※10/7 普通にミスっていたので修正しました
ーーー柱島へ向かうヘリの中
「うおおお!すげえええ!空飛んでるよ空!」
「こら涼風!窓の方を見ていたら危ないですよ!」
ヘリで飛んでいることをはしゃいでいる涼風。それを注意している海風。二人の様子を見ながら他の皆も海風に同意しているが内心かなりはしゃいでいた。特に五月雨と山風が表情に出てはいないものの少しそわそわしている様子だった。だが、正直一番はしゃいでいるのは涼風達じゃない。今現在白露達の目の前に座っている怜王と星羅だ。この二人が一番といいほどはしゃいでいた。この二人の周りだけが度を越えるほどキラキラしているような感じだった。
「あぁ、いい!すごくいい!まるで旅行に行っている気分ね義姉さん!」
「そうね怜王君!これはまるで旅行ね!」
『あははははははは!』
うわ~…と冷めた様子でこの二人を見る白露。それは昔あの糞じじいのせいで旅行どころじゃなかったし日々やばい状況だったから仕方ないとはいえここまではしゃぐものかと思った。その様子を見ていた時雨がまぁまぁとなだめている。
「なぜここまではしゃぐんだよ全く…」
「白露、そこは多めに見てあげようよ」
「そうそう、こういう時は寝て待つっぽい。宝物は寝てまてっていうし」
「それを言うなら果報は寝て待てよ夕立」
夕立の言ったことに対して冷静に突っ込みを入れる村雨。夕立は村雨の言ったことに対して頭にはてなマークを浮かべている。
「全く…マジで緊張感ないなおい…」
「緊張しすぎてるよりましでしょ。前みたいに襲撃のあった時みたいにがちがちになってるよりは」
「まぁ、確かにそうだけどさ…」
白露も時雨の言ったことに対して力の抜けた表情で答える。もう今後どうなるか予想がついてしまった。如何せん星羅に怜王、おまけに涼風とギャグを極めたような人達が揃っているのだ。鎮守府に行ったら確実に騒がしくなるのは目に見えていた。泊地についたらどんなふうに生活していこうか頭の中で考える白露だが、特に何も考えることが出来なかったため考えるのをやめて寝ることにした。ただ、寝ようとしても周囲が賑やかであったためあまり眠ることが出来なかった。
ーーー柱島泊地
「…さてと」
「着いたね」
「着いたわね」
「着いたっぽい!」
『ヒャッハー!泊地についたわー!!!』
「…二人共騒ぎすぎだぞ…」
柱島泊地に付き早々、荷物を持ってヘリから降りた一同。特にはしゃいでいる星羅と怜王を小次郎が注意する。その様子を尻目に泊地の本館前まで来る白露達。白露の考えが正しければ、おそらくもう異動組達はここに着いている。白露は一旦深呼吸をして玄関を開ける。中の作りは大本営の寮と同じような作りだった。外の方も工廠に埠頭があったしどこの鎮守府も大体同じなのかと思った。まぁ、敷地面積だけで言えば大きい場所は大本営と横須賀、呉の順らしいが。
「ほえ~、中の作りは大体寮と同じ感じなんだな!」
「これなら、ここでの生活もすぐになれそうですね!」
江風の言ったことに海風が同意する。まぁ、内心白露も他の皆も同じことを考えていると思うが。玄関を通るとすぐに上り階段があったため階段を上がっていく一同。なぜ階段を上がっているのかというと、ちゃんと階段そばに「こちら執務室」と丁寧に張り紙が貼ってあったからだ。しばらく歩いていると、執務室前であろう大きな扉が目の前にあった。白露は一度全員を見る。皆を見ると、時雨と村雨は頷き、夕立と江風と涼風は親指を立てている。全員が入る準備が整っている様子だった。
「じゃあ、行くか!」
白露は三回ノックする。中から返事が来たため中に入る一同。中に入ると、銀髪に狐のような目が特徴の青年と制服のボタンを開けラフな格好をし、バンダナを巻いているのが特徴の青年がいた。
「ようこそ柱島泊地へ。私は新人としてこの泊地の提督になった
「俺はここの副提督の
