エヴァ様は今日も死なない! 〜不死身系お嬢様がダンジョン配信でバズリ散らかした話〜 作:あるふぁせんとーり
「貴方達こんエヴァ。そろそろお馴染みかしら、グリーンデザート放送局の時間よ。今回も私、エヴァ・グリーンデザートと」
「リリィ・グリーンデザート」
「ミーヤ・アンブライドルドでお送りしま〜す!」
『こんエヴァ』
『こんエヴァ〜』
『こんエヴァです!』
『待ってた』
『初見です!』
『こんエヴァ』
『配信乙』
既に配信前の段階から私でも少し気合を入れなければ追い切れないほどの速度で流れていくコメント欄。
一日経って登録者20万の壁も悠々と突破してしまったグリーンデザート放送局、その勢いは配信開始5分前の時点で既に8万人近くが待機していたほど。
他のチャンネルなどと比べても極めて高い、チャンネル登録者数に対する同接の割合はエヴァ様に対する世間の注目度の高さを示しているかのようです。
まあここまで来ると流石に荒らしやアンチなんてものも湧いてくるわけではありますが、そこは皆さんお馴染み、出来るメイドこと私リリィ・グリーンデザートが見事に保安しておりますのでご安心を。
『エヴァサマオッパイチイサイヤッター!!』
「あ、そこ!ピストルが出るわよピストルが!」
『うわじゃんけんピストルだ』
『大人げないぞこのお嬢様!』
『ノブレス・オブリージュはどうした!』
『冷静に考えたら全部に勝てるし全部に負けるし全部にあいこだよなあれ』
「でも私は美少女よ?」
『可愛いは正義を振りかざすな』
『可愛い武装やめろ』
『武装解除はよ』
『こいつマジ顔だけは最高だな』
『身体も最高だろ!』
「うわ変態じゃない……」
『マジなんなんだよお前』
ここは流石のエヴァ様、視聴者とのプロレスも何のその。
とはいえこのままだと本題に入れませんので、私は「そんなことはどうでも良いんですから」と話を切り出しました。
「待って貴女今私のスタイルをどうでも良いって言ったの?」
「まあどれだけ話したってエヴァ様のまな板はまな板じゃないですか。そんなことよりそろそろ本題に入りましょう」
「っ、8割方正論じゃない……!」
エヴァ様、聞き分けが良いのは非常に助かります。
そしてミーヤに資料やら何やらを画面に出してもらいつつ、私はちょこんと木陰に座って軽食のドーナツを頬張るエヴァ様に代わって本日の配信の主題について説明し始めました。
「本日は……そうですね、平たく言えば作業兼雑談配信といったところでしょうか。ミーヤ、説明をお願いします」
「は〜い!本日のダンジョンはここ、オリオール州のセントクレスピン侵蝕鉱!ここでてきと〜に魔力原晶を掘って行きたいと思います!」
『侵蝕鉱ってなんだっけ』
『教えてエロいひと!』
『天然でダンジョン化した鉱山。人工でダンジョン化した魔力鉱に比べて質のいい魔力原晶が採れる』
『ありがとうエロいひと!』
それではエロいひとに加えて説明しますと、魔力原晶というのは文字通りに結晶化、物質化した魔力のことです。
魔力はエネルギーと物質の状態を行き来しやすいという特徴がありますのでその変化の過程で皆様が思うほどのエネルギーの変化は起こりませんが、それを含めても非常に効率の良いエネルギーの生産方法であり、また工業的にも広く用いられるため、ギルドからの依頼数や報酬、申し込む冒険者も多く、非常に人気のある類のクエストとなっています。
ちなみにですが、汚染リスクなどが伴うほどの極めて純度の高い魔力原晶は一部の腕利きの職人の手によってオーダーメイドの装備に組み込まれることもあるそうで、そのような過程を経て作られた武器は新車、場合によっては家が建つほどの値が付くそうです。
「つまりは一次産業に従事すれば良いのよね?」
「はい。たまには汗を流して労働の尊さというものを実感してください」
「私汗よりも尊い物質流しまくってるのだけれど」
「あれほぼ汚染物質じゃないですか。もしかしてエヴァ様ってグレートでオールドなワンだったりします?」
「ほぼ言ってるじゃないそれ。……というか、ミーヤが持ってるそれは何?」
「え、これですか?」
私達が話している最中、隣で鼻歌交じりに何かを準備していたミーヤ。
