リリスがエ□ゲ版Fateに召喚された話   作:サルミアッキ

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 引っ越しとか色々と環境変わって投稿が遅れてしまった……。こんなに間隔空いても見ていただければ幸いですね。


胎動しだす悪意の創り手

 2月4日の午後。

 

「お、遠坂凛と衛宮士郎が追いかけっこをしているな」

 

 大学棟にナノテクノロジーで作り出した監視カメラを設置しておいたが、どうやらUBWのルートをなぞっているようだ。ただ、衛宮士郎の手の甲には令呪が三画、欠けることなく刻まれているが。

 ということは、そろそろ……お、メドゥーサの攻撃だ。うわー、腕に鎖付きの鋲がぶっ刺さって痛そー。アヴァロンあるにしてもこう立て続けに怪我するのは俺でもやだなー。

 

『……やくん⁉』

『……るな、遠坂!』

 

 おっと、UBWと違って、ランサーってば余裕たっぷりに出て来たぞ。森に入ることなく、ただ衛宮士郎を人質にして会話するって感じか。この辺りにも差異が生まれてるな。さて会話の音拾えるかどうか……。カメラに擬態した液体金属型ナノマシンの指向性振動感知機能を最大にして、と。

 

『遠坂凛、そして衛宮士郎。あなた達に、私のマスターが話をしたいそうです。明日、穗群原学園の第二講堂でお待ちしております……、ああ。そして忠告なのですが……。学校に結界を張ったのは私のマスターです。それでは』

 

 ……へぇ。そうなるんだ。となると、明日の動きも不明瞭になって来たな。ここまで来たら、俺もかなり自由に動いて良さそうだ。

 

「……よし。プログラムの更新完了」

「んぉ。マスターってばまたパソコン弄って何して……うわぁナニコレ」

 

 フーセンガムをもちゃもちゃ噛んでるバーサーカーが俺の後ろからPCを覗き込んできた。

 

「え、コレ?俺がアイギス・アマルテイア使用時のスペックをサーヴァント換算したバイオグラフ」

 

 アインツベルンのホムンクルスたちと戦った時とかサーヴァントカードを使った時とか、数年前計測していた基本スペックより向上してそうって思ったら案の定だよ。

 これとか魔力量の増大とか、あと昇華魔術の質の向上とか、メディアさんが言ってた通りリリス召喚してから体に力が表出しつつあるよな。

 やっぱり、俺のご先祖様って……俺がこの聖杯戦争でバーサーカーを召喚すること見越してなんか俺に混ぜただろ……。

 

「……現存する宝具の身体強化ブーストがあるとはいえ、何でリリンの命(アテシの力)背負う疑似サーヴァントでない時でもこのステなん?」

 

 パチン、とフーセンガムが割れて彼女の唇に張り付いた。そんなことを他所に、バーサーカーはパソコン画面の右端のグラフを指先でつついてくる。

 

 

アイギス・アマルテイア装備時ステータス(魔力、幸運は生身と変化なし)

筋力耐久敏捷魔力幸運宝具
AAAEXE+EX

 

 

 幸運以外Aランク以上である。身体能力向上の為のパワードスーツだし、多少はね。

 

「……俺、一応平時でも筋力C+くらいはあるのよ?それに物理学者の経験に基づく人体工学ブーストかければこうもなる」

「物理(攻撃が強い)学者でしょマスターは。てかきっかけがあればBランク凌駕できるの、凄いね……。改造人間なの?」

「魔術的遺伝子組み換え云々のことあるし、否定できねー……。あと、アイギス・アマルテイアに内蔵した各種機能も色々あるし。てか疑似鯖化はあくまで聖杯戦争の機能を使った自己防衛(敗退時ワープ)とかの手段の一つなんだよな」

 

 内蔵機能とは何ぞや、と怪訝そうな顔をしているバーサーカーに、鎧に搭載しているスキルの一覧を空間投影画面に出して見せてやる。

 うーん、でもパンドラシステムのOSも今の俺の神代回帰し始めてる体にフィットするバージョンアップが必要かもな。これ見る限り。

 

