リリスがエ□ゲ版Fateに召喚された話   作:サルミアッキ

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 喜べ少年、君の願いは————。


聖杯戦争開幕

————あれは根ごと焼き払おうと生え茂る外来植物ですわ。如何に地上で最も優美なハイエナ(エーデルフェルト)と言えど、腐肉ですら無いものは嚙み切れません。寧ろ、腐肉を苗床にして花開く、忌々しくも瑞々しいものと言えるでしょう。

 

————あの芳醇な香りは嗅いでいるだけでおかしくなる。シンナーの方がはるかにマシだ。比べ物にならない。グレイたんも、あの男に近づくなら重々注意してほしい。というか、そういう事態にならないでほしい。

 

————あれは触れちゃ駄目なのは分かってます。え、どうしたんです教授びっくりして。はい……ええ、それでもあれは拙いですよ。分からないってことが分かるんです。文字通りの禁断の果実ですもん。

 

 倫敦某所、時計塔の教室にて起きた、とある魔術使いについての評価。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 同盟を組んでいるバゼットとクー・フーリン陣営と相談した結果、俺とバーサーカーは斥候として立ち回ることになった。表向きには俺たちが情報収集を行い、難敵を騎ニキに(バト)ってもらう作戦である。裏返せば、聖杯戦争参加者のバトルトーナメントを操作して、ギルガメッシュを落とすまでの遅延作戦だ。下手にAUOに好き勝手されたら、聖杯に英霊の魂が注がれて、すぐに溢れる段階になるしな……。

 

「はーい。穗群原学園に到着しました、マスター」

『よしリリン。()()()()()()()()は持っているな?』

「おっけーおっけー。校内に衛宮士郎と遠坂凛がいることも確認済みよ。アテシが本家ランサー(クー・フーリン)のポジすれば良いんね?」

 

 その通り。このこと(原作知識的なモノ)をバーサーカーと共有できたのが地味にデカいかもしれん。リリスの地雷原に踏み込んで死にかけたけどな!

 

「にしたって、息苦しいなぁ。この結界」

ランサー(メドゥーサ)の霊基出力が通常の二倍はあるからな……』

 

 その分、燃費が悪いのは周知の事実。つーか吸血現場に鉢合わせした。吸精に出てたリリンと小競り合いになることが数度あったし。

 あーあ、狩場としては便利だったんだけどな、繫華街の裏手とか。しょうがないからブラック企業とかをリストアップしてその従業員から生命力を拝借してる。藤村組と繋がりが無い所、意外に少ないのね。俺、あそことの全面戦争はギルガメッシュ以上に避けたいわ。

 え、吸精に出てたリリンから連絡……?吸ったら精神的に参ってる会社員らが恍惚の表情でぶっ倒れた?……病院で休めてラッキーじゃないか?それにクソみてーな労働環境の会社が幾ら潰れようがこっちは関係も問題もないし。労基にあること無いこと言っておけば事後処理も楽だし。

 

『……兎も角、魔力は十全に貯まっている。派手にやっても構わないよ』

「はいよー。あ、じゃあそろそろ接触するねー」

 

 リリンはぴょんぴょん身軽に住宅街の屋根を飛び跳ね、穗群原学園の大学棟に到着した。さて、遠坂凛とフェイカーのエミヤは屋上にいるはずだが……。

 

 お、いたいた。やはり、穗群原学園に仕掛けられた結界の起点を調査していたようだ。

 ……にしても、18禁版になった影響だろうか。初等部から大学部まである学校施設を覆い尽くすように形成される結界とか、大規模過ぎるよな……。全年齢とかアニメ版とかは一般的な校舎面積だったから調査もマスター一人二人で事足りたけど、この敷地面積は流石に……。

 

「ああもう!広すぎるのよウチの学校!おまけに初等部にまで起点があるってどういうことよ!これ仕掛けたゲス魔術師、今に見てなさいよぉッ!」

 

 わぁ……怒髪天だ、大人凛。まぁ、余計な犠牲を生みたくないお優しい彼女のことを考えればそれも納得。小学生の子ども相手であっても贄にすることを意味するしな。

 

「……ええ、分かってるわ()()()()()。とりあえず消して、邪魔をすることくらいは————『Abzug』『Bedienung Mittelstang』」

 

 おや。アーチャーとは。どうやらエミヤは呼ばれた本来のクラス名を自分のマスターに教えていないようだ。

 ……もしかして、『アーチャー』を対象にした令呪での命令を無効化する、若しくは拘束力を弱めるつもりか。成る程、全ては自分の動く黒歴史抹消の為……うん、裏切る気満々じゃん。

