エヴァ様は今日も死なない! 〜不死身系お嬢様がダンジョン配信でバズリ散らかした話〜   作:あるふぁせんとーり

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【お嬢様】4枠目【報酬獲得】

「っくしゅんっ」

 

「あれ?エヴァ様、風邪でも引きましたか?」

 

「おかしいわね、理論上病気とかしないはずなんだけど」

 

「バカは風邪引かないって言いますもんね」

 

「聞かなかったことにしてあげるわ」

 

「じゃあもう一回言いますね」

 

「折れなさいよ、そこ」

 

 

 オーエンテューダー廃工業地域の最寄り、テューダーミンストレル州庁内のギルド。

 

 そう溜息を吐きながらも、通された応接室で私は係員が戻ってくるのを待つ。

 

 どうやらお役所仕草的なアレで、魔力核は直接受け渡しをしないといけないらしい。

 

 まあ魔力核が危険物に当たるのは理解出来なくもないけど、それにしてもさっさとDX進めなさいよ、というのが私の率直な感想になる。

 

 そしてリリィが両手のネイルを弄り、私が適当に数独をやり始めて15分ほど経った頃。

 

 大破しそうなサウンドとともに応接室のドアが勢い良く開いた。

 

 

「……あ、ここだ!お二人とも、たいっっへんお待たせしました!!」

 

 

 ギルドの新米受付嬢だという彼女は幾つかのファイル、それとなんか物々しい感じの合金製アタッシュケースと共に戻ってくる。

 

 そして彼女はそれを目の前の机にドンと置くと「すいません、上の人達が……!色々言ってきたので……!」と息を切らしながら頭を下げた。

 

 

「いえ、構わないわ。私も初仕事だし、長引くのは織り込み済みだもの」

 

「あ、ありがとうございます!それで、これが残りの書類なんですけど……」

「はいはい、保険の確認に報酬の領収書に……うん、確かに確認した」

 

 

 そして私が諸々の書類にサインし、それらを返すと彼女は「……はい!確認出来ました!」と無邪気なサムズアップと共に言う。そして彼女はアタッシュケースを開き、私の方へ見せた。

 

 

「それじゃあ、こちら諸々込みの報酬金250万ヌーアとなります!」

 

「アタッシュケースに入れる額じゃなくないですか?スカスカですけど」

 

「あはは〜……私、中央から出向してきたばっかりで、しかもこんな高額の依頼担当するのも初めてなんです。それで、初仕事の方にはこうして報酬金を手渡ししないといけないんですけど、丁度いい入れ物がなくて〜……」

 

「そう。ならありがたく受け取っとくわ」

 

「あ、だったらせっかくですし……!」

 

 

 そう言って彼女はそこそこかさばる量の書類をアタッシュケースに詰め込んでいく。

 

 そして丁度机の上が綺麗になった頃、アタッシュケースが満杯になった。そしてその想定通り、アタッシュケースは並大抵ではない重量へと変貌を遂げていた。

 

 

「……いや重っ。リリィ、持って」

 

「はいはいかしこまりました。それにしても馬鹿みたいな量ですね、書類」

 

「これでも最近減ってきたらしいんですけどね……公務員、大変です……」

 

「そんな事言われても、応援することしか出来ないけれど……」

 

「ですよね〜……でも、楽しいこともあるんですよ!エヴァさんみたいに凄い人に会えたりしますし!」

 

「ふふっ、光栄ね。それじゃあそろそろお暇しましょうか、リリィ」

 

「かしこまりました」

 

「あっ、それじゃあ入り口まで見送らせてください!」

 

 

 「もしかしたら、この先もお二人を担当するかもしれませんから!」と無邪気な笑顔を浮かべて言う彼女。

 

 そして私達は取り留めもない世間話の後に州庁を後にする。

 

 彼女は最後まで「ご活躍をお祈りしてますー!!」と手を振っていた。

 

