「ま、まあなんとも可愛らしくなっちゃって……いや前の姿も綺麗だったけどね?」
「レーテ君はこっちのほうが好みかな?」
「たとえそう言ったとしたら俺はロリコンのレッテルを貼られないか?」
「こんな状況で何呑気に話してるのかね君達は!?」
目の前にいる小さくなったダヴィンチちゃんによれば、もし自分に万が一があったときのためにスペアを作っていたらしい
「あんなシリアスな別れ方したのに5分で再登場って嬉しさもあるけど困惑が勝つな。まさしく感情のジェットコースターだ。まあなにはともあれ、これからよろしく。ダヴィンチちゃん」
「ああ!これからは『こっち』の私を頼ってくれ!前の私よりも万能度は多少下がってはいるけどね?」
「まあそこは俺がなんとかカバーするさ。ダヴィンチちゃんほどではないにしろ俺だって天才を自称してっからな」
「挨拶は済んだかな?ならば制御に戻ってくれダ・ヴィンチ。君はこの特殊車両──虚数潜航艇シャドウ・ボーダーのナビをするために作られた人工サーヴァントだ」
ホームズにそう言われたダヴィンチちゃんはグチグチ言いながらも制御管に戻っていった。そしてこの状況に立香もマシュも思考が追いついていなかった。と、そろそろ氷原に出てそのまま海岸から海に向かうらしい
「海岸……?」
「そういや立香はここがどこか知らないのか」
「ふむ、ならば窓の外を見たまえ、ミスター藤丸。滅多に見られない風景が広がっている!」
立香は窓の外を見る。辺り一面真っ白で草の一本も生えていない。まあここ南極だしな。しかしまあやっぱりと言うべきか、立香はここが南極だってことに驚いてるみたいだな
「ここって南極だったんだ……」
「多くの国が所有権を主張するものの、まだ人類の手には渡っていない最後の開拓地。そのただ中にカルデアは建設された。どの国にも私的運用されないようにね」
「元々は止まることのない吹雪……神秘の残り香によって隠されていた山脈を魔術結界でほきょうし、その所在と機密を隠匿し続けた、地球最大にして唯一の人理観測所。それが人理保障機関カルデア。いや、カルデアだったというべきか」
「カルデアは謎の敵によって奪われ、そして今まさに閉館しようとしているのだから」
「今、閉館しようとしている……?」
「ああ、二十秒前、管制室のすべての通信の停止、動力消失を確認した。カルデアスもその運転を停止。空調は止まり、館内の温度はマイナス100度からさらに低下」
「言いづらいことだが、事実は事実として述べよう。カルデアは崩壊した」
「あー、まあそうだよな……正直今あそこに戻ったとしても俺たちにはどうしようも無いだろうさ」
「止めて──止めてください!カルデアに戻ります!戻らせてください!だって──奪われてなんて──奪われてなんていない!」
「マシュ、そう思いたい気持ちはわかるが……そんな身体で戻ってどうになるってんだ。もうハッチを開ける力すら残ってねえだろ。立香、マシュをそっと椅子に座らせてシートベルトを締めといてやれ」
「はい」
俺がそう伝えると立香はマシュを椅子に座らせた。別に悔しいのはマシュだけじゃない。俺だって立香だってホームズだって皆悔しいさ。得体のしれない奴らにカルデアをぶっ壊されちまうなんて……!