 

「……なーんだ、消しちゃうんだ。随分とお人好しな魔術師だね。良いと思うよ、そういうの」

「!」

「人間らしい心の贅肉だらけ。マスターピックアップガチャでSR星4くらい?この街にいる中じゃ良い魔術師に引き当てられたみたいだね、そっちの赤いお兄さん」

 

 お。接敵した。ランサーっぽいムーヴしつつオリジナリティ出してるな、リリンのヤツ。

 

「(アーチャーが見えている)……、サーヴァント!」

「どーも。キャスターのサーヴァント、スウィーニー・トッドでーす」

 

 いきなり事実無根の虚飾陳列罪。

 

「何で早速真名ばらしてんのコイツ⁉」

「ナンダヨー、文句あんの?あ、知名度の問題?なら……そう、口裂け女。だってほら、ハサミ持ってるし。アテシ、綺麗?殺されたくなかったら飴ちょーだい」

 

 年下にキャンディーたかるなよ。つーかスゲェ適当を畳みかけたマシンガントークだな。

 

「ふっざけたサーヴァントね……!」

「落ち着きたまえ、凛。こういう手合は大抵感情的な揺さぶりをかけて、こちらの手を読んでくる。今の君では相手の思う壺だ」

「ちょっと、どういうことよ!」

「そういうこと。孫氏の兵法に曰く、怒にしてこれを(みだ)せってね」

 

 大人っぽくなってもどことなく残念感があるな、この遠坂凛(20歳)。リリンもにっこにこだよこれ。

 

「……、で。キャスターって言ったわよね。この結界を張ったのは、あなた?」

「いいや?アテシができるとしたら、エッチ系の呪術とかじゃない?知らんけど」

「何で知らないのよ……(うちのアーチャーと同じなの)?」

 

 あー、確かに。リリンのスキルはリリスと連動してるからな。スキル『醜い恋のように』に聖書のリリスやサキュバスの要素が強く出てる上、スキル『輝く夜のように』と併せれば、リリンも淫魔系の呪術とかも使えるわな……。

 

「場所を変えないと、動き回れるところに————『Es ist gros, Es ist klein』……‼『vox Gott Es Atlas』————‼アーチャー‼着地任せた‼」

 

 っと、強化プランを考えていたらエミヤと遠坂凛が校庭に向かって大ジャンプかました。それを追ってリリンは大きなハサミを振りかぶって……おお投げた!

 それをエミヤは遠坂凛を優しく放り投げてから、双剣『干将』『莫邪』で弾き飛ばす。

 

「……」

「へぇ、陰陽剣。セイバー……ってわけじゃないんだよね、赤いお兄さん」

「……ホントにあんた、キャスターのサーヴァントなの?」

「さて、どうだろうねー魔術師女子大生。で、そっちの赤いお兄さんは真っ向勝負より搦め手上等な顔してるけど。あぁ、アーチャーだったね。それも納得」

 

 目まぐるしく戦況が変わっていく。

 

「————。アーチャー。手助けはしないわ。貴方の力、ここで見せて!」

 

 その言葉を聞いたエミヤから、魔力が迸った。既に臨戦態勢に入ったリリンが、巨大な鋏を油断なく構えて軽口を叩く。

 

「へぇ弓でも使う?でもそれを出すより先に、アテシが首をハサミギロチンするのが早いかもよ」

「……ふむ。では————」

 

 驚いたな。————エミヤは、双剣を消して赤い剣を一本投影した。

 

『隕鉄の鞴、原初の火(アエストゥス・エストゥス)……か』

「へぇ、その剣。どういうものかな?」

「貴様に告げる必要は無かろう」

「そりゃごもっともで」

 

 もしや、スペック的に言えば無銘(EXTERA世界線)も混ざってるのか、このエミヤ。

 

『あれはセイバー、ローマ皇帝ネロ・クラウディウスが用いている剣だ。エンチャントファイアが可能で、赤い魔力を宿したビームサーベルにもなるぞ。気を付けろ……』

 

 その瞬間、エミヤが消える。

 

「!」

 

 接近。そして赤い軌道が宙を舞う。俺が見えたのはその程度だった。夜の黒い天幕に火花が咲き、土煙が巻き上がる。

 打ち合う事凡そ十合、斬り結んでいたエミヤとリリンは互いに距離を取り合った。

 

「……ッ!」

「……ふぅん。その剣、もしかしてそちらさんに何らかのステータスアップを及ぼしている?」

 

 敏捷と耐久はリリンがワンランク上、剣術の巧みさや筋力はエミヤに軍配が上がる……ってところか。それに偽装工作スキルと噛み合って、エミヤの投影魔術の経験憑依がモロ肉体に作用していることを考えると、ネロが持つスキル……皇帝特権EXなどなども影響を与えているとか、あるのかね?

