遊☆戯☆王 BURST   作:クリフォトン

1 / 1
第1話 「シンクロ召喚!ギガンテック・ファイター!」

 ここはネオドミノシティ。高層ビル群が空に向かって伸び、その間を縫うように古いライディングデュエル用のコースが張り巡らされた、デュエルモンスターズと共に発展を遂げた巨大都市だった。

 かつてこの街では、D・ホイールと呼ばれるバイクに乗りながら行うライディングデュエルが一世を風靡していた。しかし今では、その危険性や高いコストが問題視され、多くのコースが使われないまま放置されている。代わりに、より安全で手軽なスタンディングデュエルが主流となっていた。

 朝の通勤ラッシュで賑わう街角では、学生たちがデュエルディスクを腰に装着して登校している。カフェの店先では若者たちがカードを交換し合い、電車の中でもデュエルモンスターズの話題で持ちきりだ。この街に住む人々にとって、デュエルは生活の一部なのだ。

 

 セントラルハイスクールの校門前で、轟木遊士(とどろきゆうじ)は深呼吸をしていた。17歳の彼は、深い山奥の小さな集落から、この都市部の名門校に転校してきたばかりだった。

「さすが都会の学校は違うな……」

 遊士は見上げるように校舎を眺めた。故郷の木造校舎とは比べものにならない、ガラス張りの近代的な建物。制服姿の生徒たちが慣れた様子で校舎に向かっていく中、遊士は一人佇んでいた。

「あの……大丈夫?」

 後ろから遠慮がちな声をかけられ、遊士は振り返った。そこには背の低い、眼鏡をかけた気弱そうな少年が立っていた。

「どうしたの? もうすぐホームルーム始まっちゃうよ」

「ああ、すまねぇ。転校生なんだけどよ、このバカデケェ校舎に圧倒されてたんだ」

 遊士の素直な返事に、少年は少し驚いたような表情を見せた。

「転校生なんだ。僕は2年B組の田中マサト。君も同じクラスかな?」

「おお! 俺も2年B組だ。轟木遊士ってんだ。よろしくな、マサト」

 マサトは遊士の人懐っこい笑顔に、少し安心したような表情を見せる。

「それじゃあ一緒に教室に行こう。案内するよ」

「助かる!」

 

 

「はい、静粛に! 今日から新しい仲間が加わります。轟木遊士君、前に出て挨拶をしてください」

 担任の中年教師に促され、遊士は教壇の前に立った。

「山奥の集落から来ました、轟木遊士です。都会の生活には慣れてませんが、みんなと仲良くなりたいです。よろしく!」

 遊士の飾らない挨拶に、クラスの雰囲気が少し和んだ。しかし教室の片隅で、一人の少年が不快そうな表情を見せているのを、マサトだけが気づいていた。

 

 ホームルームが終わり、休み時間になると、教室の前で三人の生徒がマサトを待ち構えていた。中央に立つのは、金髪を後ろに撫でつけた派手な少年。高級そうなアクセサリーを身に着け、傲慢な笑みを浮かべている。

