探索者日記   作:赤飯軍曹

1 / 2
1日目 ギルド登録

「ここが探索者ギルド」

 

村から出てきたばっかりの私は街にある探索者ギルドの前にいた。家の畑は兄が継いだ。やる仕事がない三男坊は出て行けとわずかな路銀だけ持たされて家を追い出されたのがつい先日。

この街での生活基盤を整えるべく手っ取り早くお金が稼げる探索者になるべくこの場所にやってきた。

 

「よし」

 

探索者ギルドの木製の両開きのドアを開け中に入ると意外にも静かで書類をめくる音やペンを走らせる音が響いていた。

私が受付と思われる場所に向かうと見計らったように女性が出てきた。

 

「ご依頼ですか?それともご登録ですか?」

 

「探索者になりに来ました」

 

そういうと女性は受付デスクの下から一枚紙を取り出した。

 

「こちらにお名前、年齢、出身地、得意とする武器を書き込んでください」

 

私は紙を受け取り記入欄を埋めていく。

出身地まで書いたところで手が止まった。私は武器を使ったことがないのだ。強いて言えば昔父から貰ったナイフがあるがそれだってもっぱら草を切っており武器として使ったことがない。

 

「どうされましたか?」

 

受付の女性が話しかけてくる。どうやらペンが止まっているので不思議に思ったようだ。

 

「実は、武器を使ったことがないんです」

 

私がそう告げると女性は納得したようだった。

 

「でしたらそこは空欄で構いません。それ以外は書き終わりましたか?」

 

私は手元の紙に目を向ける。氏名は書いた、出身地も書いた年齢も書いた、ほかに空欄は無いようだ。

 

「書き終わりました。」

 

そう言って女性に紙を渡した。女性は紙を確認すると「登録処理をしてきますので少々お待ちください」と言って受付の奥に入って行った。

 

暇を持て余して周囲を見渡すといろいろなものが見えた。依頼などを張るのであろうコルクボード。給仕が暇そうに肘をついている酒場であろう施設。こちらも売り子が暇そうにしている売店らしき施設。今月の高額買取品と書かれた紙と素材らしき絵。こうやって周囲を見渡しても探索者らしき姿はない。なぜだろう?

 

「アグネスさん」

 

名前を呼ばれ振り返ってみると受付に女性が立っていた。どうやら登録処理が終わったらしい。

 

「驚かれましたか?」

「探索者の皆さんはこの時間帯はダンジョンに潜っているんです。もう少しすれば早い人たちが帰ってきますよ。」

「そして登録が終わりましたのでこちらをお渡しします。」

 

名前が書いてある部分が白色で塗られたドックタグを渡してきた。

 

「こちらはギルド証といってギルドに所属してある証拠になります。紛失するとギルド内での買取や酒場の使用ができなくなりますのでご注意ください。また10,000シルバを支払うことによって再発行できますが再発行ごとに支払金額が上がっていきますのでご注意ください。」

 

そう女性が言い切った。女性は何か反応を待っているようだが私は何をすればいいのかわからない。幸いその状態を察してくれたようだった。

 

「説明は先ほどので終わりになりますが何かご不明な点、ご質問はありますか?」

 

そう聞かれ私は一瞬考え込むが聞きたいことはすぐに思いついた。

 

「ダンジョンまでの道筋と武器防具屋、あと戦い方を教えてくれませんか?」

 

私がそう言い切ると女性は微妙な表情になった。

 

「まずダンジョンですねそちらはこのギルドを出て左へまっすぐ行ったところにあります。武器屋と防具屋も道中にありますよ。ですが」

 

女性が言いにくそうな顔をしている。何を言いたいんだろうか?

 

「探索者ギルドには初心者を鍛えるような仕組みはございません。」

 

女性はそう言い切った。だが私は目の前が真っ暗になったような気がした。武器すらまともに振ったことのない初心者がダンジョンでモンスターと戦うなんて死にに行くようなものじゃないか。そう思い私は絶望した。

 

「そ、そこまで絶望することはありませんよ。この町のダンジョンの第1層に出現する魔物は一般人でも武器さえあれば倒せますので。」

 

その声を聴いて私は顔を上げる。

女性は少し動揺しているようだった。私がここまで絶望するとは思わなかったようだ。

 

「そうですか」

 

このままここで絶望してても仕方がない。どうせこのままでは路銀が尽きるんだ。ダンジョンに行こう。武器さえあればどうにか出来るようだし。

 

「それじゃあダンジョンに行ってきます。」

 

そう言って私はギルドを後にした。




探索者:ダンジョンに潜り魔物の魔石やその他素材を取り生活をする者たちの総称。

探索者ギルド:探索者達管理、ダンジョン素材の買取、流通、魔物の解体を行う民間組織。

魔物:魔石と呼ばれる鉱物を心臓になっている生物の総称。

シルバ:アグネスがいる正王国の通貨。正王国が銀本位制だったためシルバーが訛りシルバとなった。現在は金本位制となっておりシルバの名前だけが残った。

物価:黒パン1つ70シルバ、ギルドが経営する安宿の大部屋(雑魚寝 食事別)1000シルバ、馬車(村から街まで)1500シルバ
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。