パトカーのサイレンを鳴らしまくり道中の道を開けさせ特急スピードで現場に向かって行く。幸いにも丸先輩が先ほど曲真君のうちまで彼を送り届けていたので道に迷うこともなく到着することができた。
「よし、ついた――阿歩炉君、トランクを開けて無線機を出すんだ」
「無線機?でも、あそこは通信出来ませんでしたけど――」
「大丈夫、こいつは特別性でね。あの世界でも通用するんだ」
言われた通りトランクを開けると、そこには俺が持っている無線機よりも小型化されたものだった。それに加え、二つ召喚機――つまり、拳銃が置かれていた。
「その拳銃もマンに一つがあるから持って行って」
「ですが、俺は召喚機は――はい、わかりました」
口答えをしようとしたが、そんなことどうでもいいから早く行けと言う視線を感じ取り俺も早急に曲真君を助け出したいのは本当なので準備を整える。
「扉が開いてる――ていうか、こじ開けられてる!?」
「やられた!もう奴らは中に入ってるみたいだね。でも、赤い霧が漏れてる――まだ、異界化はしているみたい。奴らは曲真君を連れ去っていないってことだから――」
「早く行けってことですね」
扉は鍵が正常に開けたとは思えないほどひん曲がっており、中のチェーンも破壊されていた。だというのに、周りには野次馬一人も集まっていない。すなわち、大きな音を出すような工具は使っていないということだ。
――嫌な予感を感じつつも阿歩炉はあの世界に再び突入した。
先約が仮面神教以外にもいることも知らずに――
「――ッ、やっぱり赤いな」
『無事には入れたみたいだね。無線も大丈夫そうだ――よかった~』
「え?今、よかったって――もしかして、ぶっつけ本番だったなんてことはないですよね!?」
『ソンナコトナイヨ――それよりも、どうかな?中の様子は』
何だか怪しいが、ともかく玄関から入り中を少し見てみると普通の家ではまずなかった。もちろん、色々な家具が赤いというのもあったのだが、明らかに広すぎる。廊下の奥行きが果てしなく続いているうえに霧で視界も安定していない。
『なるほどね~こりゃあ、だいぶ異界化が進んでるね』
「だから何ですか、その異界化って」
『奴らがその赤い世界を展開すると僕たちみたいな半端者かペルソナ使いしか認知できなくなる。だけど、時間が経つにつれ異界化された空間は歪み変化してしまう――最終的には――』
「的には?」
『知らな~い』
「――そうですか」
「なんか冷たくなーい」
「―――」
ダルがらみは無視し探索を再開する。丸先輩の言うことが本当ならそれだけ奴らは相当手こずっているようだ。だが、異界化が進むということはそれだけ俺が増えた部屋などを探索して曲真君を探す必要が出てくる。
しかし、今回はそんな手間は必要なさそうだ。確かに、異界化によって探索できる部屋は増えたが最初は少なかったのだ。それだけ長い間籠城できる部屋は鍵が掛けられる部屋、そしてできるだけ奥の部屋に身を潜めているくらいだろう。
「先輩、異界化ってこの怪物も出てくるんですか?」
『怪物――?ああ、シャドウのことね。うん、異界化した世界には剣の形とか槍とか斧とかハンマーとか――とにかく色々な形状の怪物が出てくるよ』
「なんで武器縛りなんですか――?」
「さあ?」
こんな問いかけをしたのは他でもない俺の前にいるのはあの世界で初めて出会った柄に目がついている大剣が二本ふよふよ浮いていたのだ。
「やる気なら、倒すぞ」
『キィン!!』
最後通告すると大剣は自身の刀身を地面に叩きつけ『やってやるよ』と言わんばかりに音を鳴らす。すると、姿が闇に飲まれ中からドロドロしい緑色が中心の半流動体状の生命体に姿を変えた。
(心なしか右の奴の方が大きいような、個体差かな?)
