共依存ズブズブダブルTS娘が破滅していくまで   作:布団から出られない

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2勇者なんて大嫌い

知っていた。ライラが、本当は“ボク”と一緒にいるような、そんなちっぽけな存在なんかじゃないってこと。

知ってた。

 

わかっていたんだ。

最強の冒険者なんて息巻いていたのに、今は諦めているのも、ボクが弱いからだって。

 

ライラは、自分は剣の腕はあるけど、魔法はてんでダメだ。だから、ミリアがいてくれてよかった。なんて、そんな風に言ってくれているけど、実際、ボクより実力のある魔法使いなんて、この街だけでも両手じゃ数えきれないほどに存在する。

 

ライラの隣は、楽しい。唯一、ボクの全てを曝け出せる存在で、気のおけない、大切な友人だ。

 

でも、ボクは不安だった。実力の足りないボクを、ライラはいつか見限るんじゃないか。本当は実力があるのに、その実力を出しきれないなんて、ライラにとって負担になる。だから、ボクは捨てられるんじゃないかって。

 

そんなことを考え出したら、もう止まらなくて。

 

ボクは、ボクらしさを、少し捨てることにした。

 

口調は私にして、女の子らしく振る舞った。ライラにとって可愛い子でいたら、そばに……隣に置いていてくれるんじゃないかって、そう思ったから。

 

本当はわかってた。ライラは、別にそんなこと気にしてないって。ボクのこと、本当に大事に思ってるし、可愛いとか可愛くないとか、そんなことどうでもいいんだって。

 

でも、ボクはボクの中の不安を拭いきれなかった。

 

ボクは、最強の冒険者を目指すフリをし続けた。だってライラは、それを目指していたから。

 

ボクも目指さないと。

そんな風に思って、それっぽく振る舞ってきた。

 

でも、ボクが魔物狩りでしくじって、大怪我をしてしまった後、それ以降ライラは、最強の冒険者を目指す、なんて言わなくなっていった。

 

ボクはそれが悲しくて、申し訳なくて………でも同時に、嬉しくもあった。

 

ライラは、ボクのために夢を諦めてくれるんだって。

ちゃんと、ボクのことを必要としてくれているんだって、そう感じる事ができたから。

 

 

それ以降も、ボクは最強を目指すフリを続けた。

ボクが最強の冒険者の話を持ち出すたび、そんなものになんてならなくていいって、ライラは言う。それは、ボクに対する愛情の裏返しなんだって、気づいて。だからボクは、最強の冒険者を目指すフリを続けた。

 

でも、ライラだって本当は目指したかったはずなんだ。

異世界転生して、剣聖なんて立場を、本人は自覚していないとはいえ、それだけの実力を授かっていて、高みを目指そうと思わないはずがない。

 

ボクはある日、知ってしまったんだ。

勇者パーティ一行、その存在と……。

予言にある英雄のうちの1人、剣聖が、ライラであるってことに。

 

知りたくなかった。そんなこと。せっかく、ライラの隣にいられると思ったのに。

世界は、ボクとライラの仲を引き裂こうとしてきた。

 

ある日、預言者の女が、ボクだけを呼びつけて、一方的に告げてきた。

 

『ここ数日、勇者パーティを一時離脱し、貴女と剣聖ライラ様の様子を伺っていました。もし、貴女の実力が、ライラ様に見合っているものならば、貴女も勇者パーティの一員として迎えようと思っていましたが……。残念ですが、はっきり言って、実力不足でした。訓練してなんとかなるような実力なら良かったのですが……そうでもなさそうなので。ですので、申し訳ないですが、ライラ様は私達勇者パーティが借りることになります。勿論、ライラ様をお借りする以上それ相応の対価はお渡しするつもりですが……』

 

ボクはいらないって、はっきりそう言われた。

彼女が言うには、予言にある英雄が揃わないと、魔王討伐はできないんだとか。

 

だから、嫌でもライラは勇者パーティについて行かなくちゃならない。

ボクは、ずっとこの街で、ライラの帰りを待ち続けなきゃいけない。

 

ボクはただ、ライラの帰りを待つ、健気なヒロインとして振る舞うことしかできない。

 

そんなの、あんまりだ。

 

ボクはライラ無しじゃ生きられないけど、ライラは勇者パーティで過ごしていくうちに、そっちに馴染んで、ボクのことを必要としなくなるかもしれない。

 

嫌だ、嫌だ、嫌だ、いやだ。

 

行かないでほしい。

ずっとボクのそばにいてほしい。

 

どうかボクを、置いていかないでほしい……。

 

ああ、でも。

ライラは優しいから、きっと行くんだろう。

 

だって、ライラはボクと違って、全然捻くれてなんかいないから。

人が好きなものを否定しないし、他人が苦しんでいたら、一緒に苦しんであげることのできる人間だ。

 

英雄に相応しい。

ボクが隣にいるなんて、到底許されそうもない。

 

『なあ、その冒険って、ミリアも連れていったらダメなのか?』

 

ほら、どこまでいっても、優しい。

ボクなんて見捨てていっちゃえばいいのに、ライラは、ボクのことを常に気にしてくれている。

 

『ミリアはこう見えて凄いんだ。絶対に役に立つし、オレ……私が保証する』

 

ライラはボクのPRを必死で続けた。

けど、勇者パーティの面々は、ボクの加入を一向に認めない。

 

ボクはだんだん惨めになってくる。

ライラは気にするな、あいつらが肩書きしか気にしてないだけだ。本当はお前もオレと同じぐらい凄いのにって、そう言い続けてくれているけど、本当は分かってる。

 

ボクなんか、大した人間でもなんでもないんだ。

 

最終的に、説得中にボクが惨めな気持ちになってしまうのを察してか、ライラは折れた。

 

『こんなのすぐ終わらせてくる。ミリアが隣にいないと、寂しくて死んじまうからな』

 

ライラは最後まで、ボクに笑顔しか見せなかった。

 

 

 

ああ、やっぱりボクは。

勇者なんて、大嫌いだ。

 

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