
「砲雷撃正確必中速さもかなりのものだ。過去に砲弾を刀を使って切り捲ったせいで演習どころじゃなくなってしまったことがあるから反撃もダメなんじゃ」
「じゃあ異能を使うのは?」
「それはこの場にいる全員を通してダメじゃ!今回はあくまで砲雷撃のみの実践訓練のみじゃ!」
「あ…あの~」
「なんじゃ神威?」
補給艦神威、水上機や砲塔などを装備できるもののあくまでサポート役としての艦だ。正直言って戦力になりうるかと言われたらかなり怪しくなってしまうレベルだ。
「わ、私補給艦で戦闘にあまり適していないと思うのですが…」
「まぁ、あれじゃ。今後おぬしは大本営に努める予定じゃから、ちゃんと編成に組まれることがあるから……まあがんばれ」
「ひえ~…」
「おっほん。ちなみに今回使用するのは演習弾。緑色は小破、黄色は中破、赤色は大破。大破になったらその場に留まることじゃ。ちなみに、海上には香取と鹿島がおるからの。現場組準備OKかの~!」
「こちら練習巡洋艦香取、問題なしです」
「同じく鹿島。問題なしです!」
「ではでは、質問は無いかの?…それでは、演習はじめ!」
利根の声掛けに、艦隊全員が一気に動き出した。