それは、あまりにも王道すぎた   作:親指ゴリラ

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「あ゙ー、あー……うぅ、まだ喉が変な感じします」

「胃酸まで吐いてたからね……荒れてないかい?」

 

 

 燻った銀髪の少女、聖国からきた聖人モルセ。

 リティーの顔を見るなり吐き出した彼女は、マリアによる介抱と、アクアの魔法による消化器官の洗浄、そしてリティーの提供したポーションの服用によって、なんとか調子を取り戻していた。

 胃酸によって喉が焼けたのか、細い指で喉元に触れては頻りに首を傾げて違和感を訴えている。

 

 その隣でモルセの背中を摩っているのが、同じく聖国からきた聖人マリア。

 リティーより頭一つ分ほど大きく、女性にしては背が高い。黒い布の被り物で隠しきれないほど長い金髪を腰まで伸ばしていて、何が楽しいのかニコニコと笑みを浮かべながら甲斐甲斐しくモルセの世話をしている。弱っているモルセに心配気に声を掛けているものの、言葉と表情が一致していない。

 

 その様子を見てアクアは不信感を抱くも、リティーがいつもの調子で声をかける。

 

「ポーションで治したから問題ない筈ですが」

「じゃあ心理的な問題かな? モルセ、私が話を進めておくから休んでて良いんだよ」

「あー、あー……んんっ、ん……いえ、それには及びません。マリアさんに任せると話が脱線しますからね、モルセが責任を持ってこの仕事を遂行します」

 

 そう言い切ったモルセが顔を上げると、視界にリティーの姿らしきものが映り込む。内心で構えていたのが功を奏したのか、顔を顰めこそすれ今度は吐き出すような事はない。

 

 目を細めリティーを直視しないように気をつけながら、懐から取り出した黒い布を素早く顔に巻き、視界を遮る。黒い布地に銀の刺繍、モルセの持つ“奇跡”の力を調整するために用意された聖布の面だ。

 

 大きな一つ目のような紋様越しに、モルセとリティーの視線が交差する。モルセに先ほどまでの弱々しい様子は見られず、不満げに下がった口角からは彼女の心境が窺い知れる。きっと、布によって覆われた眉間には皺が寄っているのだろう。

 

 唇を尖らせながら、モルセが口火を切る。

 

「改めて――――久しぶりですね、シン」

「はい、お久しぶりです」

「モルセ達を待っていましたね?」

「まぁ、はい。そうですね、待っていました」

「アルファーの近くという事で覚悟はしていましたが……不意打ち気味に貴方の顔を見せられるモルセの気持ちも考えてくださいよ。最悪ですよ」

 

 やや喧嘩腰のモルセに対して、リティーは平常通りの焦点の合わない瞳を向けている。それが気に入らないのか、モルセは更に語調を強めて言い募る。

 

「だいたい、分かっていたなら事前に手紙の一つくらい寄越してくださいよ。好き勝手やってる貴方とは違って、モルセは暇じゃないんです…………どうせ、今回もモルセの力は必要ないのでしょう? お得意の占星術なり攻略なんちゃらで、パパッと解決すればいいじゃないですか」

「お怒りはごもっともですが、今回はそうもいかないのです。今後の事も見据えると、ここでモルセさんとマリアさんに助力いただく必要がありまして」

「はぁ? ……本当ですか?」

 

 目が見えなくとも、声だけで伝わる事がある。

 言葉にして助けを求めるリティーに対して、モルセは疑心を抱いているようだった。それまでのやり取りを鑑みても、とてもではないが友好的には見えない。

 

 助っ人どころか、そもそも相手側に仲良くしようという意思が感じられなかった。

 

 聞いていた話と違うな、と。アクアが首を傾げる。

 

 それとなくもう一人の助っ人へと視線を向けると、あちらもそれに気がついたのか、アクアへ笑顔でヒラヒラと手を振ってくる。リティーとモルセの間に漂う剣呑な雰囲気とは違い、こちらは逆に不自然なくらい友好的だった。

 

