雷光、呪の渦中へ   作:ぴーまんねこ

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第二十三章 手の内と覚悟

東京校・訓練場――

 

朝の柔らかい日差しが差し込む中、まだ人影の少ない訓練場に、二つの姿があった。

 

「へぇ、ホントに来たんだ。てっきり寝坊するかと思ってた。」

 

先に到着していたキルアが、木の柵に腰かけながら笑う。

 

「やるって言ったからには、やるよ。」

 

三輪は少し息を弾ませながらも、迷いのない瞳でキルアを見つめていた。手には木刀。髪はポニーテールに結びジャージを着用して、動きやすい格好をしている。

 

「ふーん。じゃあ今日は“見るだけ”じゃなくて、“動いて”もらうよ。」

 

キルアは柵から飛び降り、地面に着地したその瞬間、まるで風がすれ違ったかのように一陣の空気が揺れる。

 

「え……は、早っ……」

 

三輪の反応がわずかに遅れる。

 

「今のはまだ準備運動。」

 

「本当に……?」

 

「うん、じゃあ始めようか。」

 

*

 

最初は、三輪の刀の軌道や間合いの確認から。

キルアは一切攻撃せず、ひたすら三輪の斬撃を避けていた。

 

「……っ!」

 

「ほら、焦らない。腰が甘くなる。」

 

「わ、分かってる……!」

 

何十手と斬り込むが、キルアの体には一切かすらない。まるで未来を読んでいるかのように、最小限の動きで回避していく。

 

「三輪、もうちょっと意識してみたら?」

 

「何を?」

 

「“切ろう”じゃなくて、“当てよう”とするんだよ。そうすれば、相手の“ズレ”も見えるようになる。」

 

三輪は一度大きく息を吐いた。

 

(……そうだ、私は……強くなりたいって、自分で言ったんだ)

 

一度深呼吸し、今度は重心を低く、姿勢を安定させて踏み込む。

 

「――はっ!」

 

今までとは違う速さ、違う質量を持った一撃。キルアの瞳が僅かに細められる。

 

「……へぇ、いいね。」

 

バチッ、と音が鳴る。キルアの右足がわずかに電気をまとった瞬間、彼は後方に軽く跳ねるようにして回避した。

 

「今のは当たりそうだったよ。」

 

「……やった……!」

 

肩で息をしながら、三輪は顔を上げた。

 

「うん、やればできんじゃん。すぐ伸びると思うよ。」

 

その言葉に、三輪は少し照れたように微笑んだ。

 

*

 

訓練場の片隅では、いつの間にか伏黒と虎杖も見守っていた。

 

「なんか三輪さん……雰囲気変わったな。」虎杖がつぶやく。

 

「意識の違いだな。技術は未熟だが、覚悟がある奴は成長が早い。」

 

*

 

その後も訓練は続いた。

 

動きの確認、間合い、技術の応用――。三輪の目の色は変わっていた。自分の意思で“強くなる”と決めた人間の目。

 

最後に、キルアがポケットからヨーヨーを取り出す。

 

「最後、これの回避できたら今日の課題クリア。」

 

「……わ、分かった。」

 

「ちゃんと避けないと、骨折れるからね。」

 

「!?」

 

「冗談だよ~。」

 

冗談では済まされない速度で、ヨーヨーが音を裂く。だが――

 

ギリギリで三輪は体を横に跳ねさせ、回避していた。

 

「ナイス!」キルアが笑って手を上げる。

 

三輪も、ようやくそこで本当に安堵の笑みを浮かべた。

 

*

 

訓練後、休憩室のベンチに並んで座る二人。

三輪の手にはスポーツドリンク、キルアの手にはおなじみのコーラ。

 

「……ありがとう、今日。」

 

「別にいいよ。俺も教えるの、悪くなかったし。」

 

その一言に、三輪は何気なく視線を落とす。胸の奥が、また少し熱くなる。

 

「……また、お願いしてもいい?」

 

「もちろん。」

 

その言葉に、三輪はまた一つ、自分の“強くなりたい理由”がはっきりしていくのを感じた。

 

――たった一歩でも、隣に立てるように。

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