門が開かれてしまえば、押し寄せる潮に抗ってそれを閉じられる者などいずこにあろうか。
――「オブリビオンの水」より 著者、編者ともに不明――
第4紀196年 暁星の月20日(1月20日) ウィンターホールド地方
星明かりの下でアドラシルは足元に手を当てた。革手袋を通して突き刺すような冷たさが指を突き刺す。
ウィンターホールドの冬には珍しく晴天が続いたことで、山の雪面は溶かされては凍り、凍っては溶かされて、アンソールに潜むものの痕跡をわずかな凹凸として刻み込んでいる。
大地が息を潜めていると彼女が思わず錯覚するほど、あたりは静かだった。今宵は咆吼どころか岩を蹴る蹄の音も聞こえない。
ウィンターホールド南部に連なる山脈は、冬であっても山羊に雪豹、果てはトロールまでがあらわれるから、人間はまだしも、野生の生き物たちがいないのは奇妙なことだった。
張り詰めたアドラシルの感覚がこの場から逃げろと告げている。だが逃げるわけには行かない。
女はわずかに震える声で告げた。
「山頂に続いています」
この先道は山頂を越えてイーストマーチへ入る。夏の間であれば、商人も利用する程度には整えられているが、主要な街道というわけでもない。更に今は真冬である。旅人がいるはずもなかった。
ならばこの足跡の主は山賊、あるいは賞金稼ぎの男がならず者どもと呼ぶ何者かであった。
「山頂か」
賞金稼ぎが想いを押さえ込むように、星空の中に浮かぶ巨大な切っ先を仰いだ。
「たしか、 アンソールの山頂には竜をかたどった石碑があると聞いたことがあるが」
「ええ、 広場があります」
番人の問いに女は付け加える。
「明かりは見えんな」
傾いた白い月が山肌を照らし出し、雪から突き出した岩が青い影を落としている。背後には無人の雪原。周囲は一片の光すらない闇。
彼らは山の中腹にいた。
女衛兵、賞金稼ぎ、ステンダールの番人。
彼らが正面から堂々と山に入ったのは、日が暮れる前、不吉さを覚えるほど空が赤く染まる頃だった。
本来ならばまったくもって無謀な行動だ。賞金稼ぎと番人は、姿を隠して夜襲をかけえるべきだと反対した。ところが魔術に親しい女は、今宵の儀式のため、賊どもはそう騒ぎ立てることもせずおとなしくするはずだと主張した。
この推測は正しかったようだ。ここまで見張りすらいなかった。
だが、これはけして幸運ではない。彼女の推測が正しいならば、もう儀式まで時間は残されていない。
一行は道を急いだ。
辿りついた山頂の石碑の前には、広々と岩が開けて見通しの良い広場に、海に臨む竜を模した石碑が存在感を露わにしているはずであった。
ところが今夜は違う。いくつのも白い天幕と、白煙ののぼる窯がひしめいている。それにもかかわらず、やはり人の気配は一切ない。矢の一つもいかけてきそうなところだが、見張りの声一つ上がらなかった。
荷が置き去りにされていたが、武器と鎧がない。
「荷も置いたままとは、 この場に帰ってくる気でおるのだろうな。 われらのことを気にかけぬとは、慢心したことだ」
グスルは困惑を滲ませながら言った。
ショーは簡素な焚火の上にかかっている鍋をとった。
「まだ温かい。 遠くへはいっていないようだ」
鍋からは白い湯気がたなびき、すぐに凍りついて彼の掌のうえに小さな雪になって舞い降りる。
「食事中に武装して、 いったいどこへゆく? 手に負えぬ化け物でも現れたか」
「洒落にならん」
「そういうことを言葉にするのはやめていただきたい」
同行する二人に責められ、頬を緩めていた番人は始末の悪そうな顔で肩をすくめた。
「まあ、 そういうな。 死体はおろか、 血の跡すらないではないか」
「あいつは全員を引き連れていくようなやつではない。 むしろ周囲の奴ら全員を生贄に捧げてしまうようなやつだ。 いまになって何か心変わりでもしたのか?」
賞金稼ぎが首をひねった。
「そうなのか?」
