最初に動いたのはファーターであり、鍔迫り合い中のナハトに凄まじいスピードの蹴りを入れる。
「ッ!」
ナハトは機械化した義眼と反応速度のおかげで何とか避けるが、ギリギリの回避だ。だが、ナハトも回転式拳銃を取り出し、ファーターに狙いを定めて5発全てを撃つ。
エーテリアスに対しては威力の低い380口径と言えど、人間を殺すには十分な威力である。
しかし、ファーターはそれを全てナイフで弾く。
「その拳銃⋯⋯お前が初めて殺した人間のものだな。まだ使っていたのか」
「ああ、捨てられるかよ」
拳銃が空になった。ナハトは回転式拳銃を腰へ戻し、即座に炸裂トンファーを再展開した。義尾も駆動音を立てて鞭のようにしなり、獰猛な牙のように揺れている。
一方、ファーターもその背から黒いマントを払うように翻し、大型弾倉付き拳銃を片手に、もう片手にはナイフを構えていた。
—バンッ! バンッバンッ!!
ファーターがトリガーを絞る。特殊な爆裂徹甲弾がナハトの立ち位置を破壊しながら迫る。だが、ナハトは義尾を使い、瓦礫の壁を跳躍しながら弾道を読み、空中から降下する。
「やるな!」
炸裂トンファーを右手に、ファーターの拳銃を狙う。ファーターは身を沈めてかわしつつ、ナイフで腕を切断しようとするが、ナハトも義尾でナイフを弾いて、地面へ着地。そこから即座に旋回して左トンファーを叩きつける!
ガガン!
鉄と鉄がぶつかる凄まじい衝撃。お互いの動きは読まれ、完全に拮抗していた。
「フッ!」
ファーターの振りかぶったナイフの先がナハト頬を傷つける。
「くっ!」
「あの頃のお前が嘘のようだ⋯⋯強化手術だけで得た力ではないな!」
ファーターは嬉しそうに言う。
「そう言うお前こそ⋯⋯生身の身体で、よくもここまで」
義尾でファーターの頭部を狙うが、ナイフで弾かれ互いに距離をとる。
「生身だと気づいたのか?」
「ああ、攻撃を受け止められた時の感覚でわかった。お前は強化手術を受けていない」
エーテリアスとの戦闘は危険だ。かといって、ホロウレイダーが軍人のように特殊な訓練を受けていることもなければ、武器を持っているわけでもない。だから、一部のホロウレイダーは手術や義足、義手で身体を強化する。
「⋯⋯ファーター、お前は言っはずだ。ホロウを克服する為に薬を開発していると」
ナハトはトンファーを一度収め、代わりに炸裂刺突剣を展開する。蒸気が立ち上り、内部の炸薬機構が起動する。
「お前なら!」
その怒りは、かつての信頼と、失われた希望の裏返し。
「お前ほどの男なら⋯⋯! 生身でここまでやれるお前なら、本当にホロウを克服できたはずだ!」
その声は、怒りと悲しみに震えていた。
「虚狩りにもなれたはずだろうがッ!!」
叫びと同時に、ナハトが前へと踏み込み、炸裂刺突剣をファーターの胸部めがけて突き出す。ファーターはそれを避けず、ナイフを交差させて防ごうとする——
ガキンッ!
ナイフの刃に、炸裂刺突剣の鋭い刃が深々と突き刺さった。
だが、ナハトはそこで止まらない。
彼は柄のスイッチを押し込んだ。
カチリ——
瞬間、刃の奥に仕込まれた炸薬が起爆する。
ドガァァァンッ!!!
