共依存ズブズブダブルTS娘が破滅していくまで   作:布団から出られない

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3堕ちてゆく

勇者パーティに加入してから、数日が経過した。

ミリアが隣にいないっていうのは、正直精神的にかなりきた。けど、勇者パーティの奴らも悪い奴らではないみたいだし、最後に加入したオレのことを除け者にしたりなんかもしないし、まあ、悪くはない冒険ができているかなと思っている。

 

正直、1人で置いてきてしまったミリアのことが心配で仕方ないが、それもできるだけはやく、魔王討伐を果たせばいい話だ。

 

「ライラさんが入ってから、前衛が楽になってありがたいですよー。本当、剣聖様様です」

 

こいつは王国騎士団のうちの1人で、勇者ユーリの友人、モリアだ。予言にある英雄ではないが、ユーリの友人ということから、王直々に勇者パーティ入りを命じられたらしい。

まあ、王国としても、勇者パーティに自国の騎士団員が加入しているという事実を作りたかったという面もあるんだろう。

 

「むしろ悪かったな今まで。剣聖の役目なんて放っといて、好きに冒険者なんてやってたからな……」

 

「いやー。むしろ後衛のあたしらの立ち回りが磨かれたし、ライラが最後に加入って結構良かったんじゃないかなー。多分ライラが最初からいたら、あたし絶対サボってるし」

 

この子は魔法使いのマホ。予言にある英雄のうちの1人、大魔導師で、後衛から魔物に対して魔法を叩き込む役目を担っている。身長は小さいし、かぶってる帽子はデカすぎてむしろかぶられてるレベルだが、これでも成人しているらしい。

 

「でも、今まで私達、結構ギリギリというか……本当に死んでしまう一歩手前まで戦ってたので、正直ライラちゃんが加入してくれて助かってます」

 

この人は予言の英雄の内の1人、聖女のセイラさんだ。美人で清楚な見た目をしているが、元々はただの町娘で、感覚としては庶民に近いらしい。

 

「まあ、今まで前衛は俺とモリアでなんとか回してたからな。後衛組の方が人数的に多いし、どうしても俺達じゃカバーできる範囲は限られてたから、ライラが加入してようやく一息つけるようになった感じはするよ」

 

そして、勇者ユーリ。予言の英雄の、メイン中のメイン。魔王討伐の要で、最重要人物。

見た目としては金髪碧眼の青年。が、その腕前はベテラン冒険者も感嘆の声を上げるほどのものらしい。

 

剣と魔法、どちらもそつなくこなすことができ、剣の腕では剣聖、魔法の腕では大魔導師に劣るが、勇者にしか持つことの許されない聖剣と聖魔の杖、聖安の盾を装備することができるという特徴があるらしい。

 

以上、モリア、マホ、セイラ、ユーリ、テュラー、そしてオレことライラの6人で、勇者パーティは冒険をすることになった。

 

まあ、なんだかんで、オレは勇者パーティの一員として、うまくやっていけそうな感じで過ごしてる。

 

「ミリア様の件は、申し訳ありませんでした。謝っても済むことではないと理解していますが……。許せとは言いません。ですが……、こうするしかなかったのです」

 

「あー、仕方ないよ。実力不足って判断したんだろ? オレ的には、ミリアの実力は十分だと思ってるんだが、万が一のこともあるしな。それでミリアに何かあったら、後悔してもしきれないし」

 

ここにミリアもいてくれたら、最高だったんだけどな。

 

そんなことを考えても、仕方ないとは分かっているんだが。

 

にしても。

 

ミリアのやつ、今頃どうしてんのかなぁ……。

 

 

 

 

⭐︎

 

 

 

 

勇者パーティ。ボクから、ライラを奪った存在。

 

世間では、英雄だなんだと持ち上げられているが、ボクは元々、そんなに好きじゃない。

だって、結局努力も何にもなく、ただ授けられた力でチヤホヤされているだけじゃないか。

 

勿論、ライラは例外だけど。

ライラは小さい頃から努力しているのを知っているし、実力があっても変に威張ったりしないから、ライラは別。

 

でも、そんなボクも、今じゃ世間で勇者パーティをもてはやしている連中と同じだ。

 

いつも勇者パーティの動向を気にしてる。

毎日毎日。今日はどこどこの調査に行っただとか、翌日どこどこの街へ向かう予定だとか、そんな、前までならどうでもよくて気にもしていなかった情報を、大衆と同じように求めている。

 

ライラは、上手くやっていけてるだろうか。

馴染めずに惨めな思いをしてほしくないという気持ちと、馴染んでボクのことを置いていってほしくないという気持ちがあって、上手く言葉に表せないけど……。

 

でも、心配はしてるんだ。ライラが、辛い思いをしていないかって。

 

同時に、ライラが勇者パーティに馴染めていない様子と、ライラが勇者パーティに馴染んで、ボクのことを忘れてしまう様子、そのどちらも想像して、勝手に勇者パーティに対して嫌悪感を抱いて、日々怒りを増大させてもいる。

 

そんな醜い感情、ライラだったらきっと持たないんだろうな、なんて、そんな風に考えながら。

 

ボクはそれを自覚しちゃうと、自分が嫌な人間だって、ライラの隣に相応しくないんだって、自己嫌悪に陥ってしまいそうになるから、気分を紛らわせるために、決まって魔物狩りに出る。

 

今だってそうだ。

 