「変わった!?なんか、緑色のドロドロした奴になりました!」
『相手も戦闘態勢ってことだね。その悪魔の名前は『スライム』だ――火と風が弱点だけで物理攻撃が効きにくいタイプだよ!』
「めっちゃ不利ですよ!!――ああ、やるしかない!穿て、『ロンギヌス』!!」
警棒を展開し槍を構え、ドロドロの体に向かって一刺し打ち込む。ティルヴィングにはこれで倒せたのだが先輩の言う通り手ごたえがない。
それどころかあのドロドロとした見た目からは想像できないほど素早い動きでこちらに突撃し、思わず尻餅をつく。
「ふぐおっ――一体どうすれば――」
『阿歩炉君、ペルソナの可能性を狭めてはいけないよ!今の君なら自分のペルソナを介して魔法が使えるはずだ』
「魔法――これか!!」
自分自身に問いかけるように目をつむる。そうすれば、自分が何ができるのか直感的に知ることができた。そして、警棒を杖のように構える。
「飛ばせ!『ロンギヌス』」
『GYAAAA!!』
スライムの片方に風が吹き荒れ、先ほどまでの槍でつくとは違い確かに手ごたえがあった。それに、先輩が言ったことが本当なら風での攻撃は奴らにとって弱点になるはずだ―――想像通り、スライムはダウンし動きそうもなかった。
『今だ、阿歩炉君!片方のスライムがダウンしたね、その隙をついてさらに攻撃しよう!』
「はい、食らえ!!」
もう片方のスライムにも同様に風の魔法を打ち込む。すると、同様にダウン状態になりその隙をついてさらに追撃を加えることでスライムに体を打倒することができた。
「はあ、なんか――魔法って疲れますね」
『うんうん、でもいずれ慣れていくよ。それに、戦えば戦うほどペルソナ使いは強くなっていく――まあ、レベルみたいなものがあると思っといて~』
「そうですか、先に進みます――あれ?」
風の魔法を打ち込んだ時、体から体力とはまた違う、精神力的なものが抜けた妙な感覚に襲われげんなりしていたが倒した他とは少し大きかったスライムの中から何かが落ちてきた。
何だろうとののぞき込むと、それはもぞもぞと動き出し空を舞い俺の目の前に現れた。
「はあはあ!あんた、助けるのが遅いんだよ。あと少し遅かった僕はドロドロに溶かされてたんだぞ!!」
「シャドウ?――丸先輩、目の前に言葉を話す小型の羽の生えた少女のようなシャドウが現れたんですけど撃退した方がいいですかね?
『小型の羽の生えた虫?そんなシャドウ見たことないけどな~危険がないなら無視していいよ』
「はあ!!お前ら、僕をシャドウ扱いなんて――僕は妖精だぞ!」
「だから、シャドウだろ?」
「あんなのと一緒にするな!とにかく、僕はシャドウじゃないからその槍を収めろ!」
激昂し、余裕がないのかまくし立てる自身を妖精だと自称する少女、サイズはコップくらいのサイズしかなく確かに要請と言われれば妖精だろう。
頭にかぶったピンク色の帽子とその陰から伺える緑の髪に幻想的な瞳、ナース服を思わせるデザインはこんな緊急事態でもなければ少しはうっとり来てしまうだろう。
「まあ、確かになんか喋ってるし同じじゃないのはわかるよ。それじゃあ、貴方は何者なのかな?」
「ようやくわかってくれたみたいだね。僕、トリッシュ――色々あって、オベロン王に妖精界を追放されて善行を積んでる妖精だよ」
「そっか、俺は影山阿歩炉――それじゃあね」
まあ、シャドウじゃないなら倒す必要もないかと曲真君を助け出すために彼女の横を通り抜け先に進もうとした、しかしそれを見たトリッシュは阿歩炉の進行方向に割り込んできた。
「どうしたの?」
「どうしたの?じゃないよ!!本当にスルーする気だったかよ、そこは僕も連れていくところだろ」
