ペルソナRE   作:うどん米

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第2話・運命回る時

 

 

「――変な夢見た」

 

それはそれは変な夢だった。ともかく、起き上がりあたりをなんとなく見渡すも、まさかいたるところが全て青の電車の内部なんてことはなく、鼻が長い老人がなんてことも、銀髪に金色の眼を持つ美人なんているはずもない。

 

(――まさかただの夢を誘拐の類と勘違いするなんて)

 

自分のことながらその情けなさにため息を漏らしながらも現在の時刻を確認する。

 

「――あ」

 

 

 

 

 

 

「ははっ、まさか勤務二日目で遅刻なんて――いい度胸してるね?」

「すみませんでした!!」

 

角度は90度の最敬礼。もう、土下座をするしかないと思ったが、流石に早すぎると己の理性が止めたため思いっきりその頭の角度で謝罪の意を深々と示す。

 

「全く――気を付けてね。いざという現場で遅刻して犠牲者が出たなんてなったら――笑えないから」

「はい、以後気を付けていきます!」

 

そうだ、今俺が勤務しているのは高校で遅刻なんてそんな生易しい状況では済まない、本当に学生気分なんて捨て去らないと。

 

(うん、きっとあの変な夢もそんな気の緩みから生まれたんだ。重々注意しないと――)

 

だが、夢にしては妙にリアルだったし――それにしてもなぜ電車だったのか、など気になることはあるが、今考えてもわかるはずもなくとにかく今日の職務に当たった。

 

 

(ふぅ――寒いなあ)

 

俺はちょうど高校卒業と同時に警察学校に入学して約10カ月の研修期間を経て警察官になった。ちょうど季節的には冬なので、その洗礼を立番で感じていたのだが。

昨日も思ったがどうにも慣れそうとは思えない。

 

「あの、すみませーん。警官さん」

「は、はい!どうされましたか?」

(いかんいかん、注意散漫だぞ)

 

立番している俺に話しかけてきたのは高校の制服に身を包んで、そこそこ長い髪をオールバックにして髪ゴムで結んだ少年だった。おそらく、制服のデザイン的に人工島の上にある月光館学園の生徒さんだろう。

 

「実は、財布を落としてしまって――届いていませんか?」

「財布ですね――じゃあ、ちょっと交番入ろうかここは寒いからね」

「はい」

 

交番の中に入り、持っていた木の棒を立てかける。戻ってみると先輩は昨日と同じようにだらんと体重を任せている。そして、少年を連れている俺を見るなり目を細めた。

 

 

「おっと、阿歩炉くん。遅刻の次は未成年の連れこみかい?ちょっとどうかと思うよ?」

「やってませんよ」

 

中にいた丸先輩に茶化されるが笑ってごまかしながら、彼の財布が届られていないか確認する。しかし、残念だがそれらしきものは拾得物として届けられてはいなかった。

 

「ど、どうでしたか?」

「残念だけど、君が言う特徴のある財布は届いてきてなかった。どこに、落として来たとか思い当たるところはない?」

「そうですね――今日は学校を出た後――そうだ、近道をそうなところを見つけてそこを通って――」

(近道?普段なれない道を使ったのか)

 

 

「それってどのあたりかわかる?」

「えっと――この辺りです」

 

スマホの地図アプリで刺されたピンの位置を見ると確かにここには道はあるのだが、別に反対側を繋いでいるわけじゃないし、何ならすぐ行き止まりの道のはずだ。

 

「とりあえず二人ともまず彼に遺失物届を出させてあげたら?」

「そうですね――じゃあ、これを書いてね」

 

無いものはないので遺失物届の紙を差し出しそこの要項を書かせる。少年の表情は曇ったままで相当大事なものなのが伺える。その上、唇が少し震えているのも見えた。

(名前は――千石曲真(せんごくきょくま)くんね。曲がってるのか、真っすぐなのかよくわからないな)

