「おっはよーマっスターっ!ごはんできたよー!」
「!?」
うわぁびっくりして目が覚めた。えぇ、何ぃ……?
昨日とは打って変わって元気だなバーサーカー。それに、いい匂いがするお盆を抱えてベッドサイドに腰掛けてきた。ふぁーあ……何、持ってきたんだ?
バーサーカーが丼の蓋を取り去った。そこに鎮座していたのは、ふっくらホカホカの卵に閉じられた、香ばしい衣に包まれた肉。そう、紛れもなく油で揚げられた肉の塊だった。
「……カツ丼?朝から?」
「お?何?アテシが丹精込めて作った料理が食えないって言うのかー?んー?でも仕方がない、イヤなら食わんでいいよー」
「……んにゃ、そーじゃなくて。わざわざ作ってくれたんだ……出来合いのモンじゃないし。手間かかっただろ?さんきゅー……ふぁ」
美味しそうな匂いに包まれているというのに、まだ眠い。疲れているのか?バーサーカーを現界させる分の魔力は問題ないはずなんだが、まぁ……いいか。
「いただきます」
(あー……はぁー……。
「?」
なんか言ったかバーサーカー?それは兎も角、俺の魔術回路の調整もしておかないとなぁ……。
————あ、おいし。え、本当に美味いな?
「っ、(あぐっ)……ふ、んむっ!」
付け合わせの大根サラダは和風ソースが上品に調和しているし、味噌汁の具はアサリでしっかりした旨味が胃に優しい。揚げたてのカツのキレの良い油分がさーっと溶けていくみたいで、幾らでも食べられそうだ。
……、あっという間に食べてしまったぞ。
「ご馳走様。美味しかったぁ……料理上手なんだな。ゲン担ぎには丁度いいし」
「……。はぁい、お粗末でしたー」
ただ、疑問なのはバーサーカーがビジネスホテルでどうやって
「それで、だなバーサーカー。お前のステータスや保有スキルを見させてもらったんだが」
「いやーん。オトメの秘密を覗くだなんて。で、どうだった?」
「予想していたよりも高くて驚いた。流石は俺が求めたサーヴァントだ」
別の世界……星見の方式で呼ばれたリリスより高スペックだったな。幸運値は下がってたけれども。バーサーカーの姿を見て、改めてステータスを確認してみることにする。
バーサーカー
真名:リリス
性別:女性
身長:159㎝
体重:45㎏
出典:古代メソポタミア神話、ユダヤ伝承、旧約聖書『イザヤ書』など
地域:中東及びヨーロッパ全域
属性:混沌・悪・地
ステータス
マスター:アダム・ルリア・アシュケナジー
筋力:C++
耐久:A+
敏捷:A
魔力:A++
幸運:D
宝具:EX
クラススキル
狂化EX
保有スキル
神性B(A+)
憎悪C
輝く夜のようにEX
踊る翼のようにA
醜い恋のようにC+
宝具
虚妄は闇の娘(イシャー・ラーアー)
ランク:B++(条件付きでEX)
種別:対人宝具
レンジ:1~10
最大捕捉:1人
悍ましきは愛し子たちよ(フォア・リリン)
ランク:EX
種別:対軍宝具
レンジ:50
最大捕捉:99人
神性スキルのカッコ内の記述が気になるが……。いや、これは進んで尋ねることでもないか。言いたい時のバーサーカーに任せよう。
「バーサーカー。この第二宝具について聞きたい。というか、リリンについてだな」
「何々?……あーいや、見た方が早くない?こんな感じだけど」
彼女が虚空に向かって手を伸ばすと、空間に魔力が収束していく。すると、ぽんっ、と発泡飲料の栓が抜けるような音がして、三匹の人型の小動物が現れた。
「これが……」
「そ、マスターの魔力を使って創られるアテシそっくりな
「ぱぱなの~?」
「ぱぱー」
「わーい」
フワフワ宙を飛ぶ、リリスを小さくしたような子どもたち。成る程、眷属というか、
……余計な事吹き込んだバーサーカーは兎も角、子どもに罪は無い、よしよし。
「……で、宝具『
「お、おう……悪魔的発想するのね、マスター」
いやぁ、そんなこと無いだろ。……無いよね?ほら、陳宮とかに比べればさ。
「でも、自衛の手段は用意しておかなきゃいかんだろ。伊達に第一次、第二次世界大戦に巻き込まれてないさ」
