ー朝6時ー
「…ん」
ゆっくりと目を開ける白露。手を握っていた怜王がもういなかったためベッドに手を触れてみる。温かみはなかったため布団を出てからかなり時間が経ってそうだと思った。ゆっくりと体を起こし体を伸ばすと、横にいる星羅と時雨を見る。星羅はすでに起きており、空いている右手を伸ばしてあくびをしていた。
「おはよう母さん」
「おはよう焔。さっそくで悪いんだけど、雫を起こすのを手伝ってくれない?ゆすっても起きないのよ…」
いつものパターンね…と白露は思った。星羅は時雨に甘いからいつも優しく起こそうとする。でも、時雨は軽くゆする程度では全くと言っていいほど起きない。だからいつも白露は思い切り頬をつねるか、デコピンするかのどちらかだ。白露はゆっくりと時雨に近づくと右中指に思い切り力を入れて時雨のおでこに近づけた。
「時雨、起きろ!」
「いったあああああああああ( ゚Д゚)」
痛みによって思い切り飛び上がる時雨。デコピンをされたおでこをさすりながら白露のほうを見る。
「…白露、毎度のことながら痛いよ…」
「こうでもしないと起きないだろうよ…。母さんも食堂で仕事があるんだから起きて準備しろ」
「わかったから、もう一回デコピンの準備をしないでくれないかい…」
そのやりとりを笑いながら見ていた星羅。そのあとすぐに立ち上がり準備があるためすぐに洗面所のほうに向かう。白露も時雨ももしもの時のために備えるため早急に制服に着替え洗面所のほうに向かい、その後すぐに食堂のほうに向かった。
「…はぁ、本当に襲撃があるのかってくらい全員のんびりしているなおい…」
「まぁ、いつもの事だからいいんじゃない。ものすごくピリピリしているよりは…」
「むにゃむにゃ…確かにいつもの様子っぽい…」
「あなたもいつも通り眠そうよね夕立…」
「その様子だとまた強制的に起こしたんだな村雨…」
「ご名答よ白露姉さん…」
「…んでだ…お前ら緊張しすぎじゃね?」
白露は同じテーブルにいる春雨から涼風達を見る。全員ががちがちに緊張しており、手に持っているコップを今にも落としそうになっていた。特に戦いを得意としていない春雨は青い顔をしていた。
「だだだだって白露姉さん。敵が攻めてくるんですよ…はい」
「こここ、こういう時こそ、あたいのギャグで!」
『全力で断るわ(# ゚Д゚)』
「そういうときだけ全員息が合うのやめない!」
涼風は全力で叫ぶ。こんな状況なのに、涼風が言った言葉に息の合った突っ込みを入れたことで緊張がほどけたのか、一瞬間があった後に全員が笑った。いつも通り過ぎて逆に笑えてきてしまう。
「…こんな状況なのに、なんで皆さん笑ってられるんですへぶ!?」
「不知火あんたいい加減にしなさいよ(# ゚Д゚)あんたは今座学以外出れないでしょうがこの馬鹿!」
陽炎と不知火もいつも通りだなと呆れ顔で見る白露。厨房のほうは星羅がものすごい速さで料理を作っているし、暁型4姉妹に吹雪に綾波ら主力達もいる。
「まぁ大丈夫やろ。主力達もいるし。でも、何かあった時のために用心した方がいいかもしれんな~」
「ふ~ん、例えばなんだ黒潮?」
「う~ん、そうやな~…今にどかんときたりしてな(笑)」
その瞬間、外の方で本当に爆音が響き渡る。だが、この爆音は敵側の攻撃音ではない。大本営側の攻撃音だとわかる理由は工廠長の作った兵器の音だからだ。念のために持っていた通信機で外の状況を聞いてみる一同。すると案の定陸軍達や一星、小次郎、怜王らが暴れまわってる声が聞こえてきた。