 

「……貴様、キャスターのサーヴァントではあるまい」

「あー。じゃあ庭師、庭師の英霊です。特技はマスターが所有してる庭園の樹の剪定でーす。なんでまぁ、戦闘はちょっと得意じゃないのさね」

「フン。ふざけたことを言う。剣を交えて分かった。貴様の戦い方は人を殺す為だけのものだ。人の体躯でありながら、魔性や妖魔の類の力を組み合わせて動かす殺戮技能。術理も何もあったものではない、人体の可動域など意味を成さないのだから」

 

 おや。冷静を装っているが、エミヤの方も意外と感情的になっているな。あれか、リリン……というか自然の暴威(バーサーカー)の在り方が正義の味方には嫌悪の対象になったのかな?あー……どこまで行っても正義ってやつを諦められないのか。そのクセ、自分の黒歴史を消そうと躍起にならざるを得ないとは、本当に大変だな。

 

「あーらら、ばれてら。流石、目が良いよね弓兵の……、いや?魔術使いのサーヴァント。その剣技を鍛錬の末に身に付けた英雄様には、アテシの戦い方はお気に召しませんでしたかな?」

「————」

 

 エミヤの顔色が変わった。的確に自身の在り方を見抜いたリリンに、警戒度が跳ね上がっているようだ。

 

「おや、そちらの本分で戦うかな?いいよ、アテシもこの霊基を使い潰せばお前を完璧に倒せるだろうし……」

 

 どのくらいの破壊力になるかの試運転もしたいしな。リリンにも分け与えられたリリスの宝具。令呪一画切っても良いし……。

 

 

 

 

 

————ジャリッ。

 

 

 

 

 

「……んぉ?見ーたーなー?」

 

 ……だが、ここまでだ。予定通りの目撃者がいたな。校舎の影が覆う闇の中を、赤毛の大学生が逃げていく。

 

「な、まだ学校にいたの!?」

「そうみたい。じゃあね。一旦お開きだ、赤いサーヴァントさん♪」

「あ、ちょっ……!」

 

 遠坂凛の静止の声を振り切って、リリンは大学構内を駆けていく。夜の嵐のように空気が渦巻き、妖霊の姿は加速する。

 ————音もなく、()()に追いついた。

 

「はぁ————はぁ。逃げきれた……、のか?」

 

 これから死ぬ男子学生が、汗を拭って蹲っている。赤い髪に琥珀色の目をした男……衛宮士郎だった。

 

「いんや?わりかし遠くまで走ったけども、残念だったね。すぐに追いつけちゃうんだなーこれが」

 

 はっと顔を上げた衛宮士郎。その目には恐怖が浮かんでいる。

 

「青少年クンさ、君自分でも分かってたんじゃない?見ちゃいけないものを見た、だからどうしたって逃げられないってさ」

「な、にを……」

「だって見てたじゃん、君。あの赤い服の贋作者をさ。良い武器持ってたよねー?あの剣、超カッコイイ!うんうん分かるよ、見惚れちゃったんだよね?」

 

 月光が窓ガラスから射す廊下で、キュッキュとスニーカーを滑らせて歩いてくる。黒服のパーカーコートを着て、デカい刃物を持って追って来る正体不明の女……傍から見たらこのシチュエーション、ホラーだな。

 

「君はそういう魔術に引き寄せられる運命にある」

 

 リリンは月の光の下に躍り出た。魅了の力でも使っているのか、殺す対象である衛宮士郎は動けていない。

 

「でもごめんね。こっちは君に恨みは無いけど……大人しく一回死んでくれる?」

「がッ————」

 

 衛宮士郎は血を撒き散らして、前のめりに倒れ込んだ。じわり、と廊下に血の海が広がっていく。夜の女がしゃがみ込み、月下で死に逝く者を眺めていた。

 男の焦点の合わない目の瞳孔が弛緩し、荒い息が止まる。指先で脈を計ったリリンが、一つ頷くと立ち上がった。

 

「……死んだよ。あと、フェイカーが近づいてくる」

『分かった』

 

 計画通り、今後のプランを進めよう。

 

「……、『השם המפורש』」

 