「――――――――――連れていくよ」
「本当に嫌そうだな!安心して、僕は結構役に立つよ」
「―――」
「本当だよ!!」
「―――」
「――頼むよ!散々、ぼったくり営業をしてたら王様に怒られて今度は本当に後がないんだ!」
「いや、ついてこない方が良い。この先は、仮面神教の団員たちがいる危険地帯だから安全を考えてさっさと出口に向かうべきだよ」
「僕には戦闘能力はほとんどないんだよ!もし脱出しようとしてシャドウと出くわしたらどうすればいいんだよ!」
「――それもそうか」
物理攻撃がほぼ効かないとはいえ、THE・ファンタジーの住人である妖精が手も足も出ずスライムに敗北したと考えると、逆に自分の近くに置いておいた方が安全かもしれない。
そう考えた阿歩炉は同行を認めると、トリッシュは小さな体をひねりながら喜びを表現していた。
「役に立つって言ってたけど、具体的に何ができるの?」
「ふふふ、お目が高いでぇすね!うーん――ほい!!」
「おおっ!?」
トリッシュが何やら唱えると阿歩炉の体に緑色の光が集まり出す。それが、先ほどスライムが突撃し少し違和感のあった腹部が癒されていく――それどころか、ついさっき仮面神教にぼっこぼこにされた傷も完全ではないが癒された。
「すごいな――あれ?」
「ぜぇはぁぜぇはぁ――み、見たろ!僕、すごいでしょ!」
「うん、だけど何でそんなに息が切れてるんだ?」
「ここには泉がないからね――かなり、力を使うんだよ。でも、僕はシャドウのことも色々知ってるから、戦闘になったらアドバイス!してやるよ」
「じゃあ、さっそくお願いしてもいい?」
「――やっぱり、お金欲しいな~」
「いや、懲りろよ――と言うことで、トリッシュと同行します」
『了解、回復役がいるのは助かるね、引き続き曲真君を探してね~』
何というか守銭奴なんだろうなと思いながらも視線を移す、一応は喋りながら歩いていたわけだからいつかは接敵する。相手は、剣型と槍型が一体ずつ、先ほどと同じように姿を変え剣型はスライムにもう片方は透明感のある羽、青いハイレグ、サイズ感は――ちょうど、顔の隣を飛んでいるトリッシュと目が合った。
「同族?」
「違うよ!僕とシャドウを同じにすんな!――あいつの名前はピクシーだあんたの槍なら一突きでぇす!」
「――やってみるか、貫け『ロンギヌス』」
ピクシーが動き出す前にトリッシュに言われた通りロンギヌスを呼び出し警棒を振るうと同時に槍が突き出される。すると、ピクシーは反応も出来ぬまま貫かれ黒い影に還った。
そして、次にスライムへ視線を向け風を起こしスライムを吹き飛ばし撃破した。
「ふふっ、散々僕を苦しめてきたやつらがこんなに簡単にやられるなんてサイコーでぇす!!」
「助かったよ、トリッシュ。このまま奥に行こう」
「そういえば、阿歩炉はどうして奥に向かんでるんだ?」
「あ、それはね――」
阿歩炉はトリッシュにこれまでのことを説明した。ついでに、彼女が仮面神教について何か知っていないかと思ったが特に有益な情報は持っていないらしい。だが、一つ興味深い話を聞けた。
それは、仮面神教たちが入って行ったあと家に入った人がいるというのだ。
「とにかく、俺たちがすべきことは曲真君を連れて全力でここを脱出する。なるべく戦闘は避けていきたい」
目指せ最深部、曲真君が立てこもっているだろう鍵のかかっている部屋を目指して全力で駆け出した。
はい、女神異聞禄ペルソナとペルソナ2罪・罰に登場するぼったくり妖精のトリッシュさんです!
口調が多少違うのは――資料が少なかった。まあ、妖精王にぎったんぎったんに怒られたと解釈していってください!