証拠を集め終えた後、雲嶽山はロア先生と合流した。
「⋯⋯これで十分だろう。証拠は揃った。あとは、計画通り動くだけだ」
「計画っていうのは?」
リンが問い返すと、ロアは目を細めて小さく頷いた。
「抗議活動だよ。ポーセルメックスに対して、労働者全員で声を上げる。緩和剤の不良、損害補償の渋り……全部を明るみに出して、会社を動かすんだ」
ロア先生曰く、ポーセルメックスに抗議活動をして損害補償を支払うまで業務を拒否するらしい。輝磁の安定供給ができなくなれば、ポーセルメックス側もうごかざるをえないだろうと。
話を聞き終えた、雲嶽山の面々は適当観に戻り調査の疲れを癒やした。
後日、労働者たちはポーセルメックスへの抗議活動への計画を練っていた。リンやロアが見つけた証拠を武器に、損害補償を支払うまで戦うつもりなのだろう。
リンは労働者たちと話してから適当観に戻った。
「⋯⋯うーん」
「どうしたんですか、お弟子さん?」
「いや、まだ少し引っかかるところがあってね」
リンは心の中で妙な引っかかりを覚えていた。ポーセルメックス側は本当に損害補償を払う気がないのか、そしてロア先生は信頼に値するのか。
「そうですかね? あの、ダミアンって人が黒幕なのは確かですよ。お師匠様の飛行船をおとしたのも、労災のことがバレるのが嫌だったからですよ」
福福がそう言うと、釈淵が眼鏡を戻しながら言う。
「そう結論を急いではいけませんよ、姉弟子さん。もし、飛行船を落としたのがポーセルメックスなら、TOPSが市長が依頼した捜査を妨害するには、いささか挑発的すぎます」
そのとおりだ。ダミアンがあの態度で、ポーセルメックスが飛行船を撃ち落としたというのは、あからさますぎる。まるで、自分たちから犯人だと言っているようなものだ。
釈淵の意見に儀降も頷く。
「彼らもビジネスよ。この方法では、自分たちの首を絞めるだけということは理解しているはず」
「じゃあ、他に黒幕がいるんですか?」
福福がそう言うと、適当観の入口からある一団が入って来る。それは、ダミアンと護衛の黒服たちだった。
「申し訳ありません。訪問が遅くなってしまいました。少し事後処理があったものですから」
ダミアンはそう言いながら儀降と儀玄の前に立つ。
「聞くところによりますと、皆様は危険を顧みずホロウに立ち入り調査をされたとか。事前に教えていただけなかったのは、ひとえに私の不徳の致すところでしょうか」
ダミアンはやれやれと言った感じで肩を竦める。
「ですが、無事に戻られて何よりです。万一にも何かあれば、責任を取るのは私なのですから⋯⋯それよりも、何やら廃棄されたエリアで我が社の生産プランを発見されたとか。そのことについて、ご説明をしておこうと思いまして」
「説明って⋯⋯」
福福が何かを言おうとしたが、ダミアンは続ける。
「あの生産プランはTOPSの機密事項なのです。しかし、今回の労災とは全く⋯⋯本当に全くもって無関係ですので、何卒誤解なきようにお願い申し上げます」
「ずいぶんと下手に出るね。この前の威勢はどうしたの?」
「そーですよ! 前みたいなゴーガンフソンっぷりはどうしたんですか! 私たちが不利な証拠を見つけた途端、目の色まで変えちゃって」
リンが意地悪な笑顔を浮かべるが、ダミアンもうろたえず応える。
「おやおや、まるで私が雲嶽山の皆様に非礼な態度を見せた口ぶりですね。ですが、仮にそう見えたのなら、立場上、不自由なことがあったとだけ申し上げておきます」
ダミアンの表情は申し訳なさそうではある。
「しかし、今は状況が変わりました。労働者が我が社に抗議活動をしております」
「それは、貴方たちが証拠をもみ消して、損害補償を有耶無耶にするからでしょ。ロア先生からそう聞いたよ」
リンの言葉にダミアンは初めて狼狽える。
「なんですって? それは大きな誤解です。事実、既に補償は申請済みです。一連の承認を受けている最中です。ただ、まだそのフローが終わってないのですが」
ダミアンは真面目な表情で言う。
「私は責任者として、労働者の待遇保障に最善を尽くしているのですから。それはそうと、ロア氏から聞いたと言いましたね。彼は他に何と?」
「労働者の侵蝕治療を妨害されたと言っていましたよ」
福福が疑わしい表情になりながら言う。
「まあ、それは事実です。なぜなら、彼は医師免許を持っていないのですから。効果があるのかもわからない治療を受けているのなら、それを止めるのが私の仕事です」
ダミアンはそう言いながら声を強める。
「そもそも、解悩水という薬も怪しい。あの価格はなんですか。必要な材料を考えたら、タダで配っているようなものです。不気味ですよ。だから、我々は彼の事を調べていたのですが⋯⋯そこに、ありがたくも貴方方が首を突っ込んだのですから」
「じゃあ、ロア先生の薬に問題があるの?」
「ご理解が早くて助かります。彼の行っていることは、我々と労働者の間に確執を生じさせているようにしか見えません」
「じゃあ、貴方たちは労働者を見捨てていないということね?」
儀降がそう言うとダミアンは頷く。
「当たり前です。といっても、簡単には信じてもらえないでしょう。ですが、我々は決して見捨てていません。証拠としてこれは、今回の事故の記録と補償の進捗状況です」
そう言うとダミアンは資料を儀玄に手渡す。
「では、私はこれで⋯⋯何か気になる点があれば連絡をください」
ダミアンとその部下たちは適当観から去っていった。
「どういうことなんでしょう。まさか、ロア先生が嘘をついて?」
「落ち着いて福福⋯⋯ダミアンの資料が嘘の可能性もあるわ」
「なら、私はロア先生と労働者の人たちに話を聞いてくるよ」
リンがそう言うと潘と釈淵も労働者から話を聞いてくると言う。
「じゃあ、私はこの資料に嘘がないかを調べておくわ」
雲嶽山の面々は今一度、真実を求めて動き始めた。
「旧都陥落の・Another」を書き終えてからの話なので、かなり先になりますが、他にもゼンゼロ小説を投稿しようと思っています。皆さんはどちらを見たいですか?
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時間をかけてもいい。どっちも書け