 リリスがエデンを脱した際、唱えたであろう神の秘された名。彼女もまたそれを唱えると、その場からきれいさっぱり消え失せた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「————と、いうわけで、マスターが作った霊薬を塗った刃で衛宮士郎の心臓ぶっ刺したけど。あれでおっけ?」

『完璧だ。死ぬほど痛いだろうが、仕込みは上々。これで、衛宮士郎の()()()()()()()()()

 

 それに霊薬は回路の過剰反応を鎮める治癒効果もあるからな。一回死んでいる間に全てが済んでいる。まぁ、遠坂凛が心臓を治癒する最中は打ち上げられた魚みたいにビチビチ跳ねているだろうが、そこはご愛嬌。

 校舎に飛ばしているドローンで確認していたが、衛宮士郎は遠坂凛に心臓を修復され蘇生。立ち去った遠坂凛は赤い宝石を落っことしたままだったが、それを衛宮士郎が回収して帰宅した、と……。

 

『衛宮士郎はリビングにいるはずだ。では、頼むぞ』

「はーい。じゃあ()()()()()()()()ともお別れだ」

 

 霊体化を解いて、リリンが鋏をワザとおおきく振りかぶって衛宮士郎に襲いかかる。

 

「うぉおッ!?」

「……全く、一日に二度同じ人間を殺すことになるとはね。というか、三日も経たずに復活とか、どこぞの救世主も形無しじゃんか」

 

 リリンの緩い斬撃を躱した衛宮士郎は、足元にあった新聞紙を手に取った。おお、この光景アニメでも見たぞ。

 

「へぇ、面白いことするね。でもそうか。新聞紙でチャンバラごっこなんて男の子なら誰しも通る道だもんね」

 

 彼女は遊ぶように鋏を振るって、その新聞の棒と刃を交える。一方の衛宮士郎も、流石主人公とでも言うべきか、手加減しているとはいえ英霊に食らいついてくる。

 

「『強化』の魔術。その紙筒に魔力を通して強度を引き上げてるんだ。しっかし固いねー。()()()()()()()()()

「……いつもより、魔力の通りが良い————?」

 

 そうだなー。何でだろうなー。

 

「ふーん。死に際で生存本能が活性化されたのか、なぁ!」

「ぐッ!」

 

 おう、痛そう。ガラス戸ぶち破ってリリンに蹴り飛ばされた。彼は弾むサッカーボールのように、衛宮邸の中庭をゴロゴロ転がっていく。

 

「この……ッ!」

 

 力も、魔術も、リリンには到底及ばない。それでも、彼の闘志は消えていない。新聞のチャンバラ刀で迫りくる鋏の切っ先を逸らし、致命傷を回避する。そうか、やはり諦めることをしない……。成る程、それがお前の貫きたいものか。衛宮士郎。

 

「残念、本命はキック(こっち)

「ぐッ……が、ハァッ‼」

 

 だが所詮は魔術使いの人間と、英霊を呼び出したサーヴァント。その差は埋められるもので無く、敢え無く土蔵の中まで吹き飛んでいく。

 

「いや、びっくりだ。若い子なのによくやるね。まだ何者にもなってない、ただの魔術使いの人間なのに。ああ、だからこそ覚えておいてあげるよ」

 

 衛宮邸の一角にある土蔵の中は、清涼な気配で満ちている。リリンが横目で見た先には、段ボールがつみ重なった下に、()()()()()()()()()()()()がある。

 

「……さて。七人目になるであろう君。だとしても、サーヴァントを呼び出せなければそれまでになるんだけど……じゃあね。()()()()()()————『最後のお別れ』を言っておこう」

 

 訳知り顔で、リリンはぼそりと呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

————死ぬ?

 

「ふざけるな……」

 

————俺はここで死ぬのか?

 

「助けてもらったんだ……」

 

————冗談じゃない。

 

「助けてもらったんなら、そう簡単に死ねない……」

 

————俺はまだ誰一人救えていない。

 

「俺は生きて、義務を果たさなければいけないのに……死んでは義務が果たせない」

 

————俺はまだ、正義の味方になれていない。

 

「こんなところで意味もなく……平気で人を殺す……!」

 

————俺はまだ、死ぬわけにはいかない……‼

 

「お前みたいなやつに————‼」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その英霊が、遥かな光を纏い、時すらも越えて顕現する。

 

『ああ、やはり————』

「来たか、七人目のサーヴァント!」

 

 見えない剣が、鋏と刃が交わされ火花を散らす。そして、リリンは剣が纏った暴風によって弾き出される。

 ————ここに、運命は始まった。

 

「問おう————貴方が私の、マスターか」

 




 サーヴァント七騎、全員集合。
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