リリスがエ□ゲ版Fateに召喚された話   作:サルミアッキ

2 / 20
冬木に行く前にちょっと寄り道。アダム、コミュ力A(藤丸はEX)


東京都三咲町の葛木さん宅

「————にしたってモノ好き過ぎない?わざわざアテシを呼ぶなんて」

「もの好きっていうか……、多分。縁的にお前しか呼べないんだと思うよ、俺は」

 

 イスラエルから航空便を乗り継いで数日後。俺とバーサーカーは冬木に行くより先に、日本の首都である東京にいた。

 懐かしの『記憶に覚えのある』母国にして『身に覚えのない』土地。俺が言い表すとしたらそんなところだが、とにもかくにも人が多い。加えて自分で言うのもアレだが、顔の良い外国人二人組だ。特にバーサーカーに視線が集中し、かなり目立っている。バーサーカーには魅了スキルを抑え込むアクセサリーを渡したんだが、こういうのは専門外だし、焼け石に水程度にしかならないな。

 彼女、有翼かつ獣と蛇の下半身(アルダト・リリー)の状態だと流石に人外過ぎる。パーカーコートを着て(第一霊基まで)角をフードで隠して(外見を戻して)もらったんだが、それでも美少女であることは隠しようがない。

 外見に引っ張られたのか、口調もギャルっぽい。きょとんと小首を傾げた姿なんか、もう女子高生にしか見えん。これが、ギルガメッシュ叙事詩にも書かれた最古の反英雄の一つとは、世の中って奇妙というか、ホント恐ろしい……。

 

「確かにアダムとリリス……名前からして相性は悪いだろう。だが俺の魔術と相性が良く、尚且つ、目的が合致しているのはお前くらいなものだ。その一点において、頼りにしている」

「あれま。随分と信用されてる、それとも嫌われてる?」

 

 買った車を運転しながら、実体化してシートに座るバーサーカーに言葉を続ける。霊体化すれば魔力消費が抑えられるのは、俺も彼女も分かってはいる。だが、俺は別段気にすることではないし、バーサーカーも現代の世界を五感で触れておきたいのだろう。細かいことを言わないでおく。

 

「嫌ってはいないさ。寧ろそっちから見て俺の方に問題があるだろう。アダム・カドモン使いのカバリストなど、憎悪を向けられて当然じゃないか。醜き恋のように、さ」

「ふぅん……まぁバツイチ呼ばわりは不満も不満だけどさぁ。でもマスター、そんなアテシのこと、バーサーカーで制御できるとか思ってるんだー?」

「思ってない思ってない。不本意なのは分かるし、謝罪もする。本来は逸話からしてアサシンクラスが妥当だろ。お前」

「え、まぁそうだけど……あっさり認めるね?」

「たかが現代の魔術師が、神代に名高い魅惑の女性(にょしょう)を従わせる?恐れ多すぎるわ。だからお頼み申し上げるしか俺にはない、俺に協力してほしい」

「へー、ほぉん……んで、対価として何が貰えるわけ?」

「俺ができる範囲で、全力で叶えようとは思うが」

 

 これは本当だ。最悪、やることやったら聖杯戦争からトンズラして企画倒れにしても良い(ルーラーか何かが出てくるかもしれんが)。

 

「それじゃーねー、まずは……。あ、アテシあれ食べたい!」

「ん?……タピオカドリンクと、クレープ?」

 

 あー。そう言えば第二次タピオカブームが流行り出したの、こういう店からだったっけ。日本円に替えてあるし、この後の用事で買うものもあるっちゃあるが、少しの買い食いなら問題ないな。よし。二つください。

 

「むーん、うっまぁー!色、泥水みたいだけどあまーい!」

 

 クレープ片手に、ずこずこ音を立ててミルクティーのストローを吸う黒いフードのギャル。

 

「しかし……。古代バビロニアの女精霊が、女子高生ムーヴってなんかこう……」

「————何かな?ぶち殺すぞ?」

不思議(背徳的)なギャップが良いと思ったんですごめんなさいッ!」

 

 あっぶな⁉軽いノリでもサーヴァントのアイアンクローなんて食らったら流石に死ぬわ!ごめんて。

 

「……じゃあクレープおかわり買ってこいよー」

「……、まだ口付けてないから、これでどうか。オレンジとホイップクリームのチョコソースかけ」

「はーい、これでチャラねー。あむ」

 

 もっきゅもっきゅと豪快に口に押し込むバーサーカー。どこぞの記憶で見たがカツ丼作るし、彼女って結構健啖家なのでは?

