リリス「マスターが前線に出てよ、原作のキャスター陣営枠なんだし」
アダム「ええ……?ギャラハッドの真似しろと?」
というわけで、神代殺虫魔法薬の効果対象になる害虫サンプルを渡さにゃならんわけだが。
「……何、この萎びたチ●コ……蟲?蟲かこれ?ねぇ新手のセクハラだよ。アテシでもドン引きだよ?」
揶揄い混じりの軽い声だけど、バーサーカーからの視線が冷たく痛い。第三次聖杯戦争を途中まで見学してた際、偶然手に入れた間桐の蟲をホルマリン漬けにしておいた……のだが、まぁ酷い造形をしているもんである。アレか、形が男性器なのはお前の趣味か間桐臓硯。マキリ・ゾォルケンの頃と結びつけたくねーんだが。
当時は、そっかーここRealta Nuaじゃなくて初版の18禁かーあはは、と思うだけだったが。こういう時困る。凄く、うん。
「……でもこれは仕方なくない?不可抗力だろ」
「それでも人妻のメディアさんに見せるもんじゃーないと思うよ?はー、魔術師はこれだから……」
「バーサーカーのお嬢さん、私も魔術師のサーヴァントだったのだけれど」
「ほらバーサーカー、こう言っていることだし……」
良かった。古代ギリシャに偏見があるわけではないけど、サテュロスがいたりデュオニュソス祭とかがある文化圏だし、多少は性的なもんに大らかで良かった……。人妻に見せるもんではないのは本当にそうだけど。
「じゃあもう
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メディアに頼み事をした際、彼女が言うには依頼のものの完成には数日かかるというので、本日は休むことにした。近場のホテルに泊まることになった。
……のではあるが、俺は兎も角、問題はバーサーカーである。使い魔とは言え、未だ敵地ではなく、しかも異性同士。それぞれ個室に泊まろうと提案したのだが————。
「うわぉおッと!?何してんのバーサーカー⁉」
「はーい、お邪魔しマース。……へー、スリーサイズ中々じゃん」
「見て面白いもんじゃないだろ俺の裸なんぞ……」
「いやいやー。ベースケで全っ然いいよ、アテシ好みー。————ホント、でけーし」
「凝視すんのやめろ猫みたいな目しやがって。しょうがねーだろ、祖先にサテュロスの血が混ざってんだから」
「何?コンプレックスなの?女に置き換えたらとんでもないデカパイって扱いだよ?セックスシンボルが大きーのは長所じゃん」
……こうなってしまった。俺が着替え中の三点ユニットバスルームに堂々と入って来たバーサーカーは歯磨きしつつ、にゃーんとした猫目な表情を向けて来る。とっとと出てけ。
「やっぱ、性に奔放なところは伝承通りなのか……」
「そりゃね。
今はベッドの上でゴロゴロしながら買ってやった携帯電話を弄ってるリリス。片っ端から
「……まぁ、二人きりで邪魔が入らないのは丁度いい」
「ん?何、
「違うわバ(ーサー)カー!いやこれ言い方悪い俺がダメだったのか?……じゃなくて。これからの方針について決める前に、互いの認識の摺合せをしておかないか?」
「?」
バーサーカーはパタパタさせてた足を止め、きょとんとした顔で振り返ってきた。
「あー、ほら。ともかく、俺のことを言っておこうと思って。ほら、お互い腹割って話しておいた方がいいことだってあるだろう?」
「……そーね。取り敢えず聞きたいことは幾つかあるけど、まずはマスターからの魔力供給量かな。アテシにばんばか魔力流れて来てるけど、ナニコレ?かなりの量だよ?」
ああ、それか。確かにバーサーカーって燃費が悪いから、普通は魔力切れで敗北するのが常だもんな。だが、俺がまともな魔術師なら忌避する狂戦士のクラスを選んだのも、自分の特性あってのことだ。
「それは俺の魔術特性もあるだろうが、ただ単純に自分自身の魔力生成量が人と違うからだよ。大魔術を行使しながらサーヴァント三体と同時契約できるくらいには余裕があるしな」
ついでに言えば、俺は植物を模したカバラを使えるが、植物は魔術的な豊穣や繁殖に紐付けられる。禁断の果実、黄金の林檎、智慧の実……世界各国の神話にあるように、果実や花木は財とはまた別の富、大地からの恵みそのものとも言えるだろう。
この辺りはロード・エルメロイⅡ世が詳しく説明するんだろうが、それは余談。通常時の魔術の質としては時計塔ロード未満の突出型って言ったところかね。