「しっかしなんだ…どんな豪傑かと思いきや新人の提督で、狐顔と見るからに体たらくそうなやつがいるなおい…」
⦅白露⦅姉さん⦆がそれ言っちゃうの⦆
その場にいた時雨と村雨が心の中でそう突っ込む。何せ訓練生の時から問題だらけの白露のためそういった書類などもここに届いているはずだ。内心びくびくしながら提督達の方を見る時雨と村雨だったが、提督達は何も言わず笑顔で話しかけた。
「ははははは、これは手厳しいですね!こう見えて首席で卒業したんですけどね」
「俺はこう見えて次席で卒業したんだ。拳だけなら自信あるぜ!」
「……へぇ……」
「ほらほら焔。ちゃんと挨拶しないと」
星羅に撫でられたことで、頬を少し赤くしながら敬礼をし二人に挨拶をする。白露に続いて、他のメンバーも順番に挨拶をする。全員が挨拶を終えると、鳴海が声をかける。
「さて、全員の挨拶が終わったところで場所を変えましょうか」
「…なんで?」
「異動組が食堂に集まっているのですよ。ここだと狭いですからね」
「食堂!ということは、ご飯が…じゅるり!」
「こら夕立!だらしないわよ!」
「そうは言っても村雨の姉貴。あたいも腹が減って…じゅるり…」
「か…江風…」
村雨と海風の思いもむなしくよだれを垂らしながら食堂へと向かって行く一同。確かに、時雨がさっき言ってくれたように前みたいにがちがちに緊張しているよりかはいいかと白露は思った。そんな中、村雨が唐突に鳴海の横まで行き改めて顔を見る。鳴海もそれに気づいた。
「どうかしましたか?」
「い、いえ。その、私達以前どこかでお会いしたことありますよね?」
『……ええええΣ(゚Д゚;≡;゚д゚)二人共知り合いなの!?』
「…ふむ、あ!そういえば以前街に出た時に!」
鳴海曰く、ちょうど三年前に村雨が街に出かけたときにたまたま変な輩に絡まれたときにちょうど居合わせたのが鳴海だった。すぐにそいつらを撃退し、村雨の事を大本営の近くまで送り届けてくれたそうだ。白露も時雨もそうだが、本当に変な縁があるものだ。そして、あれこれ話しているうちに食堂の前まで来ていた。鳴海がドアを開けると、あちこちの席に座っている者達がいた。鳴海達が入ると、座っていた一同が一斉に立ち上がり近くまで来る。
「さて、皆さん集まったところで皆さん自己紹介をお願いします」
「よし!じゃああたしからだ!高雄型重巡三番艦摩耶様だぜ!改めてよろしくな!」
高雄型重巡三番艦摩耶改二。へそ出しのノースリーブの服に茶髪の髪が特徴の女性。男勝りな性格で口調も若干男っぽい。横須賀鎮守府から異動してきた対空のスペシャリスト。何度も大本営に来て対空の講義をしたことがある。ちなみに、白露の戦闘力に惹かれ何度も白露を勧誘したほど気に入っている。
「では、次は私ですね!高雄型四番艦、鳥海です!よろしくお願いします!」
服装は摩耶と同じ服装をしており、赤い目に眼鏡をつけており黒髪ロングの見た目が特徴だ。摩耶と同じく艤装は改二状態。摩耶とは全く正反対な性格でかなり真面目で几帳面な性格。
「長良だよ!かの有名な岩川基地から異動してきました!よろしくね!ちなみに、白露のファンです(*^^)v」
その言葉を聞いた瞬間白露は、頭を軽く突かれるような感覚を覚えた。長良型一番艦長良。黒髪をサイドテールにし、鉢巻を巻いているのが特徴だ。かなりの体育会系でぱっと見かなり筋肉質な体をしている。
「五十鈴よ!長良型二番艦。私も岩川基地にいて、白露の噂を聞いてここに来たわ」
白露は今度は頭を打たれたような感覚がし、床に思い切り倒れこんでしまった。横で見ていた星羅と時雨は糸目で白露の事を見ている。実はこのやりとりというか、白露を気に入っている者達が多く、特に講義や訓練などで大本営に来た者達の一部は白露の性格云々を気にせず実力をかなり評価しているのだ。だが、白露本人としてはありがた迷惑であるため毎回こんな感じの反応をすることが多い。
