雷光、呪の渦中へ   作:ぴーまんねこ

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第十七章 分断、呪霊の牙

「伏黒、三輪。どうする?」

 

特級と目される呪霊を前に、キルアが何気ない口調で二人に問いかけた。

 

その眼差しはまるで、散歩中に見つけた野良犬の様子を伺うかのように軽い。

 

「どうする、とは?」

 

伏黒は緊張を滲ませつつも、敵から目を離さずに言葉を返した。

 

「どっちかやる? それとも、両方俺がやる?」

 

キルアの声には、いつものような軽さがあった。まるで遊びの続きのような――だが、それに宿る“確信”の色に、三輪がわずかに戸惑う。

 

「あれ、特級かもしれないんだよ……?」

 

三輪もまた、震える声で口を挟む。腰に下げた刀の柄に自然と力がこもる。

 

「う~ん。まぁ、触れるんなら特級だろうが三級だろうが同じだろ。」

 

肩をすくめるキルアに、伏黒がぽつりと呟いた。

 

「お前はな。」

 

その刹那――

 

「来るぞ!」

 

伏黒が叫ぶ。

一体の呪霊が、床を砕きながら高速で突進してきた。

口元には人間のものとは思えぬ裂けた笑み。目の奥には、知性のような光が一瞬ちらついた。

 

「シン・陰流……簡易領域!」

 

三輪が刀に手をかけ、素早く構えを取る。刃が鈍く鈴鳴りのような音を立てる。

 

呪霊は一瞬、キルアに向かうと見せかけ、軌道を逸らして伏黒と三輪の間へ。

三輪の"抜刀"が発動するより早く巨腕が床を思い切り叩きつけた――!

 

「――っ!」

 

「えっ!?」

 

地面が一気に陥没し、伏黒と三輪の立っていた場所が崩れ落ちる。

ふたりの姿が、落下とともに闇の中へ消える。

 

「へぇ〜。分断させる頭とかあるんだ。」

 

キルアが小さく感心したように言う。

次の瞬間、残るもう一体の呪霊がキルアへ向かって一直線に距離を詰めてきた。

 

だが――

 

「遅いよ。」

 

いつの間にかキルアは、呪霊の背後に立っていた。

 

その手はすでに、呪霊の巨大な頭部を鷲掴みにしている。

 

「やっぱ、触れるなら楽勝じゃん。」

 

ボキリ。

 

生々しい音が響いた。

キルアの手の中で、呪霊の頭部はゆっくりと、だが確実に、握り潰されていく。

 

悲鳴のような呪力のうねりが空気を震わせるが――それも一瞬のことだった。

 

ぐしゃ、と音を立てて、呪霊は崩れるように消滅した。

 

キルアは手を払いながら、ちらりと崩れた床を見下ろした。

 

「さて……二人は大丈夫かな?」

 

*

 

一方そのころ――

 

崩落した二階の床。

粉塵が舞う中、伏黒と三輪はほとんど同時に着地していた。

 

「っ……!」

 

「っ……ふぅ……っ。」

 

二人とも、即座に構えを取る。

その眼前には、最上階から落ちてきたもう一体の呪霊――こちらも同等、いや、それ以上の圧を放っている。

 

「二人で祓いきるぞ!」

 

「はいっ!」

 

伏黒は術式の構えを取り、三輪は刀を強く握りなおす。

呪霊は耳まで裂けた口から禍々しい呪力を漏らしながら二人を見据えていた。

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