俺は運命の夜での戦いの後、アインツベルンのホムンクルスに仕掛けをして帰って来てからずっと叩いていたコンピュータから指先を離す。そして、キーボードのエンターキーを最後に押した。
「よぉし検証実験だ。
PCから幾本ものコードが繋がったカードセッターから、今さっき完成した一枚の紙きれを引き抜きつつ、アイギス・アマルテイアを起動させる。アイギスからはリリスの声と似た電子音声が鳴った。
【Yes, master. Kaleido line, access.】
まぁパンドラもリリスも……あーあとティーネと声帯同じだからなぁ。何だ?あいつの声、原初の人間の
いや、そんなことはともかく、だ。次の行動をしなければ。地中海風の荘厳な待機音が脳内に響く。ちなみにこれは俺の趣味である。いや、特撮の影響もあるが、ちゃんと理由はある。俺がプログラムを組んだパンドラシステム……正確にはオリュンポス系の神秘が宿った機械に高速詠唱を代行させられるし、人の言葉では発音不能な音声を符号化できて無駄が無いし。これだけで馬鹿にならない恩恵だ。
「えーっと。鏡界回廊最大展開。多元転身、及び反射路形成開始。鏡面界穿孔」
【Compact full open. The mirror form will be ready to. Opening of the kaleidoscope gate. Jump start.】
アイギス・アマルテイアが俺の身を包むと同時に、アイギスに追加搭載したカレイドの魔法少女の機能を起動させる。
途端に景色が入れ替わる。……よし、
おお、気配を感じ取ったのか。ソウルイーターやら、ヒュージゴーストやらがわらわらと出てくる。まるでプリズマイリヤのアサシン戦だな。
『……さて、では、これだ』
間桐の家から奪った円卓の破片を触媒にして作り上げた、出来立てほやほやの魔術礼装『
【Install, Berserker.】
アイギス・アマルテイアの外見が変化していく。緑色の装甲から黒い煙が噴き出し、中世の騎士のフルプレートメイルが露になる。メカニカルなヘッドパーツが、後頭部に生えた飾り毛と赤いスリットの入ったヘルムに変わっていく。
フッフッフ。御覧の通り、完全にバサスロットである。アイギスも超クールだが、こっちもファンタジックでカッコイイな。闇騎士感がたまらない。
『
……アーサーとしか言えねぇんだが。再現率が高過ぎたか?言語能力の消失まで再現しなくていいんだよ。これは改善しないとだな。プランとしては……コイツの狂化Cをリリンの狂化EXで打ち消せるようにしてみるか。
じゃあ次は、そこら辺の木ィ圧し折って宝具にしてみよう。丁度噛みついてくるソウルイーター共もいることだしね。
『
ぐちゃり、と悪霊たちが潰れていく。何らかの作用に満ちた膂力で丸太をぶん回したら、神秘の存在だろうが殺しきることができた。
おー、できた。成る程こういう感じなのね、
あとは、と……。
————令呪二画を以て我が身に命じる。
『……』
漆黒の甲冑姿から、
『……、Huh』
じゃあついでにもう一撃。こっちは以前、ロード・エルメロイⅡ世&グレイの仕事で巻き込まれた時、ごたごたに乗じて
いやー、昇華魔術使ったとは言え、分析して再現するまでクッソ時間かかったわー。これを自力でゼロから魔術として習得したモルガン(異聞帯)ってどうなってんだよ……。
いや、んなのは答えがすぐ出るわ。向こうの才能がダンチなだけだ。つーか神域の魔術師と比べても意味が無いよね。俺は俺なりの最善を尽くして模造品を創れたし、それでいいのだ。じゃあイミテーション品の肝心の威力は、っと。
『……Rhongomyniad』
————数秒後。俺は、これを軽々しく使ったことを激しく後悔することになる。
『……Ah?』
極光が俺の前方に降って来た。いや、それは良い。狙い通りだ。フルパワー時の火力の調整が目的だったしな。
けれど、けれども。昇華魔術を使ったとはいえ、劣化品として作り出したはずのロンゴミニアドは……想定していたよりも真に迫っていたらしい。
■
「あれ。マスターってばどこ行っ————」
「どぉあァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッッッ⁉」
「うふぉオオオオオオオオオ⁉」
鏡界にて
肉付きの良い太腿と尻が頭の上から降ってく————ぎゃあっ!