「うーん————まぁ、多分できるんじゃない?リリンの弾丸を撃ち出す為の、そういう魔術礼装でもあれば試せるんだけど……」
「それなら問題ない。とあるガンスミスと知り合いで、銃身を魔術礼装化したトンプソン・コンテンダーがある」
トランクケース中部の虚数空間領域にしまっておいた銃を見せてやる。あの魔術師殺し、衛宮切嗣と同モデルなのがちょっと嬉しい。
バーサーカーは確かめる為にか、コンテンダーを手に取ってくるくる指先で回したり、西部劇みたいに構えると、ゆっくりと口を開いた。
「つってもねー。現実的じゃないよ?リリンは24時間で消える制約あるし。持ち運びしてたら無くなってました、じゃダメでしょ」
「その点は俺の魔術で何とかなるかもしれん。まぁ、やってみないと分からないけどな」
あの神代の魔術師メディアが『貴重、礼装にできるなら便利極まる』『ただ、セーフティにコツがいる』『ある方面で特化型の英霊ならジョーカーになる』と言った俺の肉体と魔術特性。自分自身も知らないブラックボックス部分は未だある、それを上手く使えれば良いんだが。
「————。よし、先にできることをやっておこう。バーサーカー。お前にやるものがある」
「お、プレゼント?……って手放しで喜べるものじゃなさそうかー」
俺の口調が固くなったからか、バーサーカーも真面目な雰囲気を醸し出した。
「ああ。お前が危惧するのは分かる。これで引き起こされるのは、魂……いや霊基の改竄だからな」
アメニティとして備え付けられたティーバッグを二つの湯呑に入れて、お湯を注ぐ。一つをバーサーカーの前に置いてやると、彼女は熱い湯を冷ますために息を吹きかけ始めた。……猫みたい。
「ふーふー……それって身体、弄るわけ?いやん、すけべ」
「ま、お前がイヤなら別の手段を考えるが。ただ、
まぁ、これは冬木産の聖杯戦争じゃなくて、ムーンセルの方の聖杯戦争だけども。でも、取っ掛かりとしては似たようなもんだ。御三家程の知識は無いが、出来る限り足掻いて技術を磨いた自負はある。
「……、どうするつもり?」
「ここに、
————バーサーカーは猫目になって、飲んでた煎茶を噴き出した。
「……ッあっっっつァ!」
美少女とは言え、唾液入りの液体ひっかけられる高度な趣味は無いんだが!
「ごめんね!?でも、ちょ……!急に凄いもの出すじゃん!どう考えても貴重品でしょーが⁉」
「あちち……そうだが。でもな」
俺に使おうにも魔術の質が少し上がるだけ。掛け算しようが、現代の魔術師である人間に高級素材を加えても微々たるもの。だったらゴーストライナー、極上の神秘の集積体のサーヴァントに更なる力を与えるべきだ。
「お前にはその貴重品を捧げる価値がある。だから、こうして提案してるわけなんだが」
バーサーカーは、ぽかんとしていた。何か変なこと言ったか?聖杯とは言え、道具は道具。使える時に使っておかねば無駄に過ぎるだろ。
「あの……マジで言ってる?」
「そうだな————。できれば
普通グランドのサーヴァントなんて抑止案件だから無理みだけど。————一個、亜種聖杯としては怪しいのあるけども。亜種聖杯ならぬマジ聖杯な疑惑の『これ』がなぁ……。一応、悪魔憑きの人間に近づけて確認して、浄化みたいな反応をしなかったところを見ると、聖遺物としてはホント欠陥品なのは分かっちゃいるんだが。
「……。……~~~っ。ッッッ、わぁかったよ!やる、やるよアテシ!でもここまでクソみたいなチート使っておいて負けました、とかナシだかんね!」
あ、そう?良かった、了承してもらえて。
「では、早速。お前に聖杯を捧げよう」
「お、おぉう……よろしく、お願いします?」
んで。その結果はどうなるか……。
バーサーカー
ステータス(聖杯転臨による霊基の改竄後)
筋力:B++
耐久:A++
敏捷:A+
魔力:EX
幸運:C+
宝具:EX
クラススキル
狂化EX
保有スキル
神性B(A+)
憎悪C
輝く夜のようにEX
踊る翼のようにA
醜い恋のようにC+
化身増殖?
霊基変速・闘争純化?