「あのときのままであれば」
彼の声は苦味を帯びていた。
「それならば山賊も贄とするでしょうね。 エルフは早々変わりはしません」
そう、変われるはずがない。
そのハイエルフも女と同じく長い時を生きたのだろう。
いままで信じてきたもの、ずっとこれからも信じていくと思っていたもの。途方もなく長く続く生を支えるために打ちたてた心の柱は変えられない。
五家の争いが起ころうと、偽りのトリビュナルが暴かれようと、故郷を追われてすら、生き方を変えることができなかったのだから。
どのような理由で魔術師が悪しきデイドラに降ったのか、なぜオブリビオンの扉を開こうとしているのか、ということはアドラシルの思いの及ぶところではない。それよりも、焦燥が胸をかきたてている。白月神、セクンダがすでに沈んでしまった。数時間後に大月神、マッサーが昇るまで、これ以上ないほどの闇に包まれる。もういつ儀式が始まってもおかしくはない。
なんとしてでも魔術師を見つけ出し、儀式を止めなければならないのだ。守るべきものを守る。女はそうして生きてきたのだから。
思いにふけっている女に、あれを見ろ、と賞金稼ぎが告げた。
天幕の陰に隠れていた岩のアーチ。
男の指先はアーチの先へと消える真新しい足跡を示していた。
熱狂がその場を支配していた。
少女が女の胸から心臓を抉り出し、術師へと手渡す光景に、少年は叫び、無謀にも広場へと躍り出た。
オイアヴァールも次いで人波の中に飛び込んだが、誰も武器を振りかざそうとはしない。集う山賊は場の異様な雰囲気に飲まれて、祭壇から一時も目を離せずにいるのだ。
女の心臓を掲げ、魔術師が何事かを叫ぶと、祭壇から地面から、刻み込まれたルーンが不吉な光とともに浮かび上がり、紫の光が帯状に広がっていく。
儀式を見つめる何対もの瞳は紫のマジカを照り返していた。欲望の熱を宿した眼球がぬめりを帯びて光る。
ルークとオイアヴァールは静かに熱狂する人の波をかき分けて進んだ。
マジカが、虚空の一点から噴出する。
嵐の日の風のようにマジカが吹き荒れ、力が更なる力の呼び水となり、空間を埋め潰していく。
地面に刻まれているルーンがひときわ強く光り輝き、ひとりでに浮かび上がって、祭壇に安置されている石の前に直立する円陣を作り出した。
肌に触れてゆく風のように見えなかったマジカがその密度を増し、紫色の光の粒子となって円陣から飛び散る。
その前に立つ、血濡れの男と少女。祭壇の上には神の信徒の亡骸。
魔術がいまだ形をなしていないにも関わらず、マジカが人の目に映るのは異常なことだ。だが、異常を認識していても、その異様で美しい儀式の光景に、オイアヴァールは思わず見入った。
怒りに燃えていた少年すら息をのみ足を止めた。
欲望の熱気が静かに高まり、その場の興奮は頂点に達しようとしていた。
――みしり
それは、氷のひび割れる聞きなれた音によく似ていた。
みな祭壇を注視した。
春の雪解けのような、マジカの小流が生まれた。
―― 一瞬の静寂がその場を支配し、何かが悲鳴を上げ、決壊
濁流としか表現できない。
この世のものではない力が、圧倒的な光の奔流になって人間たちに襲いかかった。
――門が開いたのだ。
紫の光の暴威が露台を舐め尽くした。
光にふれた途端に、山賊どもが悲鳴を上げ、目を剥いてもがき、恐ろしいものでも見たかのような表情で口をあけて喘ぐ。そして雪の上に倒れ伏したものから次々に絶命していく。
「逃げろ、逃げろ!」
「触るな、いやだ。死にたくな……」
「来るんじゃねえ!」
山賊が口々に怒鳴りながら逃げ惑う。しかし光の濁流は蛇の首のように彼らを狩りつくしていった。
それは目を疑うような光景だった。
オイアヴァールは慄く。こんな魔法は知らない。
いくら長い時を流浪してきたといえ、こんな終わりは見たことがない。