「……。原因は120パー俺だがゴメン、どいてくれ頭蓋が潰れる……」
「アテシが重いってかーっ!」
「女性の
「今更遅いんよ自己保身とかさー、でいっ!」
あだっ。どきながら蹴り入れるな蹴り。加減してくれてるとはいえ筋力B以上なんだぞお前?
「……で。鏡の世界に行ってたんでしょ。今度は何したのさ。また魔術の研究か何か?」
煎餅を齧りつつ湯呑の緑茶を啜ってジト目を向けてくるバーサーカー。あ、俺も貰って良いの?ありがとー。
「俺は魔術師としては三流以下だぞ。ただ起源とか魔術特性頼りなだけで、俺自身の魔術を発展させる才能は一切無いし。与えられたものの恩恵でしかねーよ」
「えー?でも、あらゆる技術を
「それは才能と言えるのだろうか……?」
つーか俺、本職は魔術使いっつーか、生化学者(&無免許医)なんだけどね……?自分で言うのもアレだが、
「俺がしてたのは
虚数空間から取り出したバインダーファイルから一枚、カードを取り出してバーサーカーへ手渡してやる。亜種聖杯戦争に巻き込まれてから何枚も創り続けてきたが、大分貯まったな。カードファイルがもーパンパン。敵側のサーヴァントであっても戦った縁があるから生成しやすかったし。
「ほぉん、コレが例の……」
「ああ。間桐の家から奪った『円卓の欠片』を触媒に、とある世界の魔術礼装を参考にして作った俺製の『サーヴァントカード』だ」
滅茶苦茶あるよー。ニコラ・テスラとフランケンシュタインの雷撃カード、ブラヴァツキーのオールマイティーな魔術基盤接続カード、敵として戦った
————うん。冷静になって考えたらこれだけでも封印指定されて余りある所業だな。バゼットのことと一緒に口を閉ざしておかなきゃ……。
「あー。宝石翁のお喋りステッキが主軸になる世界線のねー。アテシも魔法少女とかやってみよっかなー?」
お、バーサーカーってば意外に乗り気?衣装(機能爆盛り)創るよ?やっぱりパンドラが変身した魔法少女モチーフにした方が良いかな?
「……やっぱやめとこ。何か邪気感じた。変なこと考えたでしょ、マスター」
なんだ、ちぇっ残念。ま、いーや。
「あとは
「ああ。
「認知はしねーだろうなー……」
エロゲ主人公とはいえ、これ知られたらグドグドぬちゃぬちゃな昼ドラ状態になるだろーなー。ま、こっちは武器が手に入って全然良いけど。
「アテシが魔力で生み出せるリリンには色々と加工ができる。例えば、人間の遺伝子を取り込むことで、その人間の特徴を持つリリンを形成できるとか……ね。まぁ全部女として生まれるのだけれど」
「ああ。それ故、間桐家や衛宮邸襲撃時に間桐桜や衛宮士郎の血液を採取しておいたんだ。それを、俺の遺伝子とお前の魔力で構成されたリリンに取り込ませて製造している」
ちなみに昨日交戦したアインツベルン製ホムンクルスの体内に入れた菌糸類には、間桐桜ベースのリリンを融合させていたりする。起源やら魔術特性も変わっていることだろう。
「今回の新型モデルは衛宮士郎がベースだな。現状、ロールアウトしているのは……コレだな」
エデンの門を開き、
「……なんだろ。我が子ながらかなり心惹かれる顔してるよね、今回の新作リリン」
あー……。外見、ほぼぐだ子だしな……。あ、こら。リリス、勝手に女体化衛宮士郎のほっぺ掴んでぐにぐにしない。
「コイツは試作品だが、決定稿でもある。俺の遺伝子に宿る魔術特性と衛宮士郎の遺伝子に宿る魔術特性が融合したことで、コイツに宿る