 

「なんというか、天衣無縫ね。良い人だわ、あの人」

 

「あれでも中央の受付嬢ってことはキャリア官僚ですからね。ガチエリートですよ」

 

「……いやマジじゃない。やっぱ人って分からないわ……」

 

「セリフが人外のそれ──」

 

 

 スマホの電源を入れながらそう言いかけたリリィが突然固まった。

 

 「何?フリーズ?」と私より15cm程高い頭をベシベシ叩いていると、リリィから「大丈夫ですエヴァ様、いえ全く大丈夫ではないのですが」と白黒はっきり付けてほしい答えが返ってくる。

 

 

「……はい、落ち着きました。というわけでエヴァ様も落ち着いて聞いてほしいのですが」

 

「私は終始冷静だけど」

 

「まず勝手にエヴァ様のMurmurerアカウントを作ったんですけど、配信者用の」

 

「踏み込むわね、アクセル」

 

「フォロワーが10000人を超えました」

 

「……、……えっ早くないかしら?」

 

「ではもう少し詳しく話しましょう」

 

 

 そう言ってリリィは空中にホログラムの図解を投影し、説明を始めた。

 

 

「まず先程の配信ですが、エヴァ様が大暴れしてくれたおかげで非常によく盛り上がり、最終的には初配信ながら200人の視聴者、100以上の高評価を集めました」

 

「良いじゃない。私の顔のおかげかしら」

 

「この件に関しては否定しないでおきましょう。それで話を戻しますが、どうやらその視聴者の中に界隈では人気のある切り抜き師がいたそうでして」

 

「流れ変わったわね」

 

「そしてエヴァ様の切り抜き動画が彼の手によって投稿され、まあ結論を申し上げるとそれが現在進行形でバズり散らかしてます。投稿から2時間半で30万再生を超えて、しかも有名配信者が拡散したのが万バズしてたりでもうめちゃくちゃですよ」

 

「有名……ってこれユイカじゃない。随分姉孝行ね、あの子も」

 

「……いや思ったよりも余裕ですね?エヴァ様。身の丈知らずのバズり方をしてるのに」

 

「承認欲求が人を殺すという話かしら?確かに、私にも人並みの承認欲求くらいはあるかもしれないけれど、でもそれ以前に博徒なの。そんなものに踊らされて賽の目を外しなんてしないわ」

 

 

 「もちろん、それだけのオーディエンスが私のことを見てるというのは間違いなく興奮剤にはなるけどね」と笑う私に、リリィは溜息を吐きながら「ギャン中の変態とは、救いようがありませんね」と微笑んだ。

 

 

「まさかこれほどまで青少年教育に悪い主人を持つことになるとは思いませんでした」

 

「何よ、私の何処が教育に悪いって言うの?」

 

「逆に聞きますけど血まみれでアドレナリン出しまくってキマっちゃってるトロ顔曝してギャンブルやってる人間が教育に悪くないとでも?」

 

「でも美少女よ、私」

 

「ならなおさらです。良い子の皆様の性癖歪みますよ」

 

「でも貴方、さっきは「好きだ」って言ってくれたじゃない」

 

「私の個人的趣向の話です。一般的に言えば、間違いなく道徳教育といったものからは大きく逸脱してますよ、エヴァ様」

 

「ならどうしろって言うのよ?言っとくけど、私ギャンブル止めるつもりはないわよ」

 

「……でしたら、もう仕方ありません、教育に悪い配信ということで」

 

「あははっ、ええ、それが最適解ね」

 

 

 折れたリリィに「次の配信考えないと」なんて言いながら、私はバイクのエンジンを入れたリリィの後ろに跨った。

 

 

「あ、そう言えば風邪大丈夫ですか?」

 

「適当に弾丸でもブチ込んどきゃ直るでしょ。私不死身だもの」

 

「デスホイミ止めてください。そういうとこですよ」




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