 

「ふぅ。で、ここからどこ行くのさマスター?冬木ってとこで戦争するんでしょ。東京なんかに来て、どんな寄り道するワケさね」

「……。ある人に菓子折り持って詫び入れて来る……と●屋の羊羹買って来るから、車内で待っててくれ」

「え?何?ガチ謝罪?」

 

 そうだよ。超気が重いんだからな……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ピンポーン、と家屋に備え付けられた呼び鈴が鳴る。はぁい、と優し気な専業主婦の声がドアの向こうから聞こえてきたが、俺は気が気でない。とたとたとやって来る彼女の足音が、悪魔のカウントダウンにも思えてきた。

 がちゃり、と鍵が開けられる。

 

「はい、葛木でございます。どういった御用件でしょう……か?」

「この度は大変申し訳ございませんでしたっ!」

「……は?」

 

 ドアの隙間から覗いて来た菫色の髪の若奥様、否。アトラム・ガリアスタが召喚した元サーヴァント、現在は受肉した一個人の女性……()()()()が割烹着姿で困惑の声を上げていたが、俺は申し訳なさで一杯である。

 

「時計塔の魔術師アトラム・ガリアスタの不誠実な行いで気分を害されたキャスター様におかれましては、心身ともに苦痛を与えてしまい、私アダム・ルリア・アシュケナジーの不徳の致すところです。貴女という英霊の召喚に立ち会った者として、また時計塔の魔術師の末席を汚す者として、なにとぞ————」

「ちょ……待って待って待ちなさい。ご近所迷惑になるでしょう⁉」

 

 裏切りの魔女だなんだとアトラムは言ってたが、こういった気配りができる人なんだぞ。リリィの霊基は兎も角、こちらの王女メディアは普通に礼節を以て接しないと人として駄目だろうが。

 

「————一先ず上がってちょうだい。それに、そっちのサーヴァントも暴れないようにさせてもらっていいかしら?」

「はい。令呪は流石に切れない故、私に魔術をかけてもらってかまわない、です」

「はぁ、全く……どういうことよ、もう」

「アダム。あんたカバリストじゃなくてバカリストだよ。誠意は伝わるだろうけどさ……」

 

 三人が顔を突き合わせるリビングルームのテーブル。さっき買った羊羹がお茶請けとして差し出されたが、俺は喉を通らない。エルフ耳を気落ちしたように垂れさせながら、王女メディアが口を開いて来た。

 

「……それで?何しに来たのかしら?」

「————京都亜種聖杯戦争以前にした約束を、果たしに」

「本気?」

「ええ。本気です」

「待った。待ってマスター。アテシその約束知らんのだけども」

 

 栗羊羹をもっちゃもっちゃしてたバーサーカーが手を上げてきた。

 

「キャスターから見て、俺の肉体は礼装に変えて良いくらいの希少性があったらしくてな。もし彼女が亜種聖杯戦争に勝利した場合、望みとして片腕を提供する約束があったんだよ」

「————は?それ、アダムには利益が無くね!?」

「いや。そうでもないさ。礼装にしてもらうことで自分の魔術の解釈を広げられるし。義手は人形師の伝手があるし……」

 

 そもそも、第五次聖杯戦争に呼ばれるはずだったキャスターが、地方で行われる亜種聖杯戦争に呼び出される時点でチャート崩れてたんだよなぁ。良かったことと言えば、俺の体質と使う魔術系統が希少で、それこそ主人公(杖士郎)みたいなもんができるくらいの逸品だと知ることができた……ってところかね。

 