本来マジカとは、神々の住まうというエセリウスから星や太陽を通ってニルンヘ降りそそぐものだ。けして人の身に害を与えるものではないはずである。だが、この場のマジカは天空に由来するものではない。あの光の輪からあふれだしている。オブリビオンから流れ出してきたそれが、場に満ちている。
山賊に目をやると、彼らは助けを求めるように手を伸ばしていた。目についたのは、どの手にもはめられている黒い石の指輪。その輝石から、濁流を生み出す楕円の穴に何かが吸い込まれ、そして突然倒れ伏す。
魂だ。指輪に施された符呪と、門より湧き出る異質なマジカによって、彼らの魂は次々に異界の虜になっているのだ。
「おや、 まだ息があったのか」
「き……さま、 謀ったか!」
次々に同胞が倒れていく中で頭と呼ばれた男が魔術師のローブの裾に追いすがった。そのまま引き倒さんとばかりにローブを握りしめる。
山賊とはいえ信仰はあるのか、と魔術師は一人で納得し、苦しみに悶えて足元でうずくまる男に満足げな視線をむけた。
「謀ってなどいない。 無論貴様等の願いはかなうとも。 比類なき力によってこの世の栄光を謳歌するという願いはな」
足元で目を向く山賊の頭を魔術師は嘲笑った。
「ただ貴様らの魂がその力になるというだけだ。 ただただ純粋な力になってこの世を破壊せしめる。 なかなかに愉快な経験になると思うぞ」
そして、かつて頭と呼ばれていた男を蹴り飛ばした。
「くそ」
そのつぶやきが空に解けるのと彼の指輪から光が飛び去っていくのとどちらが早かっただろうか。抵抗を示さぬままに男は動かなくなった。
一滴の血も流さぬまま命を魂ごともぎ取られていった。
広場には瞬く間におびただしい数の死骸が転がることになった。魔術師は右手の黒い宝玉をゆったりとなでながら満足げな表情でそれを見渡し、門へと少女をうながす。
直後、少年の声が再び響いた。
「待て!」
魔術師は振り返らなかった。ただ右手をゆっくりと上げる。すると彼の腕の動きとともに屍が起き上がり、耳障りな金属音を鳴らして生前の武器を抜き放った。使役された屍の体は円を描くようにしてルークとオイアヴァールににじりより、 たった二人に対して容赦なく襲いかかった。
そして吹きすさぶマジカの中で顔に半月を浮かび上がらせて言った。
「せいぜい殺しあうがいい。 騒乱も我が神の好むところ、 貴様らのあがきもまたよき供物となろう」
ルークは狙いを魔術師に定めて剣を構えた。
生かして行かせるものか。少年の心中の火種は燃え上がり、思考を侵していく。
なんでナダはあそこに血まみれで立っている?よくもやりやがった。こいつのせいで。そんな想いがスープをかき混ぜるように頭の中に巡った。いますぐにでも飛び出して、ハイエルフの口に剣をねじ込もうと考えた。
「ルーク。 背中は任せる。 仕損じるなよ」
その言葉に少年を支配していた激情が冷や水を浴びたように冷めた。
ここで飛び出したところで無駄死にするだけだった。今度こそ、ただの足手まといでいるわけにはいかない。
「そっちこそ」
襲いかかってくるアンデッドは動きは遅かった。しかも力が入っていない。惰性で振り上げて落とす、ただそれだけを繰り返すだけの相手。
オイアヴァールが小規模な魔法と槍でで敵を吹き飛ばし、ルークは拾った盾で敵の武器を受け流しては刺突を放つ。
コイツらはいったい何になってしまったのか。
ときどき現れるスケルトンや、墓潜りの言うドラウグルとは違う。生きながら魂を奪われた死体。まるで生きているかのような恐怖の表情を顔に張りつけたまま、にじりよる山賊ども。
「前だ!」
気がつけばルークの前に男の顔があった。その顔の表面は皮膚が凍りついて裂け、歯茎がむき出しになっている。マジカの光が照り返して不気味な影 が出来上がっていた。ルークは右腕の剣を眼窩に突き出した。それでも男は止まらない。目は見えているのか。耳は、痛みは感じるのか。