 

アイギス・アマルテイア内蔵機能(スキル)

対魔力A+魔術への耐性を得る能力。

Aランク以下の魔術を完全に無効化する。さらに

EXランクの魔術は後述の炉心を稼働させ、

広域空間干渉機能エーテル・ドランカー

システムで吸収可能。

豊穣の権能Aアマルテイアが持っていた、

全能神ゼウスのアバターを育成した権能。

大地の権能、母の権能などが複合している。

あくまで真体から零れ墜ちた一部であるが、

それでも最高ランクとなっている。

ORTリアクターA++ワン・ラディアンス・シングス・リアクター。

ORTの惑星統括細胞片に、エデンの植物及び

中南米産繊維型情報記録体を融合・変質させて

製造した人造心臓。これをメイン動力として

様々なエネルギーを発生させる炉心としている。

また科学的に再現された『水晶渓谷』の能力で

上位次元存在であるサーヴァントを(受肉体で

あろうと)結晶化し、活動反応を強制停止させ

エネルギーとして取り込むことが可能。ただし

今を生きる人類はエネルギー化できない。

蒼輝銀河のオルタニウムとは特に関係がない。

及び、他特性付与効果を完全に無効化する。

乗着A+ヒロインXXの保有するスキルを

アダムが超科学技術で再現したもの。

アイギス・アマルテイアはアダムの

固有結界内に常に存在している。

この亜種神体結界をマイナスx秒

(不意打ちされたとしても、そのx秒前

に次元跳躍によって時間を遡り装備する)