「へー?確か、あの固有結界は剣を形成する要素で満たされてるんだっけ?だから投影魔術が本質ってわけでは無いし、本来の武器の使い手の記憶もコピーして自在に使いこなせるとかいうチート能力だったのでは?」
「ああ、紛れもなくチート能力だよ、なんだそりゃってなるわ。欠点らしい欠点も宝具ランクは一段階落ちるっていう制約だけだが、
つーか、付け入る隙がそんくらいなの、ホントおかしい。しかも知名度補正無しでこれかよ。第五次聖杯戦争が魔境なだけで他の所なら十分だよ、何自分が弱いみたいな言い方してんだよエミヤ。お前狂化でナーフ入ってるとはいえヘラクレス六殺してるクセに。アレか?五次鯖のどれともいい勝負は出来るが勝ちきれる決め手がありませんってか?十分過ぎるんだよ。
「だが、俺の昇華魔術のおかげか、
……、言ってて思ったが、カルマグリフの否定無二かよ。魔術世界の神秘からして、全く同じものを完璧に再現するのは極めて難しいっつーのに。俺の昇華魔術は素体が優秀ならその分効果が跳ね上がるんだが、
「え、すごっ。じゃあ聖剣とか神造兵器とか作り放題?」
「いや、そう美味い話は無い。欠点としては、このリリンの命全てを代償に剣を投影するからコスパが最悪なところだ」
命一つで剣一本。これが本物の人間だったら倫理感からしても最低な宝具かもしれん。
「えー。でもアテシのリリンは一日しか生きられないし、武器にすれば命判定じゃなくなるからより有用なんじゃない?」
バーサーカー、この辺りすげぇドライだよね。いやありがたいんだけども。もしかして俺って言う召喚者の影響出てたりする?藤丸版のリリスだったらどういったリアクションするんだろうか。
「……じゃあコレを使って
ではそのために作った一日限りの死ぬための命、使わせてもらおう。
「————体は剣で出来ている/You are the bone of your sword.」
ばきり。女立香に似たリリンの体中から剣の切っ先が生え出した。頭蓋から脳漿や眼球が弾け、肉が裂け、骨が砕ける。初めから無い心から血潮に染まり、鋼となっていく。
ぐちゃり、ぐちゃりと四肢が肉団子と化し、剣を構成する素材へと還元されていく。畳に垂れた血も、重力に逆らって俺の手の中の剣の柄に吸われていく。
衛宮士郎の血を持ったリリンが死に、その代価として俺は新たな武器を得た。
「……仮説通り。黒い聖剣だな」
出来上がったのは、所々に刻まれた紋様が水色に発光する漆黒の剣。マジで
「ふふふ。アテシもそうだけど、マスターもマスターでマジで容赦ないねー」
「ま、やってることが言峰と同類という自覚はある。教会の地下の孤児と似たようなもんだからな」
いや、もっと悪いかも……。アレは第四次聖杯戦争の戦争孤児で、衛宮士郎にとっては極論赤の他人だが、こっちはマジで血が繋がってる培養体だし。
「……
「殺されるんじゃない?」
「あっははは。……いや笑い事じゃねーな」
でも使える手段は全部使っておかないとな。精神攻撃で行動阻害出来るなら採用しない理由はないしね。
さらっと言峰よりエグイことしてないアダムさん……?
アダム「ここで自我を得たエミヤ・リリンが逃げ出して衛宮士郎と交流とか持ったら俺ホントに悪役だなー」
リリス「じゃあやってみる?」
アダム「んー。そうするルートがあったら俺が脚本考えてみる。操作する演者はバーサーカーにお願いするかも」
リリス「うわー。マジで草生える。愉悦とか一切関係なく戦争を有利に進める為の手駒でしかないのが化物精神してるよマスター。人の心よ」
アダム「ああ、良く知ってるが……それが?」
リリス「オウフ」