「すまねえな……俺がいながら、逃げるしか選択肢がねえなんてよ……」
「レーテさんのせいじゃないよ。誰の責任でもないんだ……」
「俺一人残っても良かったけどなぁ……」
「それが許されているならもう君はこの場には居ないだろう。ミスターエルネキア」
「はは、だよな」
「お、おい!外を見るんだ!」
なんだムニエル。薮からスティックに……げえっ!?何だあれ!俺も窓の外に目を向けてみれば、複数の隕石?のようなものが地上に降り注いでいた。待て待て、意味が分かんねえ
「んだよ、これ……」
「ふむ、可能性の1つとしては宇宙からの侵略者……ということも考えられる」
「真顔でそんな恐ろしいことを言うヤツがあるか!」
「わかる。ホームズってそういうとこあるよね」
「貴様も貴様だエルネキア!なぜこの状況でそうも冷静なのだね!?」
「あんたとはくぐってきた修羅場の数が違うんでね。それにあんたの方こそ───」
「すまない、静かに。外部からの通信だ。この周波数は君達カルデアのものだが」
『通達する。我々は人類に通達する。この惑星はこれより、古く新しい世界に生まれ変わる』
「──ッ!?この声は……!」
『人類の文明は正しくなかった。我々の成長は正解ではなかった』
「ふざけんなよ……人類の文明も進化も正しくなかった……?人間は数々の分岐を経て成長していくもんだ!その中に正解も不正解もあるかよ!そもそも、なんでお前が
「キリシュタリアって……」
「何!?この声の主はキリシュタリア・ヴォーダイムなのか!?」
「君たち、まだ相手の話は終わっていないようだよ」
『空想の根は落ちた。創造の樹は地に満ちた。これより、旧人類が行なっていた全事象は凍結される。君たちの罪科は、この処遇をもって清算するものとする』
『汎人類史は、2017年を以て終了した。私の名はヴォーダイム。キリシュタリア・ヴォーダイム。7人のクリプターを代表して君達カルデアの生き残りに──いや、今や旧人類、最後数名になった君達に通達する。この惑星の歴史は、我々が引き継ごう』
あの野郎……!!何が旧人類最後数名だよ!ふざけたこと言いやがって!ていうかなにまた世界滅ぼしてくれちゃってんだよ!人理修復してからまだ1年しかたってねえんだぞ!もっとインターバル置けよ!
「よし決めた。とりあえずキリシュタリアとほか7人……まあどうせ元Aチームの奴らだろ。クリプターとか言ってたな、あいつらは出会い頭にぶん殴る」
「かつてない程にレーテさんが燃えています……」
「そりゃ勿論───」
『電算室から緊急報告〜。電算室から緊急報告〜。はーい、こちら1人でボーダーの全機能を統括しているダ・ヴィンチちゃん☆』
こんどはなんだよ……もうトラブルは腹いっぱいなんだが。なになに?海岸まで2000だけど前方に大量の霊基反応を確認?カルデアを襲ったあの猟兵……オプリチニキか!?て……なんだこの数は!?
「おかしくない?これボーダーで突撃したら袋叩きにされるよな?」
『うん、このまま突入すれば確実に死ぬね!』
「うーんこれは詰んだかな?」
「キミたち揃いも揃って軽すぎやしないかね!?」
「もともとこんな感じだよ俺達は」
「よく人理修復を成し遂げられたね!?」
「大丈夫、今回もなんとかなるさ、必ずな!だろ?ホームズ!」
「素晴らしいよミスターエルネキア。その通りだとも!これは冒険だ。とびっきりのね。だがあの人狩りを突破するなんてそんなつまらない冒険じゃない」
「これは人類初の魔術航行。月世界旅行、地底世界旅行、時間旅行──そのどれとも違う試みだ。あると定義しなければこの世界は成立せず、かといって我々に触れることのできない領域」
「つまり?」
「即ち、マイナスへの挑戦だ」
マイナスへの挑戦!いい響きだ!具体的になにするのかはよくわからんけどとりあえずなんか凄え事するのは確かだな!
「ダ・ヴィンチ。ペーパームーンの使用許可をアトラス院からの使用許可は出ていないが私はあれの使い方を熟知している」
『うーん、実際の話、成功確率はどれぐらいなのかな?あの兵隊達と戦うより生存率は上なのかな?』
「成功率は3割以下。おまけにどこに出るかも分からない。ここを生き延びるだけなら他の手段を取ったほうが幾分はマシだろうね」
「そうか、じゃあホームズは
「その通りさ。ミスターエルネキア。今後我々があの連中と戦う為に」
『──了解した。虚数観測機・ペーパームーン、展開』
ダヴィンチちゃんがペーパームーンとやらを展開する。その際に一瞬魂が抜けるとか言われたけど聞かなかったことにしよう
「ハハハハハ!これでこそカルデアだな!奇想天外大いに結構!どんな困難も乗り越えてきたのが俺たちだ!今回も乗り越えて、あのバカ野郎どもをギャフンと言わせてやろうぜ!!」
「「はい!!」」
『さあ行くよ!シャドウ・ボーダー
うおっ!?これが幽体離脱……初めての感覚だぁ……まあいい。待ってろよ、キリシュタリア!お前含めて元Aチームの仲間をぶん殴ってやるからよ!
これでプロローグは終わり