もしかしたら何をしてもすでに死んでいる奴らを叩き伏せることはできないのではないか、という思いがルークの胸のうちに浮かび上がる。数瞬が途方もなく長い時間のように感じた。
やられる。
心は不思議と凪いでいた。オイアヴァールの魔法が前を通り過ぎていく。氷の槍に吹き飛ばされた屍は、雪から突き出していた岩にぶつかってはじけ、肉片が水音をたてながら雪面に落ちる。
「貸しひとつだ」
男の声にふと意識が現実に引き戻された。
「くっそ、 絶対叩き返してやる」
後ろから苦笑。
ルークは悔しさに任せて目前の死体の腕を叩き斬った。
生きた死体を相手にしては、村の老兵に学んだことはまるで役に立たなかった。本来なら人間の急所である胸をつらぬいても、武器を持つ手と足さえ無事なら襲い掛かってくる。すでに死んだ体に対して急所などというものは意味がない。
ルークは一体を雪の上に引き倒した。倒すのは簡単なのだ。だが数の差はどうにもならない。なんとか攻撃をしのぐだけで精一杯だった。
当然、攻撃が止む気配はない。
髭をしげらせたノルドも、小盾を持ったインペリアルも、曲刀を振りかざしたレッドガードも全て地に叩きふせる。血に倒れた死体の足を全身の力で両断する。
握り手付けた手が震え、足元はおぼつかず、上段から振り下ろされた剣を受けきれずにたたらを踏む。わずかな間にルークは疲労していた。
上段から振り下ろされた戦鎚を受け止めきれず、思わず後ろに下がった少年の背にオイアヴァールがぶつかった。彼は敵に向かって槍を突き出していた。
「魔法はどうした」
「マジカがきれた」
「よし、 これで五分だぞ」
「味方と張り合ってどうする」
「自信がないのか?」
「私の槍にお前の剣でかなうとは思えんが」
「みてろ、やってやる」
軽口をたたいても、状況は悪くなるばかりだった。マジカの切れた魔術師と未熟な剣士はいまにも黒い死者の群れに飲み込まれようとしている。
さらに一体をどうにか盾で振り払い、大きく肩で呼吸をしてルークは顔を上げた。
忌々しい魔術師が門の前で哂っている。
「あいつ、 なんでおれたちを直接攻撃してこない」
前に進むこともできず、かといって退くことは絶対にできない。
「……どうしたらいい」
また届かないのか。ルークは歯噛みした。
「オイアヴァール! ルーク!」
男の一声と共に、状況が変わった。
背後から弓弦と斬撃。そして殴打の音が聞こえ、グスルと、鎧姿の援軍が死者の群れを獲物で殴り、あるいは切り倒す。そのさらに後ろにはウィンターホールドの衛兵が弓をひく姿。
衛兵の炎の魔法が彼らの間に立ちふさがっていた敵を焼き払った。
「無事なようだな」
「おお! おぬしと少年もな!」
オイアヴァールに答えながらグスルはルークと肩を並べる。
「ヒルドは」
「あそこだ」
グスルは息を吐き出し、そうか、と答えた。
戦力が倍になったのは大きかった。なんとかしのぐ程度といったところから、ようやく死者の波を押し返して、魔術師の元まで近づこうとしている。グスルとショーが前方で獲物を振り回し、衛兵の炎が死者を焼く。
「おい、引っ込んでいろ」
賞金稼ぎのショー。少年に襲い掛かってきた敵を一太刀で振り払った男が言った。なぜここにいるのか、と少年が口を開こうとしたとき、怖気の走る声がこだました。
「ああ、 忌々しい」
そして屍がその場で突き立ったまま沈黙し攻撃が止んだ。
「太陽神の加護持つものが三人も。しかも、 慈悲の神の信徒と月影の娘を連れてくるとは」
大気に魔術師の言葉が焦げつく。
「まったく、 まったく。 アーリエルよ、 なぜ今になって我らを見捨てたもうあなたは使者を遣わされるか」
悲哀に満ち溢れたじつに哀れっぽい声だった。それが声だけならば。フードが吹き飛ばされ露わになった魔術師の顔は好奇心に満ちていた。黄金の肌 の上に独特の愉快ささえ感じとれる。
「ああ、 知っているぞ。 そのマジカ。 覚えがある。 お前は」
