エヴァ様は今日も死なない! 〜不死身系お嬢様がダンジョン配信でバズリ散らかした話〜   作:あるふぁせんとーり

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【メイド】シン・27枠目【再始動】

 上手く畳めないことに気がついた風呂敷を焼き尽くしたところで皆様ごきげんよう。

 

 おひさしぶりのリリィ・グリーンデザートでございます。

 

 ……え?

 

 レイド?

 

 ミーヤのお姉様?

 

 残念ながら記憶にございませんが……まあ、いつか再と……登場するかもしれませんね。

 

 ということで前回までのあらすじです。

 

 ギャンブル中毒で名門ブランドフォード家を勘当されてしまったものの、改名の後グロトラップダンジョン、ハンティングアクション、炭鉱夫、群れバトルと4つの依頼、それに加えて朝活、収益化記念という2本の配信をこなし、人気急騰中のエヴァ様ことエヴァ・グリーンデザート。

 

 最初はお付きの戦闘(バトル)機械人形(オートマタ)系メイドである私、リリィ・グリーンデザートとの2人でしたが、諸事情でギルドをクビになったリョナラーエリート受付嬢、ミーヤ・アンブライドルドを加えて3人でやっていくことになりました。

 

 さらにさらに、この前の群れバトル配信で拾ったキバオオカミの赤ちゃん、マルジュも加わり、グロ、エロ、動物と伸びやすいコンテンツ三方良しとなったグリーンデザート放送局が次に挑むのは……といったところで大変長らくお待たせしました。

 

 エヴァ様、連載再開でございます。

 

 

「……で、随分と長い独り言ね」

 

「おや、聞こえておりましたか」

 

「そりゃ聞こえるわよ。リビングでポテチ頬張りながらそんなこと話してるんだもの。聞かされる身にもなりなさいな」

 

「……なるほど、バチクソ愉快でございますね」

 

「はっ、そうよね。リリィはそういう奴よ。食べ終わったら手伝いなさい。運ぶ荷物、まだトラック一台分はあるんだから」

 

 

 そう、引っ越しでテンション爆上がりしたエヴァ様は見境なく街の電機屋で大散財を決行。

 

 具体的な金額までは分かりませんが、まあ3~4桁万の境目といったところでしょうか。

 

 この形でわりかしゴリラなエヴァ様はさもそれが当然かのように1人で冷蔵庫やら洗濯機やらをひょいっと運んではシャトルランの如く廊下を爆走し、また新しい家具を担いで戻ってきます。

 

 そもそも不死身以前にカタログスペックからバグってるタイプ……というのは今更、ここまで読んでくださった皆様なら言うに及ばずでしょう。

 

 

「くゎんっ! わんわんっ!」

 

「おや、マルジュですか。エヴァ様は忙しいですし、ミーヤはテイクアウトを取りに行っていますし……仕方ありません。私と遊びましょう」

 

「何やむなしの選択みたいに言ってるのよ。私「手伝って」って言ったじゃない」

 

「わんわんっ!」

 

「ほら、マルジュも遊んでほしそうですし」

 

「もう、マルジュったら──」

 

 

 グランドピアノを下ろしながらエヴァ様がため息を吐いた、まさにそんなタイミングでした。

 

 ペロリン、みたいな少し珍妙な音を立てるエヴァ様のスマートフォン。

 

 MurmurerでもMeTubeでもない、聞き慣れない着信音。

 

 

「リリィ、心当たりある?」

 

「エヴァ様のスマホに心当たりあったらヤバくないですか?」

 

「それもそうね」

 

 

 相槌を打ちつつ、スマホをポチポチするエヴァ様。

 

 何度かポチポチした後、彼女はゴシゴシと目を擦り、ポチポチし、また何度か目を擦りました。

 

 急な花粉症でしょうか。

 

 

「私アレルギーないわよ」

 

「まあエヴァ様免疫系終わってますもんね。で、何の連絡でしたか?」

 

「何なのかしら、これ。私の見間違いだと思うけど、一応見てみてくれない?」

 

「いいですよ」

 

 

 そしてエヴァ様から渡された画面に目を滑らせていると、ふと留まる「パートナーシップ締結」という文字。

 

 私は一度、目を擦り、それからもうニ、三度目を擦りました。

 

 おかしいですね、見間違いではないようです。

 

 さらに少し読み進めていくと、出てくる出てくる、聞いたことのあるイベントやら配信者やらのビッグネーム。

 

 おまけに添えられた【コロナティオンプロジェクト】という送信元は今一番勢いがある(素人調べ)と言って良いほどの大手事務所。

 

 私はさらに四度、さらにさらに締めの五度目を擦りましたが、それは間違いなく、文字化けもしていない本物のメッセージ。

 

 スキャンしようにも電子署名も何ら問題なし、ということは正真正銘です。

 

 私は驚きのあまり、手に持ったそれを壁に叩きつけてしまいました。

 

 

「あっ私のなのだけどそれ!?」

 

 

 いえ、そんなことはどうでもいいのですが──

 

 

「ねえ聞いてる!?」

 

「聞いてません」

 

「ごめんなさい、こういうときどんな顔をすればいいかわからないの」

 

「笑えばいいと思いますよ」

 

「聞いてる?」

 

「聞いてません」

 

 

 まあ、何はともあれこれは一大事。

 

 適当に調べただけでも大手事務所の倍率が軒並み4桁倍率を越え、ネットの云々で自殺者まで出るこの時代、自殺してるだけの顔の良い女が採用とは世間に激震が奔ってしまいます。

 

 私は適当に宙に指を滑らせ、出先のミーヤに「エヴァ様、スカウト、ヤバい」とだけ送りつけました。

 

 

◇◇「いや何場面転換しようとしてるのよ!! 私のスマホバッキバキじゃない!!」

 

「必死で草生えますね」

 

「何が草よ緑化活動に精出して!! あのスマホだいぶ良いお値段したのだけど!?」

 

「じゃあ直せばいいんじゃないですか? まあ不可の──」

 

「それもそうね」

 

 

 ……あれ?