 だが……マリアを名乗る女性はリティーとモルセのやり取りを笑顔で見つめているため、なんとも言えない不気味さがある。その表情に浮かべている笑顔が、アクアの記憶の奥底に沈んだかつての()()を彷彿とさせる。あの“友達”を自称する少女も、いつもこんなチグハグな笑みを浮かべていた。

 

 なんとなく。本当に、なんとなくだが。

 アクアはこのマリアという女性とは、仲良くなれない気がした。

 

 

「あの、チュロさん。ちょっと良いですか?」

「あちらの二人のことです?」

「はい。その、私は聖国の事をよく知らないんですけど……そもそもなんですが、聖人って何なんですか?」

 

 聖人、言葉にするだけで大仰というか。そこはかとなく大物っぽい雰囲気のある肩書きだった。だが、アクアに聖国に関する知識は殆どないため、それがどんな意味のある役職なのかの判断ができなかった。

 

 アクアの出身であるソロナ王国は、聖国との折り合いが悪い。根本的に侵略国家であるソロナ王国に友好国家など存在しないのだが、その中でも聖国はソロナ王国の侵略戦争に強く抗議している立場の国家だった。当然、国交も最低限で情報が流れてこない。

 

 というより、聖国と合衆国と帝国以外の国は殆ど侵略されて地図上から名前が消えているため、国交があるだけマシな方なのだが。

 

 そういう事情もあり、アクアは諸外国に対する理解が浅いところがある。商人として各国を回っているチュロカンタを頼るのは、アクアにとって最善の手段だった。

 

「チュロもあまり詳しいわけではないですが……聖人は聖国の名誉職と聞いてるですよ」

「名誉職、ですか?」

「はいですよ。国のお偉いさんという訳ではなくて、あくまで国の認定を受けてそう名乗る事を許されているというですか……むむむ、なかなか説明が難しいですよ」

「――――私たちの事が知りたいのかな?」

「わっ」

 

 アクアへの説明に頭を悩ませるチュロカンタの隣から、マリアがひょっこりと顔を覗かせる。何がそんなに楽しいのか、アクアとチュロカンタの体を交互に見ては笑顔で頷いている。

 リティーのよく見せる仕草に似ているが、アクアはなんとなくそれを不快に感じた。アクアが他人にマイナス方面の感情を抱くというのは、滅多にあることではない。

 

 ほとんど初対面の相手であるにも関わらず拒否感があるという事実に、アクアは内心で首を傾げる。あの破茶滅茶極まりないリティーの行動に巻き込まれた時ですら、精神的な疲弊は感じても“嫌悪”は感じなかった。

 

 アクアにしては、珍しいことだった。

 だからこそ、その原因も分かっていた。

 

 この女性の態度や振る舞いが、アクアのトラウマを刺激するのだ。初めて戦場に出た時に、アクアに出奔を決意させたあの少女を思い出させて仕方がない。

 

 

「……? アクアさん、どうしたですか?」

「え、あっ。いえ……なんでも」

「ふむ? 水の魔法使いに限って無いとは思うが……熱中症かな? 具合が悪いのかい?」

「いえ、大丈夫です。すみません、ちょっと考え事をしてました」

 

 突然黙り込んだアクアを見て、チュロカンタとマリアが声をかける。チュロカンタは心配そうに、マリアは笑顔のままで。

 

 マリアから感じる違和感を無視して、アクアは元の話題へと話を戻す。

 

「えっと、マリアさん……でしたよね?」

「その通り、聖人マリア……或いは、“嵐の如き”マリア・ウェザードと呼ばれているね。名前を覚えてもらえて光栄だよ、可愛いお嬢さん」

「お嬢……? あの、私の名前はアクアです」

「では、アクアちゃんと呼んでもいいかな?」

「はぁ……その、ご自由に……?」

 

 なんでもないやり取りである筈なのに、どこか調子が狂う。そんな懐かしくも複雑な感覚から出来る限り目を逸らして、目の前に立つマリアへと意識を向ける。

 

 アクアとの会話のどこに満足したのか、マリアはニッコリと笑みを浮かべて話を続ける。

 

