雷光、呪の渦中へ   作:ぴーまんねこ

20 / 47
第二十章 想いの輪郭

東京校・報告室。

 

重い鉄の扉が開き、五条悟が椅子に座ったまま視線だけで彼らを迎える。

 

「じゃ、伏黒。任務の報告を。」

 

伏黒は静かに一歩前に出て、手早く、簡潔に内容を伝える。

 

「準一級呪霊一体の報告だったが、現場では特級相当が二体に増えていた。三輪と自分は途中で分断され苦戦。一体の相手に対応したが、結果、キルアが二体とも撃破し、任務は完了した。」

 

「うんうん、ありがと~。まぁ、よくやったよ。」

 

軽く笑って五条は応える。

その一方で、彼の視線がすっと三輪へ移った。

 

報告の間、彼女は一歩下がった位置でずっと俯いたままだった。

拳を強く握り、口を固く閉じ、ただじっと自分を責めていた。

 

「まぁ……命があって、よかった。」

 

五条の声は、軽さの裏に優しさを孕んでいた。

 

「はい……。」

 

かろうじて口を開いた三輪の声は震えていた。

悔しさと、情けなさと――その奥に、助けられたことへの複雑な感情が入り混じっていた。

 

「まぁ、これから強くなっていけばいいじゃん?それまで俺が同行すればいいし。」

 

横でポケットに手を突っ込んだままのキルアが、何でもないことのように言った。

 

その一言に、また胸がじんと熱くなる。

三輪は顔を上げたかった。でも、上げられなかった。

 

そんな彼女を見ながら、五条の表情が一変する。

 

「……そうはいかなくなるんだよ、キルア。」

 

いつになく真剣な声だった。

 

「え?」

 

キルアが軽く首を傾げる。伏黒も視線を寄せる。

 

「うん。キルアの正式な等級が決まったよ。」

 

「え?」伏黒が思わず口にする。

 

五条はニヤリと笑って、片手を軽く挙げた。

 

「――特級だよ。おめでとう。」

 

「特級?」

キルアが小さく首を傾げる。ピンと来ていない様子。

 

伏黒は一瞬だけ目を見開いたが、すぐに深くうなずいた。

 

「……まぁ、相応か。」

 

「すごい……おめでとう。」

 

三輪がようやく顔を上げ、やわらかな声で祝福を口にする。

 

「よくわかんねーけど、サンキュ。」

 

キルアは、にこっと笑った。

それは何の衒いもない、無邪気な笑顔――

 

(――ああ、やっぱり私は……)

 

胸の奥で静かに“確信”の灯がともった。

 

*

 

部屋――夜。

 

三輪が使っている部屋に、キルアと彼女が並んでいた。

小さなライトの下、キルアはベッドに腰掛けながら携帯ゲーム機を触っていた。

 

そのとき、三輪の携帯が鳴る。

 

「はい、三輪です。……え? 延期……?」

 

声が少しずつ大きくなっていく。

 

「えー!? 延期!? しかも終了時期未定!?」

 

驚きと困惑が混ざったような声が室内に響いた。

 

やがて、「……はい。……わかりました。失礼します。」と消えるような声で通話を終えた。

 

その様子に、キルアがゲーム機のスイッチを切りながら声をかける。

 

「なんとなく察するけど、一応聞くわ。どうした?」

 

「……京都へ帰るのが未定になった。」

 

三輪は視線を落としたまま、ポツリと答える。

 

ほんの数秒の間があって――

 

「よかったじゃん。一緒にいれる時間、増えた。」

 

まるで空にポンと雲が晴れたような、無垢な声。

キルアが、何気ない様子で笑った。

 

その笑顔に、また胸が締めつけられる。

 

何気ない一言。

なのに、それは誰よりも優しく、誰よりも真っ直ぐだった。

 

(……好き。やっぱり、好きなんだ。)

 

確信とともに、三輪はそっと手を胸に当てた。

自分の鼓動が、今も静かに震えていることを、感じながら。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。