旧都陥落の日・Another   作:IamQRcode

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ダミアン

 

 適当観を案内された後、リンは店に残ったアキラとの通話を終えてから適当観の正門前へと向かった。そこには、雲嶽山のメンバー以外にもスーツを着た男たちが立っていた。

 

 そのうちの一人は、スーツをしっかりと着こなしており、少なくとも周りにいる黒服の人間よりは偉いように見える。

 

「貴方方が⋯雲嶽山ですか。私の名前はダミアン・ブラックウッド、ポーセルメックスの最高責任者です」

 

 ダミアン、それは労働者とポーセルメックスの黒服との会話で出た名前だった。

 

 この人がダミアン⋯確か賠償金のことで労働者と揉めているんだよね。

 

「貴方方、雲嶽山がこの地に戻られたのはメインフラワー家に依頼されたと聞きました」

 

「ええ、ラマニアンホロウの調査に来ました。後に正式な委任状は届けます」

 

 儀降は前に一歩出てダミアンと対峙する。目には力強さがあり、何者にも屈しないという感情が見て取れる。

 

「いやはや、実は生産エリアにはポーセルメックスの所有する輝石の採掘、加工エリアがあるのです。余計なトラブルは避けたいので、無用な立ち入りはよしてもらいたい。我々の役割は、輝磁の安定供給なのですから」

 

 その言葉に福福が反応する。

 

「安定? でもさっき、労働者の方々が労災にあったと言っていましたよ」

 

「事故があったのなら、ホロウへの影響も考えられる。我ら雲嶽山も調査に介入すべきだ」

 

 儀玄も姉同様に一歩前に出る。

 

「労災⋯ええ、確かにありましたとも。しかし、我らは既に規定に基づいて労働者の救助と損害補償を行なっております。安全への懸念がある以上、生産エリアには立ち入るべきではないと申しておきます」

 

 ダミアンは冷静に戸惑うことなく、今自分たちが何をしており、そして何が問題なのかを簡潔に言う。

 

「そして! 輝磁資源はTOPS財政ユニオンにとっても最も重要な産業の一つなのです⋯⋯それが、例え雲嶽山や誰であろうと深入りするのはお勧めしません」

 

 ダミアンは力強く言う。

 

「こちら、私の連絡先です。今日の所はこれにて⋯⋯」

 

 そう言うとダミアンは黒服たちと共に忙しそうに適当観から出て行った。

 

「な、何ですか今の人たち! 自分たちが怪しいと言っているようなものでしたよ!」

 

「そうね⋯⋯それよりも福福、労災って言ってたけど具体的にはどういうことなの?」

 

 儀降の問いに福福が応える。

 

「はい、お弟子さんと聞いたんです。労働者の人たちがポーセルメックスの人に賠償金の催促をしてて」

 

「俺も聞いたな。なんでも、生産エリアが侵食被害にあったそうだ」

 

 潘も思い出したように呟く。

 

「ランマニアホロウの異常数値データと関連性があるのかもね」 

 

「だろうな。無関係ではないだろう」

 

 リンがそう言うと、儀降と儀玄も頷く。

 

 恐らく、今回の労働者の反応からして事故は頻繁に起きるわけではないだろう。ダミアンも安定供給が目的と言っていたことから、少なくとも杜撰な警備や管理ではないはずだ。

 

「聡明ですねお弟子さん⋯⋯これで、ますます僕たちとしては輝磁の生産エリアに足を踏み入れなければならなくなりましたが、ダミアンが簡単に入れてくれるとは思えません」

 

「リン、生産エリアの場所は掴めるか?」

 

「うーん、実はホロウの異常数値のせいでH.D.Dのリアルタイム演算が使えなくて⋯⋯お兄ちゃんがここまで来て調整しないと」

 

 リンがそう言うと儀降は少し考えてから、口を開く。

 

「なら、二手に別れましょう。釈淵、貴方はリンのお兄さんを迎えに行って。私たちはここで労働者に聞き込みをしておくから」

 

「戻り次第、適当観で合流しよう」

 

「わかりました」

 

 釈淵は頷き、無駄のない動きで正門から出て行った。その背を見送りながら、儀降は周囲を一瞥し、街の方へ視線を向ける。人の流れが交差し、荷物を積み下ろす声が混ざり合っている。

 

「労働者たちは今は休んでいるはずだ。各自、別れて聞き込みを行おう」

 

 儀玄がそう言うと雲嶽山のメンバーは散り散りになって、衛非地区にいる労働者への聞き込みを行なった。それが、今回の問題解決の一歩であると信じて。

 

 

 

 

 

 その様子をロープウェイ乗り場の高台から見下ろし、望遠鏡だ観察する者が二人いた。

 

「⋯⋯動いたな」

 

「ああ」

 

 二人とも黒色の服に身を包み、フードを目深に被っている。どちらも新型の防弾ベストを着用している。しかし、軍の人間には見えない。さらに、片方はシュマーグとゴーグルで顔を隠しており、もう片方は赤く光る五つ目のガスマスクで顔を隠していた。

 

「俺たちはどうする?」

 

「とりあえずは、このままでいいだろう」

 

 そう言うとガスマスクの男は巨大な大剣を肩に担ぐ。その大剣は剣と機関砲が組み合わさった、遠近両用武器である。さらに、腰のあたりからは先端が銃になった機械の義尾が生えていた。

 

「また、ホロウに?」

 

「ああ⋯⋯それに、彼女らもホロウに行くだろう」

 

「⋯⋯だな」

 

 シュマーグを巻いた男はセミオート式の対戦車ライフルを担ぐ。先端はハルバードのようになっており、その長い銃身もあって中世の騎士のようだを

 

「行きますかね」

 

 黒衣の二人は視線を交わし、何の合図もなく同時に動き出した。足音はほとんど響かない。岩肌を滑る影のように、高台から裏道へと姿を消す。

 

 

 

 




ガスマスク男の体験はゴッドイーターの神器みたいなもの、シュマーグ男はシモノフPTRS1941とハルバードを組み合わせたものをイメージしております。

「旧都陥落の・Another」を書き終えてからの話なので、かなり先になりますが、他にもゼンゼロ小説を投稿しようと思っています。皆さんはどちらを見たいですか?

  • シルバー小隊を率いる若き指揮官の話
  • アストラの幼馴染でイヴと共に彼女を守る話
  • 時間をかけてもいい。どっちも書け
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