「ところで、アクアちゃんは聖人について知りたいのかな?」

「ええ、その、お恥ずかしながら存じ上げなくて」

「まぁ、聖国内でしか使われない言葉だからね。魔法使いという事は、ソロナ王国の出身だろう? 他国の役職について知る機会なんて、そう多くはないだろうし……気にせず、ね?」

 

 マリアはそう言ってから、一度だけ片目を瞬かせる。いやに慣れたその所作から、アクアはマリアの人となりを察する。

 

 なんというか、そう。ワザとらしいというか。

 一言で表現するならば、キザな人だった。

 

「ウチの国の聖人はね、所謂“奇跡”を扱える人を示す言葉なんだ」

「奇跡、ですか?」

「ソロナ王国的に表現するなら、おそらく“異能”という言葉になるのかな? 魔法使いのように“血”によって発現するわけではない、だけど魔法と同じく先天的に現れる。そんな特別な力を持った人間を、聖国は“聖人”と呼んで重宝しているんだ」

 

 異能、それはアクアにも理解できる言葉だった。

 

 アクアが魔法学校に在籍している間に、一つ下の学年に特別扱いで入学してきた平民の少女が、そう呼ばれる力を持っていた。

 

 その少女は……なんというか、いつも多数の男性から言い寄られていたような気がする。取り巻きと揶揄されるその男性陣も含めて、学校内では有名だった。

 

 取り巻きの中にはソロナ王国の第二王子もいて、平民の少女を巡った騒動の中で元の婚約者との婚約破棄をしたとかなんとか、真偽の不明な噂も流れていた。アクアはさほど興味のない話題だったが、一時期は魔法学校中がその話題で持ちきりだったのを覚えている。

 

 その平民の少女、アリシア・ハートは人を癒す力を持っていると聞いた。つまり、アクアの目の前にいるこの聖人というのは、そういう類の魔法とは別種の力を持っているという事になる。

 

 よく考えてみれば、この二人は空から落ちてきた。

 魔法使いであれば空を飛ぶのは珍しくなく、普段一緒に過ごしているリティーも割と普通に空を飛ぶためスルーしていたが、そういう事であれば納得がいく。

 

 なるほど、と。マリアの説明に納得したアクアは、ある事実に気がついた。

 

「……ん? あの、その基準でいうと……もしかしてリティーさんも“聖人”という事になるんですか?」

「シンくんかい? ……まぁ、うん、彼はちょっと枠が違うんだけど……そうだね、彼も大雑把に分類すると“聖人”って事になるのかな? 前に勧誘した時は断られたけど、良い返事を貰えていたらそういう立場になっていた筈だし」

「え、えぇ……リティーさんが、聖人? あ、“あれ”で……!?」

 

 思わずリティーを“あれ”呼ばわりするアクア。

 それくらい、リティー……或いはシンに対して“聖人”という言葉は似合っていなかった。

 だが、マリアの説明は……そっくりそのまま、リティーへと当てはめる事が出来る。

 

 魔法とはまた違う、なんかよく分からない特別な力。

 

 根本的に他者への興味が薄いアクアは、リティーの持つよく分からない力をソロナ王国でいうところの“異能”の類だと思っていたし、普段の生活で特に言及する事はなかった。

 というか、自発的に性別をポンポン変えたりなんだりするあの生き物の謎の能力を、人類が長年研鑽してきた技術である魔術や何かと同じだと思いたくない。

 

 そして何より――――。

 

「に、似合わない……! リティーさんが、せ、聖人……!? あの人が……!? ポーションで治せば良いからって人の痛みや苦しみを丸っとスルーする、あの人が聖人……!?」

「いや、まぁ、うん。彼、そういう所があるけどね」

 

 この一ヶ月間、毎日欠かさずアクアに何かしらの心労を与えてきたリティーが、聖国では“聖人”と呼ばれるという現実。そのあまりの受け入れ難さに頭を抱えて苦しむアクアを見て、マリアは微笑みから苦笑へと表情を崩す。

 それはマリアが初めて見せた笑顔以外の表情だったが、これまでのリティーの姿を反芻しているアクアはそれどころでは無かった。

 