ライラがいる時よりも、効率は落ちたし、実力も足りていないから、強い魔物はなるべくスルーして、ボクの実力に見合った魔物を選んで狩りをしてる。それでも、それなりの発散にはなる。

 

だから、やり場のない怒りとか、嫌悪感とか、そういうものを全部魔物にぶつけて、ボクは日々を過ごしている。

 

ライラが帰ってきてくれれば、こんな毎日を過ごさなくて済むんだろうけどな………。

 

 

『だったら、取り返せばいいじゃないか』

 

 

なんだ………今の声……。

取り返せばいい……。確かに、そう考えたことはある。

 

けど、ライラが勇者パーティに入らないと、魔王が倒せなくて……だから、仕方ない。勇者パーティは嫌いだけど、でも、仕方ないことではあるって理解はしてる。だから……。

 

 

 

『なんで魔王を倒さないといけないんだ? いいじゃないか別に。魔王なんて倒せなくても』

 

 

……いいわけがない。だって、魔王が倒せなかったら、この街の人も、ボクも、それに……ライラも、無事では済まない。

だから、ボクが嫌でも、ライラは魔王討伐のために、勇者パーティに加入しなきゃいけないんだ。

 

 

 

『街の人なんてどうなってもいいじゃないか。自分と、ライラだけが助かればいい』

 

 

 

そんなこと言ったって……。

 

 

 

『簡単な話だ。お前とライラが、魔族(こちら)側につけばいい。そうすれば、わざわざ魔王なんて倒さなくてもいいんだ。俺は歓迎するぜ?』

 

 

……おかしいと思ってたんだ。どうしてボクの脳内に、こんな声が流れ込んできているのか、って。

魔族の仕業だったんだね……。

 

「悪いけど、ボクは魔族の甘言に騙されるほど馬鹿じゃない。さっさと姿を表したらどう?」

 

『ククっ、お前じゃ俺には勝てないさ。気付かないのか? 俺とお前の実力差に』

 

「やってみなくちゃわからないじゃないか。ボクだって、これでも冒険者の端くれなんだから」

 

『理解している癖に、見ようともしないのか。そうやって、気付かないふりをして、誤魔化すことしかしないのか? 勇者パーティのことだって、本当は憎悪を抱いている癖に……』

 

違う。ボクは、怒りはした、嫌悪はした。でも、憎んでなんか……。

 

『いるさ。お前はずっと。勇者パーティを憎んでいたんだ。お前からライラを奪った勇者パーティを。そして、お前のことを見捨てた、ライラ自身を』

 

「黙れ! ボクは騙されない。そんなこと、ボクは思ってない!」

 

『もっと自分に素直になれ。別に俺はいいんだぜ、ここでお前を殺してしまっても。でも、俺は慈悲深いんだ。お前にチャンスをやっているんだ。な? 仕方ないんだ。お前は生き残るために、己の中にある憎悪を、肯定しなきゃいけない。死んじまったら、ライラにも会えなくなるんだからな』

 

ライラに、会えなく……?

嫌だ。勇者パーティに取られて、ただでさえ我慢してるっていうのに。

 

こんなところで死んで、もうライラに会えない?

嫌だ。勇者パーティにライラを取られたまま、終わるなんて、そんなの……。

 

『俺はお前達をずーっと見てたぜ。いいペアだった。最高のコンビだ。でも、それを引き裂く奴らがいる。それは一体誰だ? お前の敵は、本当に魔族か?』

 

そうだ。ボクからライラを奪ったのは、勇者だ。勇者パーティだ。

ボクを除け者にしたのは、テュラーだ。勇者パーティだ。

ボクを見捨てたのは、………ライラだ。勇者パーティだ。

 

 

 

にくい……。

憎い。

 

憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い。

 

ボクからライラを奪って、居場所を奪って?

それで魔王を倒す? 

 

ふざけるな……。

そんな()()()()()()()()のために、ボクからライラを奪ったのか!?

 

許せない……。許せない許せない許せない許せない……!

 

『そうだよな? 許せないよなぁ。でも、現にライラは奪われちまった。だったら、取り返すしかない。でも、今のお前の実力じゃ、勇者パーティになんてかないっこねーよなぁ?』

 

そうだ。ボクの力じゃ、勇者パーティどころか、ライラにすらかなわない。じゃあ、ボクはこのまま、泣き寝入りするしかないのか……?

 

『そこで提案だ。この俺、魔族シロマダラ様が、お前に力を与えてやる』

 

ボクに、力を……?

 

『そうだ。お前を魔族にして、強力な魔力を与える。そうすればお前は、勇者パーティからライラを取り戻せるんだ』

 

ボクを、魔族に………。

でも、それじゃあボクとライラは……。

 

『安心しろ。魔王様は器の大きいお方だ。お前とライラの2人を抱えるくらい、わけない。だからお前は魔族になって、勇者パーティからライラを取り返し、ライラをこちら側に引き込めばいい。どうだ、悪くない提案だろう?』

 

そうだ。ボクは奪われた。なら、取り返さなくちゃいけない。

この魔族の言うことを、どこまで信用していいかわからない。

 

でも、もうボクの憎悪は止められない。

 

ボクは我慢した、我慢したんだ。

 

でも、ライラが悪いんだよ?

 

ボクの前からいなくなるから。

2人でずっと一緒にいようって言ったのに、急にいなくなるから。

 

だから、ボクが魔族になったこと、たくさん後悔してね。

 

後悔して後悔して、今度は一生、離れないように。

 

ずっと、ずっと……。

 

 

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