───フーッ フーッ…
先ほどまでの激闘が嘘のように、静寂に包まれた街。
今は燃え盛る家と、俺の荒々しい息切れの音しか聞こえない。
眼前には、最早永遠に動くことはないドラゴン?らしき新エネミー。
その頭には、ものの見事に頭蓋をぶち抜いて突き刺さった黒檀の剣が鎮座していた。
ずぷり、と生々しい音が響く。
剣を引き抜き、鞘に収めながらフゥーーッと体内に溜まった“熱”と余韻を乗せて息を吐きながら、徐に天を仰ぐ。
素晴らしい。
これが、俺がこの新ステージに対して抱いた感想だった。
未知のエネミー。未知の光景。そして、何より圧倒的なレベル差。
初エンカウントのドラゴン(?)でこの強さとは、この世界は間違いなく推奨レベル80以上の高難易度ステージなのだろう。危うく死にかけた。
確信した。
一度は安寧と平和に満足していたが、やはり俺の本質は
そして、この世界には俺の求める全てがあるのだと。
これから、一体どんなエネミーやダンジョン、クエストが待っているのかと思うと胸が躍る。
かつて、ヘルゲンを脱してゲームでしか知らなかったリアルのスカイリムの景色を一望した時のような高揚が蘇るというものだ。
しかし、疑問も残る。
ドラゴンは倒したにも関わらず、ドラゴンソウルがいつまでも吸収されない。
いつもならドラゴンの死骸が燃え盛り、炎が体に吸い込まれる演出と共に「ドラゴンソウルを吸収した!」というテロップがあのクソ喧しいあずにゃんコーラスと共に発生する筈なのだが…。
やはり似ているだけでドラゴンとは別種の生物なのだろうか?
そう首を傾げていると、急に周りから喝采の声が上がる。
どうやら逃げ回っていた街の住人が集まっていたようだ。
さっき助けた兄妹も泣いて抱きしめ合っている。
正直、その光景に対して俺が感じたことは、スカイリムの住人と比べて情けないという認識だ。
リバーウッドやウィンドヘルムなら、ドラゴンが襲いかかっても民間人らが衛兵らと共に勇ましく戦うというのに。まぁ何人かはそのままブレスで焼かれて死んでいくが。
そして俺がドラゴンを倒せば何事もなかったかのように日常へと戻っていくのだ。
なんなら俺以外の誰かが倒したりもする。
そこらの鍛冶屋がフィニッシュムーヴで倒したドラゴンのソウルを俺が横取りするように吸収するシーンはなんとも言えないシュールさがあった。あの時ばかりはミラークを笑えんかった。
そして、ドラゴンソウルの吸収を目の当たりにしても会話内容は変わらない。衛兵の方がまだ驚いてくれるってどういうことだよ。
ゲームでも思ったが、リアルであの胆力を見せつけられた時は俺も感心したものだ。
まぁ、この街の住人が特別臆病なのかもしれない。
というか、スカイリムで感覚が麻痺していたが、こちらの方が人間としては正常かもしれない。
「この街をお救いくださりありがとうございます。調和勢のお方」
町長らしき男がこちらに話しかけてきた。
調和勢?
何言ってんだこのオッサン?
その後も政界のミコやらなんやら、よく分からんワードをベラベラと並べられてちんぷんかんぷんだ。デイドラ語か何かだろうか?
日本語で話せジジイ。それかドラゴン語。
ムカついて麻痺の呪文をかましてやりたくなる。固めて転がして川に落としたろか。
全く、せっかくの新ステージでいい気分だったのに最悪だよ全く。
俺はテキストだけ無駄に長い会話イベントが大嫌いだというのに。
具体的に
あのババアをフスロダでスカイヘブン聖堂から叩き落とした時は心底スカッとしたね。
誰だ?脳筋とか抜かした奴は。ワバジャックするぞワバジャック。チーズになりたいか?
兎に角、俺はさっさとこの世界を探検に行きたいんだ。
面倒な会話イベントは強制終了してトンズラするとしよう。
まだ何やら言っている町長を無視して俺はさっさと街の外へ歩き出す。
ドラゴンの死体を調べてみたかったが、住人に絡まれそうなのでやめておこう。
なぁに、あの感じだと他にもまだまだ居るだろうし、素材はその時採取すればいい。
新しい武器や鎧を作れるかもしれないと思うとまたワクワクしてきた。また鍛造スキルを上げておかないとな。
壊れた街?放っておけばいいだろそんなん。
被害もヘルゲンより遥かにマシなんだから自分達で建て直せるだろ。多分。
「待ってくれ!」
そして出口まで来たところで、あの助けた少年…アーザードとかいうのが追いかけてきた。
もうなんなんだよ次から次に。
戦闘中に話しかけてくる配達人みたいに邪魔してきやがって!ファイアブレスぶち込んだろか!?
そんな俺の苛立ちをこれでもかと顔に表しながら振り向き、少年を睨みつけながら話を聞くと、連れて行ってほしいだのと言い出した。
話が長かったので要約するが、両親の仇を討ちたいだの、その為の力が欲しいとかそんな感じだった。
理解した。
彼はこの世界での
しかしスマンな少年。
お前の力量では荷物持ちすらまともにこなせなさそうだ。せめて不死属性を追加してから出直してきてくれ。
そんな感じの事を伝えたが、なおも食い下がろうとするのでイラついてフスロダしようかと思ったら、妹さんが来て少年を引き止めた。
もう面倒だったので彼女に押し付けて俺はさっさと行く事にした。
やれやれ、最初の村で大分もたついてしまった。
しかし、これからの日々を思うと足取りが軽くなるというもの。
さぁ───冒険の始まりだ!
そうして新ステージで旅を始めて数日後…
今の俺は…
「ドヴァキンー、またスイートロールちょーだい」
美化MODを入れた白髪の子供キャラをフォロワーに加えていた。
………いや、なんで?
このドヴァキンは結構脳筋
「(とりまフスロダすればええか)」で大体ゴリ押そうとする