エヴァ様が問いかけると、彼女は足元のそれを「よいしょ」っと持ち上げました。
『!?』
『狩人様!?』
『もしかしてエヴァ様狩りに来た?』
『やっぱエヴァ様って上位存在だろ』
『いや海の怪物と戦ってるかもしれないじゃん』
「……え、丸鋸ですか?」
「あ、そうですそうです!学院時代からの私物で〜、ほら、出力上げるためにエンジンもう一個付けて、しかも
「まあそうでしょうね」
ああ、また彼女に変な属性が付いてしまいました。
何しろミーヤは「丸鋸」なんてほざいてはいますが、それは一般的に想定される手持ちのものではなく、むしろ視聴者の皆様に馴染みのあるような、長い柄の先に大きな刃が付いた、どっちかというと獣狩りなどに向いていそうな代物なのです。
聞くと彼女はメカニックの家系に生まれたらしく、そんな彼女が10年近くを掛けて魔改造してきたそれはもはや工具、武器というよりも先に処刑器具といったものを連想させるほど。
「……で、それを何に使うおつもりで?」
「ほら、あれですよあれ。ちびちび掘るのって面倒臭いのでまとめてぶっ壊そっかな〜、って」
「リリィ、これってストレス社会の被害者?」
「おそらくは。……というか刃毀れは大丈夫なんですか?」
「あ、その心配は全然大丈夫です!これ最近強化ニンバス形状記憶魔鋼で鋳造したばっかなので、刃毀れも耐熱性も完璧ですから!」
『何の何の何?』
『待ってニンバス!!!???』
『今なんつった!!?』
『!!!!!!????』
『うわ一部がめっちゃビビってる』
『教えてエロいひと!』
『国防省と国産省が共同で開発した最新素材。高い密度と極めて高水準の靭性、耐熱性、耐摩耗性、耐食性などを併せ持ち、魔力による保護によって加工直後の形に自己修復するという性質まで兼ね備える。代わりに値段はkg当たり200万を超え、金の倍以上となっている』
「ミーヤ、これ何キロぐらいあるの?」
「えーっと、200はないですよ、多分」
『3億越えマジ?』
『なにこれブルジョワ配信?』
『道徳と健全さと引き換えに得た乳と顔と金』
『二物ってレベルじゃねえぞ!』
『じゃあ代わりに俺のイチモツを(ボロン』
『こいつらに反応するなら尊敬するわむしろ』
「まあ私も実験に使われてるだけなんで〜」と口を抑えて笑うミーヤ。
しかしこんなものに構っていたら本題に入る時間が無くなってしまいます。
いえ、「めちゃくちゃかっこいいな〜」とか思ってませんし、「うわあれ創ろ〜」とかも思ってませんよ?
私リリィ・グリーンデザートは憧れを捨てられるタイプの有能メイドですので。
というわけで私はエヴァ様に支給されていたツルハシを渡しました。
「はいエヴァ様、労働の時間です」
「はいはい、やってあげるわよ。こういうのってどうせやってみりゃ楽しいもんなんだから」
◇◇◇
「労働やだぁぁ〜〜!!」
そうか、そうか、つまりエヴァ様はそんな方だったんですね。
いえ、こうなるのは知っていたのですが。
ツルハシを手に「こんなただの作業面白くないわよぉ……」と徐々によわよわの片鱗を見せていくエヴァ様にコメント欄は相変わらずの変な盛り上がりを見せています。
エヴァ様は異常な身体機能と意味不明な体質を抱えてはいるものの、まあ何故か自認が美少女ですので、こうして重労働などの際はよわよわになりがちなのです。
「くっそぉ……わたしたちがこういうことをしないためにきかいがはってんしてきたんじゃない……!」
「おっヘイトスピーチですか。まずは漢字力復活させてから出直して来るんですね」
『煽りおる』
『主人に対するメイドの態度か?これが……』
「あっはは!!やっぱ丸鋸がストレス社会を解決するんですよね!!」
『こいつはもうなんなんだよ』
『この海で一番自由なやつじゃん』
『もうグリーンデザートに改名しろよ。相応しいよお前』
『生き別れの姉だったりしません?』
「ああもう!こうなったら仕方ないじゃない……!」
「あっマジで漢字力が」
『戻るんだそれ』
『パチンコの復活演出?』
『文字金色だろこれ』
「リリィ、産業革命するわよ!!」
……は?
皆様の高評価やチャンネル登録、コメントなど是非ともお待ちしております。