 呆然とした様子で口から「聖人……? リティーさんが、聖人……?」と繰り返す様子に、チュロカンタですら擁護の言葉は出なかった。チュロカンタはシンの事が異性として好きだが、それはそれとして彼が人格面に多くの問題を抱えている事は事実として認めている。

 

 正直なところ、内心でアクアに同意していた。

 奇妙なことに、この場にいる全員の考えが一致した瞬間だった。

 

 

 リティーからすれば、不服そのものだった。

 

「あの、聞こえているんですが」

「シン、まだ話は終わってないんですけど」

 

 ヌルッと会話に混ざるリティーと、その背中から付いてくるモルセ。リティーはじぬろ、と半目でアクアを見据えて抗議していた。

 

 陰口や噂話は許すが、せめて自分のいない場所でやってほしい。その身に宿した能力によって他人の内心や過去の発言をテキストで確認できるリティーは、自分の目の前で発言されなければ特に気にしないという精神で生きている。

 

 リティーとしても、自分に“聖人”という言葉が似合わないというのは理解している。前世の知識によって“聖人”という言葉の持つ本当の意味を理解している身としては、なおさら体がむず痒くなる。

 

 そして、その上で。

 自分が魔人と呼ばれる存在である事も知っている。

 

 言いたくなるアクアの気持ちは分かるのだが――。

 

 それはそれとして、本人の目と鼻の先で盛り上がるのは流石に勘弁してほしかった。アクアは普段からリティーにデリカシーが云々というが、アクア自身も割とリティーに対してノンデリ気味だった。

 

 

「シンくん、話はもう良いのかい?」

「ええ、僕たちの今後について同意が取れました」

「シン、モルセはまだ話があると言っているのですが?」

「はいはい、可愛い可愛い」

「ハァ!? 貴方本当にそういう所ですよ……!?」

 

 じゃれ合うリティーとモルセを見て、アクアはまたもや首を傾げた。一見して先ほどまでと同じようなやり取りだが、それまで感じていた剣呑さが感じられなくなっている。

 

 リティーからモルセに対する雑な態度も、どちらかというと親しさからくるもののように見える。アクアがマリアと話している僅かな間で、何が起きたのか。

 

 釈然としない何かを咀嚼しきれないアクアの様子を見て、マリアがそっと耳元に口を寄せる。

 

「ふーー」

「はひゃっ!?」

 

 突然耳に息を吹きかけられ、アクアがその場から飛び下がる。その可愛らしい反応を見て、マリアはうんうんと頷いてから……再度、アクアへと近づく。

 

「実はモルセはシンくんが聖国に来なかっ――――」

「いやなに普通に話を進めてるんですか!? 今の何だったんですか!?」

「いや〜……そんなつもりじゃ無かったんだけどね、内緒話をしようとして近づいたら……アクアちゃんの耳が思ったより小さくて可愛くって……つい、意地悪したくなっちゃって、ね?」

「ね? じゃなくて……あの、セクハラですよ!?」

「うんうん、それでね」

「うんうんそれでね!?!?」

 

 アクアの抗議を丸っとスルーし、マリアは強引に話を進める。

 

「モルセは口ではシンくんに厳しいし、顔を見れば即座に吐いちゃうんだけど……まぁ、本心から嫌ってるわけじゃ無いんだよね。奇跡が干渉しちゃうから相性は良くないんだけど、あれでいてモルセはシンくんを認めているから……」

「マリアさん、適当な事を言わないでください」

「モルセはね、シンくんに聖国に来るように誘ったのを断られた事をずっと気にしてるんだよ。聖人はね、国の枠組みに縛られず人々を助ける仕事をするんだ。シンくんの持つ力があれば沢山の人々を助けられるのに、シンくんが断るから……拗ねちゃってるんだ。可愛いよね?」

「マリアさん」

「だからね、ちょーっと態度が悪いかもしれないけど……あまり気にしないであげてね、本当に良い子だから」

「マリアさん!!」

「ふふ、そんなに大きな声を出さなくても聞こえてるよ」

「じゃあモルセを辱めるのは辞めてくださいよ!? 聞こえているなら!!」

「いやー、あはは。モルセがいじらしくって、可愛いからつい……ごめんね?」

 