『ふははははは!情けないわね元門下生ども!この程度で私達を倒そうと思ったのかしら!」
『くそ親父はどこだ?…いたら半殺しにしてやるよ!』
『でてこんか源五郎!わしが殺してやるわ!』
「父さん達ははしゃいでるなおい…」
「強いから大丈夫でしょ…北上さんもいるし…」
目を細くしながらお茶を飲む白露と時雨。これなら余裕だろうと白露達を含めた全員が思っていた。しかし、通信機から雑音が混じった通信が入ってきた。途切れ途切れではあるがかろうじて聞き取れた。
『ほ……く……か……しん……すぐ……臨戦…を!』
瞬間、大本営中に警報が鳴り響く。警報には何種類かあり、一回は深海棲艦が近づいてきているため警戒すること。二回は深海棲艦が攻めてきておりすぐに出撃すること。ずっと鳴り響くことは敵が大本営に攻め込んできていることだ。
「侵入者?テロリストですかね吹雪?」
「……多分そうでもなさそうだよ。食堂にいる全員、テロリストがいつ来ても大丈夫なように警戒を!私と綾波ちゃんは工廠に行って念のため艤装を…」
だが、吹雪の言葉を遮るように食堂の壁を突き破り何かがここに入ってきた。身長は170センチ前後。見た目はヘルメットのようなものをつけ、黒い服を着ているのが特徴的だった。その侵入者は、周囲を見渡した後に近くにいた吹雪に狙いを定め襲い掛かるが、吹雪はそれをよけ両足を異能を使い凍らせる。その隙に綾波が顔面に思い切り右ストレートを入れる。しかし、その侵入者は平然としていた。
「なに…こいつ?」
『ほ……く、侵入…………改造人間……至急……迎撃を!』
通信機を聞いていた白露、時雨、厨房のほうにいた星羅もその改造人間のほうに向かっていった。
ー侵入者が食堂に入る数分前
テロリスト達を殲滅させながら、移動をする北上。とある一人に目をつけ、頭を鷲掴みにし自分の顔の前まで近づける。
「なぁ、聞きたいことがあるんだけどさ…テロリストで薄田ってやつ知らないか?」
「…あ…が」
相手は苦しそうにしながら首を横に振る。北上はそれを確認すると、思い切り腹を殴り吹き飛ばした。それを見ていた小次郎は静かに北上に話しかける。
「…やっぱり強いなお前……テロリスト達をここまで憎んでいる理由はなんだ?」
「……」
「…答えたくないなら…いい」
何も言わない北上に静かに言う。確かに、昨日の北上の様子を見る限りこの話題に踏み込んではいけない気がした。北上の目は憎悪に満ちていた。それに、一星が言っていた相棒という言葉。その相棒がここの医療施設にいるのは間違いない。
『こちら概ねテロリスト達の制圧完了です。残り首謀者の源五郎と事前に情報が入っている改造人間と呼ばれるものだけです』
「りょうか~い。私達も行くね~」
『あぁそれなら大丈夫よ!くそ親父なら今ここで私と一星さんでしばき倒してるから!』
怜王の言葉とともに、背後で悲鳴と打撃音が鳴っていた。一星はかなり怒っている様子で、源五郎は命乞いをしているのか『もうやめてくれええ!』という言葉が聞こえてきた。どの口がほざいてんだか…と小次郎は半ば呆れていた。こんな馬鹿が無謀な作戦をしたのかと。そもそもこんな雑兵どもがここを制圧できるとは思っていなかったからだ。
『あぁ一星さん。そこまでにしないとこのクズから情報が聞き出せないですよ!』
『それもそうだな怜王君。さて源五郎、改造人間とやらはどこにいる?』
『の…乗ってきたトラックの中じゃ!ポッドの中に入っておる!!』
『本当じゃろうな?』
『嘘じゃない!まだあいつらはスリープ状態のはずじゃ!』
『それだけ聞けたら満足じゃわい!』