「覚えているなら話は早い。 その命、 ここに置いてゆけ」
「そうはいかぬな。そうやすやすとくれてやるわけにはいかぬ」
ショーは死体の群れに斬りこんだ。
男の腕は見事なものだった。
男の腕はさすがというほかない。次々に亡者を動けなくしていく。すぐに、ただ一人祭壇の目前にたどりついた。
魔術師は少女を門へと突き飛ばし、右腕を体の前にかざすと数瞬のうちに薄白いマジカの盾を作り出す。少年があっと声をあげた。
盾によってノルドの男の斬撃が防がれた。賞金稼ぎが身を寄せて力をかけるが、盾はピクリともしない。
「詠唱の時間を」
衛兵が言った。弓を投げ出して、突き出した左手の手のひらを天空に向ける。
魔法には魔法を。ダンマーの女が何をしようとしているのか察した少年と二人の番人は、女衛兵の周りに集まる敵を打ち払う。
―― HO GH SL TRBNA, APR BW
女の手のひらの上に紫に発光する弓が現れた。彼女はそのまま矢をつがえず弦をひく。
「
言葉と共に弓を引き絞り、放った。
魔術師の盾から響く甲高い音。目に見えぬマジカの矢が発光する魔術師の盾に突き立っているのだ、と少年は感じた。
やはりというべきか、魔術師は女衛兵にに目をむけあからさまに顔をしかめる。それに動じずに女は次々と矢の雨を降らせていった。
幾度もガラスが割れるような音が響き、魔術師が門に向かって後ずさった。
「逃がすか!」
ぼうと空気がたわむほどの声を発したショーが魔術師に斬りかかる。
「印石だ! 祭壇の上の石だ!」
一方、オイアヴァールの声に応えてアドラシルが一矢を放った。マジカの矢は祭壇に置かれている石に届く前に、立ち上った紫の障壁に当たって音をたてる。
それを見たルークは衝動的に衛兵の足元の弓に飛びついた。
投げ出された弓に鋼鉄の矢をつがえ、そして迷った。
――術者を殺すか、印石を破壊するか
突然、自分がひどく場違いな場所にいる、と思った。武器を持たずにトロールの巣穴に放り込まれたような感覚。山賊に襲われたあの夜の無力感だ。ルークには特別なものはない。何の力もない。
そうでなければ、ナダが山賊に連れて行かれることはなかったし、ヒルドも死なずにすんだだろう。きっとこの場にいることもなかった。
そもそもこんなことになったのは、目の前の魔術師のせいだ。あいつのせいだ。
だが、魔術師を殺したところで、ナダは帰ってくるのだろうか。
魔術師だ、やれ、と遠くから男の叫びが聞こえる。
同時に、祭壇だ、狙え、と背中の男が囁いた。
だから――
やれ。
いや、それでも――
狙え。
どうして、ここで戦っているのだったか。
――選択しろ。
天啓のようなその閃きに少年の体は突き動かされた。
確実に狙いを定める。
手から放れた矢が風を切って飛んだ。
矢は石を弾いた。
宙を舞う印石。
紫の陣が見る間に翳り、とうとう最後には門が姿を消した。
やった、とルークは周囲を見渡した。
積み上がる死体の山、まだ立っている仲間。だが、立ち尽くす鎧の男の前に魔術師の姿はなかった。
わずかの差で魔術師は門の向こうへと消えていた。遅かったのだ。
東に大きな赤い月が昇っていた。
更新:海辺の村の少女を助ける
▼ オブリビオンについて調べる
これまでに登場したインゲーム本
ヴィヴェク三十六の教え(The 36 Lessons of Vivec)
オプカルス・ラマエ・バル
オブリビオンの水
ウェストウィールド(The West Weald)
タムリエル大陸中央、シロディールの南西、エルスウェーアとシロディールの国境付近にひろがる森林地帯。
TES:Ⅳ OBLIVIONの地図に地名が載っている。
ショーの出身地。
アズラ
デイドラ大公。宵と暁の女神。夜と昼の橋渡しをする神秘の領域を司り、一般的には「善良な」神として認識されている。ダンマーに縁深く、彼らの信仰する真なるトリビュナルの一柱でもある。