 モルセがマリアの袖を引き、アクアから引き剥がす。これ以上余計な事を言われないように、モルセは必死だった。そんなモルセの必死の抵抗を受けて、体格的に優っているはずのマリアはおとなしく砂浜を引きずられていく。

 

 マリアの表情はひどく満足そうで、ニコニコと笑みが浮かんでいる。

 

 その様子を見て、アクアの脳裏にあまり受け入れたくない予想が思い浮かぶ。否定してほしい、という気持ちを込めて傍のリティーへと話しかける。

 

 

「あの、リティーさんって……察するに、あの二人とはそれなりに付き合いがある感じですね?」

「ええ、まぁ。マリアさんの方は僕が六歳の時から、モルセさんは九歳の時からの付き合いになりますね」

「それで……その、こういうの本人以外に聞くのは良くないと思うんですけど」

「はい」

「あのマリアさんって人……もしかして、女の人が好きだったりしませんか?」

「いいえ、それは違いますよ」

「ああ、そうなんですね……気のせいか……」

「正しくは、自分より小さい女の子が好きな人です」

「もっと悪かった!?」

 

 過剰に反応するアクアへと、リティーは諭すように嗜める。

 

「アクアさん、人の嗜好の良し悪しを決めつけるのは良くないですよ」

「あー、いや、はい、そうですよね。すみません」

「更に付け加えると、あの人は小さい女の子が恥ずかしがったり弱ったりしている姿を見るのが好きなんですよ」

「あの、聞いた私が悪いんですけど……変な情報を追加するのはやめてもらえませんか?」

「合流がスムーズなのは僕が事前に到着地点を予測しているからなのですが、僕の目の前にモルセさんが来るように降りてきているのはマリアさんの仕業ですね。あれ、モルセさんが弱っているのを見て喜んでるんだと思います」

「普通に悪質ですね!? 聖人なんですよね!?」

「ついでにいえば色仕掛けもめちゃくちゃ効くので、あの人と会う時は基本的にこの姿(リティー)です。アクアさんもお願いしたい事があったら水着で色仕掛けするといいですよ」

「お、終わってる……!! 危険すぎませんか!?」

 

 視線の先でモルセに懇々と説教されながらも、嬉しそうにしているマリア。その綺麗な見た目からは想像できない悍ましい本性に、アクアは恐怖で体を震わせる。

 

 一目見た時から、なんとなく受け付けなかった理由が分かった。

 

 マリアは、“あれ”と本当に良く似ているのだ。

 アクアの貞操を狙ってきた狂人、イヴェルナ・ニー・クライゼルと。あの周囲から()()()真性のサディストと、似た精神性をしている。

 

 それはアクアにとって、あまりにも受け入れ難い個性だった。

 

 

「――――ふむ、なるほど」

「……? リティーさん? 何がですか?」

「いえ、アクアさんの事情は理解しました。マリアさんの事が、苦手なんですね?」

「……はい。というか、その、普通の感性ならお近づきになりたくないと思いますけど……?」

「まぁ、気持ちは分かりますが。あれでいて良いところもあるんですよ? 強いですし、身分に関わらず人助けしてますし、僕も命を救われた事があります。それに……モルセさんも、マリアさんのアレを理解した上で一緒にいるので。マジの犯罪行為はしない筈です」

「へぇ……たしかに、個人の嗜好と人格が必ずしも一致するわけではないですからね……」

 

 リティーの擁護に対して、意識的に納得するように努める。無理矢理にでも自分を納得させないと、この後に協力できる気がしなかった。それくらい、アクアにとってトラウマの傷は深い。

 

 そんなアクアの内心を理解しつつ、リティーは話を進める。彼女にとっても、アクアがマリアに苦手意識を持つのは予想外だった。そんな情報は、攻略Wikiに書いていなかった。

 

 兎にも角にも、仲良くしなければいけない。

 そのために、リティーは全力を尽くすつもりだった。

 

 

「今日は、彼女たちを含めて皆で水着で遊びます」

「はい?」

 

 アウトラート、二日目。

 アクアの夏は、まだまだ始まったばかり。

 

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