衝撃と共に、爆煙がファーターとナハトの間に広がった。火花が走り、ナイフは破片となって宙を舞い、爆風が二人を引き離す。
数メートル後退したナハトは、両足でしっかりと着地し、刺突剣の柄を握りしめていた。剣の刃は爆発で消し飛んでおり、柄からは煙が立ち上っている。ナハトは刃をリロードしてから納め、再びトンファーを構える。
一方、爆心地の煙の中から、ふらりと立ち上がるファーターの姿。
装甲服は一部が破れ、左肩からは血が滴っていた。
だが、なおも彼は立っていた。――割れたガスマスクのガラスの向こう側には笑う瞳が浮かんでいる。
「それだと、駄目なんだよ⋯⋯間に合わないんだよ⋯⋯」
呼吸は乱れ、血を吐きながらも、ファーターは再び拳銃を構える。
――そのとき、別の場所でも戦いが続いていた。
◆
アテネが電熱斧を振り抜き、エーテリアスの首を飛ばす。ゼーレは鉄柱を地面に突き立て帯電爆発を引き起こし、周囲を薙ぎ払う。
「こっちはこっちで手一杯だっての!」
「⋯⋯アテネ、右後方」
「わかってるよ!」
ラプターは、儀降と儀玄を護るように立ち塞がりながら、回復液を投与しつつ、迫り来る小型エーテリアスを頭部のリボルバーキャノンと手の電熱カッターで迎撃する。
「ンナ!(多すぎ!)」
アテネはその身のこなしで、エーテリアスを翻弄しつつ電熱斧で着実に数を減らす。だが、元の数が多いためいくら倒しても、減っている気がしない。
「くたばれッ⋯⋯!」
ゼーレは帯電させた鉄柱を横に力強く振るい、エーテリアスをまとめて吹き飛ばす。
「ンナナ!(まだ来るよ!)」
雄叫びを上げながら突進してきたエーテリアス、メトロゴブリンが儀降たちに迫る。
「くっ!」
儀降が咄嗟に構えるが――
「下がれ!!」
アテネが盾を構えて突進。爆発反応装甲が再び作動し、突進してきたメトロゴブリンを弾き飛ばす。
「お前らはさっさと撤退しろ」
「だが!」
「年下に心配される程、落ちぶれちゃいねーよ! それに、先に後方に撤退した市民や門下生の方にも、エーテリアスが行ってる。お前らが助けてやれ!」
ゼーレが口を引き結んだまま頷き、儀降に目配せを送る。
「⋯⋯行きましょう。儀玄」
「⋯⋯必ず戻ってきて」
アテネがにやりと笑った。
「当然だ。約束しとく。だから、お前らも——絶対に死ぬなよ!」
その言葉に背を押されるようにして、儀降と儀玄は瓦礫の道を走り抜けていく。
「行くぞゼーレ! ラプター! 兄貴の邪魔をさせるな!」
「ンナナ!(わかってるよ!)」
「兄者の背中⋯⋯俺が守る!」
ゼーレが吠えるように叫び、鉄柱に持ち直して突進する。彼瓦礫を蹴り飛ばし、火花を巻き上げながら戦場を駆け抜ける姿は、まるで戦車そのものだった。
迫りくるエーテリアスを殴り、潰し、そしてライフルで撃ち抜く。
アテネも中型のエーテリアスの猛攻に負けじと応戦する。
「こんの、虫ケラどもォッ!!」
彼が盾を前面に構え、突っ込んだ瞬間、エーテリアスの群れが反応する。しかし、その瞬間にはすでに爆発反応装甲が作動し、盾の前面で火花が炸裂。衝撃波が周囲の敵を吹き飛ばした。
「ンナナナナ!(蹴散らすよ!)」
ラプターもそれに続く。リボルバーキャノンの銃口が唸りを上げ、小型エーテリアスの群れをまとめて撃ち抜いた。
「右上っ⋯⋯!!」
ゼーレの鋭い声に、アテネが即座に反応。盾を上に掲げ、空中から飛びかかってきたハティの爪を受け止める。
ギャリィィンッ!
鉄と鉄が擦れる音が爆ぜた。
「甘いんだよォッ!!」
そのままアテネが電熱斧を突き上げる。直撃を受けたエーテリアスが断末魔の悲鳴を上げ、空中で爆散した。だが、エーテリアスも三人を殺そうと続々と現れる。
「さあ来いエーテリアス共! 次はどいつだぁ!!」
「旧都陥落の・Another」を書き終えてからの話なので、かなり先になりますが、他にもゼンゼロ小説を投稿しようと思っています。皆さんはどちらを見たいですか?
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シルバー小隊を率いる若き指揮官の話
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アストラの幼馴染でイヴと共に彼女を守る話
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時間をかけてもいい。どっちも書け