一星の言葉とともに轟音が鳴り響く。おそらく源五郎を殴り気絶でもさせたのだろう。気絶させたにしてはかなりの音であったがもう気にしないようにする。
「…じゃ、そのトラックとやらに行ってみるか?」
「うい~」
間延びした返事で歩き出す北上。そのあとを追い小次郎も歩き出す。少し歩いた先に、源五郎の言っていたトラックが数台止まっているのが見えた。陸軍達も集まってきておりその周りを囲んでいる様子だった。一星と怜王も来ておりその様子を見守っていた。
「あら兄さん、北上ちゃん。お疲れ様」
「…あぁ、あの中のどれかに改造人間とやらが眠っているのか?」
「だそうよ。今陸軍達が中に入って調べているわ」
陸軍達は数班に分けて、トラックの中を調べている。テロリスト達の制圧は完了しているし、改造人間とやらのポッドを回収すればあとは任務完了だ。改造人間とやらは医療施設にいるとある艦娘が調べてくれることになっている。ただ、その艦娘が誰なのかと周りに聞くと狂人やらあまり関わりたくないなどかなりやばい話しか聞かない。まぁ、あまり関係ないかと小次郎は内心思っていた。もう大丈夫そうだし、戻って休もうかと思った時、トラックから爆音が鳴り響いた。爆発音ではない。破裂音のような感じだった。小次郎はすぐにトラックのほうに目を向ける。目を向けると、10数人ほどの人間と呼べばいいのだろうか。ヘルメットを着け黒いスーツに身を包んだ何かがいた。
「改造人間だ!打てええええ!」
一気に陸軍達が銃を打つ。しかし、銃弾をものともせずに陸軍達のほうに突っ込んでくる改造人間達。陸軍達をそれぞれ吹き飛ばしていくと、それぞれ別方向に散っていく。そのうちの数体が大本営の方に向かって行ってしまう。
「まずい!あの子達が危ない!」
「俺が行く!義父さん達はここのやつらを!」
「北上様も行くよ~。あそこには大事な相棒がいるからね~」
「頼むぞ、小次郎君!」
「兄さん達も気を付けてね!」
怜王と一星はその場に留まり、小次郎と北上は大本営の方へと向かって行った。
ー大本営 食堂
侵入してきた改造人間の方に向かって行く白露、時雨、星羅。白露は頭部めがけて蹴りを。時雨は足もと、星羅は包丁を持ち左わき腹の部分に狙いを定める。速さが尋常じゃなかったため三人の攻撃は同時に改造人間に当たる。星羅の当てた包丁は心臓部分に当たり、白露の蹴りで首は反対方向に曲がり、時雨の攻撃で右足が折れる。念のため三人は距離を置く。改造人間であるため油断はできない。その場にいた吹雪と綾波はすぐに食堂にいる全員に避難指示を出していた。
「頼むからこれでやられてくれよな…」
しかし、白露の思いもむなしく改造人間は何事もなかったように首をもとに戻し心臓部分に突き刺さっていた包丁を引き抜いていた。血は出ているもののすぐに再生していた。
「並みの改造人間じゃないね!」
「再生能力持ちってどういうことよ!?」
「吹雪!すぐに通信で全員に伝えろ!改造人間は再生能力持ちっ!?」
白露が言葉を言い切る前に、改造人間は白露に向け攻撃を放つ。攻撃速度が尋常じゃない。ここに所属している陸軍達でも太刀打ちできるかどうかだ。
「今待機している全艦隊に通達してる!改造人間は再生能力持ちで、戦闘能力もかなり高いことも。第1・第2・第3艦隊がすぐに迎撃する。白露ちゃん達も非難を!」
「こんな状況でもう避難なんてできるか!夕立達も早く非難しろ!」
テーブルで呆然としていた全員が、白露の言葉ですぐに行動を起こす。白露が夕立達といったのは、この中で反射的にすぐに行動できるものが夕立だからだ。夕立はすぐにテーブルを思い切り叩き大声を上げる。