で実体化・武装することを可能とする。

また、相手の所持武装をも対象にでき、

時間逆行による強制防御解除も可能。

量子甲冑A+クォンタム・アーマー。

本来はヒロインXX〔オルタ〕の保有スキル。

アイギス・アマルテイアのORTリアクターと

直結駆動するパワードスーツで、神体結界の

概念防御式神鋼製装甲やクリロノミアスキン等

を重ね合わせることで同時運用を可能とする。

また統一言語詠唱を増幅し重力場を召喚する

半自律魔術式計算機でもある。アダムはこれに

霊子力学を応用した人体強化システムを

組み合わせることで各マニューバを高次元

的に効率化させている上、高速神言などを

代行させる人工神霊知能パンドラシステムを

組み込んでおり、その演算速度と同等の速度で

行動可能。このフォトニック演算機は

アナライズ/デコード/ディセーブルといった

解析機能を有している。なおシステムボイスは

リリスの声帯波形から流用したもの(無許可)。

重力操作A+ヘビー・オブジェクト。

こちらもヒロインXX〔オルタ〕が持つスキル。

魔術的仮想ブラックホールの構築や、

自在に重力を操る事を可能としている。

これを用いることでパンチやキックに

ベクトル操作や縮退星レベルの加重

を付与した肉弾戦を得意とする。

天の海を渡るものA+恒星間航行を可能とし、宇宙を渡る存在である

機神達が共通して備えているスキル、

『星の海を渡るもの』の亜種スキル。

本来ならば星属性のサーヴァントに

与えるダメージをアップさせるが、

こちらはアダムによるシステムの

書き換えによって天属性の英霊への

特攻・特防機能となっている。

模倣礼装・月霊髄液(フォトニック純結晶)EX時計塔エルメロイ派アーチボルト家自慢の

至上礼装のひとつを科学的に再現したもの。

————否、現代科学の域を既に超えている。

オリジナルのような魔術を組み込んだ水銀

ではなく、液体金属型ナノマシンである。

ナノマシンのCPUはフォトニック純結晶を

加工したもの。通常時は量子甲冑内にて

魔力放出B+相当を出力するアクチュエータ

として機能するが、動力機構でありながら

その構造故にナノ単位のCPUが連なった

並行処理機能を備えるOS補助演算機としても

機能し、1分後の未来を算出し続けることで

精密な行動予測が可能。魔術が超科学技術で

解体されかけたのでエルメロイ二人はキレた。

異星の紋章EX新人類が生み出した全く新しい概念によるもの。

霊長とは異なる頭脳を持つアダム・ルリア・

アシュケナジーが改造した物品・生命はA

以上のランクで保有する。中でもこの鎧は

他天体の知性体による文明技術ヴェルバーを

用いて改造したため、規格外のランクと

なっている。搭載機能で解析した生命、

被造物、概念を霊子情報として吸収し、

人理とは異なる法則で機能が更新される。

 

 

 ……パンドラシステムのやつ、説明文の節々に余計な事書いてやがるな。何か、自我あるっぽくね?シンギュラリった?

 

「……。あのさ、マスター。『外宇宙から来たティターン系機神』と『南米産宇宙菌糸』と『メソポタミア以外の神話壊滅させたヴェルバーの残骸』と『宇宙怪獣ORTの細胞』組み合わせて(なーに)サーヴァント・ユニヴァース規格の武装作ってんの?つーか(なぁん)でこんなもん作れるの?」

「……。素材が継承してきた固有結界内に揃ってたから?」

(ちッが)う、材料のことじゃなーい。ヤ、確かにこれの素材、希少どころのモンじゃないんだろうけどさ?」

 

 それは多分俺の力、人理に則したものとまるっきり違うから……。メディアさんに言われた神代回帰云々以前に、真祖とかに近いし。人の皮被った部分以外だと、フォーリナーみたいに抑止力が働かないところあるっぽいしなぁ。

 確か十六世紀のロード・アステア曰く、ORTには今紀の地球の生命は何一つ及ばないとかだったけど、俺があの宇宙蜘蛛に効果を及ぼせるってこたぁつまり……。

 

「昔、テスラから人類種の知性じゃないって言われたことあるから、それも原因じゃねーかな……」

「光の国の技術者だったりするの、アテシのマスター……」

 

 うーむ。確かにORTの対処はスターマークのゾ●ィーかそれ以上な案件だけども。でも俺のポジ、スターマークはスターマークでもヒ●リ長官の方だろ。つーか、技術開発局でも●レギアとかだと思うのよ。あの悪トラマン、パワーソースが怪獣だし。

 

「……確かにサーヴァントカードの要領で怪獣カード作りたいと思ったことはあるなぁ。ORTとかセファールの」

 

 北欧神話のワルキューレはセファールがベースだし、ギリシャ然り異聞帯ミクトラン然り、宇宙由来技術を流用するのってこの世界じゃ普通なことなのでは?

 

「止めなよ?いや危険だからとかじゃなくて、マスター本当に出来そうだからマジで止めなよ?嬉々としてやりそうで怖いんだけど。主神クラスでしかやれない所業だからね、それ。何、マスターっていっつもこんな事考えてんの?」

「いつもじゃないよー。話が合うヤツがいるなら別だけど……。生前ブラヴァツキーと宇宙怪獣探しに行ったり、サーヴァントとして呼び出した時にウ●トラシリーズ見せたことなら、まぁある」

「やめれ」

 

 ……あれぇ?弓エレナの第二再臨がマハトママン(ウルトラなアレ)なのって、俺の影響だったりする?

 

「うぇ、何か知らんけどアテシの頭の中でセファールが大暴れする記憶がフラッシュバックしてきた……。もしかして現地で見てたのか、生前のアテシ……」

「え。マジで?その話詳しく」

「やー。言いたくなーい」

 

 メンタル大丈夫かバーサーカー?そういや、リリスもあのシビルジャッジメンター(セファール)とニアミスしてるっちゃしてるのか、活動範囲がメソポタミアだし。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 2月5日。その朝。

 

 穗群原学園の大学棟。聖杯戦争中であるものの、遠坂凛と衛宮士郎は、二人そろって通学してきた。同盟関係にあるとはいえ、彼らがなぜこうも堂々と行動を共にしているのかは、昨夜隠密行動をして接触してきた()()()()()()()による呼び出しが関係している。