「どうしてこうなったかと言えば、そうだな……。幾人もの魔術師の先祖たちが、己が持ちうる限りの魔術的要素を最大限に掛け合わせた結果、できたのが俺だ。わかりやすく言えば、人種のブリーディングだよ。魔術師の家系じゃ珍しくもない。————ただ、俺の家系は少し度が過ぎていた」
神代から遠くなる程に根源への道は狭まるが、ウチの家系は無理矢理にでも道の広がりを維持したいがために、神秘のキメラみたいなことしやがった。
「ある先祖にはサテュロスの血が混じる者がいた。またある先祖には悪魔憑きがいた。またある先祖には子を産める死徒に近い存在が……って具合に、まともな社会では特に生きていけない異常性を持つ魔術師の寄せ集めでな。そんな色んなもんが混ざって、全部が相互的に作用し、表出することになったのが俺ってわけさ」
口に出すと、ほんとに落ち物パズルだな。偶然が絡み合いすぎだろ、この身体。
「へー……。じゃあマスターは聖杯に体質の改善でも願うワケ?」
「いいや?聖杯に望むものなんて、何も無い。これが異常と言われても、俺が生きる毎日の、日常の一つに過ぎないからな」
魔術が無い時と、魔術を得た時。両方の視点を経験して、感じたことは一つだけ。手元にハサミが渡り、カミを斬れるようになった。だけど、別に無いなら無いで、別のものを使って同じことをすれば良いだけ。魔術とはこんな当たり前のこと。
「でも普通じゃないわけじゃん、不便とかないの?それとも、やっぱり便利な力だから無くすのは勿体無いとかー?そうだよねぇ、特別なモノは捨てたくないってのが魔術師みたいだし?」
「便利、ね……まぁそうかもしれないが。魔術というのは特別のものというよりも、偶然のものだろう。周りは知らないが、俺は使える道具の一つ程度にしか思えないし。魔術師だからこれが普通、とかじゃないよ。少ないが確かにある選択肢の中で、俺が選んだ普通がこれなだけだ」
そう。俺は魔術の有無を、肌の色、目の色、髪の色……その程度の差異にしか認識できない。個性の一つで、道具の一つ。これが崇高なモノなんて、とてもとても。ありがたがるなんて、ねぇ?
「あー……そう、そっか。成る程ね」
「?どうしたバーサーカー」
今まで見たこと無い真面目な顔で、バーサーカーは俺を見る。
「マスターってさ、諦観っていうの?魔術とか人間……いや運命とかだけじゃない、良い意味で世界に諦めと区切りを付けているんだね。なんてゆーか、植物みたい」
「……さすがは神代において人を知る夜風の精霊。一目で見抜かれるとは。————そ。光の方向を向いて明日へと進むことが人間の是とする事柄ならば、俺は後ろ向きに過ぎるのかも、な」
諦める。これはマイナスな方面の言葉として扱われるけど、本来は『明らかにして改める』って意味があるらしいし。原因を知って、それをどうすれば受け入れられるか、そのプロセスの最適化こそ、自分を救う第一歩ということなのだろう。
ああ。どうにも緩い独自の宗教観だが、要は俺ってガトーやキアラに似て非なる……。
「でも、人間が嫌いなわけでもない。魔術師らしいクセに、そういう所は俗人だね」
「それは……うーん、どーだろう?脳味噌持ってるくせに莫迦なことしでかすヤツは嫌いだし、言葉喋るのに話通じないヤツも嫌いだけど。そのせいで大概厭世的な自覚はあるし」
「でもそれは、あくまで個人に向けられる感情でしょ?人間、人類の総体に向かうことは無いんじゃない?」
……まぁ、それは。うん。
「そりゃ……人類全てに只の一個人が感情向けるのは愚昧の極みだろ。その程度で世界が変わるわけないし、世界を変える必要もないし。世界の基準ってヤツは世界そのもの。人間であろうけど、人じゃない。全は一、一は全。あー、だから……何と言うか。この世には遍く人や多様性、そう言ったものがある。それだけ覚えておけば俺が魔術師や凡人を問わず、普通に生きていける」
バーサーカーと対面していると、するり、するりと簡単に胸中の言葉が言語化されていく。久しぶりに、本心と向き合えている気がしてならない。
「戦争もなんでもやってろって感じ。俺が全力を出すのは、自分の手の届く範囲で十分だ」
「————確かにマスターって、御高尚なことを宣う聖人君子や、率先して正義を貫く主人公ってタイプじゃないよねー。でも、うんうん。まぁー良いんじゃない?アテシ好み!」