「全員、早く逃げるっぽい!工廠に行って、艤装を装備しにいくっぽい!」
その光景を見ていた吹雪はすぐに思考を巡らせる。この状況での最善策。改造人間の数はわからない。だが、深海棲艦と同じような性質なら艤装を装備すれば何とかなる。吹雪は綾波と目を合わせ、綾波は避難組の方に、吹雪は白露達の方に向かう。吹雪は3人の中をかいくぐり何とか改造人間の懐に潜り込むと肉体部分を凍らせてみる。しかし、それでもすぐに氷が散ってしまい反撃されることになった。しかし、吹雪は違和感を覚えた。深海棲艦でも普通再生能力を持たない。なのになぜこいつは再生能力を持っているのか。そして考えるに考えた結果、今期訓練生の中で超高速再生能力を持つものがいることに気が付いた。
「全員いったん工廠の方に向かう。工廠で艤装を装備し改造人間と戦えるよう準備しておけ!不知火、お前はとっとと寮に戻ってろ!謹慎中だろうが!」
綾波の言葉に不知火はしぶしぶ寮の方に戻っていく。こういう状況だからか、綾波の口調は普段のお淑やかな口調ではない。戦災孤児で荒れていた時期があったためそのせいらしい。その後、工廠に着き艤装を装備しようとしたとき響の背後から轟音が鳴り響く。背中の骨が何本も折れたようなひどい音がした。
「響!?」
雷の雷撃が改造人間に直撃する。スーツが破けていき、皮膚があらわになり全身が焦げたような感じになるが、数秒すると元の色に戻っていっているのが見えた。元の色と言っても白色のような肌だったが。
「ひ…響ちゃん大丈夫なのですか!?」
「あぁ、何とか大丈夫。不死鳥の名前は伊達じゃない…」
響はそう言って、背伸びをしている。腰の方を気にしているが特に何でもないのか体をひねったりしている。
「でも、さすがに背中の骨が折れるのは嫌だね…だから、少し八つ当たりさせてもらうよ!」
響はすぐに艤装を装備すると、懐まで飛びこみ至近距離で砲撃を行う。何度も何度も砲撃を行うが、相手は何事もなかったように立っていた。
「おかしいね。再生能力は私の特権だと思ったんだけど…」
響の能力は超高速再生。たとえ心臓が貫かれようが、頭が吹き飛ぼうが絶対に死なないという能力。原理自体は本人も分かっておらず、なぜこのような能力を持ってしまったのかもわかっていない。ただし、再生能力を持っていても痛覚はあるため本当なら気絶や発狂してもおかしくないほどだ。だが、響自身が平然としているため暁達はかなり響の事を心配している。
「ひ、響に手を出したこと後悔させてやるんだからー!」
怯えながら艤装についている錨を使い改造人間の頭を殴る暁。多少よろめきながらもヘルメットに少しだけ傷がついた程度でダメージは入っていなさそうだった。
「な…何なのよこいつ!?どうすればいいのよ!?」
『殴って撃って殴りまくる!!』
綾波と夕立と江風が改造人間に突撃していく。綾波は手にヌンチャクを持っている。綾波も特殊艤装の携帯を許されており、武器の銘を黒豹。綾波の近接戦闘は大本営に所属している艦娘達の中でも屈指であり、素の近接戦闘では白露とほぼ互角の実力を持っているほどだ。
「合せろよ二人共!」
『努力します(するっぽい)!』
即興の連携攻撃でガンガン近接戦闘を繰り出していく三人。綾波がヌンチャクで体中を殴りまくり、空中にわずかに浮き上がった後、夕立と江風が思い切り蹴りを入れ工廠の外に吹き飛ばす。
「迎撃するぞ!暁達はそのまま待機!村雨達は他の所に行って改造人間がいないか確認、ついでに艦隊の主力達がどこかにいたら援護してやれ!」