 サーヴァントである彼女は、明日穗群原学園に来るように伝え、来なかった場合、学校を宝具の結界で覆い、生徒たちの命を奪うと脅してきたのだった。

 

「……」

「……行くわよ、衛宮君」

 

 指定されていた教室内に入る遠坂凛と衛宮士郎。そこには、既に一人の学生がいた。

 

「……おお。よぉ衛宮。それに遠坂も。一昨日は教会前で随分と派手にやったらしいじゃないか」

「は、慎二……?」

 

 入室した二人の顔を見て、ニヤニヤしながら近づいてくるのは癖のある毛髪の美男子だった。

 

「……何かしら、間桐君。随分含みのあることを言うのね」

「はっ、そっちこそ分かってるだろ遠坂。聖杯戦争、それを作った魔術師の末裔はお前だけじゃない」

 

 なれなれしく彼女に近づく男子学生……間桐慎二の口からは、一般人では知るはずがない単語がつらつらと並べられていく。

 

「遠坂、アインツベルン、そして間桐。これがこの冬木市で行われる聖杯戦争を形作った魔術師の家系だ。間桐の継承者である僕も参加していないわけが無いだろ?」

「な……、慎二。お前……」

 

 驚く衛宮士郎を尻目に、冬木の魔術師の内情を知る遠坂凛は淡白に嘆息する。

 

「……そ。一つ聞かせて」

「何だい遠坂?」

「昨日、あのサーヴァントの女を使って私たちを呼び出したことと言い、学校に結界を仕掛けたの、あなたでしょ」

「そうだけど?」

 

 遠坂凛からの追及に、彼は何てことなさそうに、首を縦に振って肯定した。

 

「慎二……っ!」

「おいおい落ち着けよ、衛宮。こっちとしては保険としてこれを仕掛けているんだ」

 

 途端に顔を怒りに染め、気色ばむ衛宮士郎。だが、悪辣な人質を取った当の本人はどこ吹く風。寧ろ、面白そうに目を細めて衛宮士郎のリアクションを愉しんでいるようだった。

 

「落ち目とは言え優秀な遠坂。片や僕はお爺様に無理矢理参加させられた三流以下のマスターだ。正面切って戦うなんてとてもとても。このくらいの人質(しゅだん)は取らせてくれよ」

「……何が保険よ。こんなことをして、魔術の秘匿もあったもんじゃないわ……!」

「それは目撃者が残っていた場合だろ。最悪の場合は、この学校の人間をサーヴァントの栄養にすれば強化と口封じもできて一石二鳥だ」

 

 間桐慎二から告げられる、魔術師らしいヒトデナシの言葉。だが、それに衛宮士郎が噛みつく前に、間桐慎二は彼に指を突き付けて現実を語る。

 

「それに、一昨日の夜の……アインツベルンのサーヴァント。あれは僕のサーヴァントだけじゃ倒せないからな。だからさぁ、衛宮」

 

 後々になってみれば、間桐慎二は正義の味方の理想を、奇しくも現実で打ち据える起点となった。そう、些細なことだが、これが始まりの表出の一つであった。

 

「お前、遠坂とも同盟組んでるんだって?じゃあ僕も仲間に入れてくれよ。入れてくれれば学校の宝具の結界は解いてやってもいいぜ?」

 

 驚いたことに、彼は、二人に対して協力を申し出て来た。

 

「……聞く必要ないわよ衛宮君。こんなやつのサーヴァント一騎が協力したところで、あのヘラクレスを倒せるわけがないでしょ」

「おいおい。ハズレを引いたのはお前の方だろ遠坂?ないものねだりは見苦しいぜ」

 

 痛い所を突いてくる間桐慎二。さもありなん、遠坂凛は自身が召喚したアーチャーの真名及び実力を、未だ推し量れていない。

 