 桑田雄介(くわたゆうすけ)。学園きっての資産家の息子で、成績も優秀、デュエルの腕前も同学年では最強クラスという、典型的なエリートだった。

「おい、田中。今日の放課後も時間空けとけよ」

 桑田の言葉に、マサトの顔が青ざめた。

「く、桑田君……今日はちょっと……」

「はあ? 俺のデュエルの練習に付き合うのが嫌だってのか? お前みたいな雑魚が俺様の相手をできるなんて光栄に思えよ」

 桑田の両脇に立つ取り巻きの一人が、太った体を揺らしながら笑った。

「そうですよ、田中さん。桑田さんの練習相手になれるなんて、むしろ感謝すべきじゃないですか」

 もう一人の痩せた取り巻きも調子を合わせる。

「普通ならもっと酷い目に遭わされるところですよ。桑田さんは優しすぎるくらいです」

 桑田はマサトの肩を強く掴んだ。周りの生徒たちは見て見ぬふりをしている。

「おい、何の話だ?」

 遊士が前に出た。桑田は遊士を見て、興味深そうに眉を上げる。

「俺は桑田雄介だ。田中とはデュエルの練習でお世話になってるんでな」

「デュエル?」

 遊士が首をかしげると、桑田の表情が変わった。

「まさか……お前、デュエルモンスターズを知らないのか?」

「うちの村じゃカードゲームってのはあんまり馴染みがなくてよ。都会じゃ人気なのか?」

 教室にいた生徒たちがざわめいた。現代の高校生でデュエルモンスターズを知らない者がいるとは、誰も想像していなかった。

 太った取り巻きが呆れたような声を上げる。

「デュエルモンスターズを知らないって……今時そんな人いるんですね」

「さすが田舎者は違いますね」痩せた取り巻きも嘲笑を浮かべた。

「ハッ、これは傑作だな……」

 桑田は腰に装着された最新型のデュエルディスクを起動させた。ソリッドビジョンシステムが静かに展開される。

「これがデュエルディスクだ。そしてこれが……」

 桑田がカードを掲げると、緑の体に赤いたてがみを持つ獣の立体映像が教室に現れた。

「『ナチュル・ガオドレイク』! 攻撃力3000の獣族モンスターだ! どうだ、ビビったか?」

「うおっ!?」

 遊士は思わず身を引いた。目の前に現れた巨大な竜の迫力に、さすがの彼も驚きを隠せない。

「こ、これは……すげぇな…!」

「これがデュエルモンスターズだ。カードに描かれたモンスターを召喚し、互いのライフポイント4000を削り合う。現代人には必須のスキルだな」

 桑田は得意げに説明すると、ホログラムを消した。

「轟木、興味があるなら俺が教えてやってもいいぜ。もちろん、田中と同じように俺の練習相手になるってんならな」

 その時、チャイムが鳴り響いた。

「おっと、授業が始まるな。田中、放課後に屋上で待ってやる。今日は『特別メニュー』を用意してやるからな」

 桑田はそう言い残して席に向かった。マサトの表情は暗いままだった。

 遊士は桑田の去り際の言葉に、何か嫌な予感を感じていた。「特別メニュー」という言葉の響きが、ただのデュエルの練習以上の何かを示しているように思えたのだ。

 

 現代文の授業中、遊士は集中できずにいた。桑田とマサトのやり取りが頭から離れない。

「あれは本当にただの練習相手なのか?」

 隣に座るマサトを横目で見ると、彼は明らかに落ち着きがなかった。ペンを握る手が小刻みに震え、教科書を見つめる目は虚ろだ。

「マサト、大丈夫か?」

 遊士が小声で声をかけると、マサトは慌てたように顔を上げた。

「あ、う、うん……大丈夫だよ」

 だが、その表情は明らかに大丈夫ではなかった。

 授業が終わると、遊士はマサトに向き直った。

「さっきの桑田って奴のこと、もう少し詳しく教えてくれないか?」

「え? 別に、本当にただのデュエルの練習で……」

「練習で相手を『雑魚』だの言うか?」

 遊士の真っ直ぐな視線に、マサトは目を逸らした。

「そ、それは……」

「休み時間に話そう。今度は正直に頼むぜ」

 

 人気のない廊下の隅で、遊士とマサトは向かい合って立っていた。

「マサト、俺は田舎者だが馬鹿じゃない。あれは明らかにいじめだろう?」

 遊士の言葉に、マサトの肩が小さく震えた。

「いじめって言うか……確かにデュエルは教えてもらってるんだ。でも……」

「でも?」

「毎回一方的に負けて、その度に『雑魚』『生ゴミ』って言われて……最近は他の生徒の前でも……」

 マサトの声が段々小さくなっていく。

「どのくらい続いてるんだ?」

「もう半年くらい……最初は本当に教えてくれてたんだ。でも、僕が全然上達しないから、だんだん態度が変わってきて……」

「それで今日は『特別メニュー』か」

 遊士は拳を握りしめた。

「今日は何をされるか分からない。もう本当に怖いんだ……でも、逆らったらもっと酷いことになりそうで……」

 マサトの目に涙が浮かんでいた。

「そんなの許せるか!」

 遊士の声に、廊下を歩いていた数人の生徒が振り返る。

「だったら俺が代わりに相手してやる」

「え? でも轟木君、デュエルのルールも知らないんでしょ? 桑田君は本当に強いんだ。この学年どころか、学校全体でもトップクラスのデュエリストで、去年の校内大会でも準優勝だったんだよ」

「それでも……」

 遊士はふと胸ポケットに手を当てた。そこには、ずっと大切に持ち続けているものがある。

「ルールを知らなくても、人を苦しめる奴は許せねぇ」

「轟木君……」

「それに……」

 遊士は躊躇いがちに胸ポケットから古い封筒を取り出した。

「実は、これを持ってるんだ」

 

 昼休み、人気のない中庭のベンチで、遊士とマサトは向かい合って座っていた。遊士の手には、先ほどの古い封筒がある。

「これ、昔世話になった人から貰ったんだ」

 遊士の脳裏に、あの日の記憶が蘇る。

 

 それは遊士が7歳の時だった。山奥の集落を一人の男が訪れた。都会から来たその男は、都心部で技術職に着いていると名乗った。

「君に、これを渡そう」 男は一枚のカードを差し出した。夕日に照らされたカードには、力強い戦士の姿が描かれていた。 「『ギガンテック・ファイター』.いつか本当に大切な何かを守りたい時が来る。その時に使うんだ」 「でも、おじさん…俺、カードゲームなんて分からないよ」 「今は分からなくてもいい。だが覚えておくんだ。本当の強さってのは、自分のためじゃない。誰かを守りたいという気持ちから生まれるんだ」

 男はそう言って、山を下りていった。それが最後の別れだった。

 

「『ギガンテック・ファイター』? これは.シンクロモンスターで、攻撃力2800もある! しかもレアカードだよ!」 マサトは驚きの声を上げた。

「『いつか本当に大切な何かを守りたい時が来る』って言われてたけど、今がその時かもしれねぇ」 遊士はカードを見つめながら言った。あの時の男の言葉が、胸の奥で熱く脈打っている。