『はい!』
綾波達はそのまま吹き飛ばした改造人間の迎撃に向かう。村雨達はそれぞれ大本営の施設に向かい改造人間達がいないか探しに行く。暁達は工廠に所属している者達の護衛のため待機となった。
「はぁ~怖かった~(´;ω;`)」
「はわわわわ、本当に怖かったのです…」
その場にへたり込む暁と電。響は二人の頭をなでながら慰める。雷はその三人のやり取りを見ながら通信を行う。食堂で通信機の調子が悪かったため念のため確認をしているのだ。
「誰か応答願います。こちら雷。工廠で改造人間が一体来ましたが、綾波姉と夕立、江風が迎撃してます。村雨達が他の施設に向かってるところです。誰か通信が聞こえていたら返答を願います」
『こちら第一艦隊、現在寮舎付近を警戒中。改造人間らしきものはいない』
『第三艦隊じゃ!こちら一体改造人間を確認。娯楽施設付近じゃ!』
「了解しました。村雨達、この通信は聞こえたかしら?」
『オッケー、こちら二手に分かれて第一・第三艦隊と合流します』
ふぅ、と一息つき腰に手を当てる雷。この短時間で数日分働いたぐらいの疲労が出てきた。この戦いが終わったら、卒業まで休みたいものだ。
「ま、まさかと思いますがまたここに攻めてきたりしませんよね?」
「電、そういうのフラグっていうんだよ」
響がそういった瞬間、今度は天井から改造人間が降ってきた。突然の出現に工廠にいる者達は混乱してしまう。雷と響は冷静だったが、暁と電は腰を抜かし慌ただしくしている。
「はわわわわわわわわ!?本当に来てしまったのですΣ(゚Д゚)」
「いやああああああああΣ(゚Д゚;≡;゚д゚)どうするのこれええええええええ!!!」
暁の叫び声とともに、工廠の奥からガトリングガンの音が聞こえ、改造人間の身体中に弾が命中する。雷達が奥の方を確認すると、艤装にガトリング砲のようなものをつけ両腕で持っている夕張の姿があった。何か作っていた最中だったのか服装は作業服だ。
「ヒャッハー!たまらないわねえええ!…あ、ごめん暁ちゃん。そこにあるエナドリとって!」
「へ?…あ…はい…」
しかし、エナドリを取ろうとした暁に向かい、改造人間が動き出そうとしていた。動きを読んでいたのか、雷が能力を使って足止めをしその隙に夕張が再びガトリング砲を打ちまくった。かなりの高威力なのか手足が吹き飛んでいる。
「もう、気分転換する時間くらいとらせてよね…。こちとら特殊艤装の研究に没頭して徹夜してるんだから(# ゚Д゚)」
⦅自業自得なのでは…(-_-;)⦆
暁達は率直に心でそう思ったが口に出さないことにした。艤装の件で何か言ったらとにかく説明が長いからだ。聞いているこっちがしんどくなるレベルで。夕張は問答無用でガトリングガンを打ち続ける。だが、なかなか改造人間は死なない。
「もう、本当に再生能力が厄介ね!どこかに弱点は無いの!?」
「じゃ、弱点って言われても何があるのよ!どこぞのゾンビゲームみたいに、体のどこかに
暁の言ったことに、雷は即座に反応する。響もその言葉を聞き、改造人間をよく観察し始める。もしも核があるとしたら、どこかに必ずヒントがあるはず。
「暁、臆病な姉だけど、本当にこういう時は素晴らしくハラショーだ!」
「…へ、それってどういう?」
「誉めてるのさ!」
「響も気づいたわね!」
「夕張さん!一旦銃撃をやめて!」
「いいけど、あてはあるの!?」
「相手を観察してよくわかったわ!こいつの、いえ…こいつらの弱点!」