 

遺失物届に不備はないか確認する。問題はないが、彼の深刻そうな表情は深まるばかりできれば俺が自分で探しに手伝いに行きたいがここを留守にするわけにもいかないだろう。

 

「――この住所そうだ、阿歩炉くんせっかくならこの地域の地形を確認するついでに彼の落とし物を探しに行ってきてみたらどうだい?」

「え!?いいんですか、先輩」

「いいよいいよ~僕が見ておくし、ここなら交番からもさほど離れてないしね――それに、財布大事なものなんだろ?表情を見ればわかるよ」

「――はい、上京するときに母がくれた大事なものなんです」

「母――」

 

母親がくれたものと聞いて俺の心が揺れ動くのを感じる。彼を見ればわかる、その財布は自分の支えの一部になるくらい大事なものだ、きっと一人で彼は探しに行ってしまうだろう。

 

「丸巡査長、行かせてください。彼の落とし物を見つけてきます」

「いいんですか!」

「よし!行ってこい、二人とも」

 

 

これが、すべての始まりだった。

 

 

現在、曲真くんと俺は二人並んで目的地に歩いていた。

 

「えっと、曲真くんだったよね?私は影山阿歩炉、アポロって呼んで」

「はい、アポロさん。ありがとうございます、一緒に探しに来てもらって――僕、最近来たばかりで誰を頼ればいいのかもよくわからなくて――」

 

上京してきたと言っていた、きっとここに来て右も左もわからない状態だったんだろう。

この時期から転校は珍しいし中々慌ただしくて友達もまだできていない頃だろう。

 

「なら、よく私達を頼ってくれたね絶対、財布を見つけよう」

「はい――その、アポロさんって何歳ですか?――えっと特に意味はないんですけど、すごく凛々しいのに、僕と同じくらいの年齢に見えたので」

「んーっと今年で19歳、君たち高校生が卒業するのが18歳だから、予想通り同じくらいの年齢だよ」

 

そう言うと、相当以外だったらしい彼の細い目を大きく開きながら驚いている。自分だと大人になったのはあまり実感できなかったが、他の子からそう言われると思わず少し口角が上がってしまう。

 

「じゃ、じゃあ僕と二歳差?二年でこんな風になれるのかな――」

「17歳か――なれるさ、私の場合警察学校で死ぬほど鍛えられたからね」

 

目を閉じればあふれ出す、脳の中で乱反射しながら響き渡るほどの怒声、罵声、叱責の数々。まさかの入寮二日目で隣の部屋の奴がいなくなったときは心が凍えたが、それも今ではいい思い出だ。

 

 

「なんだか、遠い目をしていますね――僕には、何かやりたいことがあるってわけじゃないんです。もう、来年から高校二年生なのに何もはっきりとした将来が浮かばないんです」

「――将来か」

 

将来と言うと、今朝の夢が気になる。すべて裏になったタロットカード、まるでお前の未来はないという暗示ともとらえられる。

 

「将来――未来なんて、誰にもわからない。明日には無くなってるかもしれないし――でも、諦めたらダメなんだ、それにきっと何かあるって信じ続けたほうが幸せな人生だと思わない?」

「諦めたら――ダメ。まず、財布探しを諦めないようにします!!」

「よし!その意気だ!――っと話してたら着いたね、でも本当にここなの?」

 

到着して、改めて確認したがこの道は本当にただの行き止まりで、近道で使えるなんてはずもなくマップアプリもこの先は行き止まりだと示している。

曲真君も違和感を感じているのか手にしたスマホとその路地を交互に見回している。

 

「そのはずなんですけど――なんだか、前来た時とは雰囲気が違うような?」

「とりあえず入っていこうか」

 

右見て左を見てもどう見ても、ビルの隙間にあるただの道、何の変哲もない路地裏なのだがそこに“一歩”足を踏み入れた。その時――

 

「え?」

 