「そもそも。昨日の夜、ヘラクレスが撤退したのは僕のサーヴァントのおかげなんだぜ?お前らは僕に借りがあるわけだ。そんなの道理が通らないよな」

 

 慎二の言葉にハッとする凛。彼の言葉に、思い当たる節があった。

 

「あの蟹の鋏、あなたのサーヴァントのものなの……?」

「おっと。そこまでの情報を開示するのは同盟を組んでからだ。それで、どうする?」

 

 講堂内を悠然と歩きながら、慎二は士郎に視線を向けた。一瞬、ほんの些細な時間。傍から見ればなんてことは無い仕草だったが、その時、士郎は慎二の眼の奥にナニカを感じた。

 

(……?)

 

 その、違和感。友人として接してきた今までの慎二とは何かが違う。そう思った士郎が口を開く前に、凛は苦々し気に言葉を吐き捨てた。

 

「何、恩の押し売り?」

「いや何も。ただ、遠坂ってやつはその程度の礼儀のヤツだったんだな、ってね」

 

 うねる髪を指先で弄りながら、慎二は背中を向けて話を続けていた。

 

「……これ以上私から言う事は無いわ。でも、覚悟なさい。組むとしてもこの同盟はアインツベルンを打破するまでの関係よ。衛宮君、あなたはどうなの?」

 

 もやもやした気持ちが、心の底に沈んでいく。いつの間にか、その違和感は思い出せなくなっていた。自分の勘違いか、と思い直し、衛宮士郎は決意をした。

 

「……分かった。だけど慎二。この学校の結界の解除が先だ」

「ああ、約束は守るさ。だって————僕たちは友達だからなぁ、衛宮?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 衛宮士郎たちの教室の隣にいた俺は、体に纏わせていた月霊髄液型ナノマシンの擬態膜を解除し、部分展開したアイギスの手甲に格納する。

 

「……ふぅん」

 

 穗群原学園の教師に変装して大学棟内の様子を見ていたけど、衛宮・遠坂陣営に間桐慎二とランサーメドゥーサも加わったのか。俺がバーサーカー呼んで、アインツベルンのサーヴァントをアチャクレスにしただけで大分ルートが違くなるな。

 ま、いいけど。ワカメと神+人の交雑種(ギルガメッシュ)がくっついても良かったんだが、こっちの方がやりやすい。

 それにワカメ、色々と水面下で画策してるみたいだし。マキリ・ゾォルケンがいなくなった結果、ストレスフリーではっちゃけてるなー。しかも腐っても魔術師の家系に生まれで、魔術以外の才能に恵まれた天才肌の男だ。それが噛み合ってかなりの策略家になってる。

 これは悪くない。寧ろ、上手く誘導すれば俺のしたいことに利用できるんじゃないか?だとすれば、……ん?

 目の前から歩いてくるのは……。

 

「————。これはまた、妙なところで出会ったな、言峰神父」

 

 片手に鞄を持ちながら商店街を歩く、外道麻婆だった。

 

「……アダム・ルリア・アシュケナジーか」

「昼間から何しに?それ、仕事道具?」

「少しな。だが、此処であったのも何かの縁だ。未だ時間というわけでも無し」

 

 なんじゃい。

 

「……共に食事でもどうかね」

「————中華か?」

「中華だ」

 

 マジかよ、()()か。……あれかぁ。うーん。

 

「……分かった、行こう」

 

 まぁ、俺の作った麻婆拉麵トムヤムクン風味よかマシな料理だったし、付き合いとして食ってやる。

 一回怖いもの見たさで口にしたが、案外クセになる辛さで悪くなかったしな。

 

「いらっしゃいませアルー」

 

 で、そんなこんなで着いたぞ、紅洲宴歳館・泰山。

 

「……麻婆豆腐を」

「俺も同じのを。あと————、この鱶鰭の姿煮と海老雲吞の温野菜サラダ、肉味噌担々麺。おかわりってできます?あ、できる。ならまた後で追加注文をお願いします……して何用なんだ?言峰神父」

 

 何の話があって俺をここまで呼び出したんだろう、この外道神父。あれか?以前の話の続きか?まだ何か引っかかることでもあるのか?