「なんで全員私に目をつけている奴らが多いんだよこんちきしょう(# ゚Д゚)」
「別にいいじゃねえかよ白露。あたしらはお前の実力を評価しているからこそ、ここに来たんだぜ。なぁ、長良、五十鈴」
「そうそう。長良達は白露のことを評価しているから大丈夫(*^^)v」
「そして、ゆくゆくはあなたとお母様と手合わせをしたくてね!」
「やっぱりそうなるのかこんちきしょうが!」
「ま、まぁまぁ。次は私が自己紹介します。妙高型重巡四番艦羽黒です。よろしくお願いします」
スレンダーな身体に肩までのボブカットの髪型、眉が八の字の気弱な性格が特徴の女性。艤装は改二状態だ。同じ妙高型の足柄とは違い全くといいほど真逆の性格そうだ。
「あれ、事前の情報だと重巡三名じゃ?」
羽黒の自己紹介を聞いて、時雨が頭にはてなマークを浮かべながら質問する。事前情報だと空母三名、重巡二名、軽巡二名がここに異動してくることになっていたのだ。
「あ、実は直前になって重巡が三名、軽巡が三名に変わったんですよ!」ひょこ('ω')ノ
『どわあああああああああああああああああああああああΣ(゚Д゚;≡;゚д゚)』
後ろから急に現れたものに、その場の全員が大声をあげてびっくりしてしまう。突然後ろにきたものは、正肩章付きの礼装を着用するが、下はタイトスカートに黒スト、プリーツスカートに黒のハイソックス着用しており瞳は青色。髪はゆるくウェーブのかかった銀髪のツインテールが特徴だ。
「なんであんたはいつもいつもいつも突然後ろに現れるんだよ鹿島さんよ!」
香取型二番艦鹿島。練習巡洋艦で大本営にいたときに演習や講義などを主にしていた艦娘だ。ちなみに、白露達を助けた人物でもある。突然こうして現れては、全員を驚かせることは多々あった。よく星羅と一緒になって人の後ろに現れたり、将棋などを打ったりしていたことがある。白露達が卒業過程を終えるちょうど三日前くらいに異動していたのは知っていたがまさかここだったとは思わなかった。
「もう、そんなこと言って…白露さんはいつもそういいますよね…。私はこう見えて心配していたんですよ(´Д⊂グスン。あの問題を起こしまくっていた白露さんが心身ともに成長してくれるとは!これもお母様達のおかげですね!」
「余計なお世話だこんちきしょう!」
「まぁまぁそう言わずに。というわけで、ここの秘書艦補佐として務めさせていただく鹿島です!よろしくお願いします!」
「さらっと流すなこんちきしょう(# ゚Д゚)」
懐かしい雰囲気だな…と時雨達は思った。実はこんな感じのやり取りは大本営にいたころに何度もやっていたことがある。大体こんな感じで白露の怒りはサラッと流されてしまうことが多く、さらに星羅も混じるものだから白露はかなり困っていたほどだ。
「はいはい、このままいくと私達空母組の自己紹介が無くなっちゃうから。私は飛鷹型一番艦飛鷹よ!艤装は改二よ!」
艶のあるストレートの黒く長い髪を背中に流し、紙縒(こより)のような細い白リボンでその二房を飾っているのが特徴の女性だ。服装はワインレッドのブラウス(襟元に勾玉飾り)の上から白い狩衣風のスーツに、ズボン袴の隼鷹とは違い赤のスカート袴を穿いている。
「隼鷹でーす!飛鷹の姉妹艦で二番艦だよ~!ヒャッハア!」
「隼鷹まさか飲んでるの(#^ω^)」
「ちょ!?飲んでない飲んでない!素面だよ(;'∀')」
飛鷹型二番艦隼鷹改二。紫色の長髪にツンツン頭が特徴の女性。飛鷹が言った限りかなりの飲兵衛らしい。服装は大体飛鷹と一緒の格好をしている。隼鷹の挨拶で場がかなりしらけてしまったが、次に出てきた者が挨拶しようとしたとき、場の雰囲気が一気に変わったような気がした。圧というものなのか、畏怖にも似た感情。訓練生の中でも最強格の実力を持っていた白露でもよくわからない感覚だった。白の道着にミニスカート調にアレンジされた弓道袴に長袖のインナーを着ている、黒の胸当てに襷掛けのスタイル。紐やスカートは全体的に青を基調としているのが特徴だ。髪は黒色でサイドテールにしているのが特徴だ。