「というか、亜種聖杯戦争にキャスター陣営が勝利した場合、その時はアトラム・ガリアスタが引き続き冬木の聖杯戦争に行くことになっていた。アトラムを勝たせてもらえれば、奴が冬木で死のうが勝とうが俺は安全……だと思っていたんだ。腕一本を犠牲にするか、俺が死に直面するほどのトラブルに飛び込むことになるか、だったら答えは一択だろ」

「……」

 

 俺に詰め寄って来るバーサーカーをどうどうと言って落ち着かせる。それを見たからか、少しばかり居心地悪そうに視線を逸らすのは対面の紫髪奥様。

 

「ああ。キャスター……いや、葛木メディアさん、今の俺の状況はアトラムと自分が全部悪い。それに、神代の魔術師に加工してもらった方が使い勝手が良さそうだろ?」

「魔術師らしからぬけれど、根はどうしようもなく魔術師ね、あなた……。ええ、でも分かったわ。謝罪を受け入れましょう。————その上で言うのだけれど」

 

 緑茶を一口啜り、彼女はため息交じりに言葉を吐いた。

 

「私はもうサーヴァントの身じゃないの。亜種聖杯を魔術で操り、英霊四騎を自害させて勝者になった。その結果、私は受肉して……一つの命として此処にいる」

 

 薬指で光る指輪を愛おし気に、感慨深げに撫でるメディアを、裏切りの魔女などと誰が言えるのか。それは当たり前の日々を大切に生きる、当たり前の人間でしかなかった。その行為にどれほどの想いが込められているのか、俺などでは想像することもできない。

 

「貴方の腕を要求したのは、サーヴァントキャスターよ。葛木メディアは何も望まないわ。それに、真正面からの魔術戦をせず……あなたの言ったことを参考にしてマスター無しの状態で勝ち抜けたのは事実。元マスターには思うところはあるにしろ、あなたには恩があるのよ」

 

 ……驚いた。アトラムとキャスターの間を取り持っていただけなのだが、何時の間にか、彼女からの評価は上がっていたらしい。

 

「そうね……。あなたが私に引け目を感じているように、あなたに私は恩を感じている。一度なら等価の交換として、ヘカテーの魔術を行使しても良いかもしれないわね……」

「え。いや。それは、在り難いが……」

「やっぱり急に言われても思いつかないかしら」

 

 そりゃあ、なぁ……。受肉しているとはいえ、神代の大魔術師に頼むこととか。急に思いつくわけねーって。つーか懸念事項が色々あり過ぎて……。あ。

 

「いや。一つあるな。昔の知り合いだった魔術師が、蟲の体に置き換えて現代まで延命をしているんだが、魂が完全に腐ってしまっていてな。他者の肉体を乗っ取ったり、血肉を啜ったりとまぁ、今や立派な食人鬼だ。……ギリシャの主婦の知恵を借りたい。()()退()()()()()()とか作れたりしない?」

「ええ、良いわよ。宗一郎様にも高級羊羹を貰ったし、そのくらいなら問題無いわ」

 

 良し言ってみるもんだな!手札はあればあるほど良いからな!

 

 

 

 

「……ふーん。結婚は人を変えるのね。アテシはよくわかんないなー」

 




葛木メディア(元キャスター)
身長:163㎝
体重:51㎏
イメージカラー:紫
特技:模型作り
好きなもの:夫
嫌いなもの:顔が良いだけの男
魔術系統:ヘカテー直伝の神代魔術。竜牙兵を使った召喚も得意。
魔術回路・質:EX
魔術回路・量:A++(マント裏の外付け回路によりEX相応まで向上)
魔術回路・編成:異常(彼女の魔術回路は現代の人間にはありえない)
家族構成:夫の宗一郎

 第五次聖杯戦争前、予行演習としての亜種聖杯戦争に参加したアトラム・ガリアスタのサーヴァント。聖杯戦争開始前に仲違いを起こしてマスターは死亡したものの、アダムの言を思い出し、亜種聖杯のシステムをハッキングし勝者となった。なお、未来では娘が生まれ、花のみやこに登場の眼帯のあの子になる。


京都亜種聖杯戦争(誰だバサカで酒吞呼んだバカは)
キャスター:メディア
セイバー:渡辺綱
ランサー:哪吒
アーチャー:ロビンフッド
バーサーカー:酒吞童子
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。