「でも、デュエルモンスターズって、1枚強いカードがあるだけじゃダメなんだ。デッキ全体のバランスや戦略が重要で……」

「だったら教えてくれ。お前がそんな顔してるのを見てるのは、もう耐えられねぇ」

 マサトは遊士の真剣な表情に、心を動かされた。

「分かった……僕のデッキ、貸すよ。シンクロ召喚もできるように、チューナーモンスターも入ってるから」

「本当か!」

「うん。それに、君の『ギガンテック・ファイター』を活かせる戦略も考えてみる」

 マサトは自分のデッキケースを取り出した。

「でも、時間があまりない。放課後まで、デュエルの基本から覚えなきゃいけないから……」

「やってやる。絶対に桑田を倒して、お前を守る」

 遊士の言葉に、マサトの目に希望の光が宿った。

「じゃあ、午後の授業が終わったら、すぐに特訓しよう」

「ああ!」

 二人は固い握手を交わした。

 しかし、中庭のベンチから少し離れた場所で、数人の生徒が二人の会話を盗み聞きしていた。

「おい、聞いたか? 転校生が桑田に挑戦するって……」

「マジで? あの田舎者が?」

「でも桑田って、校内でもトップクラスじゃん……」

「へぇ...これは面白くなりそうだな」

 

 

 放課後前の最後の授業中、教室内でひそひそと囁き声が響いていた。

「転校生が桑田に挑戦するって本当?」

「中庭で聞いちゃったんだけど、マジで屋上でデュエルするみたい」

「えー、無謀すぎない? 桑田って去年の校内大会準優勝だよ?」

「でも転校生、なんか強そうなカード持ってるって話も……」

 授業が終わると、遊士とマサトは誰もいない教室に残って特訓を始めた。マサトは遊士にデュエルの基本を教えた。ライフポイントの概念、モンスターの召喚方法、魔法・罠カードの使い方、そして何より重要なシンクロ召喚について。

「シンクロ召喚は、チューナーモンスターと他のモンスターのレベルを合わせて行うんだ。君の『ギガンテック・ファイター』はレベル8だから……」

「レベル3と5、6と2…とかでやれるってことだよな」

「そう! 覚えが早いね」

 マサトは嬉しそうに説明を続けたが、すぐに表情を曇らせた。

「でも問題があるんだ。僕のデッキは機械族中心だから、戦士族の『ギガンテック・ファイター』の効果を活かしきれないかもしれない」

「構わねぇ。基本攻撃力2800でも十分だろ」

「でも桑田君の『ナチュル・ガオドレイク』は攻撃力3000だから、正面からじゃ勝てない。何か戦略を考えないと……」

 遊士はマサトから借りたデッキを見返した。その中に興味深いカードを見つける。

「これは?」

「『二重魔法』だね。相手の墓地の魔法カードを使えるんだよ。コストもあるし正直運が良くないと…って感じだけどね」

「へぇ.面白いカードだな」

 一方、教室の外の廊下では、好奇心に駆られた生徒たちが続々と集まってきていた。

「本当に特訓してる……」

「転校生、結構真剣だね」

「桑田も知ってるのかな?」

 そして、その噂は瞬く間に学校中に広がった。購買部では、図書室では、部活動の準備をしている生徒たちの間でも、転校生と桑田のデュエルの話で持ちきりになっていた。

「屋上で決闘だって」

「見に行こうよ」

「桑田の実力、みんな知ってるよね?」

「でも転校生も何か作戦があるらしいよ」

 運命のデュエルまで、あと1時間。遊士の胸に、静かな闘志が宿っていた。

 

 放課後、セントラルハイスクール屋上。

 夕日が校舎を血のように赤く染める中、既に百人近い生徒が屋上に集まっていた。転校生と桑田のデュエルの噂は、午後の間に学校中を駆け巡り、まるで一大スペクタクルのような様相を呈していた。

「すげー人だな…まるでプロの試合みたいだ」 「桑田の実力、みんな知ってるよね?」 「でも転校生も何か切り札があるらしいよ」

 ざわめく観客の声が夕風に乗って響く中、桑田は屋上の中央で腕を組んで立っていた。夕日を背にしたその姿は、まさに王者の風格を漂わせている。

「へえ…随分と大勢集まったじゃねぇか」 桑田は観客を見回して満足そうに笑った。 「これだけの観客の前で、田舎者を完膚なきまでに叩きのめすってのも悪くない。まさに公開処刑だな」

 屋上の扉が重い音を立てて開き、遊士がマサトと共に現れた。遊士の腰には、マサトから借りたデュエルディスクが装着されている。夕風が彼の髪を激しく揺らし、決意に満ちた瞳が夕日を反射して光った。

 観客たちの視線が一斉に遊士に注がれる。 「本当に来たんだ…」 「転校生、緊張してるかな?」 「でも、なんか雰囲気が違うよね…」

「ほう...田中の代わりに田舎者が出てくるのか? 涙ぐましい友情だな」 桑田は嘲笑を浮かべながら言った。 「これだけの観客の前で恥をかくのか。まあいい、どうせ結果は同じだ」

「俺が相手してやる」 遊士が前に出ると、桑田は鼻で笑った。 「デッキは田中の借り物か。まあ、どうせ使いこなせねぇだろうがな」

 遊士は胸ポケットに手を当てた。そこには、あの大切なカードが眠っている。 (おじさん…俺、今ならあんたの言葉の意味が分かるよ。誰かを守りたいという気持ち…それが俺を強くしてくれる)

「デュエルで勝負だ。ごちゃごちゃ言うな」 「随分と威勢がいいな。田舎者のくせに生意気な口を利く」 桑田の目が鋭く光った。

 二人はデュエルディスクを起動させた。機械音が響き、ライフポイントが4000と表示される。観客たちが固唾を呑んで見守る中、夕日がより深い赤色に変わっていく。

「行くぞ!」 夕日を背に、大勢の観客が見守る中、二人のデュエリストが激突しようとしていた。

 