「……何がお前の琴線に触れたか分からんが、少しでも俺のことを知ってもらえたなら幸いだな」
にぱー、と花咲くような笑みを浮かべてる彼女に向き直る。
「で?今度はそっちだバーサーカー。リリートゥ、神代の夜風の精霊キスキル=リラ。お前は、『聖杯を求める理由は無い』と言っていたが……」
「んー。そだよー。だってアテシ、メソポタミアに存在していた頃の記憶なんてほっとんど風化してっからね。まぁ現代じゃ神秘もだーいぶ濃いし?サーヴァントに落とし込むのにそれだと不都合だったからなのか……あ、マスターの召喚に不手際があったとか?」
「イスラエルの大地の知名度補正バフかけてるし、通常のサーヴァントとして召喚した場合よりもスペックを神代のソレに近しくしているし、ベストは尽くしたんだがな……すまん」
「へー、アテシにそこまでしたんだ……まぁ感謝しとくー。だったら、お互い聖杯要らないもの同士だけどさ、やるべきことがあるなら……そーだなー、気が済むまではサーヴァントとして戦うよ?」
……。俺も俺だが、こいつも大概だな。
「ああ。辛うじてだがお前の性格も大体分かったぞ」
「ほほー?やっと?そんなの見て分かるでしょ?男と子どもを惑わす悪霊だよ、アテシ♡」
あー……、うん。よぅく分かったよ。
「超が付くほど
「————っ⁉は、はぁっ⁉」
生まれる前から多少は知り得ていたが、こうも目の前で振舞われると成る程と思わざるを得ない。
「避ければ楽なもんを、役目だからと真正面から受け止めるタイプと見た。些細なことでも気になったら自分の眼で見て調べまわる
いや、本当に。良い子ではないかもしれないが、ちゃんと周りを見てから、自分の芯をブレさせず判断するなんて、紛れもなく真摯なヤツだよ。
根底にあるのが邪であっても、悪であっても、何時か愛が憎悪に変わるのだとしても、俺はそういうヤツは好きだ。
「……っ、~~~……、っっっ!」
薄っすらと桜色になった頬をフードで隠して……あ、霊体化した。どこ行くねん。渡したいものがあったんだがな……。
「……ま、
俺は、体内に展開した結界内から五つの金色の杯……
「この聖杯戦争、勝ちも栄光も誰かにくれてやる。ただ、俺は手の届く範囲で全力を振り絞るだけさ————なんてな」
この数十年で頻発して起きることになった亜種聖杯戦争。巻き込まれたり、衛宮切嗣のように対魔術師戦用のマスターとして雇われたりと、
今使わずして何時使うと言うのか。Fate/EXTRAみたく、サーヴァントの『魂の改竄』と似たようなこと、できるかな。できるよな……?
「ま、続きは明日バーサーカーと会った時に考えるか。お休み……」
ちなみに、五つの聖杯(願望機に非ず)を手に入れた際のサーヴァントたち。英霊の方が触媒や縁を持っているので、偶然巻き込まれた場合は必ず知り合いが来る。
ニューヨーク亜種聖杯戦争(巻き込まれた)
キャスター:エレナ・ブラヴァツキー
トライアルシステム・グレイルウォー
アーチャー:ピタゴラス
プラハ亜種二連聖杯戦争(巻き込まれた)
アーチャー:ニコラ・テスラ&バーサーカー:フランケンシュタイン
エジプト亜種聖杯戦争(ロード・エルメロイⅡ世やグレイの魔術事件解決の付き添いの際、巻き込まれた。ファラオ・ハトシェプストは土地を縁にしているが、生前のフーディーニは知り合い。何故コイツ自前で二騎に魔力供給できてなお余裕あるんだ……とエルメロイⅡ世の胃は死にかけた。マスターやれと言われたら王への忠義があるので断るだろうが)
ライダー:ハトシェプスト&フォーリナー:ハリー・フーディーニ
立川特異聖杯問答(聖人のみが呼び出される聖杯論争。あくまで討論会で仲良く終わった。でも立川ってそんな場所だったっけ?パンチとロン毛?ああ……来てたのシロメ)
ルーラー:アショカ王&ルーラー:玄奘三蔵&ルーラー:マルタ&ルーラー:モーセ
バベッジ、エジソン、ナイチンゲール、ホームズ他の生前知り合いの英霊ズ
「「「「惜しい、今回は縁が無かった」」」」
リリス
「何だよ!縁的にアテシしか呼べないとか言っといて滅茶苦茶縁あるじゃん!」ポコポコ
アダム
「正確には、『冬木の聖杯戦争で確実に目標達成するにはお前しか呼べない』って意味合いで言ったんだが」
リリス
「クソボケェ!」