まず響がすぐに近づき、改造人間の左わき腹部分を砲撃で打つ。打った瞬間、今までにない破裂音のようなものがし、改造人間が苦しんだような気がした。次に雷が頭部を打ち抜く。再び破裂音がすると、改造人間は糸が切れたように動かなくなった。夕張がゆっくりと近づき、ガトリングの先でつついてみるが特に何事も起きない。
「どういうことこれ?」
「暁の言った通り、核を潰したんだ」
「核?」
「こいつ、異常に再生が速い場所があったわ。そこにある核を潰せば、こいつらを倒せる」
「ならすぐにこの鎮守府全体に通告するわ。皆はここで待ってて!」
夕張はすぐに工廠の奥の方に行くと、放送室のある場所までくる。緊急時にすぐに対応できるように、工廠、本館の方に全体にすぐに報告できるように放送室がある。夕張は急いでスイッチを押すとマイクを手に取って叫ぶ。
「全員、この放送を聞いているわね!改造人間それぞれに、異常に再生能力が速い場所があることを、特Ⅲ型の皆が気づいてくれたわ!そこが核よ!そこを潰せば、改造人間は倒せる!すぐに対処して!」
放送を終えた夕張は、念のため工廠に残り守りに徹することにする。暁と電は腰が抜けてしまっているためここに残ることになった。
「全く、洞察力はすごいのにこういう時は情けないね暁は…」
「響、それを言ったら姉である私の威厳は?」
「あるにはあるけど、ないにはない…」
「えぇ…」
「暁と電はここで待機ね。響と私は他の所に行って改造人間を倒してくるわ」
そう言って、響と雷は工廠を出ていった。
「母さん、今の聞いた!?」
「えぇ聞いたわ!こいつの再生能力が高い場所は頭と左腕!」
星羅はそう言って左腕に全力の攻撃を放つ。そして、白露と時雨で頭部に思い切り膝蹴りをする。そうすると破裂音とともにその改造人間はゆっくりと倒れた。
「…ふう、何とか倒せたね…」
「こんな奴らがまだいるのかよ…勘弁してくれ」
膝に手をつきながら白露と時雨はいう。星羅はまだ余裕があるのか少しだけ肩で息をしている程度だった。
「とりあえず、ここは大丈夫そうだな…」
「も、もう勘弁…」
「皆!…無事か?」
息を切らして小次郎がやってくる。見ると身体中に少しだけ傷があった。おそらく改造人間と戦ったのだろう。それでも、軽い怪我で済んているのだからやはり実力は相当なものだ。
「あなた!大丈夫なの?」
「…あぁ、一体改造人間と戦ったが、放送を聞いて潰した…」
「潰すって…さすがだよ父さん…」
「とにかく、これからどうする皆?」
「…放送を聞いたから、全員大丈夫だろう……主力達がいるんだろ?」
『…………あぁ、なんかすごく想像しやすいなぁ…』
二人は呆れ半分、安心半分な表情でその場にへたり込む。何せここの主力達は強すぎる。何せ艦娘の上位勢達が勢揃いしているのだ。普通に大丈夫だろうと妙な安心感があった。
「全く。核さえ潰せばこんなもんか?」
「なんだか、すごく弱く感じたっぽい…」
「とりあえず、これからどうすれば?」
「他の場所は多分問題ないだろ…。第一と第三艦隊が動いてるからな。私達は念のためその辺の見回りだ」
「綾波さん、こういうときだけ口調変わるっぽい」
「これが素なんだ。気にするな」
ぽいと言いながら敬礼をする夕立。江風も綾波の口調をなるべく気にしないようにし二人についていくことにした。
「ふははははは!この武蔵の主砲は伊達じゃないぞ!」
「核さえ潰せばこんなものか…」