「航空母艦加賀です。それなりに期待しているわ」
「か…が?日本最強の空母、”絶対零度”の加賀!」
日本最強格の一角で日本の五本指に入る艦娘。それが加賀だ。なんでも異能を持っておりあの吹雪と同じ氷を操る能力で、吹雪以上の火力を誇り防御力で言えば日本随一の実力だ。
「…”剛拳”の白露。粗暴は悪いと聞いていますが、座学と実力は今期訓練生の中でも随一。ですが、ここからは訓練ではありません。常に死と隣り合わせである状況を考えるようにしてください」
「は…はい」
加賀の言ったことに、白露はただただ返事をするしかなかった。普通に戦っても勝てるイメージがわかなかった。白露ももちろん、他の全員が思っていた。ここにいる全員が揃って戦っても勝てないような気がすると。
「これはとんでもない人がいるものね兄さん」
「…あぁ…確かにとんでもないな」
「…はい。自己紹介はここまでにして、全員が揃っていることですし陸軍のいる宿舎にでも行きますか。あとは工廠ですね」
そう言って、全員陸軍のいる宿舎と工廠に足を向ける。それぞれ挨拶をすると、艦娘寮の方に向かう。部屋割りは鹿島が事前に考えてくれていたらしく小次郎と怜王は陸軍の宿舎に。そして、部屋は白露型がそれぞれ五人ずつと軽巡組、重巡組、空母組の三人ずつで分かれていた。
「…ふう。荷物を置いた後にいったん広場に行って、今後のスケジュールの確認とちょっとした演習とをするのか」
「演習をするとき、さすがに加賀さんはいないよね?」
夕立の言ったことに、その場にいた白露、時雨、村雨、春雨は「ないないない(-_-;)」と答える。絶対に混ざらない気がする。やったとしてもかなり手加減をしてくれるか、ハンデをくれるかもしくは両方か。じゃないと今の自分達では勝負にならない。絶対に。
「う~ん。戦いが苦手な春雨は一体どうすればいいのでしょうか…はい…」
「お前は自分でできることをやればいいって、前に言っただろ…」
「そうそう。春雨は自分にできることをやればいいのよ」
そう言って、村雨は春雨の頭を撫でてあげる。撫でられた春雨は少し照れながらも笑顔を見せていた。その様子を見て時雨はほっこりした表情で見ており夕立も春雨の頭を撫でてあげていた。荷物をそれぞれ置く場所を決め、全部を入れた後全員が部屋から出る。すると、ちょうど全員が部屋から出ているところだった。
「お、ちょうど全員が出たところだな!」
「じゃあ、この後全員広場に出てですね」
摩耶と鳥海がそう言い、全員広場の方に向かう。広場に来ると、鳴海と桐生がすでにスタンバイしていた。手にはタブレットのようなものを持っている。
「さ、全員揃いましたね。まずは今後の日程です。まだここは出来て間もないので、しばらくは近海の護衛任務や訓練がメインになります。もちろん、他鎮守府と演習を行いますので」
やっぱり最初の方はそうなるよな…と白露は内心思う。出来たばかりの鎮守府で、しかも半分は訓練課程を終えたばかり。いくら白露、戦闘に秀でている時雨や夕立らがいても戦闘経験値だけでいえば異動組が上。しばらくは他の鎮守府と演習や近海で戦闘経験値を得て、そこから長距離の遠征などをしていくのだろう。
「それから、これからちょっとした演習を皆さんで行っていただきます。チームはこちらで考えさせていただきましたのでよろしくお願いします。ちなみに、加賀さんは参加しませんので安心してください」
「なんで加賀さんは参加しないんだ提督?」
「摩耶…だったよな?日本の五本指に入るような人とやって勝てるイメージあるか?」
「無い!」
「返事早いなおい…」
