青空の下、静かな商店街をひとり歩いていたキルア=ゾルディックは、手にした紙袋を軽く揺らしながら足を進めていた。
「ゴンのやつ、やっぱ甘いもん好きすぎだろ……。」
軽く笑ってつぶやいたそのときだった。
――バチンッ!
光が弾けたような音とともに、視界が白一色に染まる。
「……っ!?」
まばゆい閃光に意識を奪われたのも一瞬。次に目を開けたとき、そこは見知らぬ風景だった。夕方のような空の色。コンクリートの建物が並ぶ見慣れない街並み。
「どこだ、ここ……?」
眉をひそめたキルアは、無意識に周囲の気配を探る。奇妙なことに、念の気配も何も感じられない。だが、全身を包む空気に何か異質なものが混じっている。
そのとき、前方から人の気配。三人の学生服姿の少年少女が歩いてくる。
「ねえ、あれ……子供じゃない?」
最初に声をかけてきたのは、気の強そうな茶髪の少女――釘崎野薔薇だった。
「おーい、大丈夫か?」
隣のピンク髪の少年――虎杖悠仁が、少し駆け足で近づいてくる。
「……あ?」
キルアは少し警戒しながらも、敵意のない様子にわずかに肩の力を抜いた。
「目、覚めたらここにいたんだ。……わけわかんねー光に包まれて。」
「……はあ? 何それ。」
釘崎が眉をひそめる。
「まあまあ、見た感じケガもしてないし……」
虎杖がやや困ったように笑う。後方で腕を組んでいた伏黒恵が一歩前に出た。
「放っといていいだろ。こっちにも事情がある。」
「アンタねぇ、こんな子供ほっとけるわけないでしょ。」
釘崎が詰め寄る。
「……交番、近くにあったよな。連れてこうぜ。」
虎杖の言葉にうなずきかけたそのとき――空気が変わった。
「……ん?」
突如、近くのビルの陰から、黒い瘴気をまとった異形の存在が姿を現す。骨のような顔面、ねじれた腕、口から涎のようなものを垂らした異形。
「呪霊だ!」
伏黒が即座に判断し、式神の構えに入る。
「なにあれ。」
キルアがぽつりとつぶやいたその言葉に、三人の動きが止まる。
「……アンタ、あれ見えてんの?」
釘崎が目を丸くする。
「呪霊が……見えるのか? こいつ。」
伏黒が警戒心を強める。
「下がってろ! 危ないぞ!」
虎杖がキルアの前に立とうとした、その瞬間だった。
「……あ?」
視界からキルアの姿が消える。
「――なっ!?」
呪霊の背後に立つ白髪の少年。手には、呪霊の首が掴まれていた。
「なんだ。触れるなら余裕じゃん。」
そのまま、キルアは軽々と呪霊の首を握りつぶした。
バギィッという音とともに、呪霊の体が崩れ落ちる。
「……嘘だろ……。」
虎杖が呆然とつぶやく。
「何者……?」
釘崎がじり、と後ずさる。
「呪術師でもない、術式もない……なのに呪霊を?」
伏黒の眉間に深い皺が寄る。
白髪の少年は、首を振り、手に付いた血を軽く払った。
「で、これ……なんなんだ?」
その無邪気とも取れる問いかけに、三人は確信する。
――この少年、ただ者ではない。
呪術高専一年ズと、異界から来た暗殺者の少年。
奇妙な物語が、ここから始まる。