 

 

「デュエル!」

 

---

 

### 【1ターン目:桑田】

 

「俺のターン! ドロー!」

 

桑田は勢いよくカードを引くと、不敵な笑みを浮かべた。

 

「チューナーモンスター、『ナチュル・ローズウィップ』を守備表示で召喚!」

 

空中に緑の光が踊り、やがてそれは一本の薔薇の茎のような形を成していく。その先端には鋭い棘が無数に輝き、まるで生きているかのようにゆらゆらと揺れている。

 

**ナチュル・ローズウィップ** ☆3 DEF1700

 

「続いてリバースカードをセット!」

 

桑田の足元に、裏向きのカードが静かに浮かび上がる。

 

「ターンエンド。さぁ、お前の番だぜ」

 

桑田は腕を組み、余裕の表情で遊士を見据えた。

 

**桑田:LP 4000 手札4**

**ナチュル・ローズウィップ** ☆3 DEF1700

**伏せカード1枚**

 

---

 

### 【2ターン目:遊士】

 

「俺のターン! ドロー!」

 

**遊士 手札5▶︎6**

 

遊士の手は微かに震えていた。手札を見る目は必死だったが、その奥に諦めない炎が宿っている。

 

(まずは様子を見るしかない……)

 

「『メカ・ハンター』を召喚!」

 

青い光が収束し、銀色の装甲に身を包んだ機械戦士が現れた。胸部のエネルギーコアが青白く光り、両腕に装備されたレーザー砲が静かに唸りを上げる。

 

**メカ・ハンター** ☆4 ATK1850

 

「こっちから攻めさせて貰うぜ! 『メカ・ハンター』で『ナチュル・ローズウィップ』を攻撃!」

 

メカ・ハンターの胸部エネルギーコアが激しく明滅し、両腕のレーザー砲が標的に向けられる。

 

「甘いな! トラップカード、『D2シールド』発動!」

 

桑田の足元の伏せカードが反転し、緑色の光の壁が薔薇の茎を包み込む。

 

「俺の『ナチュル・ローズウィップ』の守備力は倍となる!」

 

薔薇の茎が急激に太く、長く成長していく。その表面は硬質化し、まるで鋼鉄のような光沢を放つ。

 

**「ナチュル・ローズウィップ」DEF 1700▶︎3400**

 

「なにっ!?」

 

遊士の目が見開かれる。レーザー光線が強化された薔薇の茎に当たるが、まるで岩に当たったように弾き返される。

 

「さぁ返り討ちにしろ!!」

 

強化された薔薇の茎が鞭のように振るわれ、メカ・ハンターの装甲を粉砕する。破片が夕日を反射しながら宙に舞った。

 

「ぐわあああっ!」

 

遊士の体に衝撃が走る。ライフポイントの数値が激しく明滅した。

 

**遊士 LP:4000→2450**

 

「ははは! まんまとトラップにかかりやがった!」

 

桑田は手を叩いて大笑いした。観客席からも笑い声が聞こえてくる。

 

「お前なんかが桑田さんに勝てるわけないんだよ!」

「桑田さんの作戦通りです!」

 

取り巻きたちも口々に囃し立てる。

 

(くそ……初手から大ダメージか)

 

遊士は歯を食いしばった。

 

「ちっ……カードを伏せてターンエンド」

 

**遊士 LP 2450 手札4**

**メカ・ハンター** ☆4 ATK 1850

**伏せカード1枚**

 

---

 

### 【3ターン目:桑田】

 

「俺のターン、ドロー!」

 

**桑田 手札4▶︎5**

 

「フッ、完璧だ」

 

桑田の目が鋭く光った。手札のカードを見て、勝利への道筋が見えたような表情を浮かべる。

 

「俺は、『ナチュル・アントジョー』を召喚!」

 

地面に小さな穴が開き、そこから黒い昆虫が這い出してくる。六本の脚で器用に地面を歩き回り、触角を忙しなく動かしている。

 

**「ナチュル・アントジョー」** ☆2 ATK100

 

二体のナチュルモンスターが場に揃った。観客たちがざわめく。

 

「来た! 桑田さんの得意パターン!」

「シンクロ召喚の準備が整いました!」

 

取り巻きたちが興奮した声を上げる。

 

桑田は両手を大きく広げた。

 

「レベル3のチューナーモンスター、『ナチュル・ローズウィップ』をレベル2、『ナチュル・アントジョー』にチューニング!!」

 

薔薇の茎と昆虫が互いに向かって浮き上がる。やがて二つの光となって空中で交差し、美しい螺旋を描いて融合していく。

 

**2+3=5**

 

「目覚めよ! 野生の力よ! シンクロ召喚!!」

 

光の螺旋が爆発するように弾け、そこから現れたのは、緑色の毛皮をもつ巨大な野獣。その瞳には野性の輝きがあり、低い唸り声が空気を震わせる。鋭い牙が夕日を反射して光り、その威圧感に観戦している生徒たちが息を呑んだ。

 

「レベル5! 『ナチュル・ビースト』!」

 

**ナチュル・ビースト** ☆5 ATK2200 「グオオオオオオッ」

 