 

「……。いやなに、説法は嫌いかな?」

「あー。……嫌いだな。教えを説かれる相手にもよるが」

「ほぅ?」

 

 気になった相手にはちょっかいかけないと気がすまないってか。なんだそりゃ小学生か。自分の心中も理解しきれてない破綻者が、求道に邁進するのは結構だけど……。あまりに俺の時間を拘束されると厄介だなぁ。執着されてもこれからの俺の行動に邪魔だし。そもそも教会陣営をのさばらせていたら、主従共々、聖杯戦争に支障が出る。

 ……あー、まぁ。()()()()()()()()

 

「神に教わることなど無い。王に導いてもらうことなど無い。人に告解すべきことなど無い。俺はそれらを超えた事象のみを見て学ぶ」

「————。ふむ、続きを」

 

 怒にしてこれを(みだ)せ。バーサーカーも言っていたが、俺もこの言葉滅茶苦茶好きでさ。それに、相手が冷静に立ち返らない(沸騰しない)域で怒らせるのはそれなりのもんだぜ。

 やり方がカス?勝てば手段なんてどうでもいーわ、これ戦争だぞ。

 

「神が真に全知全能であるならば、何故この世に争いがあり、悪が蔓延るのか。俺はこんな考え方は嫌いだが、それこそがお前らの言う主の慈悲なんじゃないか?救世主さえ磔にした人間の獣性を抑える為、神はあえて敵という概念を残し賜うた……。曰く化物。曰く異端。そして、お前のような————」

 

 ————あ、追加注文お願いします。はい、鶏肉の黒胡椒炒めを。

 

「もごっ。言峰神父。あんたは代行者をしていたが、簡単にその立場を捨てられた。悪人や化物相手に愉悦の感情向けられなかったんだろ?おまけに、自分が正義の味方をやってることに真面目に否定したってところか」

「……」

 

 いや、相槌くらい打て。俺が一人ペラペラ喋ってたら痛い奴じゃん。魃さんもきょとん顔になってるよ。

 イイの?このまま話続けて。俺の所感100%だよ。まぁ、盤外戦術として仕込みとして言わせてもらうけども。

 

「大体、そんなことして寝覚めが悪いだのなんだの言うのは、お前らが理想を夢見てるからだ。そんな夢見がちな言葉はな、現実を見てないヤツの戯言なんだよ。苦いだけが人生だ。そう思っていた方が色んなことを許容できる」

 

 ————むむ。もうちょっと腹にたまるもの食べたいな……。上海蟹味噌の餡かけ焼きそば、ください。

 

「はふ……。俺はお前ら破綻者のことを、理解はできる。この苦界にて生きること、死を望むこと。クソ溜めに落とされた赤子のように生きるお前らを、それこそ少しくらいはな。だが言峰神父、言っちゃあれだが、お前の在り方の色は黒だが……純粋に過ぎる。俺と違って汚れのない闇の黒だ。全く、————本当に子どもだな」

 

 ————あ、八宝菜も欲しいな。古き良きシンプルでオーソドックスなヤツ。それに鮑の醤油煮込み、これも追加で。

 

「だが。私は————」

「幸せになれる道が無い、か?()()()()()()()()()()()?お前もしかして、幸せになりたかったのか?幸せを求めるのが人間だ、なんて夢見てたのか?はははっ」

「————。何?」

 

 ————小籠包と、焼売と、餃子ください。どうでもいいことだけど、餃子って中国じゃ水餃子のことで、日本みたいに焼かないんだよね。どっちも美味いんだけど。

 

「ほふ、ほふ……。夢は夜に見るだけにしろ。俺たちが生きているのは現実だ。現実には幸せなんてものは無い。現実には折り合いを付けろ。幸せを己の内に、そして世界にも求めるな。そもそもそんなもの、現実にあると考えちゃいけないだろ。ガキにだって分かる。希な望みと書いて希望だ。あるはずのない望みなんだよ、それは」