 

 エヴァ様には出来ないかつ私が直してあげる前提で言ったんですが。

 

 そもそもエヴァ様は機械工作が本人比でかなり苦手なタイプ、昔はゲームが壊れる度に私に泣きついてきたものですが……と思い返している合間に彼女は大変不本意ながら画面バキバキになってしまったスマートフォンを拾い上げ、ピッと爪で自らのほっそい腹を裂きました。

 

 切腹でもしたのかと介錯の準備をしようとしたところ、エヴァ様はドバドバと真っ赤な血を吐き出す傷口にバキバキスマートフォンをドリップ。

 

 未開封の高級ワインをワックスに浸すように……なんて儀式的なものではなく、まるでスポンジに洗剤を染み込ませるかのように。

 

 そしてアッシュグレーのスマートフォンが真紅に染まったところで彼女はそれを取り出し、唾か何かを付けて傷口を塞いだその瞬間──スマホの再起動音が響きました。

 

 

「っと。これで新品同然ね」

 

頭おかしいんじゃないですか?(頭おかしいんじゃないですか?)

 

「何もズレてないわよルビ。少し落ち着きなさい」

 

「落ち着きました。取り敢えず説明を求めます」

 

「ほら、私の血って回復効果あるじゃない」

 

「むしろ対極では?」

 

「いや私に対する」

 

「なるほどドレイン効果の話を」

 

「で、思ったのよ。これ私以外に使えないかしら、って」

 

「なるほど」

 

「で、さらに思ったのよ。これ自己認識を拡大したら行けるんじゃないかしら、って」

 

「スピってきましたね」

 

「エヴァヲイジメヌンデ」

 

「ああそのスピではなく」

 

「つーまーり、スマホを私の一部って思い込んだの。そしたら上手く行ったってわけ」

 

「現代病のレベルが高いですね。おまけに妄誕まで」

 

 

 「想像を超えてくる」、とはまさにこのことでしょう。

 

 今感じてるこの感情は某シン・怪獣映画のラストカットを見た時とよく似ています。

 

 気まぐれに成長してくる怪物のなんと恐ろしいことでしょうか。

 

 

「の割には随分と余裕そうね」

 

「まあ私は深いところでエヴァ様を舐め腐っておりますので」

 

「とてもスマホブッ壊した人間の態度じゃないわね」

 

「そりゃ人間じゃありませんし」

 

「そうだったわ、そういう作品じゃないのここ」

 

「やっと理解が追いつきましたか。おはようございます、エヴァ様」

 

「終始上から目線ね本当」

 

 

 とまあ茶番はここまでで、本題はまさにここから。

 

 エヴァ様は軽く咳払いすると今度は少し浮ついた表情を私へ向けました。

 

 

「それで、話を戻すのだけど……このメール、そういうことよね?」

 

「はい。業界大手──コロナティオンからのスカウトでございます」

 

「つまり?」

 

「大変悔しくはありますが……エヴァ様が、それだけ注目されている証です」

 

「〜〜〜〜っっっっ!!!! そうよね!? これってそういうことよね!? 私の努力が認められてるってことよね!?」

 

「努力?」

 

「……努力ではないわね。才能100だわ」

 

「ああ素直でした」

 

「でもそれにしてもよ!! 人から認められる、ましてやそれが一定以上の権威を持つものなら嬉しいに決まってるじゃない!!」

 

「それは否定しません。いくら人外であろうとエヴァ様のメンタルは年頃のガキ」

 

「ガキ?」

 

「他者からの承認が必要で堪らない時期なのは確かでしょう。というか、むしろそこで不老不死が固定されてる分一生思春期メンタルの可能性すらありますが」

 

「好き放題じゃない。私何か悪いこと……心当たりいっぱいじゃない」

 

「ほら、読者の皆様が作風忘れてるかもしれませんから」

 

「否定できないわね」

 

「とまあそんなことはさておき、この件、最大のデメリットが存在します」

 

「デメリット?」

 

 

 聞き返すエヴァ様に私はシリアスな表情を作ってから頷きました。

 

 

「はい。配信スタイル、エヴァ様やミーヤの性格、ターゲット層、作風……あらゆる点におけるデメリットです」

 

「ヤバくない? それ」

 

「はい。企業に所属し、契約を結ぶこと、それに必然的に発生する責任……人はそれを──「コンプラ」と呼びます」

 

 

 次回、「対コンプラ及びレズ戦」

 

 皆様、新生エヴァ様をどうかよろしくお願いいたします。




高評価とか感想、よろしくお願いします!!
「あ、書いてよかったなー」ってなるので!!
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