「いけ! 『ナチュル・ビースト』で『メカ・ハンター』を攻撃! 自然の怒り ナチュラル・レイジ!」

 

ビーストが咆哮と共に跳躍する。その顎が大きく開かれ、鋭い牙がメカ・ハンターに襲いかかった。金属を噛み砕く音が響き、機械戦士は文字通り喰らい尽くされる。

 

「ぐっ……!」

 

遊士の体に再び衝撃が走る。

 

**遊士 LP2450▶︎2100**

 

「強えな……けど、次はお前がやられる番だぜ!」

 

遊士は手札のカードに手をかけた。

 

「なに!?」

 

桑田の表情が変わる。

 

「俺はトラップ発動! 『道連れ』!」

 

遊士の足元に暗い渦が現れ、そこから無数の黒い鎖が伸びる。鎖はメカ・ハンターの残骸を包み込むと、そのままナチュル・ビーストに絡みついた。

 

「これは俺のモンスターが破壊された時、相手モンスターも破壊できる! 一緒に地獄へ落ちろ!」

 

「なにっ!? ちっ……俺は速攻魔法『禁じられし聖槍』を発動!」

 

桑田は慌てて手札からカードを出す。

 

「これでこのターン、『ナチュル・ビースト』は攻撃力を下がる代わりに効果を受けない!」

 

光の槍がビーストを包み込み、黒い鎖を弾き飛ばす。しかし、その代償として野獣の力は一時的に弱まった。

 

**「ナチュル・ビースト」ATK 2200▶︎1400**

 

「ば、馬鹿な!」

 

「へっ……初心者野郎の癖に危ないことをしやがる……俺はこれでターンエンド! ナチュル・ビーストの攻撃力も元に戻る!」

 

**「ナチュル・ビースト」ATK 1400▶︎2200**

 

**桑田 LP 4000 手札 3**

**ナチュル・ビースト** ☆5 ATK 2200

**魔法・罠 なし**

 

---

 

### 【4ターン目:遊士】

 

「俺のターン! ドロー!」

 

**遊士 手札4▶︎5**

 

(攻撃力2200……今の俺の手札では越えられない……なら)

 

遊士は手札を見つめ、戦略を練る。心臓の鼓動が耳に響いているが、もう恐怖はなかった。

 

「俺は『機動砦のギアゴーレム』を召喚!」

 

地面が割れ、そこから巨大な機械の塊が立ち上がる。歯車が複雑に組み合わさった要塞のような姿で、重厚な装甲が鈍く光っている。

 

**機動砦のギアゴーレム** ☆4 DEF2200

 

「ほう……俺のナチュル・ビーストの攻撃力と同じ守備力を持つモンスターか」

 

桑田は興味深そうに眺めた。

 

「今はこれでやり過ごすしかない……! さらにカードを1枚伏せて、ターンエンドだ」

 

**遊士 LP 2100 手札3**

**機動砦のギアゴーレム**

**伏せカード1枚**

 

---

 

### 【5ターン目:桑田】

 

「俺のターン! ドロー!」

 

**桑田 手札3▶︎4**

 

桑田は手札を見て、不敵に笑った。

 

「そんなモンスターでやり過ごそうなんて、甘いんだよ! 俺は魔法カード『ガオドレイクのたてがみ』を発動!」

 

カードが光ると、空中に赤いたてがみのような炎が現れる。それがナチュル・ビーストを包み込むと、野獣の体格が一回り大きくなり、その瞳に凶暴性が宿った。

 

「あのカードは……!」

 

マサトは無意識に後ずさった。観客席でも緊張が走る。

 

「クク……このカードは、俺のフィールドの『ナチュル』モンスターの効果を無効にする代わりに、攻撃力を3000ポイントにする!」

 

「な、なんだって!?」

 

**「ナチュル・ビースト」ATK2200▶︎3000**

 

強化されたビーストが咆哮を上げる。その声は屋上全体を震わせ、観客たちを恐怖に陥れた。

 

「バトルだ! ナチュル・ビースト! 機動砦のギアゴーレムを粉砕しろ!!」

 

ビーストが跳躍し、巨大な爪でギアゴーレムの装甲を引き裂く。金属の悲鳴が響き、歯車が散乱した。

 

「くっ……!」

 

「フン、降参しろ田舎者。お前じゃ俺には勝てねぇってことがわかっただろ」

 

「あ? 降参? 誰がするかよんなもん!!」

 

遊士の声が夕空に響く。その瞳に、諦めの色は微塵もない。

 

「俺はトラップ発動! 『時の機械 タイムマシーン!』」

 

遊士の足元に古い機械装置が現れる。歯車とパイプが複雑に組み合わさり、蒸気を噴き出しながら作動し始めた。

 

「いいぞ轟木くん!」

 

マサトが声援を送る。

 

「タイムマシーンは破壊されたモンスターを甦らせる! 再び来い! 『ギアゴーレム』!」

 

機械仕掛けの扉から、再びギアゴーレムが姿を現した。先ほどより頑丈そうに見える装甲が、復活の証だった。

 

**機動砦のギアゴーレム** ☆4 DEF2200

 

「ちっ……しぶといヤツめ」

 

桑田は舌打ちする。

 

「俺はこれでターンエンド。この時、ナチュル・ビーストの効果と攻撃力は元に戻る」

 

**ナチュル・ビースト ATK3000▶︎2200**

 

「ふぅ……なんとかモンスターを残せたぜ」

 

遊士は額の汗を拭った。

 

**桑田 LP4000 手札 4**

**ナチュル・ビースト** ☆5 ATK2200

**魔法・罠 なし**

 

---

 

### 【6ターン目:遊士】

 

「俺のターン!」

 

遊士は深呼吸をして、カードを引いた。

 

**遊士 手札3▶︎4**

 

そのカードを見た瞬間、彼の表情が変わる。

 

「!!」

 

(これは……!)