 

 ————あはい、魃さん……はいお願いします、青椒肉絲。大皿山盛りで。

 

「あんむ……。求道者と言えば聞こえは良いがね、お前はただ、経典にすら書かれる訳もない答えを、頁を捲って探し続けているカンニング野郎だよ。自分が生まれたことに答えがあると思っている」

「————、そんなことは」

「無いか?いや、そんなのは嫌だってか。いい歳して夢見てんじゃねーぞ、全く。年長者からの忠告だ。純白な正義だろうが漆黒の悪意だろうが、潔癖なだけの在り方は今すぐ捨てろ」

 

 ————ん、北京ダックあるのかー。じゃあそれも追加で。生春巻きも。

 

「世界の不幸や苦しむ姿でしか生きていることを実感できない在り方だったとして。だから何?生きていることの実感や、歓びや、幸福とか、そんなに重要か?生きていることに意味を見出すことが、それほど大事か?俺はそんなこと、思ったことが無いな」

 

 ————あ、すみませーん魃さーん、油淋鶏も追加で注文させてくださーい。

 

「もむ。そんな無意義なことをグダグダぬかして足踏みするより、間違いを抱こうが、醜態を晒そうが、ただ生きればいい。志なんて低くて良いんだよ」

 

 ————汁物も食べたい。あ、酸辣湯あるじゃん。これも頼もうっと。

 

「フー、フー……あふっ。お前が苦悩と怒りによる自己否定をするのは構わんよ。自分を哀れむのも、世界に容認されない存在の存在意義の思索も、好きなだけやれ。だがね、人がすべきこと……いや、人に赦されていることは、生きる事だけだ。そこに幸福になろうなんて夢を見ては何もかもが破綻する」

 

 ————蟹と卵の炒飯をおかわり。大盛で。

 

「生の実感……つまり幸福なんてものは得るものじゃなく、生きた後に残るものだからな」

「————だとしたら……。だとしたら、私は何故生まれた?この世に生まれたものに価値がある、とは言わん。だが、生まれたからには意味があるはずだ」

「あー、成る程。それがお前の信仰か。はたまた神か……はは、確かに。お前はどうだか知らんが、俺は神の実在を信じてはいる。が。神自体が好きかと言われればまぁ、うん。そんなやつより、自分こそが唯一の神だと思っているのかもな」

 

 だって、他人から正解を与えられるの、理解できないし。それに導かれるのも我慢ならない。満足だと思えない。ということは俺の本質、ギル以上に天上天下唯我独尊なのかもね。

 

「正しく、原罪を食らった神の似姿(アダム)だってか。そして、神と同じものとして生まれたアダムが罪を犯すなら、深謀遠慮な『かの神』もまた間違いを犯すのは当然の帰結だ。洪水起こしてから虹で謝罪メールしたり、その息子も空腹にキレて無花果を呪ったり。……あー、だからな言峰綺礼。自分の誕生に意味があると思うことが、そもそもの間違いなんじゃないか」

「……————」

 

 わぁ言峰神父ってば凄い顔。記憶にあるトリメタの裁判もこんな顔してたっけ。……まぁ理解はできるよ、どうでもいいけど。一応これ、生き苦しそうなお前へのフォローなんだけどな。

 でもそちらさんの信仰をこっちに擦り付けられても、ねぇ……?心の摩耗も、己が裡の欠落も、神父としての使命も、投げ出すも背負い続けるのもそちら次第。結局他所は他所、俺は俺だし。こういう人間がいるというサンプルケース知識を得ても、共有と共感をすべきことで利益になるでもないしね。

 

「まぁ良い。言峰神父はこの聖杯戦争の監督役としての仕事を全うしてくれ。……あ、すみません。杏仁豆腐ください。お代はこいつの言峰教会にツケといてください」

「……お断りさせていただこう。食事には誘ったが、奢るとは言っていない」

 

