雷光、呪の渦中へ   作:ぴーまんねこ

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第十八章 電光一閃

「鵺!」

 

伏黒の声が空気を裂いた。

両の手を鳥の形に組むと、彼の影から漆黒の翼をもった怪鳥が現れる。

その顔には髑髏のような仮面――式神・鵺だ。

 

「行け!」

 

鵺は雷光のような速さで呪霊へ突進。

次の瞬間――ビリビリと空間を割くような電撃が呪霊の体を駆け抜けた。

 

「少しは足止めできるか!?」

 

伏黒が唸るように言う。

電撃に体を痺れさせ、呪霊は一瞬立ち止まる。しかし、そのまま巨大な腕を振り上げ――

 

「また落とす気!?」

 

三輪が腰の刀に力をこめ、身構えた。

 

だが違った。

呪霊の腕が叩きつけられたのは、床そのものではなく――地面の塵。

ズドン、と鈍く低い音が響いた瞬間、廃倉庫内に大量の砂埃が舞い上がった。

 

「くっ……!前が……!」

 

粉塵が一気に視界を覆い、辺りはまるで霧のように霞む。

その中から、不気味な唸り声とともに殺気が走る。

 

(まずい――来る!)

 

伏黒が影の奥で構え直すと同時に、

 

ザッ――!

 

呪霊の影が、一瞬、砂埃の切れ間に姿を見せた。

鋭利に伸びた爪。高速で三輪を狙い飛びかかってくる。

 

「危ない!!」

 

伏黒が叫ぶ。

 

三輪の目にも、呪霊の爪が射程に入った瞬間が映った。

 

(……避けられない。あの爪、当たったら――死ぬ。)

 

――その刹那。

 

目の前の景色が、一変した。

 

視界が急にクリアになったと思えば、自分の体が宙に浮いている。

いや、違う。誰かに――抱きかかえられている。

 

「……え?」

 

気づけば、三輪はキルアに横抱きされていた。

 

彼の足にはバチバチと紫電がほとばしっている。

 

「……あぶねー。」

 

キルアは淡々と、けれどどこか優しげに呟いた。

 

呆然とする三輪をゆっくりと地面に下ろし、

「大丈夫か?立てそう?」と声をかける。

 

その声が不思議と、心の奥にすっと染みる。

 

「……うん、大丈夫……」

 

立ち上がった三輪の手が、かすかに震えていた。

それに気づいたキルアは特に何も言わず、三輪をじっと見てその震えを受け止める。

 

そのとき、呪霊がギャアアアアアと奇声を上げる。

開いた口の中には、強大な呪力が集中していた。

 

「まずい……あれは……!」

 

伏黒が即座に気づく。

 

――直撃すれば、呪力の波動だけで人間は蒸発する。

 

次の瞬間――

 

「ガッ!!」

 

鈍い破裂音が空間を割いた。

 

呪霊の頭が、何かにぶつかり粉砕された。

吹き飛ばされた頭部は壁に激突し、動かなくなる。

 

何が起こったか、一瞬誰も理解できなかった。

 

ただ、伏黒はその方向を振り返って――キルアの右手に握られたヨーヨーを見た。

 

(まさか……あいつ、呪霊を見もしないで……?)

 

視界不良、呪力の爆発寸前――その状況で、キルアは確実に急所を撃ち抜いた。

 

「……これも、当たるね。」

 

ヨーヨーをポケットに戻しながら、キルアが伏黒に振り返った。

 

まるで、それが当然だと言わんばかりに。

 

その姿を見た三輪は、動悸が収まらない胸にそっと手を当てた。

 

(あの速さ……あの判断力……それに……)

 

静かに揺れる銀髪、淡々とした横顔。

キルアの全てが、言葉にならないほど胸に刺さってくる。

 

「……心臓が……はや……」

 

小さく呟いた言葉が、誰にも届かないように風に消えていった。

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