質問をした摩耶に返答した桐生は、摩耶のとんでもなく早い回答に肩を落とす。摩耶も重巡の中では上位の実力を持つが、さすがに最強格の者と戦うとなると話が違うようだ。さすがに最強格の者達は一人で一戸艦隊を殲滅できるほどの実力を持つほどだしそれも仕方ないかもしれない。
「こほん、それではまずメンバーを。まず白露さん、時雨さん、村雨さん、摩耶さん、鳥海さん、飛鷹さんの六名。次に長良さん、五十鈴さん、夕立さん、春雨さん、羽黒さん、隼鷹さんの二組。艤装を装備して沖合に向かってください」
「てことは私が旗艦か」
「はい、最初に呼ばれた人が旗艦です!」
白露は頭を掻きながら周囲を見る。時雨と村雨は信頼関係があるからいいとして、摩耶はキラキラした目で白露を見てるし、鳥海と隼鷹は期待した目で白露を見ている。
「まじかよおい…」
「よおおおし、白露、期待しているぜ!」
「摩耶がごめんなさい。前に一目見てすごく気に入っちゃって…」
「私も正直噂を聞いていたから、どんな実力か楽しみなのよね~!」
でかい溜息をつきながら、艤装を装備するために工廠の方に向かいそれに続いて他の皆もついていく。それを見て長良達も準備しに行く。
「さてと、あの子達の実力がどれだけのものか見させてもらうかな!」
「長良姉さん、張り切ってるわね!」
「そりゃ最強格の一角に名を連ねている白露と手合わせできるんだから張り切るよ!」
「夕立もすごく張り切ってるっぽい!」
「夕立姉さんは白露姉さんと戦うのが好きですからね(;'∀')」
長良、五十鈴、夕立はかなり張り切っているようで鼻息がとても荒い。それを見て、春雨、羽黒は苦笑いをしており飛鷹は頭にはてなマークを浮かべてその様子を見ていた。その三人のギラギラしたような眼差しを受け、白露は眉をぴくつかせながら艤装を準備する。こんな演習ぱっぱと終わらせたいと思う白露。それを察しているのか時雨と村雨は糸目で見ていた。
『はい、それでは皆さん。準備はよろしいですか?』
『準備オッケー!(ぽい)』
「い…いつでもおっけー…」
「提督~…一人テンション低い奴いるけど大丈夫なのか?」
「…………では始めてください!」
「今の間は何!?」
摩耶の突っ込みむなしく演習はすぐに始まる。艦隊は数十キロは離れているためすぐに行動してどうのとかはないはずだ。無効とこちらは一人ずつ空母がいるし先に索敵機を飛ばしてこちらの動向を探るはずだ。白露は頭を掻きながら飛鷹に指示を出す。
「飛鷹、とりあえず索敵機」
「あれまー…いきなり呼び捨て…」
「こういうやつなんだ飛鷹、まぁ許してやれ」
摩耶は糸目で飛鷹を見る。はいはい…と返事をしながら巻物を手にし索敵機を飛ばす。白露の指示を待っているのか全員が白露の方を見ている。腕を組みながら目を瞑り報告を待っている様子だった。時雨と村雨は見慣れている様子だったが、摩耶と鳥海、飛鷹は少し戸惑っている様子だった。
「…なぁ、まだ行動しないのか?」
「……」
「時雨~、村雨~?」
「まぁまぁ少し待とうよ」
「白露姉さんは大体こんな感じだから。それに何かしなくても向こうから来ますよ…。だって…」
「あのさ、なんか夕立がこっちに来てるわよ…あと他の皆も付いてきてるわね…」
その報告を聞いて、白露はゆっくりと目を開く。そして、少し深呼吸をして夕立達が来るであろう方向に目を向ける。そして、全員に指示を出す。
「っし、行くか!私は旗艦だから面と向かって出向けねえ。時雨と摩耶で夕立を牽制しつつ、飛鷹は艦攻・艦爆で攻撃。村雨と鳥海で遠距離射撃ってところか…」
「おいおいおい、白露が一方的に相手を蹂躙するところを見たかったんだけどな~(笑)」
「あ~の~な~…」
「こらこら摩耶、困らせない困らせない!」
鳥海が摩耶に肩を置き落ち着くように話す。摩耶は白露が戦うところを見れなくて残念がってたが、旗艦という立場を考えると仕方ないと割り切ったのかもしれない。
「陣形は?」
「向こうに隼鷹がいるから、対空も兼ねて輪形陣。私を中心にして、後ろに飛鷹と鳥海、前方に摩耶、右に時雨、左に村雨ってとこか」