視界にまるでバグが侵蝕するみたいに、靄があふれた後、世界が赤く染まった。

明らかな異変を感じ取って慌てて入ってきた入口を確認すると、そこには見事なビルの壁が聳え立っていた。

 

「嘘、でしょ」

「アポロさん、僕たちここから入ってきましたよね!」

 

曲真くんの言う通りここから入ってきたことに間違いはない。だというのに、踏み入れた瞬間まるで世界が変わったみたいに赤く染まって、後ろに壁が現れる。

 

「とりあえず、曲真くん。動かないで、今連絡を取ってみるから」

 

無線機を取り出し急いで交番にいる先輩に連絡を試みようとするも――

 

 

ザザザ

だが、無線機から帰ってきたのはノイズまみれの雑音だけだった。

 

「通じない?」

 

まさか、本当に別の世界にでも来たというのだろうか。交番から少し歩いてきたとはいえ無線が通じにくくなるほど離れたはずはない。

それに、空も、地面も辺り一面赤い空間、まるで俺が昨日夢で見た青い電車と真逆だ。

 

 

「あ、アポロさん――どうしましょう!?」

(――退路はなし、連絡もできない。場所もよくわからない、留まるのが吉だが――どうにも、ここの雰囲気はそうよさそうなものじゃない)

「曲真くん、もしかして君が言っていた近道ってここのことじゃない?」

「え?――い、言われてみれば。そうかもしれません」

 

曲真くんの話の違和感にもしやと思ったがこんな形で解決することになるとは、妙な汗が流れるのを感じながら頭を冷静にしようとする。

待て――朗報だここに曲真くんがいるということはここにはちゃんと出入り口が存在するはずなのだ。

 

 

「行こう、曲真くん。ここを脱出しよう」

「ッ――はい」

 

行ったばかりだし応援は期待できない。実質的に相手のテリトリーに誘い込まれたようなものだと考えていいだろう。総合的に考えて阿歩炉はここにとどまっている方が危険だと判断した。

 

 

数分後。

わかったことだがこの道は想像以上に広い。どうなってるんだってくらい広いのだ。少なくとも、あんな細道で収まる量ではない。

しかし、幸いにも一本道なので迷うことなく、進んで行けた。

 

 

だが――

 

「曲真くん、少し屈んで、息をひそめるんだ」

「え?はい――わかりました」

 

曲真くんの視界を手で塞ぎ、適当な障害物の影に身を隠す。

足が思わずすくみそうになる、ちらっと顔を出し再びその脅威を確認する。

巨大な目がちょうど柄当たりについた大きな剣が2体も空中を浮遊しながら進んでいたからだ。

 

「い、いつまでこうしてればいいんですか?」

「――待って、後少し」

 

彼が見たら叫びかねない。完全に幽霊とか宇宙人とかの類だ、少なくとも剣が宙に浮くという物理法則に喧嘩を売った存在を俺は動物園でも見たことがない。

 

 

 

あんなのがうろついている道、もしかしてここが赤いのと何か関係が――。思考を回しているうちに、二体の大剣はどこかに消えていった。

 

 

「――もういいよ」

「ぷはぁ、はい一体何が――」

 

急に、巨大な一つ目の剣の形をした怪物が現れたって言ったら曲真君は信じるだろうか――いや、信じないだろう。

冗談じゃない――俺も信じたくなかった大剣が浮遊して柄に目が付いたやつがいる空間なんて堪ったもんじゃない。

 

『我は―――汝は我――』

 

おまけにこんな変な空間に来たせいか幻聴まで聞こえて来た。結局、阿歩炉は曲真君の問いに何も返せないまま大剣が消えていった空間を凝視することしかできなかった。

 




メメントス的な、タルタロス的な、マヨナカテレビ的な場所に迷い込んでしまった阿歩炉と曲真君は無事脱出できるのか!!
投稿していくから応援してね!
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