 

遊士はニヤリと笑う。観客席がざわめいた。

 

「確か……リリース……って言うんだよな……よし、俺は機動砦のギアゴーレムをリリース!」

 

ギアゴーレムが光の粒子となって消えていく。その光が空中で渦を巻き、新たな召喚の準備を整える。

 

「まさか!」

 

桑田の表情が変わる。

 

「アドバンス召喚! 来い! 『機械王』!!」

 

光の渦が爆発し、デュエルフィールドに巨大な鋼鉄の巨人が現れた。全身を覆う重厚な装甲は戦場の光を反射し、頭部の赤い目が敵を見据える。

 

**機械王** ☆6 ATK2200

 

「フン……攻撃力2200……相打ち狙いか?」

 

桑田は余裕の表情を崩さない。

 

「違うぜ……こいつは、フィールドの機械族の数だけ攻撃力を上げる……機械王がいることにより、攻撃力は100ポイントアップ!」

 

機械王の装甲が輝きを増し、内部のエネルギーが活性化する。

 

**「機械王」ATK2200▶︎2300**

 

「なにっ……そんなカードが!?」

 

「さらに装備カード、『ジャンク・アタック』を装備だ!!」

 

機械王の右腕に、廃材で作られたような追加装甲が装着される。見た目は粗雑だが、その破壊力は侮れない。

 

「バトルだ! 『機械王』で『ナチュル・ビースト』を攻撃!」

 

機械王が拳を振り上げる。その一撃がナチュル・ビーストを直撃し、野獣は呻き声を上げて倒れた。

 

**桑田 LP4000▶︎3900**

 

「この程度……」

 

桑田は動揺を隠そうとする。

 

「まだだ! 『ジャンク・アタック』の効果発動! 破壊したモンスター元々の攻撃力の半分のダメージを与えるぜ!」

 

装備カードが爆発し、その破片が桑田を襲う。

 

「ちい……!」

 

**桑田 LP 3900▶︎2800**

 

「へっ! どうだ!」

 

遊士は拳を握りしめた。

 

「ぐっ……! こんな初心者野郎にライフを削られただと……! どうやら、本気で潰されたいらしいな!」

 

桑田の表情に、初めて焦りの色が浮かんだ。

 

「だがお前のフィールドにはもう何も無いぜ! 俺はこれでターンエンドだ!」

 

観客席から歓声が上がる。

 

「転校生、やるじゃん!」

「桑田を追い詰めてる!」

 

**遊士 LP2100 手札2**

**機械王** ☆6 ATK 2300

**ジャンク・アタック(機械王に装備)**

 

---

 

### 【7ターン目:桑田】

 

「俺のターン……ドロー!」

 

**桑田 手札4▶︎5**

 

桑田の手が微かに震えている。プライドが傷つけられた怒りが、その瞳に宿っていた。

 

「クク……お前の敗北は決定した!」

 

「俺は魔法カード『死者蘇生』を発動!!」

 

古い棺桶が地面から立ち上がり、その蓋がゆっくりと開かれる。中から紫色の光が溢れ出し、死者を呼び戻す禁忌の力が発動した。

 

「ししゃ……そせい?」

 

「『死者蘇生』……! 自分・相手の墓地からモンスターを特殊召喚できる強力なカードだ! その強さのあまり……デッキに1枚しか入れられないほど……!」

 

マサトが震え声で説明する。

 

「そんなカードが……!?」

 

遊士は目を見開き、無意識に一歩踏み出していた。

 

「1回きりの最強カードってわけかよ……!」

 

「驚くのは……まだ早い! 俺はこの効果により、『ナチュル・ビースト』を特殊召喚!」

 

棺桶から緑の毛皮をもつ野獣が蘇る。

 

**ナチュル・ビースト** ☆5 ATK 2200

 

「だがそいつじゃあ今の機械王には勝てないぜ!」

 

「誰がこいつで攻撃すると言った! 俺は更にチューナーモンスター『エンジェル・トランペッター』を召喚!」

 

**エンジェル・トランペッター** ☆4 ATK 1900

 

「ま、まずいよ轟木くん……レベル5とレベル4が……!」

 

マサトの顔が青ざめる。

 

「来るのか……あのモンスターが……!」

 

遊士も緊張で息を呑む。

 

桑田は両手を高く掲げた。夕日が彼の後ろで血のように赤く燃えている。

 

「見せてやる! 俺はレベル5の『ナチュル・ビースト』に、レベル4『エンジェル・トランペッター』をチューニング!!」

 

野獣と天使が空中で光となって交差する。その光は今までで最も激しく、観客たちは目を覆わずにはいられなかった。

 

**5+4=9**

 

「絡み合う根と茨が喉を裂く! 喰らえ! シンクロ召喚!!」

 