確認してみれば、よし。霊基スケールの補強は出来たみたいだ。
「んっ————、くっ……はぁ、はぁー……、はぁ。アテシぃ、凄く、良かったぁ……」
「事後みたいな声を上げるなよ……、困るんだけど」
「だって、しょうがないじゃん。魔力供給ってそういうトコロあるし。あんっ……」
バーサーカーはベッドに寝転がりこんな風に喘いでいるが、断じて、決して性的な行為は行っていません。……誰に向かって言い訳してんだ俺は。確かに
ええい頬を染めるなバーサーカー。これ見よがしにイチジクの葉型のニプレスを見せるな。顔良い分ほんと後ろめたくなる。
「あー疲れたー、糖分ほしーい。飴ちゃんちょーだい。今疲れて手が上げられないの、梱包紙剥き剥きしてー」
「我儘放題のクソお姫様か、お前……?」
「お、いーね。お姫様扱い。女の子なら誰だってされたいしー」
……まぁ、そのくらいなら良いか。コンビニで買ってあった棒付きキャンディーを口に捩じ込んで黙らせてやる。葡萄味で良いか。
「はーい。頑張りましたねお姫様。ほら口開けろ」
「あー……んっ」
「よし。じゃあ————、おい。俺の手を放せ」
「んっ……ちゅ、ぷ。れろ……」
……手ぇがっちりホールドしやがったコイツ。それにすげーヤらしい音を立ててしゃぶるな。
「おーい、聞いてるか。……おいこら」
「————(にひっ)」
「……」
キャンディーを、えいっ。喉の奥にぐりっとな。
「おぐぇっ⁉んンっふ……ごほごほっ!え、えずきそうになったんだけど……!」
「お前が原因。自業自得だ」
バーサーカー、涙目。エロネタ絡めないとコミュニケーションとれんのか。……いや違うな、真面目にしてるのを誤魔化してるつもりか。まぁ、良いか。何も言うまい、うん。見て見ぬふりするのもマスターの仕事だ。
「じゃ、俺はメディアさんの所に行ってくる」
「ごっほごほ、うぇ……。あーい、いってらぁ」
■
「依頼のものはできたわよ。額を出して、使い方を魔術で伝えるわ。……はい、これで良し」
「————在り難い。お手数をおかけした、何と言えばいいか……」
彼……アダムはメディアから刻印虫である淫虫のホルマリン漬けと、掌に収まる程の小さな魔術礼装を受け取った。
「ところで、あなたの魔術系統のことだけれど」
「?」
「……あのバーサーカーが来てから、変化したところは無いかしら?」
メディアの瞳がすっと細まった。受肉した神代の魔術師の言葉である、アダムが無視する理由などあるわけがない。
「……そうだな。パスが繋がってから、妙に魔力の巡りが良いと言うか、暴走しかかっていると言うか————」
「見たところ、安定して使えるのは昇華魔術よね。それと、増幅や増殖と言ったところかしら」
一目見ただけで彼の魔術の系統を見抜いたメディアは、冷蔵庫の野菜室から一つの林檎を取り出して年若い外見の男に投げ渡した。
「その林檎、昇華させてみてくれないかしら?」
「……簡単なもので良いのなら」
アダムが、言葉を紡ぎ出す。
「『ויתפרו עלה תאנה』」
理念発芽————その種は何故創られたのか
骨子分裂————その根は何を支えんとするか
構成伸長————その茎は何の為に伸びるのか
技術開花————その花葉は何故繁るのか
成長結実————その実は何者に恵むのか
年月円環————その種は何を蓄え託すのか
「『אזוב』」
すると、アダムの手に収まっていた赤い林檎が黄金の光を纏い、輝きだした。
「!」
「お、これは、いつもよりも魔術の行使に負担が無いような……」
一瞬、紛れもなく濃い神秘を宿していた林檎に、メディアは懐かしいものを感じた。完全に同じものではないが、それでもギリシャにも……
「貸してごらんなさい。————成る程、残滓とは言え、確かにこれは……。やはりラードーンの林檎のような。それとも、これはどちらかと言うとネクタルに近しいのかしらね……」
ちらり、と目の前の青年を見る。間違いない、と確信した。
「……」
「貴方も何処かで分かっていたのでしょう。けれどはっきり言うわ。体中にある心象風景……いえ、
一応、グランドバーサーカー一歩手前。多分立川の亜種聖杯が効いたね。
立川のヤツ
亜種聖杯(聖杯戦争の聖杯としてはイリーガル)
↓
ほぼ聖杯(聖遺物としてはイリーガル。悪魔特性のリリスにも強化入るのでマジの聖杯じゃない)