雷光、呪の渦中へ   作:ぴーまんねこ

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第十五章 任務開始

朝八時。

東京校の食堂に、いつもより静かな空気が流れていた。

 

三輪はトレーを片手に、パンとヨーグルトを選び、空いている席に腰を下ろす。

対面にはすでに座っていた伏黒が、黙々と温かい味噌汁をすすっている。

 

「おはようございます……伏黒くん。」

 

「……あぁ。おはよう。」

 

簡素なやりとり。

 

そのとき、背後からトレイを持ったキルアが現れる。

 

「隣、いい?」

 

「どうぞ。」

 

三輪がわずかに照れながら応じる。

キルアは「ふーん」と声もなく笑って、三輪の隣に座るとサンドイッチにかぶりついた。

 

しばらくすると、五条が入ってくる。

 

「やあやあおはよう、みんな~!」

 

「……元気ですね。」三輪が小さく呟く。

 

「さて、今日は君たち三人に、ちょっと任務を頼もうと思ってね。」

 

五条はパチンと指を鳴らしながら、机に任務票を置いた。

 

「準一級の呪霊が一体。ついでにおまけで二級以下が数体。場所は神奈川県の廃倉庫。任務の結果次第で――三輪ちゃん、昇級のチャンスだよ☆」

 

「……え、え?」

 

三輪は思わず固まった。

 

「準一級って……私、三級なんですけど?」

 

「うんうん、大丈夫大丈夫。恵もいるし、なにより――」

 

五条がキルアに目をやる。

 

「キルアがいる。」

 

五条は口元だけでニッと笑う。

 

「前回、七海と行った任務。あのとき特級相当相手に全力出してなかったでしょ?」

 

五条の言葉に、伏黒と三輪の視線が一斉にキルアへ向く。

 

「……まぁ、70%くらいかな。」

 

キルアはサンドイッチを口に運びながら、当然のように答えた。

 

「70%……」伏黒が眉をひそめる。

 

「七海さんでも苦戦したって聞きましたけど……」三輪も呆然と呟く。

 

「でしょ? ね、大丈夫大丈夫。」

 

五条は満面の笑みを浮かべて、二人の肩をポンポンと叩いた。

 

「じゃ、行ってらっしゃ~い。伊地知が迎えに来るから、10分後に校門集合で!」

 

そして、そのまま軽快に手を振って去っていく。

 

 

10分後――

 

東京校の正門前。

黒いセダンが静かに滑り込むように到着した。

 

運転席から顔を出した伊地知が、助手席のドアを開ける。

 

「お待たせしました。どうぞ、乗ってください。」

 

「はい。」三輪が助手席へ、伏黒とキルアは後部座席に並んで乗り込む。

 

車内で、伊地知が任務内容を説明し始める。

 

「今回の任務は、神奈川県内の廃倉庫で発見された呪霊の討伐です。準一級が1体、そして二級以下が複数確認されています。」

 

「……で、なんで三級の私が呼ばれてるんでしょうか……」三輪が小さく呟く。

 

「今回の任務は、あくまで三人での連携を試す意図も含まれています。また、三輪さんの昇級対象にもなり得ますので、実力を示す良い機会かと。」

 

「な…なるほど。頑張ります……!」三輪が少し緊張した面持ちで答える。

 

「ま、キルアがいれば何とかなる。」伏黒が言い、キルアは「信用されてるってことかな」と肩をすくめる。

 

車が山道に入り、やがて古びた廃倉庫の敷地に到着する。

灰色の鉄扉は半分壊れ、周囲はうっすらと靄が立ち込めていた。

 

「ここです。」伊地知が車を止める。

 

「うぉ~、いかにもって感じだな。」

 

キルアが車から飛び出して朽ちた倉庫を見て言う。

 

「では帳、下ろします。皆さん、お気をつけて。」

 

伊地知が印を結び詠唱する。空が一気に陰り、辺りの空気が変わる。

 

「さて……行くか。」

 

キルアは両手を後ろで組み、軽く身体を反らせてから歩き出す。

 

「ちょ、ちょっと待ってよ!」三輪が慌てて追いかける。

 

伏黒は冷静な表情でその後に続く。

 

「慎重にな。準一級は、舐めると痛い目見るぞ。」

 

「大丈夫。様子見してから動くから。」

 

「様子見で首飛ばしそうだけどな……」伏黒がぼそりと呟いた。

 

三人の足音が、霧の中に消えていく。

その先に待つのは――本物の“実戦”だった。

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