光の爆発が収まると、そこには緑の体に赤いたてがみを持つ、威風堂々とした巨大な獣が立っていた。その体躯は他のモンスターとは比べ物にならないほど大きく、琥珀色の瞳は王者の風格を漂わせている。地面を踏みしめるだけで屋上が震動し、その咆哮は遠く街まで届きそうだった。

 

「自然界の暴君! 『ナチュル・ガオドレイク』!!!」

 

**ナチュル・ガオドレイク** ☆9 ATK 3000 「グオオオオオオン!!!!」

 

観客たちが息を呑む。これまで見たことのない圧倒的な存在感に、誰もが言葉を失った。

 

「バトルだ! 『ナチュル・ガオドレイク』で『機械王』を攻撃!」

 

ガオドレイクが咆哮と共に跳躍する。その巨体が宙を舞う光景は、まさに自然の猛威そのものだった。

 

「さらにその瞬間、速攻魔法『虚栄巨影』を発動! このカードはモンスターの攻撃力を1000ポイントアップさせる!」

 

ガオドレイクの体が一回り大きくなり、その存在感がさらに増す。

 

**「ナチュル・ガオドレイク」ATK 3000▶︎4000**

 

「んなカードがっ!?」

 

「吠えろ! ガオドレイク! その牙で全てを食いちぎれ! ワイルド・クラッシュ!!」

 

ガオドレイクが咆哮と共に跳ね上がる。

 

巨大な口が開かれ、鋭く並んだ獣の牙が光を反射する。

 

そして、その顎が振り下ろされた。

 

肉を裂き、骨を砕くような"ゴキィッ"という異音。

 

遊士のモンスターは、まるで"喰われた"かのように砕け散った。

 

「ぐわあああああぁっ!!!」

 

**遊士 LP 2100→400**

 

「どうだ! これで詰みだな!」

 

桑田は得意げな表情で遊士を見つめた。しかし、遊士の目に宿る闘志は消えていなかった。

 

「まだだ……まだ決着はついてねぇ……!!」

 

「諦めの悪いやつめ……ならせいぜい足掻くんだな! 俺はこれでターンエンドだ! そしてナチュル・ガオドレイクの攻撃力は元に戻る!」

 

夕日の中、ガオドレイクの巨体が光に包まれる。一瞬、その威圧感が和らいだかのように見えたが、依然として圧倒的な存在感を放っていた。

 

**ナチュル・ガオドレイク ATK 4000▶︎3000**

 

**桑田 LP 2800 手札 2**

**ナチュル・ガオドレイク** ☆9 ATK 3000

**魔法・罠 なし**

 

観戦していた生徒たちが息を呑む。遊士のライフは400。そして桑田のフィールドには攻撃力3000の最強モンスターが君臨している。

 

「もう終わりだよ……」

「転校生、よく頑張ったけど……」

「桑田の勝ちだね……」

 

絶望的な状況の中、マサトだけが遊士を信じ続けていた。

 

「轟木くん……!」

 

---

 

### 【8ターン目:遊士】

 

**遊士 手札3▶︎4**

 

夕日が屋上を染める中、遊士はゆっくりとデッキに手を伸ばした。

 

時が止まったかのような静寂の中、カードを引く音だけが響く。

 

「俺のターン……ドロー!」

 

遊士の指先がカードに触れた瞬間、何かが走った。

 

運命の歯車が回り始める。

 

引いたカードを見た遊士の表情が変わった。

 

唇の端が、わずかに上がる。

 

「このカードは……!」

 

桑田の眉がピクリと動いた。何かを察したのだろうか。

 

「俺は魔法カード『二重魔法』を発動!」

 

「『二重魔法』……だと!?」

 

桑田の顔が青ざめた。そのカードの恐ろしさを理解している。

 

「このカードは、手札の魔法カードを墓地へ送ることで、相手の墓地の魔法カードを使える!」

 

遊士は手札から一枚のカードを墓地に送ると、桑田の墓地を指差した。

 

「俺が使うのは……『死者蘇生』!」

 

「くっ!!」

 

桑田の切り札が、今度は遊士の武器となる。

 

墓地から光が立ち上がり、機械の戦士が再び戦場に舞い戻った。

 

「蘇れ! 『機械王』!!」

 

**機械王** ☆6 ATK2200

 

「まだ足りねぇ……!」

 

遊士の目が燃えている。

 

「さらに来い! チューナーモンスター『ワンショット・ロケット』召喚!」

 

**ワンショット・ロケット** ☆2 ATK 0

 

「チューナーモンスター……? まさか……!」

 

桑田の顔から血の気が引いた。レベル6とレベル2。その意味するところを理解したのだ。

 

観客席がざわめき始める。

 

「シンクロ召喚……?」

「でも転校生のエースモンスターって何?」

 

遊士は胸ポケットに手を当てた。そこには、大切な人から託されたカードがある。

 

「俺はレベル6の『機械王』にレベル2、『ワンショット・ロケット』をチューニング!!」

 

**6+2=8**

 

チューナーモンスターが光の輪となって機械王を包み込む。

 

夕日を背に、シンクロの光が屋上を照らし出した。

 

「合わさる想いがどんな壁もぶち壊す! シンクロ召喚!!」

 

モンスターたちが弧を描きながら空中へ舞い上がる。

 

螺旋状に光が交差し、その光の中から新たなシルエットが現れる。

 

力強い体躯、武骨な装甲、そして決意に満ちた眼光。

 