大本営第一艦隊旗艦武蔵。大和型戦艦二番艦。褐色肌で髪型はやや薄めの金髪をヘアバンドでツインテールかつ獣耳風に仕上げているのが特徴。主砲の大火力に加え近接戦闘もかなりの手練れである。白露ほどではないが肉体強化系の異能を持つ戦艦上位勢。もう一人は伊勢型航空戦艦2番艦日向。おかっぱに近いショートヘアーに軍刀を所持しているのが特徴。近接戦は帯刀している刀、遠距離は瑞雲を使った精密射撃と遠近両用を備えた艦娘。同型艦の伊勢とはかなり仲が良くよく一緒にいることが多い。
「…これは村雨達の出番はないわね…」
『…確かに…』
応援に駆け付けていた村雨、春雨、五月雨は半ば呆れたように答える。今いる場所は寮から少し離れた場所のグラウンド。そこに武蔵と日向がいたのだが、改造人間二体をあっという間に倒してしまっていた。もしここに涼風がいようものなら『恐ろしく早い撃退…あたいじゃなきゃ見逃すね』と某漫画に出てくる名台詞を言ったキャラクターのセリフを言っていたことだろう。
「あぁ、村雨達か?ここは大丈夫だ。すでにこの改造人間達は倒したからな!」
「私達がいる限り、ここ大本営は落ちないさ」
『ですよねー…』
「武蔵さん、日向さん。こちらも処理終わりました」
「本当に核さえ潰せばへでもないな」
改造人間を引きずりながらやってくるのは、第一艦隊所属空母の大鳳。もみあげの長い、やや茶色みがかった黒髪のショートボブに茶色の瞳が特徴の女性だ。艦娘になって7年目のベテラン。艤装の航空甲板はクロスボウでもあり特殊艤装となっている改造型ショットガンのハイドラ。銃口が三つ並んでおり威力も絶大。もう一人は天龍型軽巡洋艦一番艦天龍。紫色の髪に左目に眼帯をしている女性。刀を携帯しており利き手は左。大本営の中でも古株に入る。二人共艦娘の中では上位勢に入る。
「こちらはあらかた片付きましたかね?」
「そうだな。だが油断はするな。まだ敵が潜んでいるかもしれんからな」
「あ、あの~。村雨達はどうすれば?」
「寮に行って警戒をしていてくれ。改造人間達は私達で対処をする」
『了解!』
「では、海風達にも情報を共有しておきます。はい!」
「向こうも向こうでもう終わってたりしてませんよね?」
「……あぁ」
五月雨の言ったことに村雨は察するように返事をすることしかできなかった…。
ーーー娯楽施設付近。
「…はい春雨姉さんこちら海風…。まったくもって問題なしです…」
娯楽施設付近に来た海風達。目の前には改造人間一体と第三艦隊である利根、筑摩、足柄が涼しげな顔で立っていた。
「やれやれ、弱点さえわかってしまえば本当にたやすいの~…。どうしてこうなるのじゃ…」
「利根姉さん、あまりそういうことを言うのは…」
「だってそうじゃろう筑摩よ!深海棲艦とやりあった方がまだましじゃ!」
利根の隣にいるのは、利根型二番艦の筑摩改二。腰まである黒髪ロングにブラウンの穏やかな瞳が特徴の女性。異能持ちで腕力だけを強化する肉体強化系能力者。索敵と雷撃が苦手だが砲撃が得意。数日後には第三艦隊旗艦になることが決まっている。
「利根、筑摩、あとは医療施設付近になるけど、行く?」
「行かなくても大丈夫じゃろ。あそこには北上が行っているし、大将達もおる。それにじゃ。龍田と舞風が護衛としておる。心配なしじゃ!」
「本当退屈ね~。私は満足してないわ…」
「さすが飢えた狼の異名を持つ足柄じゃ!おぬしは確か、呉に異動じゃったな!」
「あなたは横須賀でしょ?お互い頑張りましょうね!」
『わははははは』と高笑いしながらその場を歩き始める足柄と利根。それを見ながら後ろについていく筑摩。その後姿を見ながら海風達は心の中でこう思った。⦅この人達強すぎる⦆…と。そして村雨達と合流し寮の方の護衛に回ることになった。