『了解』
白露の指示に従い、すぐに陣形を整える一同。さすが屈指の鎮守府から異動してきたことあってか、行動が速い。時雨と村雨も座学の成績は優秀だ。摩耶達と比べると若干遅いがそれでも速い。遠目から見ていた鳴海と桐生は望遠鏡で見ながら冷静に状況を見ていた。
「…白露さんの判断、英断ですね」
「自分が旗艦だから、いつもみたいに前に出れねえ。だから、自分がすぐに出ないようにするための判断ってところか」
「加賀さんの食堂での一言。おそらくそれが、白露さんの心を動かしたんでしょう」
「いえいえ、焔は昔から本当はすごくいい子で気配りができるんですよ!」
「その通り!私達の姪はとてもやさしいのへぶっ!」
怜王の言葉の最中に、小次郎が頭を小突く。いったん落ち着いて演習を見てろと言っているように。
「それにしても、夕立の姉貴は相変わらず突っ走るな~…」
「長良さん…だっけ?あの人も結構前に出る人なんだね。旗艦なのに」
江風、涼風は率直に意見を言う。確かに突っ込んでいくスタイルの夕立はわかるが、旗艦である長良も前に出るなんて思っていなかったから。その率直な意見に鹿島が笑顔でこう答えた。
「長良さんはどういう人か知りたいですか?岩川鎮守府第一艦隊旗艦。さらに、近接戦闘も艦娘達の中では屈指の実力を持っている方ですよ!異能は無いですが、日々の鍛錬のたまもので軽巡でも戦艦に引けを取らないほどの実力なんですよ!」
おお!と手をポンと叩き、納得しているような表情を見せる江風と涼風。状況を冷静に見ていた海風、山風は座りながら話をする。
「ねえ、海風お姉ちゃん。どっちが勝つかな?」
「うーん、冷静に考えたら白露姉さんの方じゃないかな?相手は陣形が少し乱れているし」
「いえいえ、長良さんの真骨頂は前に出てこそ発揮します。軽巡の中でも屈指のタフさを持っています。さらに並外れた砲撃力、雷撃力、接近戦を持っています。たとえ陣形が乱れても問題ないですよ」
「鹿島さん、それどういう?」
「う~ん、見てればわかりますよ」
江風と涼風は頭にはてなマークを浮かべる。とりあえず、鹿島の言う通り戦況を観察してみることにした。
「夕立ってば向かってくるしか脳が無いのかしら…(;´д`)トホホ」
「夕立だから仕方ないって…。とりあえずさっき言ったように行動をするぞ」
白露の指示通り、時雨と摩耶で夕立を牽制し、飛鷹は艦攻・艦爆を発艦。村雨・鳥海は遠距離射撃の準備をする。白露は相手の動向を探る。夕立は最前線。その後ろには長良達がいる。陣形は単縦陣だ。夕立とはつかず離れずの距離にいる。
「…なんか違和感あるの気のせいか?」
「確かに、なんか違和感あるよね。夕立が最前線にいて、その後方に長良さん達がいて…」
時雨がそういっている中、夕立が急に反転して長良達のいる方向に向かって行く。心なしか少し遠回りしている気がする。すると、摩耶が海面を見て焦ったような様子で白露に報告する。
「白露、魚雷がこっちに来てる!」
「違和感はこれかよ!左舷に移動して、魚雷を避けるぞ!」
白露達は急いで左舷に移動し魚雷を避ける。魚雷を避け、その後相手を見ると長良の姿がなかった。白露は周囲を見渡すがどこにもいない。
(長良の姿が無い!どこ行った?後方、下…いや)
白露は上を見る。すると、そこには拳を振り上げている長良の姿があった。長良の構えを見て白露は直感的に思った。直撃したらまずいと。
「全員避けろ!上だ、散開!」
長良はちょうど中央、白露と飛鷹の間に向けて拳を叩きつけた。相当な威力なのか海柱が立ち全員が散り散りになってしまう。長良は白露達が散開したのを確認した後に、すぐに後方に飛び自分の艦隊に戻っていく。身体能力だけで言えば、夕立と同等かそれ以上だろう。
「まずいな、陣形が!?」
「白露!砲雷撃来るぞ!」
「艦攻・艦爆も来るわ!私が艦載機で何とかする!