「『ギガンテック・ファイター』!!!!!」

 

# 遊戯王小説 第1話 デュエル終盤

 

**ギガンテック・ファイター ☆8 ATK 2800**

「ハァッ!」

 

巨大な戦士が屋上に降り立った瞬間、空気が変わった。その存在感は決してガオドレイクに負けていない。

 

「ギガンテック...ファイター....!?」

 

桑田の声が震えている。

 

観客席が沸き立った。

 

「すげぇ...転校生もシンクロ召喚できるじゃん!」

「でも攻撃力は2800...ガオドレイクには届かない...」

 

「遊士くん..本当に召喚してみせるなんて...!」

 

マサトの目に涙が浮かんでいた。

 

「こいつは田中のデッキのカードじゃない..持ってたのか..デュエルモンスターズのカードを...!」

 

桑田は動揺を隠そうとするが、声に余裕がない。

 

「だが、攻撃力はガオドレイクの方が上だ!」

 

「今は...な!」

 

遊士の口元に、不敵な笑みが浮かんだ。

 

---

 

「さらに『勇気の旗印』を発動!こいつは俺のバトルフェイズの間、攻撃力を200ポイントアップさせる!」

 

「そんなクズカードごときがっ...!」

 

桑田の声に焦りが滲む。しかし、数字は嘘をつかない。

 

**ギガンテック・ファイター ATK 2800▶︎3000**

 

攻撃力が並んだ瞬間、空気が張り詰めた。二体の最強モンスターが、互いを見据える。

 

野生の王者と、鋼鉄の戦士。

自然の力と、人の意志。

 

---

 

「バトルだ!『ギガンテック・ファイター』で『ナチュル・ガオドレイク』を攻撃!!」

 

遊士の叫びが屋上に響く。

 

「ぶち抜けっ!**ギガンテック・インパクト**!!」

 

ギガンテック・ファイターが拳を構える。その拳に、仲間を守りたいという想いが込められていく。鋼鉄の装甲が軋み、エネルギーが収束していく。

 

「迎え撃て!**ワイルド・クラッシュ**!!」

 

ガオドレイクも負けじと咆哮を上げた。野生の誇りをかけて、鋭い牙を剥き出しにする。

 

二体のモンスターが激突する。

 

**ゴォォォォン!!!**

 

巨大な拳と獰猛な牙がぶつかり合った瞬間、空間が歪んだ。凄まじい衝撃波が発生し、観客たちは思わず身を伏せる。

 

光が収まると、そこには何もなかった。

互いのモンスターは消滅していた。

 

---

 

「最後に俺のエースを道連れにするとは...褒めてやるよ。だが、お前のライフはたったの400...。次の俺のターンで勝ちは決まりだ!」

 

桑田は勝利を確信していた。しかし、遊士の表情は晴れやかだった。

 

「遊士くん....!」

 

マサトが心配そうに見つめる。

 

「へっ...それは..どうかな!!」

 

遊士の声に、今までにない自信が宿っていた。

 

「!?」

 

---

 

「『ギガンテック・ファイター』の効果発動!戦闘で破壊された時、墓地から戦士族を蘇らせる!!」

 

「なにっ!?」

 

桑田の顔が絶望に染まった。そんな効果があるなんて...!

 

墓地から再び光が立ち上がる。しかし今度の光は、先ほどとは違っていた。より力強く、より眩しく、そして温かかった。

 

「蘇れ!!『ギガンテック・ファイター』!!」

 

**ギガンテック・ファイター ☆8 ATK2800**

「ハァッ!!!!」

 

復活した戦士の目に、迷いはなかった。桑田のフィールドは空っぽ。道は開かれている。

 

---

 

「トドメだ!『ギガンテック・ファイター』でダイレクトアタック!!!」

 

遊士が拳を突き出す。その動きに合わせて、ギガンテック・ファイターも拳を構えた。

 

「これで...終わりだあああああ!!!」

 

「**ギガンテック・インパクト**!!!!」

 

最後の一撃が放たれた。それは単なる攻撃ではなく、友を想う心の結晶だった。

 

桑田は立っていることができず、その場に崩れ落ちた。

 

「俺が....こんな....うわああああああああっ!!!!!」

 

**桑田 LP 2800▶︎0**

 

---

 

屋上が静寂に包まれた。夕日が二人のデュエリストを照らし、その長い影が地面に伸びている。

 

誰もが信じられないという表情で、立ち尽くしていた。転校生が、学園最強クラスのデュエリストを倒したのだ。

 

「そんな…馬鹿な…」

 

桑田は膝をついたまま、震え声で呟いた。プライドが音を立てて崩れ落ちる音が聞こえるようだった。

 

観客席から、ようやく声が上がり始める。

 

「転校生が...勝った...?」

「本当に勝っちゃった...」

「すげぇ...」

 

遊士はゆっくりと桑田に近づいた。その顔に勝者の驕りはなく、ただ静かな決意があった。

 

「約束は約束だ。もうマサトに手を出すなよ」

 

桑田は答えることができず、ただ俯いているばかりだった。

 

マサトが駆け寄ってくる。

 

「轟木くん...!ありがとう...!」

 

遊士はマサトの肩を叩くと、振り返った。屋上に夕日が沈みかけている。

 

新しい明日が、もうすぐ始まろうとしていた。

 

 




感想など貰えたら嬉しいです!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。