 あ、帰るのか。じゃあねー。……若干ピキってたか?言峰。

 

(……いーんですか、今殺さないで)

(まだ役目があるさ、お前も霊体化を解いて良いぞ)

(そーいうことなら、はいはいっと)

 

 律義に霊体のまま外に出てから、今着いた客のテイで泰山の中へと入ってくるバーサーカー。流石にほぼ裸に黒コートは通報ものなので、今は黒いレザージャケットとミニスカートを着用している。角や翼を一部霊体化し続けているものの、その外見は人外的な妖艶さが隠しきれない。おまけにいつもはツインテールの髪型を後頭部で一つに纏めているので、細い首のうなじが見えて、……なんというか色っぽい。

 

「はーいお待たせーマス……じゃないや、アダム」

「いや、こっちの方が待たせて悪かったな」

「はははっ、いやー。アテシもお腹空いちゃった」

 

 快活に笑ってへそ出しのジャケットのジッパーを開いた。……良かった。中もちゃんと着ていた。うーむ、大阪の夜空で舞っているのが似合いそうだ。

 

「じゃ、アテシもご飯食べよっかな。うーんと……このチャーハン貰って良いよね」

「ダメ。俺ンだ」

「そんだけ食べてまだ食うの?いや、大食いなのは分かってたけど、この量は流石にさ」

「飢えてた子供の頃からクセになってんだ、食い溜めするの」

「さらっと重いの、お出しすんの止めな?」

 

 外道神父が立ち去った後の中華料亭で、バーサーカー(英霊星行バージョン)と一緒に飯の続きをする。

 さて、些細な言葉の毒は心の中に入れておいた。ヤツの行動指針にほんの少しでもズレを出せれば御の字だが。あの様子だと、手ごたえとしては上々だな。

 

「あーん……で。あの神父様を使って何する気?」

「する、というか……舞台装置を整えると言うか。これからの用事だって、どうせ、『アメリカから呼び出された魔術協会派閥の魔術師』の接待だしな」

 

 さっきの会話中、言峰が持っていた鞄の中身、それを機械使ってスキャンして携帯電話の履歴情報を割り出した。海外から数件の連絡を受け取っていたが、そっからは簡単だった。

 海外サーバーを経由して旅客機の乗客名簿をハッキングして調べてみたが、すぐに分かった。そうか、やっぱり魔術協会に俺を消したい派閥はいるよなー。で、捨て駒で()が選ばれたと。

 ……どーせ言峰と組むだろうな。いや呼ばれた外部の魔術師が、ではなく。用意された触媒といい、魔術師の特性といい、用意された肉人形といい……これから生み出されるはずの『デミ・サーヴァント』が、だが。

 

「……普通に性格悪いなー、マスターってば」

「イイ性格してると言ってくれ」

「あっはっは。ムリムリ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アメリカからはるばるようこそ。()()()()()()()()()()()

「出迎えありがとう、ミスターコトミネ。ここが冬木か。成る程、戦争をするには些か人が多い。平穏に生きる人たちに被害を出さないため、貴方のような者が監督役となったのは理解した」

 

 空港に繋がる大通りを冬木市街に向かって走る、黒い車。その車中で、二人の男たちが会話をしている。

 

「必要なモノは用意してある。確認してほしい」

「そうか。それは有難い。私の魔術にはソレが必要でね。何、生きている人間を使うのは倫理に悖る行いだ。しかし、これならば何も問題がない。触媒もこの通り、用意してあるとも」

 

 アーネスト・グレイヴヒルが手に持っていたのは、間桐臓硯や獅子劫界離が手に入れたものと同じ……キャメロットの円卓の破片だった。




言峰(こいつ、まだ食うか————?)
アダム(もうちょい食うか————!)
リリス(マスターの本気の食いっぷりが凄くて話全然入ってこない……)

 泰山で気もそぞろな三人。
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