探索者日記   作:赤飯軍曹

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1日目 武器防具屋マッスル&マッスル

ギルドを出るとそこには大きな箱が停まっていた。

その箱に付いているドアが開くと多種多様な装備を付けた男女が降りてきた。彼らは私には目もくれずギルドに入って行く。彼らが探索者なのかとちょっとした興奮を覚えていると声をかけられた。

 

「お客さん乗るかい?」

 

私が声がする方に目を向けると先ほどの箱から中年の男性が声をかけてきた。

 

「あの、えっと」

 

私が返答に苦慮していることを察したようだった。

 

「こいつは商業区行きの魔導列車さ」

「坊主は新人の探索者だろ?それなら武器なりが欲しいんじゃ無いか?」

 

その話を聞き私がこれが魔導列車かと感心していた。私がいた村には魔導列車なんて便利なものは無く移動手段なんて徒歩(かち)か馬車での移動がほとんどだった。

私はそんな感心をしながらも財布の中身を思い出していた。

足りない。馬車に乗れるだけの金すら無いのだ。

 

「すみません持ち合わせが無くて」

 

それを聞くと男性は気まずそうに「そりゃ仕方ねえか。また持ち合わせが有ったら乗ってくれ」そう言って魔導列車と共に移動していった。

気を取り直して武器屋へ移動していく。

武器屋に向かっていると様々な売店に当たった。冒険者相手に商売しているらしい弁当屋、果実や野菜を売る出店。珍しい絹やらの織物を売る行商人など様々だった。

それもダンジョンに近づくにつれて少なくなって行き目的地の武器屋が最後の店だった。

 

武器防具の店”マッスル アンド マッスル”。

これには私は変な名前だと思いながらも店の中に入って行った。

店の中はきちんと整っていた。金属製の鎧や革製の鎧、胸当て、小刀やナイフ、大剣、ブロードソード、クレイモアなどなど多種多様な武器防具が陳列されていた。武器や防具にはひもで値札が付けてありその多くが自分が出せる価格を大きく超えていた。

 

「どれなら買えるんだろ?」

 

そんな事を言いながら商品を見ていくと後ろから声をかけられた。

 

「いらっしゃい」

 

その低い声に驚いて後ろをみると筋骨隆々の2メートルはあろう背丈を持つ男が立っていた。

そんな彼に怯えていると彼はこう問いかけてきた。

 

「坊主、何か探し物か?」

 

「は、はい一階層の魔物を倒すための武器を探していました。」

 

そう言うと店主らしき男は私の体を舐めるように見つめてきた。

 

「坊主、防具は持ってんのか?」

 

「いえ…何も、持っていません。」

 

そう返すと店主らしき男はため息をついたようでこっちについて来いと手招きをした。

それに従って男について行くと雑多に武器防具が置かれているエリアに来た。

 

「ここはうちの新人が作った武器防具が置いてある場所だ。坊主予算はいくら有る?」

 

「えっと、」

 

私は財布を取り出す。財布の中にはなけなしの1500シルバが入っていた。だがギルドの安宿に泊まるには1000シルバが必要でさらに食事に210シルバが必要と考えると使えるのは290シルバだった。

 

「290シルバです。」

 

「それだと防具はどうにかなっても武器は厳しいな」

 

店主は思案し私の体を再度見つめる。そしてある一点で目が止まった。私が腰に付けていた専ら草刈りに使っていた錆びたナイフだった。

 

「坊主、それどうした?」

 

「父が護身用で買ってくれたんです。専ら草刈りに使って錆びてしまったのでまともに切れず、新しいのを買おうかと思っているんです。」

 

「ちょっとそいつを貸してみろ」

 

有無を言わさず店主がナイフを取り上げでナイフを鞘から出した。

 

「やっぱりエイメリク工房の脇差じゃねえか。にしてもあの耐久性で有名なエイメリクの武器がここまでボロくなるとは坊主まともに整備してなかったな?」

 

「…はい…」

 

私は顔が真っ赤になった。エイメリク工房なんて所は知らないが店主が言い限り高級品なのだろう。そしてそんな高級品をまともに整備してこなかった事が恥ずかしく思った。

 

「坊主こいつは新品なら1本1500シルバはくだらない高級品だ。そこら辺安い武器を買うよりもこいつを研ぎ直したほうが安上がりだぞ。」

「そこでだ坊主、こいつを買ったら俺がこの脇差を研ぎ直してやる。」

 

そう言って取り出されたのは250シルバの値札が付いた革製の胸当てだった。

 

「えっとそのナイフだけ研ぎ直してもらうことはできないんですか?」

 

そう言うと店主は呆けた顔をして「坊主は自殺志願者か何かか?」と言ってきた。

 

「坊主言っとくがな防具も着ずにダンジョンに突撃するのは馬鹿の所業だ。」

「一階層のホーンラビットでさえ防具を着ていなかったら容易く殺される。一階層は安全なんじゃねえ簡単に対策出来るだけだ。」

 

それを聞いた私は顔が青くなった。この店によらずにダンジョンに直行していたら私は無残な屍をさらしていたからだ。

 

「は、い。分かりました。胸当てを買わせてください。」

 

「なら交渉は成立だな。」

 

店主に支払うと胸当てを渡され付け方を教えて貰った。そして自分でも練習しろと言われ付ける練習をする間に脇差を研いでくると言って奥に引っ込んでいった。彼が表にもどってきたのはそれから1時間後だった。




マッスル&マッスル:商店としての名前マッスル商店と裏にあるマッスル工房を合わせての呼び名。新人から熟練探索者まで幅広い層の冒険者が利用する繁盛店。一方で探索者以外からは野蛮人の店として煙たがられており反対側にある商業区の武器防具屋が利用されている。

ホーンラビット:一階層から二階層に生息する魔物。一階層に生息するホーンラビットは群れからはぐれた幼体や追い出された元群れのボスが多い。幼体の角の長さは平均2cmほどで成体になると4cm以上になる。その皮や肉は魔石以上の値段取引されている。この街で食卓に上がる肉は多くがこのホーンラビットの肉である。なお魔石の売却価格は15シルバ。

魔導列車:魔石を動力とした路面電車。ホーンラビットなら10000匹分の魔石が合ってやっと一駅分の燃料となる。1駅当たり400シルバかかる。

魔石:魔物の心臓となっている鉱石。魔石には純度と大きさの2種類のランクが有り純度はAを頂点とした14段階で大きさは14を最大値とした14段階になります。ホーンラビットの場合は純度Nで大きさ1となっています。
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