訓練場の片隅――
夕暮れの光が長く地面に影を伸ばす中、訓練後の休憩を取っていた面々の間で、一つの話題が持ち上がっていた。
「ヨーヨーを武器にするなんてすごいな。」
汗をぬぐいながら、虎杖が素直に感心したように言った。
「確かに、やっぱり子供っぽいとこあるじゃん。」
釘崎が苦笑混じりにそう言いながら、キルアをちらりと見る。
キルアはそれに対して、特に怒る様子もなく、無造作に片方のポケットからそれをひょいっと取り出して見せた。
「ん?あぁ、これ?ただのヨーヨーじゃないよ。特注の合金で作ってて重さは……50キロある。」
「は……?」
虎杖と釘崎が目をぱちくりとさせ、思考が停止する。
「持ってみる?」
片手で軽く差し出すキルア。
「……っ!?」
受け取った瞬間、ズンッという鈍い音と共に虎杖の手が地面に引き込まれた。
「マジだ……。」
両手で必死に持ち上げる虎杖の腕は、明らかにプルプルと震えていた。
伏黒も目を見開く。
(50キロのヨーヨー……それを持って、あのスピードで動いてた……?)
「ちなみに、もう一つある。」
キルアは何気ない調子で、もう一方のポケットから同じ形のヨーヨーを取り出す。
「合計100キロ!?それであの動きしてたのか!?」
虎杖が震え声で言った。
「まぁ、そうなるね。」
キルアは肩をすくめて返す。
「マジかよ……。」
後方で見ていたパンダが、呆れ半分にぽつりと呟いた。
その異質さに、皆の中で“ただ強い”を超えたキルアの存在が、また一歩深く刻み込まれていくのだった。
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夜・東京校の宿舎――
時刻は午後十時。
皆がそれぞれの部屋で休み始める時間。
キルアと三輪は同じ部屋で隣同士座っていた。
(ちゃんと……話そう。)
「あの……キルア……」
「んー?」
いつも通りの軽い声。
キルアは持っていた携帯ゲーム機から目を離して三輪を見る。
蛍光灯の代わりにスタンドライトの柔らかい光が彼の銀髪をぼんやり照らしていた。
「どうした?」
「ううん……その……少し話したくて……」
「いいよ、どうしたの?」
キルアはゲーム機を傍において、軽く笑った。
三輪は俯いたまま言葉が出ない、少し沈黙が流れる。
キルアは不思議そうに三輪を見ている。
その沈黙を破ったのは、三輪自身だった。
「……私、悔しかった。」
キルアが少しだけ目を見開く。
「この間の任務。私、何もできなかった。」
「……」
「正直……怖かった。自分が死ぬかもしれないって。でも、そんな時、キルアは何の迷いもなく、私を助けてくれた。」
「そりゃ、仲間だからでしょ。」
「それがすごいの。」
三輪が、まっすぐな目でキルアを見る。
「自分のことより、人のことをちゃんと見てる。その上で、あんな強さを持ってる……。私、ずっと“誰かの役に立ちたい”って思ってたけど、全然足りなかった。」
「……」
「だから私、強くなりたい。」
三輪の声には、迷いがなかった。
「あなたに追いつきたい。少しでも隣にいられるように。」
キルアは少しだけ黙り込んだ後、ふっと笑った。
「うん、いいじゃん。応援するよ。」
その言葉に、三輪は思わず目を伏せる。
けれど、次の言葉に、顔を上げた。
「じゃあさ、今度一緒に修行でもする?」
「……いいの?」
「うん。俺、教えるの得意じゃないけど、なんか三輪ならできそうって思った。」
三輪は胸の奥がじわっと温かくなるのを感じた。
「……ありがとう。」
その夜、柔らかな空気の元で交わされた約束は、静かに二人の距離を縮めていた。