僕が選定の剣に選ばれるのは間違っていない 作:バンバドロ愛好家
インドラ神ありがとう!素材が旨い
「キャーー!!」
その声が聞こえたとき、その英雄志望は走っていた。
「逃げて!僕から離れて!」
一撃だけ入れ、すぐさま離脱。うまい具合に釣れて、ミノタウロスは白い影を追いかけていた。
へなりこむ影は足を動かせず、その背を見つめるのみ。
『ゴムゥ!!』
熱い鼻息を体で受けながら、怪物の武器を幅広の剣で受け流す。無理な体勢だったからバランスを崩して転ぶが、そのまま前転。スピードを落とさずに走る。
角のインコースを攻め、滑りながら曲がる。
だが、
「行き止まり!?」
新米冒険者であるベルは完璧にダンジョンの構造を覚えていない。人がいない方を選び続けていたのが完全に裏目に出てしまった。
「エイナさんごめんなさい!もっと真面目に聞いておけばよかったです!」
『ブルムゥ…!!』
臨戦態勢になる二人。だが、いくら修練を積んだとはいえ格上との殺し合い経験のないベル。腰が少し引けている。
一歩前に進むと、一歩足を下げ、繰り返す。
いつの間にか壁に押し込まれていた。
『グルモゥ!!』
「ええ!?」
壁に石の斧剣が突き刺さりながらもそのまま力任せに振り抜かれる。
破壊された壁は散弾のようにベルとミノタウロスを打ち付ける。
それでダメージがあるのはベルだけだった。
「め、めちゃくちゃな…」
殺意の塊をしゃがんで避けるとバネのように飛び、剣で敵対者の腰を切り抜ける。
肉は切った。
だが、それだけだった。
「くっ…そぉおおおお!!!」
渾身の力で斧剣をはじき返す。二撃目は…受けられない。
「あ」
絶体絶命。いや、そんな逡巡すら与えられなかった。
振り下ろされる。
その時。
怪物の体を無数の剣閃が瞬いた。
『ゴ…』
断末魔すらも喉をつぶされ満足に出せず、崩れ落ちていく。
その血しぶきを浴びながらその奥の少女にベルは目を取られていた。
「見つけた」
金色の少女は血の海を歩き、一滴すら濡れていなかったその体を汚してベルに歩み寄る。
「私のえいゆ…」
「ごめんなさぁああああい!!」
残されたのは呆気にとられ、そしてふてくされたアイズと、軽く脳破壊され白目をむいたベートの姿だった。
………………
「エイナさぁぁん!」
血まみれになっていながらも元気に飛び込んでくるベルは、
「アイズヴァレンシュタインさんについて教えてくださぁい!!」
「その前にシャワー浴びてきなさい!!」
怒られた。
そして
「ベールーくーん?冒険はしないようにって言ったよね~?」
「は、はい…。で、でも!」
「でも?」
「なんでも…ないです!」
「よろしい」
歯を噛みしめ、ミノタウロス以上の威圧感に堪える。
するとふっと威圧感が抜け落ちた。
ベルは恐る恐る顔を上げると、エイナが心配げに自分を見つめていたことに気付いた。
「他人を助けるのは良いけどね…キミ自身の命を優先してね?」
「…ごめんなさい」
「うん。でも君のおかげで助かったって言ってた人もいたしお手柄だよ!ベル君!」
「そっか…よかったです…」
はふう…とため息をこぼし、椅子にズルズルともたれかかる。
「だらしないよ」
軽くとがめながらもあまり怒っている風ではない。むしろしょうがないなぁとばかりに笑っていた。
「それで…ヴァレンシュタイン氏についてだっけ?」
「はい!」
「あんまり言うとギルドの信頼に関わるからみんなが知ってることだけだよ?ヴァレンシュタイン氏はロキファミリアのレベル5。二つ名は剣姫。あとはね~六年前からだけど、ずっと自分の英雄を探しているって言ってるね」
「え!?」
驚いて目を瞬かせる。頭の中に少女が映るがそんなうまい話があるはずないと頭から振り落とす。
その様子をエイナは少し意地悪な顔をして見ていた。
「ふぅ~ん。ベル君そういう子が好きなんだ~」
「うぅ…」
「あはは。ごめんね。意地悪しちゃった。まぁ、怪我がないならよかったよ。頑張ってね」
「エイナさんありがとう!大好き!」
「な!?」
ベルは爆弾を落とすと走り去っていった。
ちなみに残されたハーフエルフは顔が真っ赤になって同僚にいじられていたそうな。
アイズ「剣抜いたな?おまんが英雄!」