「摩耶、お前も対空に専念。得意分野だろ!」
「よっしゃ、わかった!」
「鳥海と時雨で相手の牽制。村雨は援護射撃。私は、少し陣形外れるわ」
「ちょ、白露姉さんどうするつもり!?」
「やられた分少しやり返してくるわ!」
「…ふ~む。やっぱりしっくりきませんね…」
「やっぱり鹿島さんもそう思いますか?あたいもだよ、なぁ皆」
うんうん…と江風の言ったことに同意する白露型一同。なぜかというと、白露は必ずと言っていいほどいの一番に突っ込んでいくタイプ。砲雷撃、接近戦ともにトップクラスの実力を誇るのだ。旗艦だから自分から攻めないというのは理解できる。しかし、今のままでは白露の強い部分を活かせない。それならさっきの長良のように一撃を見舞いしてもいいような気がする。戦況をよく見ていた加賀は言葉にこそ出さなかったが心の中で思った。
(おそらく白露さんは旗艦には向いていない。でも、姉妹達や一部の実力者を引き付けるカリスマ性はある。長良さんはフィジカルはもちろん戦況の判断力に長けている。さっきの一撃の後にすぐに自陣に戻ったのがその証拠か。でも、そろそろ白露さんも動くでしょうね)
そして、演習を見ていた鳴海と桐生も顎に手を当てながら考えていた。考えていることは概ね加賀と同じことだ。
「仁、もしかしてですけど白露さんを旗艦にするべきじゃなかったですかね?」
「もしかしなくてもこりゃ白露を旗艦にするべきじゃなかったな。あいつのいいとこ潰しちまってるぜ」
「では他鎮守府と演習をするときは白露さんを旗艦に置かないようにしましょう」
「じゃあ、旗艦の経験がある摩耶、鳥海、長良、五十鈴あたりが適任か?」
「では僚艦に白露さんと時雨さんを置いて…」
「じゃあ索敵できる空母組も編成して…」
あれよあれよと演習風景を見ながら相談している提督と副提督を見ながら「ものすごいダブルタスクだ…」と驚愕する海風達新人組だった。
「さてと、相手に一撃見舞ったから砲雷撃で一気に片づけるよ!」
「!?長良姉、白露がこっちに近づいてくるわ!」
五十鈴が言った直後、猛スピードでこっちに迫ってくる白露がいた。しかも単騎だ。
「旗艦自ら来てくれるなんてね。白露に砲撃…」
長良が瞬きをしたまさに一瞬、白露が長良の眼前に来ていた。長良に拳を入れるつもりなのか、左拳を握りしめている。
「全艦梯形陣!急げ!早く!」
この一瞬の判断で即座に反応できたのは、隼鷹以外の五人。とはいっても、春雨は陣形を変えようとしたが間に合わないと判断しその場に頭を抱えその場に屈んだ。そして、白露が拳を長良に放ち長良はすんでのところでかわす。その瞬間、拳の衝撃波が長良の後ろまで飛び、ちょうど陣形を変えることが出来なかった隼鷹に当たる。衝撃波が当たった隼鷹は埠頭まで吹き飛んでいき思い切り背中をぶつけ気絶してしまった。もちろん艤装の判定としては大破判定である。その場に伏せていた春雨は帽子が危うく吹き飛びそうになったくらいで何とか衝撃波を受けずに済んだ。
「やられた分返したぜ」
白露が長良を指さしながら告げる。長良達は一人大破。白露達は全員無傷。これで六対五だ。だが、こんな状況にもかかわらず長良は少し笑っていた。やっぱり戦いはこうでなきゃつまらない。岩川鎮守府にも長良がどんなに対策しても勝てないやばい奴がいたがそれと同じくらい心が躍った。
「やるじゃん、白露!」