雷光、呪の渦中へ   作:ぴーまんねこ

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第二十四章 静けさの中で

夜、東京校の宿舎。

 

訓練を終えた三輪とキルアは、いつもの部屋に戻っていた。

既にシャワーも済ませ、部屋の明かりは天井灯ではなく、デスクスタンドのやわらかな明かり一つ。カーテンの隙間からは月の光が差し込んでいる。

 

「……今日、ありがと。」

 

ベッドに腰かけながら三輪が静かに言う。

 

「何が?」

 

「いろいろ教えてくれたし、全然手を抜かなかったし……本気で、私と向き合ってくれてた。」

 

「そりゃそうでしょ。手加減されたら逆に失礼じゃん。」

 

キルアは窓際の床に座り、背を壁につけながらコーラを飲んでいる。コンビニ袋が傍らに置かれており、中にはいつものようにジュースやスナックがいくつか入っていた。

 

「……てかさ」

 

「ん?」

 

「今日は結構いい動きしてたよ。特にあの一太刀、あれ俺でも『おっ』て思った。」

 

「……ほんと?」

 

「うん。俺、褒めるの下手だし。思ってもないこと言わないよ。」

 

キルアはそう言って肩をすくめると、袋の中から一つチョコレートを取り出した。

包装を破ると、口に放り込みながらおもむろにもう一つ取り出し、ふと三輪の方を向いた。

 

「食べる?」

 

「えっ、あ、うん……ありがとう。」

 

三輪が手を伸ばすと、キルアは何でもないことのようにそのまま三輪の手のひらにチョコをぽんと置いた。

 

(……あっ)

 

その瞬間、指先が少しだけ触れた。

たったそれだけなのに、心臓が小さく跳ねる。

 

「ん、コレ美味しいよ。ちょっと苦いやつ。」

 

「うん、食べてみる。」

 

包装を開けて、口に入れる。

 

ほんの少しビターな味。それが、どこか大人っぽく感じられたのは、きっと隣にいる相手のせいだろう。

 

夜風が少し入るように窓がわずかに開いている。揺れるカーテンの隙間から月が見える。

キルアは足を伸ばし、首をコクンと後ろに傾けた。

 

その様子に三輪は見入っていた。

 

強い。圧倒的に強い。

でも、同じように動いて、同じようにチョコを「食べる?」と差し出してくれる。

 

(ずるい……そんなとこまで、普通なんだ……)

 

三輪は胸の内に、また一つ「好き」の火が灯るのを感じた。

 

*

 

その後、部屋には静かな時間が流れた。

テレビもついていない。聞こえるのは夜の風と、たまに飲み物を飲む音だけ。

 

「……明日もやる?」

 

キルアが不意に聞いた。

 

「うん。やりたい。」

 

即答だった。三輪の顔には、もはや迷いはなかった。

 

「じゃ、明日もよろしく。」

 

「こちらこそ。」

 

そう言ってキルアは布団に倒れこみ、手をあげて軽く振った。

 

三輪も布団に入り、寝返りを打ってキルアの方に顔を向ける。

 

(……明日も一緒に、強くなれるように。)

 

その夜、三輪の眠りは、いつになく穏やかだった。

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